※この作品はR-18です。

異世界は『アバンの書』とともに   作:リュウコウ

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夜一の家族の所持金[29人] 王金貨20枚
白金貨18枚、金貨47枚、銀貨25枚、銅貨223枚
夜一の手持ち
白金貨1枚、金貨8枚、銀貨11枚、銅貨50枚
帝姫の手持ち
白金貨1枚、金貨7枚、銀貨20枚、銅貨120枚
レオナの手持ち
白金貨13枚、金貨15枚、銀貨40枚、銅貨100枚
エルゼの手持ち
白金貨5枚、金貨10枚、銀貨55枚、銅貨90枚
リンゼの手持ち
白金貨13枚、金貨10枚、銀貨60枚、銅貨80枚
八重の手持ち
白金貨13枚、金貨10枚、銀貨30枚、銅貨5枚
スゥシィの手持ち
白金貨1枚、金貨14枚、銀貨28枚、銅貨68枚
アルマの手持ち
白金貨1枚、金貨12枚、銀貨27枚、銅貨68枚
シャルちゃんの手持ち
白金貨1枚、金貨0枚、銀貨0枚、銅貨9枚
ユミナの手持ち
白金貨2枚、金貨0枚、銀貨0枚、銅貨0枚
クインズウェイの手持ち
白金貨2枚、金貨4枚、銀貨15枚、銅貨100枚
オハナの手持ち
白金貨1枚、金貨10枚、銀貨21枚、銅貨121枚
フェルクリンゲンの手持ち
白金貨2枚、金貨5枚、銀貨10枚、銅貨100枚
タイシェトの手持ち
白金貨2枚、金貨4枚、銀貨13枚、銅貨163枚
ムルマンスクの手持ち
白金貨3枚、金貨6枚、銀貨40枚、銅貨104枚
レムの手持ち
白金貨1枚、金貨2枚、銀貨0枚、銅貨0枚
レネの手持ち
白金貨0枚、金貨0枚、銀貨0枚、銅貨60枚
夜一のパーティーの所持金
白金貨16枚、金貨13枚、銀貨45枚、銅貨90枚



銅貨10枚=銀貨1枚
銀貨10枚=金貨1枚
金貨10枚=白金貨1枚
白金貨10枚=王金貨1枚

銅貨1枚=1000円
銀貨1枚=1万円
金貨1枚=10万円
白金貨1枚=100万円
王金貨1枚=1000万円

重太郎はいません。
妹・十重がします。

エンデはいません。
ヘスティアがいます。

エルゼはレオン将軍ではなく、
オハナさんに教えを



12 神国イーシェンとバビロンの遺産・庭園と日常

神国イーシェン組 僕を始め、琥珀(コハク)と帝姫とレオナとユミナ、エルゼとリンゼと八重、スゥシィとアルマとアリエルとリーンとポーラ。

 

メイドのお仕事 オリガとミアとシャルちゃんとレネとキャロルとクリスとヒビキの7人はラピスとセシルに付いてお仕事

7人の内キャロルとクリスと響は戦闘訓練も。

 

冒険者組、クインとオハナとフェルとタイシェトとムルマとレム

 

~~~神国イーシェン~~~

 

メンバーは僕を始め八重(ヤエ)に、琥珀と帝姫にレオナとユミナ、エルゼ・リンゼ姉妹、スゥシィとアルマとアリエルとリーンとポーラだ。

【ゲート】を抜けて(ヌケテ)八重の案内に従い、鬱蒼(ウッソウ)とした森の中を抜けていく。だんだんと木漏れ陽(コモレビ)が差してくるようになったかと思うと、急に前方の視界が開けた。

 

「おお.....」

「こ....この光景って、夜一。私達が社会科の授業で習った、江戸だよね」

「そうだな」

「夜一殿(ヤイチドノ)と帝姫殿(ミイドノ)!拙者(セッシャ)の故郷の名前を知っているでござるか?確かに、あれは、オエドでござるが?」

「その事は、王都に戻ってからで」

「......?」

「「はははははっ」」

 

僕と帝姫は、渇いた声を上げた。

しかし、僕と帝姫が時代劇や習った町の造りとはだいぶ違う(チガウ)ことがわかった。

第1に、あの町は城砦(ジョウサイ)都市だということ。周りをぐるりと長い堀(ホリ)が囲み、白く高い石垣(イシガキ)が町への侵入(シンニュウ)を拒む(コバム)。石垣の上には歩哨(ホショウ)が立ち、所々に建つ櫓(ヤグラ)には弓兵が控えている。周りの水田のあたりにもちらほらと家が建っているが、城壁(ジョウヘキ)の中はもっと密集して建ち並んでいるように見える。

イーシェンは決して大きな国ではない。一応国王がいるらしいのだがあまり政治には関わらず、地方の領主が好き勝手に幅(ハバ)をきかせている。

主(オモ)だった9人の領主が地方を治め、なんとか形の上では国王をトップにして、国としては成り立っている。

 

「それで、八重。9人の領主って?」

「おほん。夜一殿と帝姫殿、ご教授いたそう。まず、島津(シマヅ)、毛利(モウリ)、長宗我部(チョウソカベ)、羽柴(ハシバ)、織田(オダ)、武田(タケダ)、徳川(トクガワ)、上杉(ウエスギ)、伊達(ダテ)の9人でござるよ」

「.....夜一、社会科の歴史で習った名前ばかり」

「そうだな、帝姫。イーシェンは戦国時代?」

「どうしたでごさる?夜一殿に帝姫殿。拙者の家があるのは、徳川家が治める領地でござるよ♪」

「で、アリエルとリーンが行きたい古代遺跡(イセキ)ってどこにあるんだ?」

「場所はわからないわ。確か....」

「書籍で拝見した名前は『ニルヤの遺跡』だった」

「八重、知ってるかな?」

「ニルヤ......?聞いたことがあるような、無いような.....。父上知っているやもしれませぬ」

 

とりあえず八重の先導で町へと歩いていく。大きな堀に渡された木製の橋を渡り、城壁の中に入った。

町中に入ってみると、限りなく和風に近い世界であった。

行き交う人々も侍姿(サムライスガタ)に着物姿、町人のような者もいれば、着流しの素浪人(スロウニン)までいた。

月代(サカヤキ)をしてちょんまげをしておらず、ポニーテールのように結って(ユッテ)いるだけ。

 

「うわあ、なにアレ?人がなんか担いでる(カツイデル)わよ?」

 

エルゼが道の向こうから、駕籠(カゴ)を担いでやって来る2人組に目を奪われていた(ウバワレテイタ)。

 

「あれは駕籠屋だね。お金を払って(ハラッテ)アレに乗るんだ。辻馬車(ツジバシャ)の代わりだよ」

「ねぇ、どうして?どうして?」

「イーシェンは、元いた地球(バショ)に近いから、起伏が多く平らな道は少ないから、駕籠を使うんだ」

「そうなんだね」

 

僕と帝姫が此方(コッチ)の生まれではないことを伝えていて、地球(ムコウ)の生まれであることも伝えているから、理解してくれている。

 

「帝姫さん、あそこの人、木の靴(クツ)を履いて(ハイテ)いますよ?」

 

あっちでは、レオナが帝姫に疑問を問いかける。

 

「木の靴?どれ....、あれは下駄(ゲタ)だね」

「靴を履いてないのですね」

 

帝姫がレオナの疑問に答える。

 

「あっちの塔(トウ)にはなんであんな鐘(カネ)がぶら下がっているのですか?」

 

次に、スゥシィが聞いてきた。

 

「あれは火の見櫓(ヒノミヤグラ)に半鍾(ハンショウ)って言ってね」

「うんうん」

「火事を見つけたら鳴らして、周りに報せるんだ」

 

次に、アリエルとリーンに聞かれた。

 

「この、綺麗(キレイ)な音はどこから?」

「あれから、聞こえてきますね」

「風鈴(フウリン)だよ。風を楽しむんだ」

 

八重の案内で神社の鳥居を横切り、竹林を抜けると、開けた場所に塀(ヘイ)に囲まれた大きな屋敷(ヤシキ)が現れた。

それを見た帝姫が声を上げる。

 

「夜一のお爺様の御屋敷より小さい」

 

帝姫は声が漏れていたので、口を抑えるが遅かった。が僕以外、八重の家を見て驚いていた。

 

「九重(ココナエ)真鳴流(シンメイリュウ)剣術(ケンジュツ)道場 九曜館(クヨウカン)」と書かれた看板が下がる大きく立派な門をくぐる。

 

(帝姫。お祖父様の御屋敷と比べたらダメだよ)

(次は、気を付けるよ。夜一)

 

その玄関(ゲンカン)に着くと、八重は大きな声を張り上げた。

 

「誰(ダレ)かいるか!」

 

しばらくすると奥(オク)からパタパタと足音を立てて、黒い髪(カミ)を後ろでひとつにまとめた女中さんがやって来た。年齢(ネンレイ)は二十歳(ハタチ)くらいか?

 

「はいはい、只今(タダイマ)......まあ、八重様!」

「綾音(アヤネ)!久しいな!」

 

綾音と呼ばれた女中は驚き(オドロキ)ながらも笑顔(エガオ)で駆け寄り(カケヨリ)、八重のく手を取った。

 

「お帰りなさいまし、八重様!七重(ナナエ)様!十重(トエ)様!八重様がお戻り(オモドリ)に!」

 

綾音さんが奥に向けて声をかけると、再びパタパタと足音が響き(ヒビキ)渡り、30代後半で薄紫(ウスムラサキ)の着物を着た優しそうな女性と八重を小さくした女の子が姿を現した。八重が歳を重ねると七重さんのように綺麗になるだろう。

七重さんの後ろから顔を出していた女の子は、八重を小さくした感じで、八重よりしっかりお金の管理はしっかりしていそう。

 

「母上!只今帰りました!」

「八重......よくぞ無事で.....お帰りなさい」

「八重お姉様。ご無事でしたか?」

 

久しぶりの再会に、母は娘をしっかり抱き(ダキ)寄せる。

 

「八重、此方(コチラ)の方たちは?」

「あ、拙者の仲間たちでお世話になっていて、此方の夜一殿は未来の旦那様でござるよ♥」

 

八重は自分で紹介して頬を赤らめ、イヤンイヤンしていて、七重さんに目をやると、

 

「あらあら、あなたお名前は?どちらのご出身?ご両親は?ご兄弟姉妹は?」

「お兄ちゃんが八重お姉様と結婚するの?私もお兄ちゃんの候補になれるの?」

 

「「「「「女の子ホイホイ!」」」」」

「「「「「女の子ホイホイ」」」」」」

 

七重さんの立て続けの質問に戸惑っていると、綾音さんが。

 

「七重様!十重様!居間へ上がってもらいましょう」

「それもそうね♪」

「八重お姉様の旦那様♪お話を詳しく」

「ときに母上、父上はどちらでござるか?城の方にでも?」

「父上は此方にいません。殿.....家泰(イエヤス)様と共に合戦場へ向かいました」

「合戦ですと!?」

 

八重は驚きのあまり声を荒らげ(アララゲ)母親を凝視(ギョウシ)する。

 

「いったいどこの領主と!?」

「武田です。数日前、北西のカツヌマを奇襲(キシュウ)にて落とし、今はその先のカワゴエに向かって進軍しつつあるそうです。旦那様(ダンナサマ)がカワゴエの砦(トリデ)へ向かいました」

 

八重の問いを七重さんに代わり、綾音さんが答える。どうやら隣接地(リンセツチ)の領主が突然攻めてきたらしい。

 

「武田は何故(ナゼ)そんな侵略(シンリャク)を急に.....。武田領主の信玄殿(シンゲンドノ)が、そのような愚行(グコウ)を犯す(オカス)とも思えぬが.....」

「最近、武田の領主に妙(ミョウ)な軍師が付いたそうです。山本(ヤマモト)某(ナニガシ)と言う者だそうで。色黒隻眼(セキガン)で不思議な魔法(マホウ)を使う人物だとか....その者に妙なことを吹き(フキ)こまれたのやも知れませぬ」

 

八重を始め、帝姫たちは真剣に聞いていた。

僕はというと、十重ちゃんに捕まっていた。

 

「それでそれで、夜一様は八重お姉様とどのような状況で出会われたのですか?」

 

十重ちゃんは、目をキラキラしている。

 

「あれは、町中を歩いている所に、狼藉者(ロウゼキモノ)を2人門兵に付き出した次の日だったんだ」

「うんうん」

「そこを狼藉者の仲間たちに囲まれていて、そこを僕たちが助けたんだよ♪」

 

帝姫は、七重さんが語る話を聞きながら、

 

(夜一。十重ちゃんと話してないで、山本って軍師、勘助(カンスケ)だよね)

(だよね。武田24将の1人だ)

「何々、夜一お兄様。相手の軍師さん、知ってるの?」

 

僕と帝姫と十重の話に、八重たちが振り返る。

 

「夜一様は、軍師の方を知っているのですか?」

「歴史の授業で習っただけだが。レオナ」

「帝姫も知っているみたい」

「夜一と一緒。授業で習っただけ。ユミナ」

「夜一殿と帝姫殿。拙者たちは、知ったいるだけで力強いですよ」

「それで戦況はどのなの?」

「なにぶんにも急なことだったので、充分(ジュウブン)な戦力を集められず、このままではカワゴエの砦が落とされるのも時間の問題だと思われ」

「それでは父上が.....」

 

綾音さんの口から漏れた状況に八重が愕然(ガクゼン)とする。

 

「苦戦しているようなら、私たちが行こうか?」

 

黙って聞いていたアリエルとリーンが切り出す。

 

「夜一殿!カワゴエ砦の近くの峠(トウゲ)なら、拙者、行ったことがあるでござる!どうか.....!」

「わかった、行こう。スゥシィとアルマ。これから僕たちは戦場へと行かないといけないから、ここで十重と一緒に待っていてくれないか?」

「私とアルマは、夜一のお荷物なの?」

「それは、違うよ。スゥシィ」

「なら、どうしてです。夜一お兄さん」

「そうじゃないよ、アルマ。僕たちが負けることはないけど、万が一があるかもしれない。だから、ここで十重と一緒に守っていてほしいんだ」

 

スゥシィとアルマは、頷いてくれた。

 

「夜一お兄様は、八重お姉様と違って魔法を使えることをご存じなのですね?」

「その分、剣術はからっきしだろ?十重」

「はい」

「スゥシィとアルマと一緒に、ここを守っていてくれ。十重」

 

十重が頷いたのを確認してから、もう一度、八重と【リコール】を行い、カワゴエの近辺の峠へと【ゲート】を繋げて、僕と帝姫とレオナとユミナ、エルゼとリンゼにアリエルとリーンとポーラはオマケで、移動する。

 

