※この作品はR-18です。

『プリズムの瞳』 機動戦士ガンダムビルドダイバーズ   作:ビルダー林檎

29 / 33
Side Story 「バトルフェスタ 開幕」

 

 次雪が溶け暖かくなり始めた5月の頃、唐突にその事件は起きた。彰人が放課後に部室でVR機材の調整を行なっていると突然がらりとドアを開けたと同時に、総一郎が息を荒げながら部室に飛び込んできたのだ。

 

 

「GBAの大型バトルイベント?」

 

 突然の事態に呆気に取られる彰人を尻目に、総一郎が早口でイベントの概要をまくし立てる。

 

「そうだよ彰人!!GBAの公式サイトが久々に更新したんだよ!」

 

「そ、そうか……。」

 

 彰人は目の前で興奮冷めやらぬ様子で熱く語る総一郎に改めて苦笑する。この総一郎がここまで興奮するなんていつ以来だろう、と。彼の話を聞きながら手元のガンプラを弄る。あの戦い以来に大破したオルタナガンダムをかろうじて復旧させると共に、彰人は新たなガンプラを作りあげた。

 

 

名付けて「プリズムガンダム」

 

 

 眩い金色のフェネクスに蒼い輝きを放つG-セルフのパーフェクトパックを装備させた機体。同じ宇宙世紀の機体同士をミキシングした機体だけあってか、全体的にバランスが整っているのが特徴である。

 装備はビームマグナムに加えて近接戦闘用に備えて両腕部にビームトンファー。背部にはビームサーベル2本。後は追加装備に実体剣のガーベラストレートを装備している。

 オルタナガンダムの大きな特徴だった可変機構を廃して機体全般の強度を底上げし、敵のビームを反射するミラーコーティングも施している分、オルタナガンダムよりも頑丈に出来ている。敵のビーム攻撃を数発まで耐えることが出来るがその一方で、サテライトキャノンやバスターライフルといった照射系のビームは防げないのが大きな欠点であった。

 

 

 (満足のいく機体は出来たが、財布は軽くなったな……。)

 

手元の財布を眺めながら呟く。悲しいかな、1000円札が一枚に小銭が少しあるだけだった。HGの機体がぎりぎり買えるかどうかもあやしい。

 

「で、そのイベントバトル……面白いのか?」

 

「面白いだけじゃないさ!!今回はGBAで使えるポイントもあるんだよ!優勝チームにはなんと100万ポイント!」

 

「100万ポイントだって!?」

 

 100万ポイント。確かにそれは魅力的な話だった。GBAの中でしか使えないポイントとはいえ、リアルマネーに換算すると10万円。彰人達のような未成年者の無課金勢には喉から手が出るほど欲しい。総一郎が興奮するのも理解出来た。

 

 

「なるほど。」

 

参加する意味はあるだろう。彰人は腕を組みながらそう結論付けた。

 

 

(確かにこの時期、受験があるのに"ガンプラバトル"だなんて不謹慎だとも思うが、それはそれ。息抜きには丁度よさそうだな。)

 

「よし!参加するか!」

 

「彰人ならそういうと思ったよ!いいよね文香さん?」

 

 そう言うと総一郎は急に文香の方を振り向きそう伝える。驚いた文香が持っていた筆箱を落とした。

 

 

「別にいいよ。私の許可なんて求めなくても……。」

 

文香が落とした筆箱を拾いながら総一郎に申し訳なさそうに答えた。

 

 

「何を言うんだい!彼女さんの許可がないと満足に戦えないだろう!」

 

「……そういうものなの?」

 

「そういうもの!」

 

 相も変わらず彼は一人で興奮している。そのどこかおかしい様子を見て彰人は珍しいなと考えにふけった。彼が不審に思うのも無理はない。普段の総一郎はどこか冷めているというか、何事においても我関せず。みたいな所があったのに、沙雪と付き合いだしてから本当に総一郎は変わったなと彰人はぼんやり考えている様に見えた。それから数週間後。

