※この作品はR-18です。

『プリズムの瞳』 機動戦士ガンダムビルドダイバーズ   作:ビルダー林檎

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第7話 『砂塵の決闘』

2040年。1月7日。年が明け、新たな一年が始まる。

 

 彼等の行方はどうなるのだろうか。彰人や技術情報部のみんなにとっては、どんな一年になるのだろうか。技術情報部は新たな年の訪れに期待していた。

 

 退屈な始業式が終わり、3人は部室を訪れていた。今年初の部活動に少しだけ胸を躍らせる。部室に入るや否や彰人と総一郎の2人はGBAにアクセスするための準備を、料理同好会の文香は機材の点検に移る。彰人は机の上に置いてあるヘッドギアを手に取り、埃を払った。総一郎も同じく機材を丁寧に拭きあげた後、GBAにログインした。

 

 

「もうすぐ作戦領域だね。彰人君。」

 

 GBAにログインし、攻略エリアであるジャブローに向かう2人。今回は亜熱帯のジャブローエリアを選択した。真下にはジャブローの鬱蒼とした森が辺り一面に広がる。所々に見えるのは連邦軍のトーチカだろう。無機質な砲台が2人の機体を狙うが、オルタナガンダムと総一郎の新たなガンプラ。サイコ・ヅダの射撃によって破壊された。唐突に総一郎から無機質な音声通信が入る。

 

 サイコ・ヅダは総一郎がシビュラブリッツに代わる機体として作った。ヅダをベースにサイコザクのバックパックと武装が揃えられている。ビーム兵器は無いものの、火力は十分だった。なお、リミッターが解除されており速度を出しすぎると自壊する恐れがある。

 

 ここはヅダとして譲れないという総一郎なりの拘りだそうだ。武装は豊富な一方で、耐久性はやはり量産機ということもあり、凡庸なステータスに納まっている。精密な射撃を得意とするシビュラブリッツに対し、制圧射撃を得意とするのだそうだ。

 

 話は戻り、GBAの中では本来ならば通信は音声だけでなく顔も写せるのだが、彼曰くSoundonlyという響きが最近は気に入っているらしい。そのため彼との通信は専ら音声のみである。

 

昔はボタンを押すとよろしくお願いします。前に出ますなどの簡単な文章が表示されるだけだったらしい。しかしその結果迅速な連携が取れず、対戦後にファンメッセージで脅迫まがいの予告通知が送られて来たりパイロット同士で殴り合いをしたり機械をバンバン叩いたりと、トラブルが多発したのだそうだ。

 現代では犯罪を未然に防ぐ目的でこの会話も録音されるらしい。しかしプライバシーの配慮は無いのか。というまともな抗議から、会話を聞かれるなんて恥ずかしい。などの乙女チックな抗議まで多数あったようだ。その結果、無機質な機会音声として今の通信があるにいたる。

 

 

(だけどこのゲームにプライバシーも何も無いよな。)

 

 

民度はあまり高くは無い。だから仕方の無い措置であると2人は達観している。

 

「作戦領域?なんだそれ。」

 

 彰人は取り留めない考えを一旦中断し、総一郎が言う作戦領域という聞きなれない単語を思わず聞き返す。

 

「あ、作戦領域ってのは僕が今考えた。本当は攻略エリアね。」

 

あっけらかんと悪びれなく話す。

 

「…なあ、お前ってさ、本当ゲームになると性格変わるよな。」

 

 

彰人は若干呆れつつも、総一郎のこういう年相応の一面が見れるのはやはり嬉しかった。

 

 

「ん?何か言ったかい?」

 

 

良く聞こえなかったのか、彼が聞き返す。

 

(難聴系主人公かお前は。)

 

 

彰人もそう心の中でツッコミをいれるが、口には出さなかった。

 

「何でもねーよ。ほら、もうそろそろ着‥…。」

 

 瞬間、真下から閃光が走りサイコ・ヅダを貫いた。無慈悲な一撃に総一郎が作り上げた努力の結晶が、塊が、爆散しジャブローの空に散っていく。

 

「ああっ!そんな!苦労して作り上げたサイコヅダが…。」

 

 突然の事にショックを隠しきれない総一郎。それも当然である。この攻略エリアは基本敵からの攻撃はありえない。その理由として攻略エリア外で倒したとしても、昇格のポイントは加算されず、むしろ減点されるからであった。