~~~十重の部屋~~~

 

七重さんは奥へと戻り、綾音さんはお屋敷の仕事に戻り、十重の部屋にいるのは、十重とスゥシィてアルマの3人。

 

「それで、スゥシィさんにアルマさん。夜一お兄様とはどのような方ですか!」

「どのような、と言われても。のぉ、アルマ」

「見ての通りかと思いますが、十重ちゃん。貴女も、夜一お兄さんの「女の子ホイホイ」にかかりましたでしょ。女中の綾音さんも」

「確かにかかりました。あの、女の子や女性を惹き付ける(ヒキツケル)フェロモン」

 

スゥシィとアルマが、アレに当てられては女性は正気(ショウキ)を保てません。とうんうん頷く。

 

「大なり小なり、アレに当てられれば、夜一に好意を抱くからのぉ。アルマ」

「はい。スゥシィちゃん。お姉ちゃんもアレに当てられて、夜一お兄さんの彼女ですから」

「アルマは、姉妹揃って夜一の彼女なのですね?」

 

アルマは頷く。

 

「それなら、私と綾音も夜一の彼女になるぞ」

 

十重が意気込んだ時、襖(フスマ)が開いて、綾音さんが飲み物を運んできた。

 

「綾音!夜一お兄様が帰ってきたら、2人一緒にアタックよ!」

 

~~~カワゴエの砦近くの峠~~~

 

【ゲート】を抜けた峠の先から見えたのは黒煙(コクエン)を上げ、攻められている砦の姿だった。

無属性魔法【ロングセンス】を使い、視覚を砦へ飛ばす。小高い山の上にそびえ立つ砦はなんとか敵兵を防いでいるものの、いたる所から火の手が上がる。

迫り来る敵。絶えることない火矢。飛び交う隙に敵の兵士たちが砦の城壁を登ろうと群がる。

 

「『周雷(シュウライ):家泰軍』」

 

黄雷が無数、砦の上部に集まっていた。

 

「アリエルとリーンがいたら、此方(コチラ)は大丈夫だろうけど、琥珀も頼んだよ」

『わかりました。主様』

 

【ロングセンス】を展開し、1キロ先を視認(シニン)する。砦の手前、林の中に【ゲート】を開く。

 

「みんな、行ってくる」

 

【ゲート】を抜けて林の中に転移する。戦場特有の雄叫び(オタケビ)や怒号(ドゴウ)が飛び交い、尋常(ジンジョウ)じゃない空気が辺りに漂って(タダヨッテ)いた。焦げ臭さ(コゲクササ)に混じって血の臭い(ニオイ)も漂ってくる。

【ロングセンス】で視覚を再び飛ばす。が、どこも敵だらけで転移できる場所がない。仕方がないので転移しやすい場所を探していく。砦の側面から少し離れたところにちょうどいい場所を見つけた。

 

「【ゲート】」

 

僕は、転移してから直ぐ、二振りの精霊龍牙刀を【ストレージ】から取り出し、2人の弓兵を十字(上下左右)に二刀両断する。

二刀両断したことにより、鬼の仮面が割れ、周囲に死臭(シシュウ)が漂うので、周りを確認すると、原因が判明した。この鬼の仮面を被っていた2人の弓兵だった。

 

「なんだったんだ、こいつら....」

 

もしかして、あの鬼の仮面で操られていた?

 

「死体を操れる魔法......ゲームとかでよくあるネクロマンサーっていうアレか?」

 

動きが機敏(キビン)過ぎたから、ゾンビ兵ではないな。この事を早く砦の中に入り、状況を判断してから対策を立てた方が良さそうだ。

【ロングセンス】で砦の中に視覚を飛ばし、驚かせるかもしれないが

早いに越したことがない。

 

「『瞬雷:砦上部』」バリッ

 

 

**********

 

 

「ッ!何者だ!?武田の手の者か!?」

 

家泰軍の兵士が、四方から刀を構える。

いきなり、雷(イカズチ)と共に現れたら、驚くよね♪

 

「僕たちは、貴方たちを助けるためにやって来ました」

「本当にお前を信用しても大丈夫なんだろうな?」

 

僕は頷き、彼女たちを此方に呼ぶために【ゲート】を繋ぎ、次々現れる。

 

「八重様、八重様ですか?」

「はい。貴方は確か、父上の道場に通っていた」

「はい!師範(シハン)は、家泰様の所に居られます」

 

八重は、父親の無事を確認してホッとしている。

辺りを見回すとそこら中に怪我人(ケガニン)がうずくまり、動けなくなっている。

 

「『点雷:家泰軍』」

 

黄雷が砦で輝いていた。マップアプリに【マルチプル】を【エンチャント】し、『点雷』も【エンチャント】して、【プログラム】を開始する。

 

「【プログラム開始/発動条件:画面の『黄雷』がターゲット/対象捕捉(タイショウホソク):「マルチプル」にて『黄雷』を全て/プログラム終了】」

 

画面の黄雷をひとつ触れると、全部の黄雷が捕捉される。【マルチプル】の魔法陣の準備完了。

 

「【光よ来たれ、キュアヒール】」

 

魔法陣から柔らかな(ヤワラカナ)光が降り注ぐ。それが怪我人を包み、対象者たちの傷を回復していく。

 

「何時見ても、あんたの魔法は規格外だね♪」

「それこそ、私とお前が結婚していたら、夜一と結婚できなかったから、規格外くらいで狼狽え(ウロタエ)てどうする。リーン」

「そうだったね、アリエル。しかし、この砦にいる怪我人、全員を回復魔法は凄い」

「凄いでござる。夜一殿の回復魔法」

「あくまで傷が塞がっただけですので、あまり無理をしないようにお願いします」

 

家康軍を取りまとめている軍将(グンショウ)さんが部下たちに伝令している。

 

「ところで敵兵に混じっている、鬼面兵(キメンヘイ)たちは何なんです」

 

気になっていたことを僕は軍将さんに聞いてみる。

 

「わからない。あの仮面を壊す(コワス)まで槍(ヤリ)で刺され(ササレ)ようが、腕(ウデ)を斬られようが動きを止めない。まるで生ける屍(シカバネ)なんだ」

 

軍将さん体を震わせながら答える。やっぱりゾンビだね。隣で聞いていた帝姫が僕に話しかける。

 

(これって、ゲームでよくある洗脳?それで、鬼面が死体に取り憑き、操っている?)

(......鬼面は受信側で、送信側があるか。.....)

 

リーンとアリエルが城壁から乗り出し、眺めながら戦場のやり取りを見ていて、鬼面兵を睨み(ニラミ)つけてなにやら考え込んでいた。

 

「ふうん.......。何かの無属性魔法か....で、なければ魔道具(アーティファクト)かしらね」

「そうだね。無属性魔法の反応が感じられないから」

「リーン、アリエル。アーティファクトって?」

「古代文明の遺産、強力な魔法の道具のことよ」

「夜一お兄様のそれもアーティファクトではなくて?」

「アーティファクトかどうかわからないけど、神様に間違いで神雷(シンライ)を落とされ、僕と一緒にスマートフォンも壊れ、体と一緒にスマートフォンと共に神様が直してくれたから、これは魔道具(アーティファクト)ではなくて、神の叡智(フェロスソフィア)だよ」

 

リーンとアリエルに僕が手に持っているスマホを指されたので、その様に答える。

 

「まあ、なんにしろ鬼面兵の奴らは厄介(ヤッカイ)だ。やっぱり一気に殲滅(センメツ)した方がよさそうだね」

「......なんだって?」

 

不思議そうに軍将さんが僕を見ているのをよそに、スマホのマッブアプリで「鬼面の武田兵」と検索する。画面上の砦の周りに『周雷』の敵探知『紅雷』の光が現れ、そのひとつをタッチすると、全てのターゲットがロックオンされた。

 

「な、なんだあれは......?」

 

誰かのつぶやきに目を向けると、空に光を放つ小さな魔法陣が無数に浮いていた。【マルチプル】によるロックオン完了。

空に手をかざし、魔力を集中、呪文(ジュモン)と共に一気に解放する。

 

「【光よ穿て(ウガテ)、シャイニングジャベリン】!」

 

カッ!と、全ての魔法陣から光の槍がそれぞれのターゲットを目指して降り注ぐ。まるで光の雨のように。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ、と地響き(ジヒビキ)が鳴り、土煙(ツチケムリ)と光の粒が火花のように弾け(ハジケ)飛んだ。まばゆい光彩陸離(コウサイリクリ)の煌めき(キラメキ)が、弾けては消え、弾けては消える。

やがて光の雨が上がったあとには武田勢のほぼ半数以上が倒れ、動けなくなっていた。

そのまま検索対象を「武田兵」としてロックオンし直す。

 

「『芯雷:強』」

 

残りの一般兵たちも突然(トツゼン)身体が雷にでも射たれた(ウタレタ)かのように痺れて(シビレテ)、その場に崩れ落ちる。何名かは護符を持っていたのか崩れ落ちはしなかったが、それでも痺れて動けないらしい。

 

「と、こんなものかな」

 

しばらく軍将さんを始め砦の徳川軍は呆然としていたが、状況が把握(ハアク)できてくると、皆(ミナ)、一斉(イッセイ)に勝鬨(カチドキ)の雄叫びを上げた。喜びと安心とが混じり合った声が砦のいたるところから聞こえてくる。

 

「今のは......君がやったのか......?」

 

軍将さんが掠れる(カスレル)声で尋ねて(タズネテ)くる。信じられないものを見るような目で砦の周囲に倒れる武田兵を眺めていた。

 

「なんかもう驚くのが馬鹿(バカ)らしくなってきたわよね」

「でも、いまさらだけど、夜一さんと帝姫さんにレオナも、元々此方(コッチ)の世界の人じゃないんだね」

 

リンゼも姉の発言に同意しながら、僕たち3人のことを尊敬の眼差しで見ていた。

 

~~~砦の天守閣~~~

 

「まずは此度(コタビ)の助太刀(スケダチ)、心から御礼(オンレイ)申し上げる」

 

上座に座る恰幅(カップク)のいい40代前半のちょび髭(ヒゲ)男が深々と頭を下げた。徳川(トクガワ) 家泰(イエヤス)そのひとである。この砦がある領主であり、9人いる諸侯(ショコウ)の1人だ。

 

「いえ、此方(コチラ)に出向いたのはたまたまのことです。どうかお気になさらないでください」

 