 彰人は総一郎、エリックと共に例のバトルイベントに来ていた。椿には嫌な顔をされたが、折角のバトルイベント。ということもありエリックも誘っていた。……だが肝心の彼の姿が見当たらない。

 

「で、一体この状況は何なんだ?」

 

 2人の目の前には敵、敵、敵。ありとあらゆる敵のガンプラが所狭しと宇宙フィールドで戦いを繰り広げていた。まさに壮観、いや地獄絵図だ。

 

「おいおいおい!何十体いるんだこれはっ!?」

 

 彰人はビームサーベルを構え、目の前に迫る00クアンタをベースにしたと思われる敵の胴体にビームサーベルを突き立てながら総一郎とエリックに問いかけた。

 

「す、すごい数だ。ざっと1000体近くは居るはずだ……!」

 

 総一郎もライフルを乱射しながらいっぱいいっぱいに応えた。彼のシビュラブリッツ改も本来は乱戦向きでない機体のはずだが、以外にも乱戦に対応できている。というよりも、総一郎は一対一に持ち込むのが得意な様だ。

 多数の敵に囲まれても、独特のマニューバで敵を分断し、手に持った大型の鎌で敵を切り裂いている。

 

「シビュラブリッツ2型改……といったか?」

 

 

 総一郎曰く、デスサイズとアストレイブルーフレームとブリッツガンダムを組み合わせて作り上げた総一郎のオリジナルの機体だそうだ。ブリッツのミラージュコロイドを機体だけではなく、何を思ったのか武装にも搭載させた。そのために手元には一見何も武装が無く丸腰の様に見える。しかし、対艦ライフルとデスサイズの鎌、そしてビームライフルにランサーダートと武装は豊富だった。非武装だと油断した迂闊な敵を、その見えない鎌で切りつけ撃破している。敵は自分のガンプラに何が起きたかすらわからないだろう。

 

「相変わらずやるな総一郎!」

 

 

「ありがとう……!でも君の方こそ!」

 

 

「キミ達!ボクの事も忘れてもらっては困るな!」

 

 突然後方から来たエリックがシルベリアアストレイの下部スカートから隠し腕を伸ばした。前面の隠し腕から展開させたビームサーベルを大きく振り回しながら、嵐の様に敵の渦中に突っ込んでいく。全く恐ろしい。あれは真面目に相手するだけ時間を無駄にするタイプの厄介な敵だろうと2人は思わず苦笑する。

 このバトルイベントは時間無制限。およそ1000体のガンプラが宇宙フィールドで入り乱れ最後のチームになるまで殺しあうという凶器のバトルだと公式サイトの宣伝にはあった。まさかそれがただの謳い文句では無かったとは。

 

(いやほんと狂気じみているよ。良くサーバー落ちないなとか純粋に疑問だよ全く。)

 

「おおっとぉ!!」

 

 そんな風に彰人が一人考えに耽(ふけ)っていると、敵のAGE-FXなガンプラがバーストモードのまま彰人達に吶喊して来た。青色の綺麗な、それでいて殺意にあふれた閃光を間一髪の所で避ける。

 

 

(危ない危ない。)

 

 

 AGE-FXはガンダムAGEに登場する最強格のMSだけあって早い、強い、見栄え良しと三拍子そろった機体だ。彰人はAGE-FXから目を逸らさずプリズムガンダムのスラスターを稼働させ、直撃を避けるべく機体を動かし敵の突進を避ける。時折、隙が生まれた時には反撃のビームマグナムを放つ。だが悔しいことに何度やっても結果は同じだった。

 AGE-FXの機体各所から伸びたビームサーベルの回転に阻まれ致命傷どころかかすり傷一つすら与えることが出来ない。あの可動域、頑強性の高さ。あれほどの完成度の高いガンプラは、彰人自身殆ど見たことが無かった。

 今一つお互いに致命傷を当てられないまま、時間だけが無意味に過ぎて行く。その間にもAGE-FXの突撃に巻き込まれた不運なMSが機体を斬られ、抉られ次々に爆散していくのを横目に思わず彰人は総一郎に言葉を投げかけた。