 

 加えて、最悪違法プレイヤーとしてアカウントを凍結されるリスクがあるからだ。仮に相手が初心者でルールを知らないにしても、攻略エリア外からわざわざ一機だけを狙い撃つだろうか。答えは否である。

 

「総一郎…‥!なんだ。下に反応がある?一体こいつは…‥。」

 

 機体の接近を知らせる警告音と共に、真下の密林地帯から浮上してくる機体。特徴的な外見。まるで大型の甲殻類を思わせる異質な機体に目を見張った。全体的に赤と黒で配色されており、機体のデザインから推測するに宇宙世紀ではない。無論CEでもない。

 

 

(これはまさか。)

 

「見つけたぞぉ〜!!」

 

 そんな彰人の考えをかき消すかのようにねっとりとした声が響く。気色悪いな。と彰人は生理的な嫌悪感を覚えた。

 

「やっと見つけたぞあぁはぁぁ。」

 

 急接近する敵機体。図体の割に速い。咄嗟にオルタナガンダムは何発かビームライフルを撃ち込むが効果は無いようだ。外見から推測するにIフィールドかアンチビーム装甲を搭載しているのか。反応する暇すら与えられず敵機体から伸びた何本もの触手じみたマニュピレーターに機体を拘束される。

 

「くっ!動けない!!」

 

やられる!と咄嗟に判断したその時。

敵機体のパイロットがモニターに映る。

 

(なんだこいつは?)

 

 

……全裸の男だ。全裸で長髪のおよそ正常な人間に見えない異質の風貌の男がそこにいた。歳はいくつだ…?若そうにも見えるし30過ぎと言われても納得出来るような不気味な男。

 

「やっぱり可愛い顔した男の子じゃないか…。」

 

またねっとりとした声で話す男。気色悪い。

 

「くぅ〜疲れました!感動の嵐!ここまでの努力が実った!僕はやり遂げたんだ!」

 

 興奮した様子で全裸の男は彰人に一方的に話を続ける。話が通じない相手だと彼は一瞬で悟った。

 

(なんで全裸なんだ。変態なのか。というか俺の顔がなんで分かるんだ?)

 

 彰人は焦りの色を隠しきれない。それもその筈である。このガンプラバトルをはじめ、基本VRゲーム時は相手の顔や声は聞こえないように設定ができる。彰人も当然フレンド登録した総一郎と文香の声しか通じないはずだ。なのに何故か男は話しかけている。独り言でしかあり得ないが、相手の男は確かに彰人の顔を認識しているようだった。

 

困惑する彰人を他所に男がまたも口を開く。

「独り言じゃないよ〜。ちゃんと〜君の焦る顔や周辺の様子もバッチリ見えるよ。制服が可愛いね〜。高校生かなぁ。ふふひっ。近くに見える女の子と男の子は君の友達なのかい?その様子を見るとさっきのザクかな〜?」

 

「ザクじゃない!ヅダだ!!」

 

 撃墜され一人悔しそうに呟く総一郎をよそに、彰人は言い様のない不安に駆られた。

 

(こいつ…俺の顔だけじゃない。この部室の様子まで見えるのか?)

 

「あっ。あっ!怖がらないでね。ちょっと生の男子高校生とお話したいだけだから!凄いでしょうこのイージスアルケー僕が頑張って作ったんだよちなみに今君と会話してるこの様子も動画に生配信中でこのまま君を僕のウミヘビで電気ショックさせてリアルタイムでVRにも電流流して全世界の人々に君のトロ顔を晒してあげるからね今君のGBAのアカウントも吸い出してロックかけたからログアウトしても逃げられないしその君の可愛らしいお顔を世界中の変態に見せてあげるまで終わらないからねリアル生の男子高校生の電気ショック受けた顔なんてそうそう見れないし最高のアイドルとして僕が君をプロデュースしてあげるよ。」

 

(こいつはまともじゃない。機体が動かないのなら…!)