僕らの前座り、家泰さんと対峙(タイジ)しているのはユミナだ。誰が家泰さんと対峙するかでなやんだ。この世界では、僕と帝姫とレオナの3人は、怪しまれるので、ベルファストの王女という立場を取り、あくまで僕たちはその護衛、ということにした。その方が向こうにもわかりやすい。

八重はユミナの護衛の1人ということにした。その繋がりでここに助太刀に来たという形にした。

 

「それにしても八重がユミナ姫(ヒメ)の護衛とは.....驚いたぞ、まったく」

 

家泰さんの横に座るがっしりとした40代後半の偉丈夫(イジョウブ)が九重(ココノエ) 重兵衛(ジュウベエ)、八重の親父(オヤジ)さんだ。今は徳川家の剣術指南役を務めている。

 

「して、そちらの....我(ワ)が砦を救っていただいた彼(カレ)は......?」

 

家泰さんがユミナの後ろに控える(ヒカエル)僕に視線を向ける。興味津々(キョウミシンシン)といった目をしている。

 

「この方は鳴神(ナルカミ) 夜一さんと申しまして、私の護衛で、私は彼の3番目のお嫁さんです」

 

ほぉ~、と感心しながら此方を見据えて、家泰さんから問いかけられた。

 

「今、姫が口にした3番目というのは、どういう意味かな?」

「元々僕は、此方の帝姫と元の世界で婚約していたのですが、神様の間違いで『神雷』を落とされ、此方の世界に転生させてもらいました、その時、此方のレオナも一緒に来ました」

「それで、姫が3番目というわけか....。しかし、姫の後ろには、他にも女性がいてるが?」

 

その事について、僕が黙っていると、帝姫が手を上げる。

 

「そなたは確か、帝姫だったか、答えてみよ」

「はい!此方の夜一が行く先々で、女性が引き寄せられた結果、私たちと王都の屋敷で留守番をしている方たちもいてます」

 

家泰さんは、満足したみたいだった。

 

「ところでひとつお聞きしたいのですが......『ニルヤの遺跡』なる場所をお知りではないでしょうか?我々はそこを目指してイーシェンへ来たのですが......」

「ニルヤ......?」

 

帝姫の問いかけにしばし考え込んでいた家泰さんであったが、やがて何がに思い当たると膝を叩いた。

 

「ああ、『ニライカナイの遺産』があるという遺跡のことですな。私は詳しくは存じませぬが.....。重兵衛どうだ?」

「確か.....ニルヤの遺跡は島津の領地にあったかと。しかしあそこは海の底ですぞ。入ることさえままならないと思いますが......」

「弐雷(ニライ)....海那蛇(カナイ)?.....海の底!?」

 

なんだ....と、海底神殿(シンデン)?その島津領に行く前にやっておかないとね♪

 

「武田軍ですが、あれで引き下がると思いますか?」

 

僕が家泰さんに尋ねると、彼は腕を組む。

 

「確かにまた態勢を整えて攻めて来るやもしれぬ。鬼面兵たちをさらに増やし、大砲(タイホウ)を持ち出してくるかも.....」

 

鬼面兵を増やしても殲滅できるけど。

 

「しかし、此度の鬼面兵といい、突然の侵略といい、わけがわからぬ。武田の領主、真玄殿は武田四天王と呼ばれる4人の武将を率いる猛者(モサ)ではあるが、今回の戦いはどこか真玄殿らしくないように思える。やはりあの噂は本当なのだろうか.....」

「噂.....ですか?」

 

僕は家泰さんに聞き返す。家泰さんの代わりに重兵衛さんが答える。

 

「すでに真玄殿は亡く(ナク)なっているという噂があってな。そしてその死体を操り、武田軍を意のままにしているのが、闇(ヤミ)の軍師・山本 完助(カンスケ)だと」

 

(ねぇ、夜一。勘助の漢字が違うけどね)

(そうだね。帝姫)

 

「山本 完助.....」

「あの鬼面兵をあり得ない話じゃないわね。アリエル」

「確か、死体を操ることに特化した魔法、もしくはアーティファクトが手に入り、その完助が使っているね。リーン」

 

重兵衛さんの話を聞いて、リーンとアリエルが考えを述べる。確かにあれほどの死体を操るなんてのは、そう簡単にできることではない。

 

「その山本 完助を捕まえ(ツカマエ)られれば丸く収まりますかね?」

「それはそうかもしれんが.......。あくまで真玄殿が亡くなっているというのは噂に過ぎないからな。それに完助は武田の本陣(ホンジン)、ツツジガサキの館にこもって出てこないらしい」

「リーン。確か背中の羽を光魔法で見えないようにしているんだよね?それって身体全体を見えないようにすることもできるの?」

「できるわよ。光を迂回(ウカイ)させて対象物を見えなくしているだけだから、触られる(サワラレル)とバレちゃうけど」

 

やっぱり姿を透明化(トウメイカ)することもできると。

 

「アリエル。気配を遮断する魔法ってある?」

「できるよ。忍び(シノビ)込むにしても人数は限られてくるよ。夜一」

 

リーンとアリエルの話を聞いたこの時点で僕はすでに本陣への潜入を考えていた。

 

「潜入、する気ですか?」

 

リンゼが僕らを怪しんで口を開く。

 

「本当にその山本 完助が黒幕なら、それが一番だと思うんだ。これ以上被害を出さないためにも」

「それはそうですが,......」

「問題はそのツツジガサキ?の場所ですね。八重は行ったことある?」

「いや、拙者はござらん。父上は?」

「ワシもないが......それがどうかしたのか?」

「ツツジガサキに行ったことがある者がいれば、夜一殿の魔法を使い一瞬(イッシュン)転移できるのでござるよ」

「なんと......!」

 

驚いた重兵衛さんと家泰さん。

 

「ツツジガサキへの案内、私が務めましょう」

 

どこからともなく天守閣の間に声が響き渡る(ワタル)。ここにいる誰のモノでもない声。僕は【ストレージ】から龍宝(リュウホウ)・精霊龍牙刀(セイレイリュウガトウ)を二振り取り出し、声がした天守閣を周回する高欄(コウラン)付きの周り廊下に刃(ヤイバ)を向ける。

 

「誰だ!」

 

セリフを取られた。重兵衛さんに。

高欄付きの廻り縁(マワリエン)の陰(カゲ)から1人の人物が姿を現す。黒装束の忍者が。

顔を覆う黒い布を外すと、そこには顔立ちの整った美人さんが現れた。女忍者....いや、くノ一だったか。

 

「武田四天王がひとり、高坂(コウサカ) 政信(マサノブ)様配下、陰神(カゲカミ) 椿(ツバキ)と申します。徳川 家泰様宛(アテ)の密書をお持ちいたしました」

「高坂殿の!?」

 

床(ユカ)に膝をつき、懐から密書を取り出してその場に置くと、椿さんはそこから一歩下がった。床に置かれた密書を椿さんから目を逸らさず(ソラサズ)に重兵衛さんが密書を手に取り、家泰さんに手渡した(テワタシタ)。

その間、僕は椿さんに『芯雷:椿』を放つ。

密書を開き、それを読んでいく家泰さんの顔が、驚きから厳しいものへと変化していく。

 

「殿。密書にはなんと?」

「どうやら噂は本当だったらしい。武田軍は今や傀儡(カイライ)の軍と化しているようだ」

「なんですと......!?」

 

重兵衛さんが絶句する。噂通り武田軍はすでに闇の軍師、山本 完助により支配されているらしい。

 

真玄殿はすでに亡くなり、武田四天王も高坂殿以外、全員地下牢(チカロウ)へ投獄(トウゴク)されているらしい。なんとか完助を止めて武田を救ってくれとある」

「高坂様は完助に従うフリをして、武田奪還(ダッカン)を考えております」

 

椿さんが言葉を添える(ソエル)。

 

「正直に言えば徳川は武田のためにそこまでする義理はない。だか、このままでは完助が操る鬼面兵に徳川がやられてしまうだろう。なんとも情けない話だが、徳川を救うのも武田を救うのも、全ての決定権はベルファストから来た客人たちにあるようだ」

 

そう言って家泰さんが僕らの方を見つめる。

 

「どうします、夜一さん?」」

 

ユミナが僕に指示を仰ぐ(アオグ)。

僕は椿さんに掛けていた『芯雷』を解き、椿さんの手を取る。

 

「僕が必ず完助を捕らえて、武田を救います!」

「あ....ありがとう。感謝します」

 

椿さんは頬を紅くしている。僕の後ろで彼女たちがこそこそ話始める。

 

(ねぇ。貴女(帝姫)の婚約者(夜一様)って、元の世界でも、こんなにモテモテだったの?)

(元地球(アッチ)でも、モテモテだったよ。レオナ。オンラインゲームのVRMMOを遊んでいたんだけど、その中であってビックリしたんだから!)

(何にビックリしたのよ、帝姫?)

(なんと。彼女が敵だと楽しめないからって、相手が現実で彼女だとわかると、自分のギルドに呼ぶのよ。エルゼ)

(そ...それは、おかしなことなのですか?)

(おかしいわよ!その、彼女の数といったら。リンゼ)

 

ユミナと八重はあわゎゎゎ言って、リーンとポーラは頷き、アリエルが帝姫に問いかける。

 

(帝姫。その、夜一の彼女の人数というのは?)

(27人いたわ。アリエル)

(27人ですか。今の時点で、その27人に達していますが。これ以上、彼女が増えるのですか?帝姫)

(そうです。ユミナ)

 

僕は、後ろで彼女たちが話しているのを気にせずに、家泰さんとの話を進める。

 

「と、なるとあまり大人数で潜入するわけにもいかないから、僕と椿さん、アリエルとリーンの4人で潜入しよう」

 

武田内部に詳しい(クワシイ)椿さんと、魔法に長けた(タケタ)蜘蛛族のアリエルと妖精族のリーンの2人がいればなんとかなるでしょう。

 

「今は、真っ昼間(マッピルマ)だから、潜入にはむいていないので、家泰さん。腹ごしらえをしましょう♪」

「それもそうだな。夜一殿」

 

僕と帝姫で二手に分かれる。僕がベルファストの屋敷(ヤシキ)へ帰って、今日は一泊(イッパク)することをライムさんに知らせて。帝姫には重兵衛さんの無事を知らせに八重の家へ行ってもらう。

僕はベルファストからの帰りは、八重の家へ行き、オエドのお酒や食料、矢や油などの物資を僕と帝姫の【ストレージ】に収納し、砦へと運ぶ。必要経費はちゃんと家泰さんがお金を払って(ハラッテ)くれた。

僕と帝姫が色々動いて、あれこれしているとあっという間に夜になっていた。

 

 

 

 

「それじゃ椿さん、ツツジガサキの館が見える場所を思い浮かべてください。なるべく人がいないところをお願いいたします」

「夜一殿♥敬語ではなく、命令(メイレイ)口調(クチョウ)でお願いします」

「では、椿!ツツジガサキを眺められる場所を思い浮かべろ!」

「はいっ!夜一殿♥」

 

目を瞑って(ツブッテ)いる椿の両手を握る。

 

「【リコール】」

 

魔力を集中させて額を合わせる。ぼんやりと複数の堀(ホリ)に囲まれた大きな平屋の館と、それを取り巻く城下町が見渡せる場所が脳裏(ノウリ)に見えてきた。あれが武田領地の本陣、ツツジガサキ。

僕は、アリエルとリーンと椿の4人、手を握り『瞬雷』を唱え、ツツジガサキが見渡せる場所へ。

 

 

 

ツツジガサキが遠くに見渡せる場所に『瞬雷』で着く。真上には星空が広がっていた。辺りは鬱蒼(ウッソウ)と茂った(シゲッタ)森で、屋敷の周りにある松明(タイマツ)の明かりが僅か(ワズカ)に見える。

 

「夜一殿♥私は、もう少しツツジガサキが望める近くまで、行けますが?」

「それだと、完助に見つかるのでは?」

「テレ...テレッ.....テレ!魔王少女アリエルちゃん。私の無属性魔法で【気配遮断】をするか?夜一」

「頼む。アリエル」

「了解ッ♪」

「リーン。光魔法で姿を消してくれ」

 

「【光よ歪め(ユガメ)、インビジブル】」

 

これで、3人の気配が消え、姿も消える。

 

「消えた.....姿と気配も」

 

椿が驚きの声を上げる。

 

 

 

 

 

「高坂様からの使いだ。通していただきたい」

「確かに。しばしお待ちを」

 

椿が手にした鑑札(カンサツ)を見て、門番の2人は重々しい門をゆっくりと開いた。

開かれた扉の間から、姿を消した僕とアリエルとリーンが素早く中へと滑り(スベリ)込む。その後から椿が門を抜けると再び重々しい音を立てて門が閉まった。

 