 

「総一郎!このガンプラは俺が相手する!」

「分かった!こっちもギリギリだけどね!」

 

 総一郎の方は、見たこともないMSと交戦しているのが見えた。だが彰人はこのAGE-FXの相手でいっぱいいっぱいだ。というよりもなんでこの敵は執拗に彼ばかりを狙うのか。彰人自身にもそれは理解出来ない様だった。

 

「くっ!しまった!?」

 

 迂闊にも敵のFXバーストの直線状に入ってしまった事に慌てて気づく。彰人は咄嗟にシールドとリフレクターで受け止めるが、予想以上に衝撃が強すぎた様だ。撃力を真正面から受け止めたシールドがみしりと悲鳴を上げる。これでは長くは持たないだろう。彰人はシールドが完全に破壊される前にを手から離し、機体の軌道を反らす。紙一重だが避けることが出来た。しかし次は無いだろうという事実が彰人を焦らせる。

 

「良く避けたな。流石だよ神取彰人。"ブレイクデカール"なんか使わなくても強いじゃないか。」

 

彰人へと声をかける敵のプレイヤー。その声色は懐かしさと苛立ちが交じりあった様な複雑な心境を慮らせた。

 

 

「お前……まさか?」

 

 彰人自身、この声には聞き覚えがある。かつて彼のチームメイトだった男だ。名前はなんと言っただろうか。彰人はどうしても思い出せない。確かに覚えていたはずなのに、それなのにまるで記憶が霧に包まれたかのように曖昧だった。

 

「今更俺に何の用だ……っと!!」

 

 先程から馬鹿の一つ覚えの様に繰り出される突撃をぎりぎりで躱しつつ、振り向きざまにビームマグナムを放つがやはり効果は薄い。

 

(流石はAGE-FX……だなんて感心している場合じゃない!)

 

「お前がチームを辞めてからさ……散々だったんだぜ。」

 

「悪かった!!俺の事情に巻き込んでしまったのは本当に済まないと思っている!」

 

「謝って済むとでも思ってるのか?本当にお前にはイライラさせられるな。」

 

「くっ……!」

 

「またお前に会えて良かったよ……お前のこの手で"やれる"のがさぁっ!!」

 

 そう言い終えるとまたもAGE-FXが突撃してくる。高速軌道による一撃離脱戦法。シンプルだが、一番有効的な攻撃の仕方であると敵も理解しているようだ。

 

 

(なるほど。大きい口を叩くだけはある。だからこそ本気で挑まなければこいつには勝てないだろう。)

 

 

 彰人はビームマグナムを背中にマウントし直すと、真っ向からAGE-FXのFXバーストを両手のビームトンファーを展開させると同時に受け止めた。

 ビームトンファー越しに伝えられるビームの熱で装甲がぎしりと音を立てて軋み、プリズムガンダムの両腕のミラーコーティングが徐々に剥がされていく。

 

「どうした?このままじゃ機体は持たないぜ?」

 

 

「ああ。だがこれでいい。これがいいんだっ!」

 

 彰人はプリズムガンダムを更に加速させAGE-FXの突撃速度を弱らせると同時に、バックパックをリフレクター状態に切り替えた後に切り離した。

 切り離したリフレクターパックにビームマグナムを放ちビームを拡散、反射させる。反射されたビームがAGE-FXの背中に直撃。狙い通りメインブースターを破壊。機動力を失い更に動きが鈍っていく敵のガンプラ。

 

「なっ……!?リフレクタービット無しで反射攻撃だと!!……最初からこれを狙ったか!」

 

 動きの鈍ったAGE-FXにビームトンファーで更に追撃を仕掛け、少しづつではあるが敵の装甲を削る。

 敵もビームサーベルを抜き反撃するものの、もう遅い。ーーここは彰人の得意とする距離だった。

 

「あの時、お前らに疑いを持たせたのは悪いかった。」

 