 

 話を最後まで聞かず、彰人はオルタナガンダムの背中に装備した遠隔兵器のビットを咄嗟に起動させる。 レギルスを参考に試験的に作ったものだが、試すには今しかない。敵もこちらを拘束している以上はたとえ機体が動かなくとも、このマニュピレーターさえ壊せれば勝機はある。そう考えていた。

 

「あれれ〜。そのガンダム。背中にビットが付いてるんだ。だけど電気ショックに耐えながら使えるのかな?」

 

 MS本体に搭載されたウミヘビがオルタナガンダムに巻きつき、電気ショックによる攻撃が始まる。

 

 

(……何だッ?身体が痺れる!?ゲームなのに?)

 

 

疑問に思うが、身体に強い電流が走り考えがまとまらない。操縦どころでは無い。身体が強張り、立っている事すら難しくなって来た。

 

 

(…‥!)

 

 せめて声を出さないと堪えるが電気ショックでビットが制御出来ない。やはり身体が痺れる。何故なのか。搭乗者の脳波によって動くビットは敵の不意を付けるという利点がある一方、意識を集中しないと使用出来ないという弱点がある。

 

 まさに今電気ショックにてその弱点を狙われており、滅茶苦茶な機動をするビット。これではマニュピレーターを狙うどころかまともに飛ぶのすら厳しい。

 

(駄目だ…‥ここで諦めたら‥…人生が色々な意味で終わる。確実に。だが、何故ゲームの中の電撃が体に‥‥?)

 

 意識が限界に達しつつある。 為す術はもう無いと諦めかけたその時。突如頭上から青い閃光が降り注ぎ、そのままオルタナガンダム本体を拘束していた敵機体を貫いた。

 

 閃光に貫かれ落下していく敵機。Iフィールドを貫くほどの圧倒的な火力に二人は呆然としていた。

 

敵機体のパイロットが惜しそうに口を開く。

 

「また君か。壊れるなぁ…‥。まあいいや、次こそは…‥。」

 

 心底悔しそうにそう言い残した後、大きな轟音と共に敵機体は爆散した。

ジャブロー上空でオルタナガンダムと真正面に対峙する見たこともない機体。頭部に備えられたアンテナの形といい、すらりと伸びた脚部といいこの機体は…ガンダムタイプだろうか。

 

 頭部には大型のVアンテナ。肩は青く滑らかに塗装されている。さらに背中には大型の羽根の様なバックパックが搭載されていた。武装も良く観察するとビームスマートガンにも見える。 先程の光はこれだろうか。

 

「まさか……Sガンダムの改修型?」

 

総一郎が考えを口に出したその時。相手のパイロットがまたも通信を飛ばした。

 

「良く分かりましたね。」

 

 

 モニター越しにどこからか声が聞こえる。 2人は当たりを見渡すが、やはり何も無い。細工をされている様には感じなかった。

 

「半分は正解ですよ…。半分は、ですが。」

 

 冷たい口調で淡々と話すその様子は、教師が生徒に教えを説くのに似ていた。

「君も……その機体は特に弄ってはいませんね。完全なオリジナルでは無い。原作をフルにリスペクトした機体!なんと素晴らしい!SEED系列なのが宇宙世紀至上主義者の私にとっては不満なのですが。」

 

先ほどの相手と同じく、一方的に畳み掛けてくる。思わず動揺する2人。

 

「彰人、敵のペースに呑まれちゃ駄目だ。」

 

 その時、調子を取り戻した総一郎が彰人に話かける。念の為に音声通信では無く、彰人の隣に立ち直接耳打ちで伝えているのだ。

 

「相手が何してくるか分からないが、あの機体、僕も見た事が無いタイプだ。気を付けて。」

 

「申し訳ない。私は…‥あぁっ!いきなり攻撃してこないで下さいっ!」

 

 ついイーゲルシュテルンを撃ってしまった。敵のビームスマートガンに亀裂が入る。まだ電撃のショックが残っているのだろう。手が震えて上手く動かない。

 

「やめなさい!ふぅー。えっと、どこから話しましたかね。そうです。貴方を攻撃した不審者ですが、ここら辺では有名な変態だから気を付けて下さい。何でも潰した機体のアカウントから個人情報を吸い取るらしいです。そしてその個人情報は誰かに売るか本人を脅すかで金を荒稼ぎしているそうです。あの様子では違法な動画を配信していたらしいですね。良くてアカウントが凍結されるか、最悪取り調べされるでしょう。いやそんなことはどうでもいいのです。何よりも私が許せないのは‥…。」