「アリエル。リーン。この【気配遮断】とインビジブルは無効化されないね」

「結界は基本的に干渉(カンショウ)しようとする魔力を弾くのよ。この魔法は私たち自身にかけているから問題ないわ」

「だから、夜一の『瞬雷』で帝姫たちの所に転移できる」

 

と、アリエルとリーンが説明してくれた。

 

「が。その時は、【ゲート】を使いますよ♪他の男たちが僕の彼女たちに触れられるのは、気分が悪いので....ね」

「「「お...おぅ...そうか」」」

 

とりあえず......まずは地下牢に捕まっているという、武田四天王の3人を救うことにする。そのことを椿に進めると、案内をしてくれた。

 

「地下牢は此方(コチラ)です♪夜一殿♥」

 

椿の後を追いかけて、月のない闇の中を僕らは駆けてゆく。

館の西、曲輪(クルワ)の端(ハシ)に建つ家屋(カオク)の中に地下牢はあった。

さすがに鑑札を持った椿といえども、この中にまでは入れないらしい。リーンに彼女にも【インビジブル】の魔法をかけてもらい、4人は中へと潜入する。

中で待機している番人の部屋を通り抜け、石で組まれた地下へ向かう階段を下りていく。

そこは石と木で作られた座敷牢(ザシキロウ)であり、その中で1人の老人が目を閉じ、座禅(ザゼン)を組んでいた。老人は白髪(ハクハツ)交じりの長い髭の巨漢(キョカン)で、顔には深い皺(シワ)が幾つ(イクツ)も浮か(ウカ)んでいる。

 

「誰だ」

 

突然、座禅をしたまま発した声に、僕らは驚いて足を止めた。

 

「馬場(ババ)様、椿です。高坂様の命にて助けに参りました。内藤(ナイトウ)様と山県(ヤマガタ)様はどちらに?」

「高坂の.....?ふん、やはりあやつが完助の軍門に下ったは偽りであったか。まったく食えぬ奴よ」

 

口の端を吊り上げて、武田四天王のひとり、馬場 信晴(ノブハル)がにやりと笑う。

 

「内藤と山県は奥(オク)の牢にいる。それよりいい加減に姿を見せんか。それと気配もな」

 

アリエルとリーンが魔法を解くと馬場さんは片眉を上げて、視界に入ったであろう僕らを眺めた(ナガメタ)。

 

「そこの3人は誰だ?見たことがないが」

「此方は徳川殿の客人で、鳴神 夜一殿♥とアリエル殿とリーン殿です。夜一殿♥は徳川に攻め込んだ鬼面兵1万5000を1人で打ち倒したほどの実力者です♥」

「なんだと!?あと、先程から夜一殿という度に♥をちらつくのは、どういうことだ?」

「そ......それは、私が鳴神 夜一殿♥の彼女になったからです。高坂様」

 

椿の返答に白髪の馬場さんの見開かれる。

馬場さんが信じられないといった感じで僕を見てくる。

 

「【モデリング】」

 

座敷牢の格子(コウシ)になっている角材を変形させて、人ひとり通れるほどの出口を作る。それは完成し、やすやすと馬場さんは牢から出てこられた。

 

「ずいぶんと不思議なことができるんだな、小僧(コゾウ)」

「え....えぇ、まぁ」

 

馬場さんを連れて奥の道を進み、別の座敷牢へと移動する。そこでは左右別々に座敷牢が作られていた。

此方から右手の座敷牢には穏やか(オダヤカ)な顔をした男と、対する左手の座敷牢には、全身傷だらけの勇士、目付きの鋭い(スルドイ)男が座っていた。

 

「馬場殿。お元気そうで何より」

「なんか面白い(オモシロイ)ことになってるみたいだな、馬場殿。暴れるんなら俺も交ぜてくれよ」

 

馬場さんは呆れたようにため息を漏らす(モラス)。

 

「内藤。お前はもうちょっと緊張感を持てや。いつもにこにこ緩んだ(ユルンダ)顔をしやがって。逆に山県。お前はもうちょっと考えろ。なんでもかんでも戦えばいいってもんじゃねえぞ」

 

穏やかな男が内藤(ナイトウ) 正豊(マサトヨ)、傷だらけの男が山県(ヤマガタ) 政景(マサカゲ)。

 

「小僧、悪いがこいつらも出してやってくれ」

「いいけどさ。僕には鳴神 夜一って名前がある」

 

リーンが馬場さんに向けて口を開く。

 

「一応その子、色々な世界の姫を得。もしかしたら、新しい国の国王になる男よ!口のきき方には気をつけた方がいいわよ?」

 

え....えぇっと、僕が新しい国の王様?そんなことがあるのかな?

 

「そうなのか?うーむ、しかし今さら変えるのもな.....。ま、小僧でいいだろ」

「私は夜一殿と呼ばせてもらいますよ」

「んじゃ、俺は夜一で」馬場さんに続き、内藤さんと山県さんも好き勝手に呼び名を決めていく。まぁ....いいか。

 

【モデリング】を使い、馬場さんと同じように2人を座敷牢から解放する。それから、アリエルの【気配遮断】とリーンの【インビジブル】をかけてもらい、全員で階段を上がって番人をやり過ごして地下牢から脱出した。

 

「それでこれからどうする気ですか、新国王陛下」

 

面白がるように内藤さんがにこにこと話しかけてきた。

 

「貴方たちはどうしますか?僕らはこれから山本 完助を捕らえる(トラエル)つもりですが....」

「おいおい、そりゃねえぞ。俺も連れてけよ夜一。あの野郎(ヤロウ)にゃ俺たちは借りがたんまりあるんだからよ」

 

山県さんがバキバキと指の骨を鳴らしながら、不敵な笑みを浮かべる。

 

「完助の周りは鬼面兵で固められ、奴自身も奇妙な魔法を使うぞ。あいつは人間じゃない。倒せるか?」

 

馬場さんが妙なことを言っている。どういうことだ?言葉を引き継ぐ(ヒキツグ)ように内藤さんが口を開く。

 

「かつて山本 完助は軍師として真玄様に仕えていました。優れた(スグレタ)人物で頭も良く、軍師たして申し分のない男でした。しかしある時、彼は悪魔(アクマ)の力を宿した『宝玉』を手に入れたのです。それからだんだんと彼はおかしくなっていきました。何かを試すように猫や犬を殺し、やがてそれが人間になるまで時間はかからなかった。そして死んだ身体を操る『鬼面』を生み出し、強力な力を手に入れたのです。私たちには止められなかった。あの『宝玉』の力にはとてもかなわない....」

 

その『宝玉』のせいで山本 完助はおかしくなったのか。ひょっとしてそれが死体を操る魔道具(アーティファクト)か?

 

「どう思う、アリエル、リーン?」

「強すぎるアーティファクトは、時として意志を持つこともあるよ。制作者の感情に関係なく、後天的に何か特殊魔法を付与されたか?」

「その宝玉とやらでおかしくなったのは間違い(マチガイ)なさそうね」

「それで完助は今どこに?」

 

横にいた椿さんに尋ねてみる。

 

「おそらく中曲輪の屋敷にいると思われますが.....」

 

スマートフォンを取り出し、山本 完助を検索(ケンサク)してみるがヒットしなかった。確認のため、アリエルとリーンを検索してみたけこれもヒットしなかった。

結界のせいか。

 

「椿さん、中曲輪ってどっちですか?」

「椿.....と、お呼びください。夜一殿♥」

「...椿。中曲輪の方向は?」

「えっと.....彼方(アチラ)の方向です」

 

椿が指指した方角に向かい『周雷:山本 完助』で調べて見る。すると、紅雷が輝いていた。そこへ【ロングセンス】で視覚を飛ばす。

広い庭を抜け、中曲輪の屋敷に着くと、その庭に1人の男が屋敷から出てきた。

黒い着物に黒い袴(ハカマ)、色黒の肌(ハダ)に左目には眼帯(ガンタイ)。

視覚を戻し、アリエルに結界を壊すにはどうしたらいいか尋ねる。

 

「このような結界は、この館の四隅(ヨスミ)に魔力を込めた護符(ゴフ)が配置されているのよ。それをひとつ破壊するだけでいいわ」

「その場所ならわかるぜ。こっちだ」

 

山県さんの先導に僕らはついていく。【インビジブル】の効果で、途中誰にも気づかれることなくその場所についた。

壁(カベ)の隅、小さくスペースを取られたところに、石でできたお地蔵様(オジゾウサマ)が置かれていた。高さはポーラと同じくらいか。

 

「間違いないわよ。このお地蔵様自体が護符のひとつよ」

「じゃあこれを壊して、すぐに完助のところへ転移するけどいいかな?」

「いやちょっと待て、小僧。さすがに丸腰(マルゴシ)では儂(ワシ)らでもきつい。なにか武器(ブキ)はないか?」

 

馬場さんの言うこともわかる。

 

「仕方がない。僕が作るか」

「「「作る?」」」

 

武田四天王の3人の頭にクエスチョンマークが浮かんでいる。???

 

「リクエストはありますか?それか、武器のご希望はありますか?」

「あ?ああ、儂は槍でいいが、内藤は短剣二振り、山県のヤツは大剣があるとありがたいが.....」

「わかりました」

 

【ストレージ】から鋼を取り出し、それを変形させていく。まずは簡単な短剣二振りを作る。内藤さんの要望にそう二振りが出来上がり。

それから大剣。これも山県さんが振りやすいように作る。最後な槍を作った。馬場さんに槍の重さを確かめてもらいながら、しっくりくる槍が出来上がる。

 

「あっという間にこんなものを作ってしまうとは.....。すごいですね、夜一殿は」

「そうであろう♪私たちの旦那様はすごいのですよ♥」

 

椿が誇らしげ(ホコラシゲ)に言うのを、不思議に思った山県さんがズバッと斬り込んだ。

 

「椿、お前。夜一の嫁になったのか?」

「なりましたよ♪此方のアリエルさんとリーンさんもそうです♪此方には来ていないが、夜一殿にはたくさん彼女がおりますよ」

「「ほぉ~」」

 

内藤さんと山県さんがニヤニヤした目で僕を見ている。

 

「じゃあ準備はいいかな?」

 

僕の確認にみんなは頷く。僕は【ストレージ】から龍宝(リュウホウ)・聖霊龍牙刀(セイレイリュウガトウ)を一振り取り出す。

目の前のお地蔵様を一刀両断する。

お地蔵様の結界を破壊した僕は、スマートフォンのマップ画面で鬼面兵を検索する。よし、大丈夫(ダイジョウブ)。

僕は奴らを一網打尽(イチモウダジン)にするべく、そのまま館の鬼面兵をすべてターゲットロックした。

 

「お、おい、なんだありゃあ......!?」

 

夜空一面に浮かぶ【マルチプル】による小さな魔法陣に、山県さんたちが目を見張る。それを見て、リーンが僕に尋ねてきた。

 

「またアレをやるの?」

「邪魔(ジャマ)なヤツらは排除(ハイジョ)しておいた方がいいだろぅ。向こうに転移してから囲まれたら厄介(ヤッカイ)だしね」

 

空に手をかざし、魔力を集中して【マルチプル】の魔法陣全て

発動させる。

 

「【光よ穿て、シャイニングジャベリン】」

 

光の雨が降る。闇夜に映えて(ハエテ)美しく、まるで流星群のようだ。それを見て、アリエルが口を開く。

 

「いつ見ても、夜一の魔法ほ綺麗だな♪魔力が澄みきっているのか」

「ありがとう。アリエル」

 

やがて光の雨がやむと、「敵襲(テキシュウ)っ、敵襲だーッ」という兵士たちの叫び声(サケビゴエ)が聞こえてきたが、同じように「武田兵」をロックオンして『芯雷:武田兵《強)』を放つと静かになった。

 

「よし、じゃあ行きましょう」

「おい......今の全部お前の仕業(シワザ)か?」

「こりゃまた......どでもないですね.....」

「オイオイ、こりゃもう完助もやっちまったんじゃねえのか?」

 

一応「武田兵」とまとめた検索の中には完助も入っているから、その可能性はある。が、

 

「完助は多分無事でしょうね」

 

中曲輪にいる完助のところへ【ゲート】を開く。

光の門を抜けると、大きな屋敷の広い庭の前に隻眼(セキガン)の肌黒い男が立っていた。周りには痺れて倒れたままの武田兵が複数。

辺りは篝火(カガリビ)で照らされ、揺らめく影(カゲ)の中、眼帯をした隻眼の男は突然現れた僕たちをまっすぐに見据え(ミスエ)ていた。

 