「彰人おおぉぉぉぉぉ!!」

 

「だけどよ……負けられないんだっ!!」

 

 最後の攻撃といわんばかりにガーベラストレートで大きく敵機を切りつけた。

——居合切り。渾身の一撃が胴体を袈裟斬りにし、それが致命傷となったのだろうか。AGEーFXが完全に沈黙する。

 

「……はは。やっぱりお前、強いな。」

 

負けを悟ったのか、敵のパイロットが口を開く。

 

 

「今更なんだ。」

 

「お前がブレイクデカールに頼る奴じゃないってみんなわかってた。だが……みんな誰かのせいにしたかったんだろうな。」

 

「俺の方こそ悪いな、あの時は酷いこと言って。」

 

 

「……大和。」

 

 大和と呼ばれた男の機体が臨界点に達したのか、AGE-FXが青色の輝きを失い、爆発に伴い火花を散らしながら宇宙に融けていく。あの様子では大破は免れないだろう。

 

(思い出した……藤堂大和。)

 

「大和!!」

 

「馬鹿だな……そんな顔するなよ。悪いのはお前を一方的に傷つけた俺た……。」

 

最後まで言い終わらないうちに大和の機体が大きく爆発を起こす。GBAではガンプラにダメージが入らない分、機体が大破した場合はその機体のデータはロストする。どんな出来栄えの機体でも一度大破してしまえばその機体を使うことは出来ない。加えてこの戦闘は完全匿名性を保っているためプロフィール交換すらも出来ない。

 

(ガンプラバトルを続けていたら、また会えるよな。いや、今度は俺の方から……必ず。)

 

彰人は正々堂々戦い抜いた大和に敬意を表した。右手をぴんと伸ばし額の前で揃える。敬礼のつもりだ。彼なりの、不器用な気遣いだった。それが大和に伝わったかは分からない。

(敵の反応が消えた?)

 

彰人たちの戦闘が終わったのか、画面上から敵の機体の反応が消えた。そのことに総一郎は安堵しつつも、目の前の敵に対して思考を巡らせる。彼自身見たことのないガンプラだった。体は非対称で歪なデザイン。頭は剣道のお面の様な不思議な被り物をしている。更に機体を変形させると、まるで「手」のような独特のフォルムに姿を変えた。

 その不審な様子を観察していると、あろうことか敵はこちらを睨みつけたまま突進する。厄介なことにビームサーベルのような光が機体各部から伸びているおかげで、この接近戦に向かないシビュラブリッツでは分が悪い。おまけに、Iフィールドでも積んでいるのかビームライフルの直撃を与えても不気味な程に手応えがない。

 

(なんなんだこのMSは。不自然な動きだ……!見たことのない武装……駄目だ、強い!)

 

 総一郎は内心焦るが、焦ったとしてももこいつには勝てない。迫りくる敵のガンプラの攻撃の直線状に入らないようにシビュラブリッツを動かし敵の追撃から逃れる。こいつは強い。悔しいが防戦一方だ。敵の詳細が分からない以上こちらからも迂闊には攻撃できない。

 ブリッツの左手のランサーダートを半ばがむしゃらに放つ。実弾が放たれ、敵の一瞬だけ動きが止まった。その隙を見逃さず、鎌で敵のガンプラを切りつけようと試みたが鎌を掴まれてしまう。

 

(なんて反応速度だ!だけどこれならどうだ!)

 

咄嗟にイーゲルシュテルンで鎌を撃ち破壊する。砕けた鎌の破片が飛び散った。だがこれは狙い通り、砕けた破片が敵に当たったようだ。敵の装甲とモノアイ稼働部に傷が入り、モノアイの動きが僅かながら遅くなった。

 

(よし。当てることが出来たぞ。)

 

「……桐谷総一郎君。随分と姑息(こそく)な真似をするじゃないか。」

 

「……!?なんなんだ君はっ!?僕を知っているのか?」

 

 突然の敵の声に思わず総一郎は驚く。明らかに彼を知っている様だ。だが総一郎の方は心当たりがない。

 

(いや、何か聞いた事があるようなないような?)