 

 また長々と話をしてくる。この人、話すのが好きなのかな。とにかく助けてもらったのなら話を聞こう。そう彰人は考えるも、警戒は解かない。

 

「可哀想なのはあのゲテモノ改造された下品なアルケーです。よりにもよってイージスとミキシングされるとは……。あ、ちなみに私の機体ですが、さっき半分正解と言いましたが、何が原作かわかりますか?」

 

 分からない。と彰人は一瞬考えた後に、答えた。こういう時は相手が求めてる答えを言うのが正解なのだろうと判断したからだ。その答えはどうやら合っていた様だ。男は嬉しそうに答えた。

 

「……ガンダムREONです。といっても雑誌じゃあない。漫画原作でEX-Sを改良したMS。原作の漫画はもう何十年も前ですが。今時古参のガノタでも知らない方が多い。」

 

はぁ。と彰人は生返事で答えた。

 

「ここまで説明したのも、君が絡まれてたのが可哀想だったのと、君の機体が原作をリスペクトした機体だったので嬉しくなったからです。もしかしてお邪魔でしたかな?」

 

いや、助けてくれてありがとうございます。と素直に彰人は彼が出来るかぎり丁寧に答えた。

 

「おい。相手のペースに呑まれてるよ彰人。」

 

 

小声だが、通る声で総一郎から叱責が飛ぶ。余程のさっき不意打ちで爆散したのを根に持っているらしい。

 

「何年か前のプラフスキー粒子を用いたガンプラバトルでは変な拳法を使ったり、バカスカビームを撃てばいいという機体が主流だったようですが‥…」

 

「私はそういうのは違うといいたい!ガンプラバトルが自由とはいえど超えてはいけないラインを考えていただきたい!ガンダムじゃなかったら別にどの作品でもいいだと?良くないのだそういうのは!ガンプラバトルはガンダムの設定に則った機体で勝負するべきだろう!!」

 

豹変したように一気に捲したてる相手。

 

(な、なんだか普通じゃ無いぞこの人も。)

 

「お…落ち着いて下さい。」

 

 

彰人は震え声で精一杯伝えた。しかし彰人は分かっていなかった。こういう相手には意見してはいけないのだ。落ち着かせようとする彼の浅はかな目論見は失敗した。

 

「あああああああ!もうやだああああ!」

 

 バルカンで損傷したビームスマートガンを投げ捨て幼児の様な怒号をあげながらビームサーベルを抜いて襲いかかってくるREON。モニター越しに殺気を発露させているのが分かる。

 

 

「最近のGBA殺伐としすぎだろ……動物園かよ。」

 

 

総一郎も思わず呆れる。溜息が聞こえた。彰人は威圧されながらも百雷に着剣されたサーベルで応戦。切る。突く。避ける。さらに小刻みに移動しながら何度も斬り結ぶが、何かがおかしい。鍔迫り合いになっても手応えが無いのだ。

 

(なんだこいつは‥…?)

 

 防ぎきれなかった敵のサーベルにより、斬られている感覚がある。対してこちらの攻撃は不自然なほどまでに避けられている。体の震えだけじゃない。剣撃が逸らされている?

 

 

「彰人、こいつはさっき昔の機体の改修型だと言っていた。もしかすると、インコムに砲塔ではなく直接サーベルを搭載している可能性がある。サーベルは一本じゃ無いはずだ。接近戦は避けた方がいい。」

 

「……!そうか。それなら今度こそビットで気を散らすぜ!」

 

 オルタナガンダムは前面に展開したフロントバーニアを噴出させ咄嗟に距離をとりビットを展開しようとする。しかしビットはぴくりとも展開せず無反応。不自然なまでに「反応」しなかった。

 

(……こいつは!電子戦装備か!!)