「なるほど、誰の仕業かと思えば四天王のみなさんでしたか、いや、これは驚いた。いったいどうやったんです?」

「テメエに教える義理はねえよ。さっさとくたばりな!」

 

大剣を構えて、いきなり山県さんが完助目掛けて(メガケテ)斬りかかる。しかし、横から割って入った鎧(ヨロイ)武者(ムシャ)の刀にそれを阻まれてしたう。

 

「なっ!?」

 

赤い鎧に身を包んだ男は、獅噛み(シカミ)の兜(カブト)から伸びる(ノビル)白い毛を振り乱して、受け止めた山県さんの大剣を力任せにのける。顔には赤い鬼(オニ)の面。

 

「御屋形様(オヤカタサマ).......」

 

馬場さんが漏らす。あれが武田 真玄。かつての武田領主。今は完助の操り人形(ニンギョウ)か。

 

「完助、テメエ!御屋形様を盾(タテ)にする気か?」

「盾だなどと。御屋形様が私をお護り(マモリ)くだされただけのこと。しかし、御屋形様の手を煩わせる(ワズラワセル)のは申し訳ありませんね。代わりの者を呼びましょう」

 

完助の周りに魔力が集まり、庭の中央に大きな魔法陣が出現した。

 

「【闇よ来たれ、スケルトンウォーリアー】」

 

魔法陣から右手に湾曲(ワンキョク)した剣、左手に丸いラウンドシールドを装備した骸骨が這い(ハイ)出してくる。

 

「龍宝・聖霊龍牙刀」を【ストレージ】から二振り取り出し、襲いかかってくるスケルトンウォーリアーの体勢を崩し、切り伏せる(キリフセル)。

 

「【光よ来たれ、ライトアロー】」

 

リーンが放つ、光の矢が骸骨に突き刺さる。

 

「【闇よ来たれ、白(シロ)ちゃん】」

「【闇よ来たれ、空(クゥ)ちゃん】」

 

今、現れたこの女性たちは、唯一(ユイイツ)アリエルが契約(ケイヤク)している魔物(マモノ)。

白ちゃんは、蜘蛛姫(チチュキ)の魔物で、空ちゃんは、神龍姫(シンリュウキ)の魔物。それも姫って。魔物だが.....2人とも...可愛いのだが、僕はどうすればいいのだろうか。

その2人のお姫様がスケルトンウォーリアーを倒していく。

 

「アンデッドは光の属性に弱いのは知っているでしょう?闇雲(ヤミクモ)に斬ったところで完助を捕まえる時間が無くなるわよ」

 

そこはゲームと一緒だ。僕は聖霊龍牙刀に光を纏わせる。

 

「面倒(メンドウ)ね。アリエル。白ちゃんと空ちゃんを私たちの所へ戻して、一気に終わらせるわ」

「わかった。白ちゃん。空ちゃん」

 

リーンが魔力を解き放ち、足下に魔法陣が浮かび上がる。だんだんとそれが広がっていくと、やがて庭全体を包み込む大きなものになった。

 

「【光よ来たれ、バニッシュ】」

 

リーンの詠唱(エイショウ)が終わると同時に、庭にいた全てのスケルトンウォーリアーが光の粒(ツブ)と化して消滅(ショウメツ)した。

 

「くっ、光の浄化(ジョウカ)魔法ですか。やりますね。ですが」

 

完助の前には彼(カレ)を護るように赤い鎧武者が立ちはだかる。目の前にいた山県さんに刀を向けて、彼は牽制(ケンセイ)していた。

 

「御屋形様!どいてくれ!」

「真玄様!くそっ、卑怯(ヒキョウ)な真似(マネ)をしやがる!」

「私たちの気持ちを踏み(フミ)にじるとは.......外道(ゲドウ)め......!」

「フフフ、無駄ですよ。御屋形様は私を護って下さる。あなたたちが大恩(ダイオン)ある御屋形様に刃(ヤイバ)を向けられないのはわかっているのですよ。つまり私には、」

 

完助の言葉を遮って(サエギッテ)、僕は光魔法を纏わせた(マトワセタ)、聖霊龍牙刀(セイレイリュウガトウ)で技を放つ。

 

「『閃光(センコウ)・海波斬(カイハザン)』」

 

パキンッ!と真玄さんの鬼面が縦に割れ、糸がきれたかのようにその場に鎧武者は崩れ落ち、うつ伏せ(ブセ)倒れる。

 

「ん、な!?」

 

完助が驚きの表情で、視線を倒れたままの真玄さんと聖霊龍牙刀を鞘に納刀(ノウトウ)している僕を交互(コウゴ)に向けている。

 

「小僧、お前.....」

「真玄様もあのままより、早く成仏(ジョウブツ)させた方が嬉しいか、と」

「そうでしょうけど.......気持ちの整理が、私たちにはまだできなかったのですが.......」

 

馬場さんと内藤さんが呆れた(アキレタ)ようなやるせないような目を向けてくる。

 

「フ、フフフ、なかなかやるじゃないですか。しかし、私にはまだこれがある!」

 

完助が左目の眼帯を外す。そこには赤く光る眼、いや玉が埋め込まれていた。妖しく(アヤシク)禍々しい(マガマガシイ)光を放ち、鼓動(コドウ)を刻むように不気味に輝いていた。

 

「この『不死(フシ)の宝玉(ホウギョク)』がある限り、私が死ぬことはない!」

「その宝玉の力で鬼面兵に不死の力を与えて(アタエテ)いたのね?」

「その通り。遠くに離れて(ハナレテ)しまうと単純な命令しか受け付けなくなるのが難点ですが、持ち主に絶大な魔力と不死の力を与えてくれる素晴らしい(スバラシイ)魔道具(アーティファクト)ですよ!」

 

リーンの問いかけに自慢(ジマン)するかのように答える完助。

 

「おらあぁあぁああぁッ!」

 

山県さんが気合いとともに、完助に大剣を振り下ろす。渾身(コンシン)の一撃が見事にヤツの右腕(ミギウデ)を切り落としたが、落ちた右腕はたちまち黒い霧(キリ)となって雲散霧消(ウンサンムショウ)し、完助の右肩(ミギカタ)からは新しい腕が再生していた。

 

「なッ......!」

「無駄ですよ!いくら斬られようと私は何度でも再生しますよ。この宝玉がある限りね!」

「『吸雷(キュウライ):不死の宝玉』」

 

雷魔法を発動させると、磁力に引き寄せられるように僕(ボク)の手の中にその宝玉がある。

つまりはこの宝玉が無ければ再生しない。

 

「なっ!?」

 

慌て(アワテ)ふためいて宝玉が納められていた左目の場所を触る。が宝玉はない。

 

「きっ、貴様、いつの間に!?」

「手癖(テクセ)が悪いわよ。あなた♪それも無属性魔法?」

「あぁ、違うよ。これは僕だけ使える雷魔法なんだ」

 

リーンが僕の手の中の宝玉を覗き(ノゾキ)込んでひょいとつまみ上げると、眼を細めてそれを見つめている隣から、アリエルもそれを見つめていた。

そして、アリエルが口を開く。

 

「この宝玉からは、イヤな気配を感じるんだけれど。負の感情が」

「アリエルの言うとおり、この宝玉はダメね。持ち主の心を濁らせる(ニゴラセル)呪いがかけられているわ。どこかで変な魔法使いに」

「リーンが言うように、アンデッドを操るには純真無垢(ジュンシンムク)で、あってはならないから」

 

と、アリエルとリーンに説明してもらった。

 

「アリエルとリーンは、凄いね」

「そ....そんなに、凄かったか♪」

「ふ...ふん。よ..妖精族の眼をな....舐めないでよね♪」

 

アリエルとリーンは誉められて、嬉しそうだ。

僕はその宝玉をリーンから預かる。

 

「アーティファクトは古代文明の魔法具。とても貴重なモノだけど、それはこの世にあってはならないわ。夜一、破壊した方がいいわ」

 

僕はその宝玉を上空へと放り投げる。

 

「何をする!?やめろ!」

「破壊する!」

 

僕は聖霊龍牙刀の柄に手を添え構える。必死になって声を上げる完助を横目に、刀を抜き放つ。

 

「『七連閃光(シチレンセンコウ)・海波斬(カイハザン)』

 

光の輝跡(キセキ)が走り、宝玉を綺麗に斬り、中空に跡形もない。

 

「うがぁあぁあああぁああッ!!!」

 

絶叫(ゼッキョウ)を上げ、完助がその場に倒れる。しばらく悶え(モダエ)苦しんでいたが、やがて動かなくなり、倒れたその身体が徐々に(ジョジョニ)干からびていく。

最後には塵(チリ)となり、風に吹かれ消えていく。

 

『あり....が.....とう......』

 

最後に真玄様からの御礼が僕たちには聞こえた。馬場さんたちにも聞こえていたらいいな。

 

「こりゃあ.....どういうことだ?」

「元々山本 完助という人間の身体は、すでに死んでいたのよ」

「そう。だから、それを動かしていた宝玉に自分の生気を絞り尽くされていて、それを夜一(ヤイチ)を斬ったからよ」

 

アリエルとリーンがさらりと答える。

 

「あ、御屋形様が.....」

 

椿さんの声に振り返ると、真玄様や他の鬼面兵たちの身体も、塵と化し、風に吹かれ闇夜に消えていく。

 

**********

 

あれから3日が過ぎた。

多少のゴタゴタはあったが、なんとか武田の領地は落ち着きを取り戻し、新しい領主も決まった。

今回の事件は完助が引き起こした問題である。が、本人の意志かアーティファクトに心を侵食され操られたのかは、わからない。

とにかく徳川と武田の争いはひとまず決着したので、僕らの本来の目的地である「ニルヤの遺跡」へ向かうことにした。

「ニルヤの遺跡」は島津(シマヅ)領(リョウ)の外れ、イーシェンでも1番南にあるらしい。運良く馬場さんが若い頃に立ち寄ったことがあるらしく、記憶を【リコール】で読み取った。あの光景は思い出したくもない。

 

「では父上母上、それに十重(トエ)と綾音(アヤネ)。そして椿(ツバキ)。この件が終わり次第、夜一(ヤイチ)殿と迎えに来ますから♪」

「ああ、気をつけて」

「待っていますよ。夜一お兄様に八重お姉様♪」

「私もお待ち申し上げています。夜一ちゃんに八重様♪」

「私も待っています。夜一殿♪」

「夜一(ヤイチ)さん、娘(ムスメ)たち共々(トモドモ)、末永く(スエナガク)よろしくお願いしますね♪」

 

オエドの八重の実家から遺跡へ旅立つ、挨拶(アイサツ)の際(キワ)に七重(ナナエ)さんが深々と頭を下げる。

僕は遺跡を確認してから、ご両親に挨拶と十重ちゃんと綾音と椿を迎えに来ることを誓い、異性への【ゲート】を開く。

光の門をくぐり抜けると、視界に広がったのは美しい砂浜(スナハマ)だった。

どこまでも広がる青い海と白い砂浜。遠くには岩場と小さな森が見える。

マップで確認してみると、どうやら小さな孤島(コトウ)。

 

「夜一、元の世界(アッチ)では、体験できない澄みきった青い海に綺麗(キレイ)な砂浜♪」

「夜一様♥これほどの海を私は知りません♪」

「わああ、綺麗ですねえ!」

 

帝姫とレオナとユミナが白い砂浜を歩きながら、目の前に広がる海に目を奪われて(ウバワレテ)いる。その3人の後ろ姿を眺めている。

 

(1人は帝姫。地球での僕の姫♪)

(1人はレオナ。パプニカの姫♪)

(1人はユミナ。ベルファストの姫♪)

 

琥珀(コハク)は歩き辛そう(ヅラソウ)にしているのに、その横をはしゃぎながら駆けて(カケテ)いくのはクマのぬいぐるみ。

アリエルとリーンは僕が作り上げたパラソルの陰でビーチチェア2脚

に腰かけて涼んでいる。あと小さいテーブルにオレンジジュースを2つ。

僕もパラソルとビーチチェアを1脚取り出し、横たわりマップ検索で「遺跡」を検索してみる。と、重兵衛さんが言っていたように本当に海底遺跡だった。

僕は、愕然(ガクゼン)とし、スゥシィとアルマを眺める。すると、スゥシィとアルマは琥珀とポーラの後を歩いている。

 

「海なんて久しぶりね!」

「そうだね、お姉ちゃん」

 

双子(フタゴ)の姉妹は潮風を受けながら砂浜を歩いてゆく。

八重がそのあとに続く。

僕は「ニルヤの遺跡」が重兵衛さんが言うとおり、海底遺跡らしいことをアリエルとリーンに告げにいく。

 

「アリエル、リーン。水の中で活動できるような魔法を知らないかな?」

「私は、水魔法が得意ではないから」

「水の上を渡る(ワタル)魔法とかならあるけどね」

 

波打ち際(ナミウチギワ)で佇んでいる。これでは、お手上げではないか。

 

「冷たくて気持ちいいわねー。これで水着があれば泳ぐんだけどなあ」

「.......水着?」

 

エルゼが漏らした一言に。聞き返した。

 

「?店に行けば売ってる、かと。最近は地方によって、いろんなタイプの水着が売り出されているとか、聞きますよ?」

 

リンゼが僕の疑問に答える。

 

「じゃあせっかく海に来てるから、楽しもう♪」

 

衣類関係といったらリフレットのザナックさんのお店。そこで皆で手を繋ぎ『瞬雷:ファッションキング ザナック』バリバリバリッ!