 

「沙雪の彼氏だろ?お前イラつくんだよね。ああいういちゃいちゃしたの見せられるとさぁっ!」

 

「あ、あてつけなのかっ!」

 

「悪いか!!ええ?毎日毎日いちゃいちゃいちゃいちゃしやがって。何が淫キャよ!この勝ち組がぁ!死ねや!」

 

「うおおおおぉぉぉ危ないっ!!」

 

 敵のガンプラが手に変形すると同時にビームを放って来た。総一郎はそれをシールドで受け止めお返しに対艦ライフルを撃ち込む。読み通り、手に変形しているときはライフル弾が多少だが効くようだ。

 

「き、君も沙雪が好きなのか?」

 

「ああ!そうだよ!!俺も子供のころからずっとあの子が好きだった!だからしたんだ!7歳も10歳も12歳も15歳の時もだ!」

 

「な、何を?」

 

「愛の告白だろ!!!」

 

「こ……告白ぅ?」

 

「それをお前はぁ!横からかっさらっていった!お前は俺の全てを奪ったんだ!どうせお前も彼女持ちというステータスが欲しかったんだろう!」

 

「ふざけるな!僕はそんな理由で沙雪を好きになったんじゃない!」

 

 

「黙れぇっ!」

 

「手」が怨嗟の炎のような怪しく煌めく炎を放ってくる。その執念じみた熱がシビュラブリッツの装甲を燻(いぶ)し、焼いていく。冷静さを失ったのか先ほどとは違い我武者羅な攻撃だ。だがその激しさの中に我を忘れた物特有の煩雑さが見て取れる。

 

(隙だらけだ……今ならっ!!)

 

 シビュラブリッツはミラージュコロイドを纏い敵のガンプラの背後の死角から対艦ライフルを放つ。一発一発では致命傷にならないかも知れない。だがそれすらも見越して同個所を連続して狙い撃ち続ける。少しづつだけど、衝撃に耐えられず装甲がひしゃげているようだ。

 

「調子に乗るな!」

 

 手がぐるりとこちらに向き直り、再度ビームを放つ。その攻撃が運悪く対艦ライフルに当たり、総一郎は慌てて手から対艦ライフルを離すと同時にビームサーベルを抜いて手に斬りかかった。賭けだ。このビームサーベルが効かなければ、彼は負ける。だけど、たとえ負けるにしてもこの敵には真正面から斬りかかるのが礼儀だと思ったのだろう。どんな形であれ、この敵も沙雪が好きだったのだ。そんな人に対して姑息な戦いを仕掛けるのは何か嫌というか拭えない違和感を総一郎は覚えた。

 真正面に切りかかった総一郎に対して「手」から展開された数本のサーベルがシビュラブリッツの肩に喰い込み、少しづつではあるが装甲を溶かしていく。このままでは持たない。

 だが、総一郎もビームサーベルを敵に突き刺し敵の装甲を溶断する。この距離ではIフィールドも効果は無いようだった。それが幸いしたのか、敵のガンプラのモノアイが光を失い、身体から力が抜けていくのが見て取れる。

間一髪だったが、総一郎は勝利したのだ。

 

「はあ、はあ、はあ……。」

 

 理由はどうであれ、強敵だった事に変わりはない。勝てたのが幸いと言うべきだ。だが、勝利の余韻に浸る暇なんて無い。直ぐに戦闘の終わりを察した数体のジェガンが卑怯にも総一郎の方にビームライフルを放って来た。

 

(漁夫の利を狙うつもりか!こいつら……!)

 

残念だが、シビュラブリッツの装備は心許ない。総一郎はライフルの弾を避けた後にランサーダートをジェガンに放ち、動きを止め爪先にあるダガーナイフを即座に展開させそのままコックピットを貫いた。

 

(君たちにかまっている暇はないんだ!)