 

総一郎が慌てて叫ぶ前に相手がぶつぶつと呟く。

 

「ビットだけではない!ファンネルやドラグーンなどは使わせない!これがアンチファンネルシステムなのです。」

 

“AFS”(アンチファンネルシステム)

ガンダムREONに登場する特殊兵装。ローゼンズールのサイコジャマーのシステムを引き継いでおり、ファンネルをはじめとする脳波で動く兵器、サイコミュ系列の兵装を無効化出来る。

 

「はあぁっ!これで終わりですよ。」

 

 距離を詰めるREON。勝利を確信したのか、インコムの不可視化も解いている。恐らくはエネルギーを節約するためか。舐められたものだ。その傲慢さは彰人は苛立たせた。インコムに搭載したサーベル一本。両手で携えたサーベル一本。

 

 インコム・サーベルは見た限り自由自在に動くがこれまでに何度も斬り合っても予備のサーベルを出す気配はない。恐らくは元々射撃に特化した機体であり格闘戦は想定していないのか。つまりサーベルは合計2本だけの可能性がある。

 

——なら勝機はある。

 

(ビットが使えない……?いや、逆に考えるんだっ!ビットにはもう頼らない!こいつは純粋に格闘戦で倒す!)

 

はぁ、と大きく深呼吸し彰人は覚悟を決めた。

 

体の震えが止まる。取り回し辛い百雷をREONに投げ、その隙にオルタナガンダムの予備のサーベルを一本。さらにもう一本腰に携えた羽々斬刀を抜刀する。ビームサーベルと実体剣の二刀流の構えだ。

 

(決める……!)

 

集中。狙うはコックピット。金色に輝くオルタナガンダムが走る。インコムが迫る。避けずにわざと機体のヤタノカガミを集中展開させた右肩に当てインコムの勢いを殺す。有線部分をイーグルシュテルンで撃ち落とす。有線部分が千切れ落ちるインコム。こちらに突き出されたサーベルを羽々斬刀で捌くが、捌ききれず斬られる。空中に右腕が飛ぶ。だが構わず左腕のビームサーベルを振るう。

 

(そこだっ!)

 

一閃。REONの胴体を溶断する。勝利を確信したのも束の間。REONの頭部が異常なほどに蒼く輝く。

 

(……!あの武装は!)

 

 

まずいと判断し一瞬飛ぶ。だが遅い。頭部から発射された蒼く煌めく閃光。ハイメガキャノンにより両足が蒸発した。発射された閃光がジャブローのジャングルを焼いていく。煙を上げながら樹々が燃え広がり、ジャブローの湿原地帯を赤く染め上げる。

 

 

(先程の青い光の正体はこれかっ!)

 

 

 だが。彰人はさらに一枚上手だった。着地点には先程投げた百雷が落ちている。ライフルに弾倉は入ったまま。オルタナガンダムは着地した後左腕のサーベルから手を放し百雷を掴んだ。そのまま弾が撃ち切れるまでREONに向かって引き金を引き続ける。

 

 敵がさらに防御兵装を有していたならば、勝ち目はもはや無い。しかし勝てる手段があれば、最後まで諦めない。暫くすると全弾撃ち尽くしたのか、百雷の発射音が止んだ。

 

 百雷の先端部から排出された粒子の残滓と煙が晴れた後には…そこにはもはや原型がもはや判別不可能な、ただの残骸が転がっていた。

彰人は勝ったのだ。

(はあー…‥。はあー‥…。)

 

 

 息が荒くなる。危なかった。先程のMSとの連戦に加え、両方ともまともな機体とパイロットでは無かった。それが余計に彰人の精神を疲弊させるのだ。

 

「彰人は強いね。またビットが封じられた時は今度こそ負けたと思ったけど。」

 

 一瞬でもパートナーを信じてやれなかった総一郎は自分と彰人両方に対して申し訳ないと反省した。

 

「いや、俺も変なのに絡まれやすいな。悪い。捲き込んじまって。」

 

素直に謝る彰人。

 

「その。なんだ。サイコ・ヅダは、もう使えないのか?」

 

申し訳そうに心配する彰人。彼のその優しさを感じつつ。

 

「いや、大丈夫だ。問題無いよ。また新しいのを作ればいいさ。」

 

彼はなんて事ないよと言わんばかりに軽く返した。

しかしサイコ・ヅダは彼にとって自信作だったのだ。本当は血涙を流したいくらいに悔しかったのだろう。口調で伝わる。

 

だが気を抜き警戒を怠ったその結果、イージスアルケーに瞬殺と言ってもいいほど勝負にならなかった。しかしその心の内は彰人には内緒にしようと、総一郎は密かに思った。

 

第8話に続く

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