久しぶりの再会の挨拶もそこそこに話を持ちかけると、ちょうどこれから暑くなる時期で水着の需要(ジュヨウ)が増えるらしく大量に入荷したらしい。

とりあえず女性の方々の水着選びに時間がかかりそうなので、あとで迎えにくると告げて、八重の実家に寄り、十重ちゃんと綾音と椿を連れてザナックさんのお店に行き、水着を選んでもらう。そして、一旦(イッタン)家へと帰り、メイドの仕事をしているラピスとセシルを始め、オリガにミアとシャルちゃんとレネとリムとキャロルとクリスと響のメイドメンバーと、クインにオハナとフェルとタイシェトとムルマとレムの冒険者メンバーとシャルさんとクレアとフリオとフレア夫婦を【ゲート】でザナックさんのお店まで送ってから、王様たちと公爵様たちも呼びに飛び回った。

 

「ほほう、イーシェンの海にな。夜一(ヤイチ)殿、ありがたい」

「久しぶりに潮風に当たってみたいですわね」

「.....政務は大丈夫なのですか?」

 

ノリノリの国王陛下とユエル王妃。

 

「今日は午後からの予定が空いていてな」

 

僕は国王陛下とユエル王妃様に目立たない格好に着替えてもらっている間に誰か王様の護衛をしてくれる人がいないか、レオン将軍のところへ行くと、俺が行くと言い出したので、ザナックさんのお店に【ゲート】で送る。

 

 

次に、公爵様の御屋敷へ『瞬雷』。

 

「イーシェンの海か!いいね!行こう!」

「はい、あなた」

 

【ゲート】で公爵様とエレンさんと僕はザナックさんのお店へと戻る。

 

「久しぶりー。元気だった?」

 

振り返ると、「銀月」のミカとアエルさんがいた。

 

「レオナさんから誘われたの。あなたたちが始めて「銀月」に泊まった日からレオナには、バレていたみたいだけど」

「バレていたって、ミカさんが僕のことを目で追っていたこと?それなら、知っていましたが。僕とレオナは此方の世界に来て、知らなければいけないことが多かったからね」

「知っていたの夜一。.....じゃあ、これから、私も夜一の彼女でいいのかな?」

「いいよ、ミカさん」

「彼女なんだから、さんは無しで、ね♪」

「これからよろしく、ミカ♪」

「はい、夜一♪」

 

砂浜に【ストレージ】から取り出した鉄と敷布(シキフ)を使い、【モデリング】を使用して、簡易な着替え用のテントを作る。

女性がほとんどなので、大きいテントを2つ、男性は僕と陛下と公爵とレオン将軍とフリオの5人。なので、中くらいのテント。

 

【ゲート】をザナックさんのお店の裏手に設置させてもらい、そこから、次々と水着を買い終えた人たちがやってきて、着替え用テントに向かう。

さっそく水着に着替えようと入っていく、その時、僕の耳元で(あんたは私たちの彼氏なんだから、今は、我慢しなさい)と、小声で誰にも聞こえないように言われた。

くつろぐためのパラソルはアリエルとリーンの1つと僕が使っていたもう1つ計2つと。ビーチチェアは3つ。だけでは、足りないのでパラソルとビーチチェアを何点か、それとかなり大きめのサンシェードを何点か作っておく。次に、ゴムを使ってビーチボールや浮き輪もいくつか作っておく。

 

 

それでは、紹介しよう。まず僕と彼女たち。

僕、帝姫、レオナ、エルゼ、リンゼ、八重、スゥシィ、アルマ、シャルちゃん、ユミナ、シャルさん、クレア、クイン、オハナ、フェル、タイシェト、ムルマ、レム、リム、キャロル、クリス、響、オリガ、ミア、アリエル、リーン、ラピス、セシル、レネ、十重、綾音、椿、ミカとアエルの34人。フリオとフレア夫婦。ライムさん、レイムさん兄弟。公爵とエレン夫妻。国王陛下とユエル王妃夫妻。護衛のレオン将軍。(と琥珀とポーラの2人)......42人。内4人は王族。陛下と公爵の娘は僕の彼女なので王族に入れていない。

ライムさんとレイムさん以外、全員水着を買って此方に渡ったみたいなので、【ゲート】を閉じる。

ザナックさんには、今度、新作水着を数点。御礼がてら寄ってみよう。ベルファストの自宅へと【ゲート】を繋ぎ直し固定しておく。御手洗いに困るからね。

食事は.....うん、バーベキューにするかな。あとで鉄板と炭火を用意しよう。肉と野菜は貯蔵庫にけっこうあったはずだ。となると飲み物も欲しいよな。魔法で氷の器を作って果汁水(カジュウスイ)を冷やしておくか。他は....。おや?.....さっきから僕だけが働いている?水辺は危ないから、帝姫が警戒しているから、仕方ないか。力仕事は何時(イツ)でも何処(ドコ)の世界でも、男の仕事だから。

 

 

とりあえず僕も水着に着替え海を満喫してから、当初の目的地「弐雷海那蛇(ニライカナイ)の遺産」こと「弐琉鵺(ニルヤ)の遺跡」がある、海底遺跡を調べるとしよう。

 

僕はみんながそれぞれ海を楽しんでいるのを見ていると、エルゼと八重が海へと走っていく。

 

「夜一様♥遺跡の探索は?」

「そうよ。夜一!遺跡はどうするの?」

「帝姫とレオナ。王族もいることだし、楽しんでから調べるよ。それでいいかな?アリエル、リーン」

「それでいいわ」

「楽しんできなさい」

 

アリエルとリーンにお礼をいう。

 

「海に入る前に私たちの水着の感想がまだなんだけれど?」

「そうよね。今まで見ていたけれど、誰の水着も誉めていなかったわね」

「その人それぞれのアピールポイントをわかって、水着を選んでいるから可愛すぎてどうしようもないんだ」

「ま、それならいいわよ」

「夜一」

「夜一お兄さん」

「やいちおにいしゃん」

「夜一兄ちゃん!」

「やいちおにいさん」

 

スゥシィとアルマにシャルちゃんとレネとリム5人。

スゥシィは黄色いビキニタイプで腰にはパレオを巻いている。アルマは橙色のビキニタイプで腰にパレオを巻いている。シャルちゃんは白地に金色の星がアクセントのビキニタイプで腰にパレオを巻いている。レネは翠碧色のビキニタイプで腰にパレオを巻いている。リムは白翠色のビキニタイプで腰にパレオを巻いている。5人ともビキニの水着を着ていた。所々違うが。

 

「ワンピースタイプの水着はなかったの?」

「う~ん。あったけど、帝姫お姉さまやレオナお姉さまやユミナお姉さまたちみんな、ビキニタイプの水着を着ているよ」

「5人とも可愛いよ。あまり沖に行かないように」

「わかっておる。夜一は心配性じゃな。自分の彼女たちを信用するのじゃ。アルマ!レネ!」

「はい、スゥシィちゃん」

「うん、スゥシィ姉ちゃん」

 

スゥシィとレネの手を引いて、アルマが波打ち際へ駆けていく。

 

「仲がいいですねぇ~」

「そうだね♪セシル」

「夜一ちゃん。気づいていたの~?」

「気づくよ。彼女の魔力の波長は覚えているから、感じ取れるよ」

 

セシルもビキニの水着を着ている。真翠色で腰には同じ色のパレオを巻いている。

 

「スゥシィ様~、アルマ~。レネちゃん~。遠くまでいっちゃ~だめですよ~」

 

目の前をセシルが駆けていく。.....たゆんたゆん。......たゆんたゆん。あの胸は破壊力抜群。

 

「大きいと........浮くってホントぅかな......」

「なにがですか?」

「えっとね、大きな胸って浮くのかな....?」

 

声がしたので、振り返るとそのには、ラピスがいた。

 

「夜一くんも大きな胸がいいのですか?」

「ちっちゃくて可愛い胸とおっきい胸も好きだよ♪」

「だから、夜一くんの守備範囲が広いんだね」

「ははは」

「リムちゃん!おすなの山をつくろぅ」

「うん、シャルお姉ちゃん」

「シャルちゃん!リムちゃん!転けたら危ないから、手を繋いで海辺に行きましょうね」

「「は~い」」

 

シャルちゃんとリムちゃんはラピスが手を引いていく。

 

「夜一さん、私の水着は可愛いですか?」

 

ユミナが僕の腕に抱きついてくる。知ってか知らずか...歳相応に、それなりに成長している。

 

「可愛いよ♪帝姫とレオナたちと遊んでてね」

「はい、夜一さん」

 

ユミナも女の子だよね。

 

 

 

僕も少しだけ海を満喫したので、海辺に立つ。

横には、琥珀とポーラが来ていた。

 

「まさか泳ぐのか?ポーラ?」

 

あたぼうよぉ!とポーラは胸を叩いた。

 

「琥珀も泳ぐのか?」

「私は、此方で主を待っています」

「伊達に【プロテクション】をかけてないわよ。防水だってバッチリなんだからね♪」

 

すごいな【プロテクション】。僕のスマートフォンを取り出して【プロテクション】をかけておく。水の中に入るからね。

 

「じゃあ、とりあえず潜ってみるか」

 

僕が海へ向かって歩き出すと、ひょこひょことポーラもついてくる。

ポーラは海に入ると波打ち際でひっくり返り、砂浜へ転がりながら押し戻されては、海に向かって行く。

僕は沖へと歩き出した。やがて足がつかなくなると、そのまま平泳ぎで進んでいく。

透明度(トウメイド)の高い海。その眼下に広がるものがハッキリとしてきた。これは確かに遺跡だ。

様々な巨石群(キョセキグン)が並び立ち、その中央には神殿(シンデン)のような小さな建物がある。さらに潜ってみる。すると、建物の入口が見えたので、もう少し潜り覗き込むと、地下へ続く石段があった。

先が暗くてわからないが、かなり長い石段じゃないだろうか。そこで息が続かなくなったので、一旦海面へと戻る。

砂浜に戻り、アリエルとリーンに見てきたことを伝え、その場に横たわる。はぁはぁはぁ。

 

「うむ....海底遺跡か?」

「完全に海の底ってわけね.....。さて、どうしましょうかね.....」

「今日の探索は終わりにしようか。陽の入りが近い」

「それもそうね」

 

僕たちは遺跡調査を引き上げ、夕御飯の準備をし、食べ、陛下とユエル王妃夫妻、公爵とエレン夫妻を送り、僕たちもベルファストの御屋敷へと帰る。

 

 

 

「さて、どうしたものか」

昨日はみんなではしゃいだので、今日は真面目に遺跡の調査をしようか。

メンバーは、僕と琥珀(コハク)とアリエルとリーンとポーラ、レオナとスゥシィとオハナとムルマ。

 

「水の中で呼吸をする事ができたらいいのだけれど?」

「ヤイチ。わたしの『海魔法』でうみを『割ろう』か?」

 

ムルマがそう提案してくれる。

 

「ちょっと思い付いたのじゃが?」

 

スゥシィが手を挙げて発言する。

 

「わらわを助けてくれた、夜一の【ロングセンス】で、視覚を飛ばしたらどうじゃ」

「その手があったな。スゥシィ、お手柄」

 

アリエルがスゥシィの提案を称賛する。さっそく、スゥシィの提案の【ロングセンス】を発動させる。

 

「どう?わかりました、夜一さん?」

「......暗くてわからないな.....」

「では、わらわの光魔法【ライト】を飛ばしてやろう」

 

やがて飛ばした視覚の周りが明るくなり始めた。光球の移動に合わせて視覚を移動させ、階段を進んでいく。

しばらく下っていくと、大広間が現れた。中央に魔法陣が描かれた(エガカレタ)段があり、それを取り囲むように6つの台が並んでいる。台にはそれぞれ魔石が埋め込まれており、赤、青、茶、緑、黄、紫と、無属性を除いた六属性の色が輝いていた。