 

苛立ちを抑えながらも冷静になる様に努めた。敵のジェガンのビームライフルを奪い取り迷わず撃つと、ビームライフルの光に飲まれジェガンの上半身が蒸発する。どうやら、まだまだ戦いは続きそうだ。

 

戦闘開始から数時間後。

「はぁ〜。何とか終わったか。」

「ど、どうやらその様だね。」

 ひたすらに戦い抜くと、気づいたら辺りに敵の姿は見えなくなっていた。あれほどまでにいた数のMSの姿は無く、幾多ものガンプラの残骸が宙にゆらゆらと漂っている。

 

「彰人、本当にこれで終わりなのか?なんだか雰囲気が変だけど。」

 

「ああ、何かおかしい。バトルが終わったならアナウンスが流れてもいいはずだ。それにエリックは……。」

 

「ボクはここさ。」

 

 通信が入ったのち、彼等の下方からエリックの機体、シルベリアアストレイがこちらに接近して来る。ゴールドクレイドルと呼ばれる自慢の外装はぼろぼろに剥がれ素体だけの様だ。何とも痛ましい。

 

「大丈夫かエリック。」

 

彰人は満身創痍のエリックに声をかける。プライドの高いエリックに聞くのも野暮ではあるのだが、流石に気遣うのだろう。

 

「ああ、大丈夫さ。流石にあの数は辛かったけどネ。」

 

 エリックが被弾したと思われる箇所をマニュピレーターでさすりながら答えた。どうやら見た目以上にダメージは深刻そうだ。

 

「だけど見た感じ、もう僕らしかいないね。これなら戦いは終わったんじゃないのかな?」

 

 総一郎の言葉に彰人は辺りを見渡す。確かに、敵影は既に見当たらない。あれほどまでにいた数のガンプラとログアウトしたのか、火線の光すら見当たらなかった。この状況に違和感を覚える。何故なら、通常バトルが終われば公式からアナウンスが流れるはずだからだ。こうして敵影一つ見当たらないというのに、何の放送も流れないのは不自然極わりない。隠れている敵が居ないか索敵しようとしたその時。不意に後ろから声が聞こえた。

 

「すみません。まだここに一人います……。」

 

「「ええ!?」」

 

 突然聞こえた声に驚くと同時に後ろを振り向き、その敵の様相に改めて驚きのあまり声をあげてしまう。当然だった。何しろこの敵は。

 

「HGUCネオ・ジオングだと!?しかも黒い!!なんだこれは!」

 

「すみません……影が薄くて。僕、友達が居なくて、一人でこのネオジオングで来ました。」

 

「嘘だ!?この大きさで気付かないはずが?後ろ?にいたのか!今の今まで!?」

 

「すみません。本当にすみません……。僕の機体に近づく人はみんな灰にしてしまいました。」

 

「こいつは驚いたネ。確かに、黒は宇宙のフィールドだと迷彩になるのかも知れないけど。」

 

「はい……隠れているつもりは無かったんです。ただ、無我夢中で暴れていたらみんな粉々になっていまして……。」

 

「格闘戦特化のネオ・ジオング!!何とも酔狂な機体だ。三代目メイジンが居たらお喜びになっただろうに。」

 

「どうする彰人?戦うしかないだろうけど。」

 

 

「どうするって……やるしか無いだろ。」

 

 彰人は目の前の黒いネオ・ジオングを眺めながら、コックピットの中で苦笑いした。あまりにもでかすぎてこのオルタナガンダムのコックピットからでは全体を伺うことが出来ない。

 

「すまないが、ボクは離脱させてもらうよ。この機体では役に立てそうにないからね。」

 

突然、エリックが棄権を宣言した。

 

 

「エリック!?君がそんな弱気になるなんて!」

 

「総一郎……大丈夫だ。エリックは‘後方に下がって‘くれ!」

 

「……ああ、了解サ!」

 

「話し合いは終わりましたか?それなら僕も抵抗させてもらいますよ。この拳で、ね。」

 

「行くぞ総一郎!プリズムガンダム!」

 

 

「……やるしかないか。分かった!。」

 

 彰人はプリズムガンダムのブースターで機体を加速し、ネオジオングに肉薄する。すぐさま数本の腕が殴りかかってくるが、それらを間一髪で避けながら攻撃を仕掛ける。一発一発が致命傷となりうる攻撃だ。油断は出来ない。

 

(こうした大型の機体とは何度かやりあったことがある……だが!)