視覚を戻し、見たままをみんなに伝える。みんなが悩んでいたが、やがてリーンが口を開いた。

 

「おそらく転送陣ね、それは」

「ほぉ、転送陣?」

「6つの属性を起動させると、最後に魔法陣の中央で無属性魔法【ゲート】を使うと、転送されるようになっているのね」

「起動させたいけど、水中では呼吸ができないからな?」

『主よ』

 

オハナに抱え(カカエ)あげられていた琥珀が声をかけてきた。

 

「どうしたの?琥珀」

『主たちの悩みを解決できる者に、ひとつ心当たりが』

 

 

 

砂浜から離れ、岩場の近くの地面にリーンの魔法によって大きな魔法陣が描かれた。

 

「確かに、夜一の魔力と琥珀の霊力(レイリョク)を混ぜれば特定の相手を呼び出せるけど、初めてなんでしょ?」

『初めてだが、奴らは必ず呼び掛けに応じるでしょう。契約の条件に求めてくるかわかりません。気性(キショウ)の荒い奴らではないのですが、ちょっと変わっていますから.....』

 

とりあえずやってみよう。

魔法陣の前に立ち、闇魔法を発動する。

僕の魔力と琥珀の霊力を混ぜていき魔法陣の中央に黒い霧が漂い始める。

 

「冬と水、北方と高山を司る(ツカサドル)者よ。我(ワ)が声に応えよ(コタエヨ)。そして、その姿をここに顕現(ケンゲン)せよ」

 

充満(ジュウマン)していた霧から、突如(トツジョ)、莫大(バクダイ)な魔力が、いや、霊力が現れその波動を感じる。そして、霧が晴れるとそこには巨大(キョダイ)な亀(カメ)がいた。

現れた陸亀の身体に黒い大蛇(ダイジャ)が巻きついていた。

 

『あっらぁ?やっぱり白帝(ビャクテイ)じゃないのよぅ。久しぶりぃ、元気してた?』

『久しぶりだな、玄帝(ゲンテイ)』

『ん、もう、「玄ちゃん」でいいって言ってるのにぃ、い...け...ず』

『それでそちらのお兄さんはぁ?』

『我(ワ)が主(アルジ)、鳴神(ナルカミ) 夜一(ヤイチ)様です』

『主じゃと?』

 

ギョロッと陸亀がが此方を見る。

 

『このような人間が主とは...........白帝よ。本当にこの者は人間なのか?』

『主は人間ですよ』

『どうしたのぉ?』

『この者からは、神に似た感覚を感じてならない』

『あらぁ、そうなのぉ』

 

大蛇に品定めされている。

 

『よかろう、夜一とやら。お前が我らと契約するに値するか、試させてもらう』

「いいけど、何をしたらいいの?」

『我らと戦え。日没までお前が五体満足で立っていられたなら、力を認め契約をしようではないか。しかし、魔法陣から出たり、気を失ったり、我らを攻撃することができなくなれば契約は無しじゃ』

 

倒したら僕の勝ち、【ストレージ】から聖拳(セイケン)・ドラウを取り出し、構える。琥珀に聞いた話だと防御に優れた陸亀さん&大蛇さんらしい。

 

「日没まで立っていられたらいいんだよな?」

『そうだ。お前の武器は、ミスミドの国宝。聖拳・ドラウではないか?』

「知っていたか」

『そりゃあもう。「蒼帝(ソウテイ)」が管理している「聖霊龍王」の聖域があるからな』

 

今がだいたいお昼前だから日没まで7時間?

 

「わかった。じゃあ殺ろうか」

「や、やいちお兄ちゃん、「大丈夫」?」

 

ムルマが心配してくれる。

 

「大丈夫。なんとかなるよ♪」

『意外と落ち着いているのねぇ』

『その度胸だけは褒めてやろうかの。では参るぞ!』

 

陸亀が戦いの開始を告げ、ゴガァァアァアァ!と咆哮(ホウコウ)をあげる。

 

「『芯雷(シンライ):《極大(キョクダイ)》玄帝』」

『『ギャアァァッ!?』』

 

玄帝は極大の痺れに困惑している。

次に、玄帝に触れ。発動。

 

「『壊雷(カイライ)』+『継雷(ケイライ)』と『界雷(カイライ)」

 

今、玄帝の内部では、凄まじい破壊が行われている。それと、結界を張ったので、僕への攻撃は通らない。

 

『グゥアッ!!な....何を....した。お前』

「ちょっと、玄帝の内部を攻撃。次は、外傷を与えますので♪」

『ガ...外部...を攻撃...するのぉ』

 

僕は、拳を構える。

 

「【アクセルブースト】アバン流牙(ガ)殺法(サッポウ)『地炎撃(チエンゲキ)』」

 

目で追えるレベルの速さではない攻撃を受け続けている。

 

 

『『ぐぎゃっ!!』』ぶほっ!!

お、血を吐き始めた。

 

『『げぼぉっ!!』』どばっ!!

今度は、大量に吐いた。

 

 

 

 

 

『油断してたわぁ!』

 

大蛇は、警戒し始める。

 

『これでも、喰らうがよいわ!』

 

陸亀が口を開き、圧縮された水魔法がレーザーのように飛んできた。が、僕には効かない。

 

『なぜ、効かない。我の圧縮レーザーがお前に当たる前に霧散(ムサン)した』

 

霧散はしたが、僕の目の前。『芯雷』だけでは、ダメみたいだ。仕方ない。

 

「【スリップ】+『転雷(テンライ):《強》』」

『『うぐうっ!』』

ドズーン!

 

『『ふぎゅっ!』』

ズズーン!

 

『『ぶぎゅる!』』

ズテーン!

 

『舐め(ナメ)、てんじゃ、ないわよぉ!!?』

『うにゃあぁぁぁあぁうにゃにゃゃ!』

 

 

 

 

『ぬおう.....うおええう....まわ、回ってるわぁ、世界が回ってるわぁ.....』

『うにゃあ、ゆる、許してくださいぃ.....内部破壊と転ぶの嫌あぁ.......』

 

陸亀の方が涙を流していたので頭を撫でて、ごめん、と謝る。陸亀が目を伏せ、身を低くする。

 

『鳴神 夜一様。我が主にふさわしきお方よ。どうか我らと主従の契約を』

 

そう言って陸亀と大蛇、2匹が深々と頭を下げてきた。

 

「えーっと、名前を付けるんだよね?」

『そうよぉ。素敵な名前を下さいな、ご主人様』

 

この2匹の姿は、地球(アッチ)の玄武.....黒と水。

 

「じゃあ、大蛇が『黒曜(コクヨウ)』で、陸亀が『珊瑚(サンゴ)』でいいかな?」

『コクヨウ?』

『サンゴ?』

「どうかな?」

『喜んで「黒曜」の名前をいただきますわぁ』

『ではわらわもこれから「珊瑚」と名乗らせていただきます。よしなに』

 

気に入ってもらえて良かった。

 

『ちょっと待て、玄帝....いや珊瑚と黒曜。我らは主の魔力にて常に顕現することができる。だか、その姿では主に迷惑がかかるのだ。姿を変えろ』

『......そうなのか?』

『白帝....琥珀ちゃんみたいに小さくなればいいのかしらん?それならすぐに.....ねっ!』

 

ポンッと珊瑚と黒曜は姿を小さく変化させた。

 

「宙に浮けるんだ?」

『この大きさなら、なんとか。速くは動けませんが....』

 

珊瑚がすいーっ、すいーっと空中を泳ぐ。

 

「よろしくお願いいたします。珊瑚、黒曜」

 

 

僕の肩に乗っかる珊瑚と黒曜の頭を指先で軽く撫でる。

 

『この珊瑚、お役に立って見せましょう』

『アタシもお役に立つわよぉ!』

 

 

 

 

 

『海に入っても呼吸ができるようにすればいいのですね?』

「うん、お願い」

『楽勝よぉ。守りに関してはアタシたちに並ぶ者はいないんだからぁ』

「何かあったらすぐに【ゲート】で戻ってくるよう」

 

アリエルとリーンたちの心配を受けながら、肩に珊瑚と黒曜を乗せて服のまま海へと入っていく。

ざぶざぶとさらに海の中へと入る。

 

「これってどれくらいの強さまで大丈夫なの?」

『そうねぇ。物理攻撃ならドラゴン(竜)の一撃も通さないけどぅ、魔法だと相手の質にもよって変わってくるわねぇ』

 

黒曜が頭を揺らしながら答える。

 

『いくら我らでも障壁の限界を超えた一撃や、障壁自体を消し去る魔法を使われたらどうしようもないですから』

 

耳元で珊瑚の解説を聞く。

海を歩き続ける。

 

 

 

目の前に巨石群が現れる。ストーンサークルの間を抜けて、遺跡中央の階段から中へと入る。魔法で明かりを灯し、暗い地下へと下っていく。

やがて魔法陣がある大広間へと辿り着いた。

そのうちひとつ、赤い魔石台に近寄り、取り付けられた魔石に火属性の魔力を流す。すると、魔石台が赤く輝き始める。

同じように他の魔石台も次々と起動させていく。5つの光が甦り、最後の茶色の魔石に魔力を流すと、中央にあった魔法陣が静かに輝き始めた。恐る恐る魔法陣の上に乗って、中央に立ち無属性の魔力を送り込む。魔法陣が輝きを増して、僕たちはその場から転送された。

 

 

 

 

あまりの眩しさに閉じていた目をゆっくりと開くと、そこは庭園だった。花々が咲き乱れ、小鳥が飛び回り、細い水路には水流れている。

僕の足下には海底遺跡と同じような魔法陣があり、魔石台は無く、この場所が転送先のようだ。

 

『ご主人様ぁ......ここどこかしらぁ?』

「どこだろうね」

 

とりあえず魔法陣から降り、庭園を見回していると、遠くから誰かがこちらに歩いてくるのが見えた。女の子.....が2人....歩いてくる。

 

「お初にお目にかかります。私はこのバビロンの遺産[副管理者]黄金妖精(レプラカーン)のネフレンと申します♪」

「此方の方が、この[庭園]の制御と管理をレジーナ・バビロン博士に任された者です」

「黄金妖精と言うのは、妖精族と違うのですか?」

「妖精族とは違いまして、7000以上前には私、1人しかいませんでした。そこをレジーナ・バビロン博士に拾われたのです]

 

疑問に思っていたネフレンのことはわかった。が。

[副管理者]ネフレンに紹介された女の子は、今、可愛らしいパンティを丸出しにして、此方を見ている。

 

「今[副管理者]ネフレンから紹介されましタ、私はこの『バビロン』の[庭園]を管理する端末(タンマツ)の、『フランシェスカ』と申しマス。シェスカとお呼び下サイ」

「僕は鳴神(ナルカミ) 夜一(ヤイチ)と言います。此方は黒曜と珊瑚です」

『わたしが黒曜よぉ』

『わらわは珊瑚です。よしなに』

 

見回して確認したから庭園なのはわかる。が今、端末って!?疑問はあったがそれ以上に疑問なことが目の前にある!

 

「あの......あのですね」

「ハイ。なんでしょウ?」

「.....なんで下.......穿いて(ハイテ)いないんですか.......?」

「ナンでと言われましテも.....義務?」

「すみません。レジーナ様が設計しましたので、何故(ナゼ)このような仕様になっているのか、わかりかねます」

 

ネフレンがこのように教えてくれたがその博士...って。

 

「シェスカ。....とりあえず、なんか穿いてきてくれるかな?その、目のやり場に困るので....」

「可愛らしいパンティは穿いていますガ?」

 

ちょ...ちょっと、落ち着こう。アレは水着なのか?どこから見てもパンティなのだが、僕がおかしいのか?

 

チラッ。

 

水着じゃないよね!アレは女の子のパンティだよ!

 

「いまチラ見しましタね?」

「すいませんでした!」

 

そら、チラチラ見ていたらバレるよね。

 

「マア、そこまで言うのなら穿きますガ」

 

シェスカは白いフリルのついた黒いスカートを穿き始めた。

 

「.....なにもしないんデスか?」

「しないよ。しないから穿きなさい」

「ちょっとダケなら触ってもいいのですヨ?」

 

この間、ネフレンは僕に何度も謝ってくれている。

 

「ネフレンが教えてくれたバビロンとは?それと、この庭園は?」

「空中に浮かぶバビロンの[庭園]でス。『ニライカナイ(弐雷海那蛇)』と言う人もいまス」

 

庭園なのは、確認している。が、空中と言うのがわからない?