 

 彰人自身「接近戦に特化」したMAなんて化け物じみた色物とやり合うのは流石に経験が無い。懐に飛び込みビームトンファーで斬りつけるが、やはり表面の傷つけるだけで有効打は与えられない。余りにも装甲が厚すぎるからだ。

 

(なんだあれは……?ぐっ!?)

 

 機体に大きな衝撃が流れたと思った途端、プリズムガンダムの左腕がもぎ取られる。確かに攻撃は避けたはずなのだが、先程の戦いのダメージが駆動系にも来ているのか。どちらにせよ不可解である事には変わりない。

 

「彰人!大丈夫!?」

 

 

「問題無い!」

 

 この目の前の巨体は2人の攻撃にびくともしない。確実にダメージは与えているのだろうが、敵のネオ・ジオングが繰り出す打撃の連続技が激しすぎる。

 迂闊に近づけばやられるが、かと言ってビームライフル等の飛び道具はIフィールドで防がれてしまう。シビュラブリッツの対艦ライフルも効果はあるようだが、致命傷を与えるのは難しいようだ。

 

(まるで象にナイフとピストルで戦いを挑むのと同じだ……まずいな。このままじゃあジリ貧になる。)

 

「中々粘りますね。僕が繰り出した攻撃は24発。僕のネオジオングノワールの猛攻にここまで耐えられる人はこれまで居ませんでしたよ。」

 

「それはどうも。」

 

「ごめんなさい。このままではフェアじゃあありませんよね。どうです。棄権してもらえませんか。GBAでは破壊されたガンプラのデータはもう使えない。その機体が無くなるのは嫌でしょう?」

 

「重ねてお気遣いどうも……っと!」

 

(そんな言われ方をすると腹が立つぜ、全く。)

 

 

 彰人は6本の豪腕から繰り出される攻撃を避けながら、右手のビームトンファーで腕の基部を狙う。当然阻まれるだろう。それは読んでいた。だから千切れた左腕のビームトンファーを右手で掴んでそのままネオジオングに投げつける。コアユニットのシナンジュに向けて投げつけられたそれを防ごうとネオジオングが腕を二本使い庇う。すると攻撃が少しだけ緩んだ。

 

「今だ総一郎!」

 

 

「言われなくても!ここだぁっ!!」

 

 総一郎が見えないはずの対艦ライフルをシナンジュに向けて放つ。実弾はIフィールドに阻まれず、真っ直ぐシナンジュ本体に向けて飛んだ。だが、その一撃もネオジオングの腕に阻まれる。だがこれでいい。3本の腕と俺が対応している腕の動きが止まった。この状況だけ見れば敵はこちらが打つ手は無いと思うだろう。だが大型の機体というものは死角があるものだ。"どうしても把握できない死角が"

 

「「エリック!!」」

 

「了解だよアキト。これでチェックメイトさ!!」

 

 遥か後方からエリックがヴァルジキャノンの一撃を放つ。速度を最速に調整され、Iフィールドすらも易々と貫くその一撃。真っ直ぐな起動を描きながら飛ぶその青色の火線。

 彰人はプリズムガンダムのバックパックを切り離しエリックの一撃に重ねる様に配置した。狙うはコアユニット、シナンジュの真上。

———腕の防御ももはや間に合わない。圧倒的な火力を持つ必殺の一撃が、コアユニットのシナンジュを焼いた。

 

 

ガンプラバトル 後編に続く。

好きなガンプラは?

  • オルタナガンダム
  • シビュラブリッツ
  • シルベリアアストレイ シルバーフレーム
  • ペーネロペー
  • Reonガンダム
  • イージスアルケーガンダム
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。