 

「ここはいったいなんのための施設なんだ?(まあ、聞かなくてもわかるのだが)」

「ここはレジーナ様が造られた[庭園]です」

「そのレジーナ様って、誰?」

「レジーナ・バビロン博士でス。私たちの創造主でス」

 

創造主って言った?ネフレンは黄金妖精だし。他にも?

 

『主。この者は人間ではありませぬ。命の流れが感じられません』

「なっ.........!」

 

珊瑚が説明してくれた。僕もなんとなくそうかなとは、思ってはいたけど。

 

「私はこの[庭園]の管理端末として博士に造られマシタ。今から5092年のことデス」

 

先ほど、紹介でネフレンは7000年以上前の生き残りって言うていたし、アリエルより若く、リーンより年上か。

 

「じゃあシェスカは機械なのか?」

「全てが機械ではありません。魔法で造られた生体部品や、魔力炉(マリョクロ)なども使われてイルので、魔法生命体と機械の融合体(ユウゴウタイ).......とでも申しましょウか」

 

ゴーレム、人造人間、ホムンクルス、それらに近いのだろうが。人間にしか見えない。どこからどう見ても女の子なんだけどな......。

 

「......子供はできませンが、行為(コウイ)そのものは出来魔マスよ?」

「そ.....そうなのか!ちょ....ちょっと、スカートを捲り(マクリ)上げたら、可愛らしいパンティが露に(アラワニ)なったら.....」

「新品デスのに」

「じゃあ、シェスカは愛人(アイジン)枠(ワク)で.....も?」

「御要望(ゴヨウボウ)でアラバ、ナンなりと」

「よろしくお願いいたします♪」

『なんかよくわからない子ねぇ』

『主には、節操と言うものはありますか?』

「まぁ、愛人枠は今まで無かったし、いいかなって」

 

黒曜が目を輝かせていたが、もしかして男の娘?僕が愛人にすると言うと、珊瑚は呆れていた。

 

「あの....鳴神様。私はどのようにすれば宜しいでしょうか?」

「う~ん、僕の彼女で。あと、鳴神じゃなくて、名前でお願い」

「.....ありがとうございます♪」

「それにしても5000年以上もよく稼働(カドウ)しているな.....。シェスカもだけど、この空中庭園自体も劣化(レッカ)して壊れたりしなかったのかな?」

「この[庭園]はいたるトコロを魔法で強化していますカラ。私もごせん年と言いましてモ、メンテナンスのためのスリープモードに入り、非常時以外は待機状態でシタので、[庭園]の管理はオートとネフレンがいましたのデ」

 

普段はネフレンがいるから、大丈夫。その待機状態のシェスカか稼働しているということは、今は非常時なのか?

 

「非常時と言えば非常時でスね。やっと現れタお客様ですかラ。鳴神 夜一様」

「夜一でいいよ」

「では、夜一様。あなたは適合者としテ相応しいと認められましタ。これヨリ機体No(ナンバー)23、個体名『フランシェスカ』は、あなたに譲渡(ジョウト)されまス。末長クよろしくお願いいたします」

「はい。よろしくお願いします」

 

適合者って?

 

「あの魔法陣は普通の人では起動したせン。多人数での魔力をつけ付けるコトが出来ないヨウになっているのでス。つまりあの転送陣を起動することがデきる者は、全属性を持つ者だけ.....。博士と同じ特性を持つ者だけなのでス」

「そして博士は転送陣を抜けてキた適合者に、私たちを譲渡することを決めテいましタ。それが5007年前のコトでス」

「適合者ってのは、全属性持ちのことだったのか.....」

「?違いマスよ?夜一様は私の可愛らしいパンティを見ても、逆に隠すヨウに言われマシたカラ、適合者として認めしタ」

「なんの適合だよ!」

「大事なことでスよ?モシ夜一様が欲情に任せ私に襲いかかってキタとしたら、地上に放り投げていまシた。またなにもせずパンティのまま放置されてイたら、ソレも不適合者として丁重(テイチョウ)に地上へとお帰り願ったでしょウ」

 

え、まじで?

 

「他人を思いやる優しさ、それがなけレば私たちやバビロンを任せられナイと、博士はこのヨウな方法を考えられたのでしょウ」

「うん、おかしいよね、その博士」

「否定はしませン」

 

とりあえずみんなをここに連れてくるか。1回話し合った方がいい。ネフレンとシェスカに事情を話し、地上へと【ゲート】を開いて、琥珀にアリエルとリーンにポーラ、レオナとスゥシィにオハナにムルマを呼ぶ。

 

 

この四阿(アズマヤ)には、僕と琥珀、ネフレンにシェスカ、アリエルとリーンにポーラ。レオナとスゥシィにオハナにムルマは散策に行った。

 

「[庭園].....ね。古代文明パルテノの遺産とも言えるわね」

 

辺りを見回しながらリーンが感慨(カンガイ)に浸って(ヒタッテ)いた。

古代文明パルテノ。様々な魔法を生み出し、それによる魔法道具、アーティファクトを創り(ツクリ)出した超文明(チョウブンメイ)。

 

「それでリーンの手に入れようとしていたものはここにあるのか?」

「さあ。私は古代魔法をいくつか発見できたらいいなと思ってあたんだけど、それ以上のものが見つかっちゃったからねえ」

 

なるほど、このバビロン自体が古代魔法の結晶とも言えるわけだね。

 

「ネフレン、ここは庭園以外に何かあるの?」

「いえ、ありません。博士の気分転換のために造られたので。他のと違って」

「ねえ、ネフレン。ちょっと気になったんだけれど。貴女(アナタ)さっき『他のと違って』って言ったわよね。それってどういうこと?」

 

リーンがネフレンに鋭い目を向けてくる。それに、気圧されたネフレンは僕の後ろに隠れる。そして、その質問に答える。

 

「博士から[副管理者]として任命された時に言ってました。バビロンはいくつかのエリアに分散して空を漂ってもらう、と。そして、この[庭園]の転送陣が1番見つかりやすいからと、他は、『研究所』や『格納庫』、『図書館』などが、フランシェスカの姉妹によって制御、管理されております。全て合わせて『バビロン』なのです」

 

......なんだと?

 

「つまり『バビロン』という空中に浮かぶ島を、フランシェスカ、あの娘たちの生みの親、レジーナ・バビロン博士が5000年以上も前に造った。それが今はバラバラになって世界中の空に漂っているというの?」

「その通りです」

 

散策に行っていたみんなも四阿に集まり、ネフレンの話を詳しく聞くことにした。

 

「そんな物が空に浮かんでいたら、騒ぎになりそうなもの」

 

レオナがもっともな意見を述べる。

 

「バビロンには外部からの視認(シニン)を妨害する魔法障壁が張られています。このため、地上からその姿を確認することはほぼ不可能なのです」

「それで、いくつこのようなあるのですか?」

「この[庭園]、その他に[図書館]、[研究所]、[格納庫]、[塔(トウ)]、[城壁(ジョウヘキ)]、[工房(コウボウ)]、[錬金棟]、[蔵(クラ)]と9つあります」

 

9つも空に浮かんでいるのか!

 

「私としては、その[図書館]に惹かれる(ヒカレル)わ。古代文明の様々な知識がつまってそうじゃないの」

 

リーンが不敵な笑みを浮かべている。が、

ここの博士の図書館だぞ。山のようなエロ本コレクションじゃないのか。

 

「他の浮き島とは、連絡は取れないのですか?」

 

オハナがネフレンに尋ねる。この質問には、シェスカが答える。

 

「残念ながラ他の姉妹とはリンクが絶たれていて、障壁のレベルが高く設定されていルので、いかなる通信魔法も受け付けまセン。マスターが許可しない限り、下げられるコトはないでしょウ」

「『リンク』......?それに『マスター』ってなんですか?」

 

ムルマが首をかしげてシェスカに尋ねる。

 

「リンクとは、『繋がり、連結』という意味でス。マスターとは『愛しの(イトシノ)旦那(ダンナ)様(サマ)』という意味でス」

「嘘を教えんな。マスターってのは『主人』とか『頭領』って意味だろ」

 

こいつ、「主人」=「愛しの旦那様」みたいに、まぁ、シェスカは愛人枠でいいと言っていたから、仕方がないか。

 

「......主人ってどういうことなのじゃ?」

 

スゥシィが眉根(マユネ)を寄せて詰問(キツモン)してくる。あれ?

 

「夜一様に私の可愛らしいパンティを見られ、身も心も捧げる(ササゲル)コトになりまシた。故に、私のご主人様、マスターでス」

「ほほぉ。パンティとな?」

「あらっ!見たかったのね」

 

シェスカの反応にアリエルとリーンが、立ち上がりスカートを捲し上げていく。

ゆらりとスゥシィが僕の目の前に立つ。

 

「......夜一」

「は...はい?」

「シェスカは彼女なのか?」

「....あ....愛人枠.....はい」

「彼女ではなく愛人枠なら、まぁ、いいじゃろ」

 

 

「これだけ長い間『漂流(ヒョウリュウ)』していて、他の方たちに『遭遇(ソウグウ)』したことは?」

「2度ばかりありまス。3028年前と985年前に。1度目の遭遇は[図書館]で、2度目の遭遇は[蔵]でしタ」

 

どうやらムルマの指摘した通り、何回かは遭遇したことがあるようだ。

 

「結局、他の『バビロン』を見つけるには、それぞれの転送陣を探すしかないのね」

「ちなみに他のところの転送陣がどこにあるかわかる?」

「わかりませン。そもそもマスターがどこカラやって来たのかも知りませんのデ、ちなみにこノ[庭園]の転送陣はドコに?」

「イーシェンの南、海の中だよ」

「イーシェン.....?」

 

シェスカは、イーシェンの土地を知らなそう。

 

「ネフレンとシェスカはこれからどうしたい?」

「私は夜一の彼女になりましたから。一緒に付いていきます」

「私はマスターと共にいたいと思いまス。おはよウからおやすみまデ。お風呂からベッドの中まデ」

 

なんかスゥシィがアワアワし始めた。

 

「.......この[庭園]から離れるのは大丈夫?副管理者か管理人が不在ではなにかあったら困るだろう」

「ご心配なク。[庭園]になにかあったラすぐにわかりますシ、私には[庭園]への転移能力がありまス。[庭園]の管理はオートで充分ですカラ、なにも問題はありませン」

「つきまシては[庭園]へのマスターの登録を済ませテいただきタク。私はすでにマスターの愛人でスが、[庭園]もきちんとマスターの物とシなければなりませン」

「登録?どうするの?」

「ちょっと失礼しまスね」

 

そう言ってシェスカはいすに座る僕の前に回り込み、僕の膝の上に座り、抱きつきながらキスをしてくる。

 

「ちゅ.....ちゅっちゅぅちゅぱっ.....ん......ちゅぅちゅぱっれろっ.......ちゅるっちゅるるるるるるっ......ちゅゅゅぱっ......」

 

アリエルと琥珀、リーンとポーラ、レオナにスゥシィ、オハナにムルマが叫んでいた。

 

「登録完了。マスターの遺伝子を記憶しまシた。これより[庭園]の所有者は私のマスターである鳴神 夜一に移譲(イジョウ)されまス」

「ちょっとなにをしているのですか?私たちの夜一様♥に!」

 

レオナがシェスカに迫る。

 

「遺伝子採取にはコレが1番効率が良いと思いまして」

「......夜一様♥、御屋敷に帰ったら、彼女たちみんなにキスをして下さい!」

「わかりました」

 

 

 

 

 

シェスカとのキスを終え、[庭園]の登録が完了。

今、僕は自分の部屋にいる。レオナに部屋から出ないようにと言われ、天蓋(テンガイ)付きベッドに横たわる。

数分後、ノックする音が聞こえ、扉を開けるとそこには、帝姫がいたので、部屋へ通す。

 

帝姫(ミイ)は部屋へ入ると中央に置かれたソファに腰掛けた。僕は机を挟んだ向かい側のソファに座る。

 

じーーーっ......。

じーーーーーーっ......。

じーーーーーーーーーっ......。

じーーーーーーーーーーーーっ......。

じーーーーーーーーーーーーーーーっ......。

 

「夜一(ヤイチ)」

「は、はい」

「私、怒っていますよ?」

 

いや、そんなこと言われましても.......。元の世界(アッチ)では、婚約者という立場であった帝姫からしたら、僕が他の女の子からキスをされたら面白いわけがない。

 

「私だって、元の世界(ムコウ)から此方(コッチ)の世界に来てからもキスしてもらってないのに、本物の女の子のようなホムンクルスっ娘(コ)に奪われるなんて!」

「シェスカがおはようからおやすみまでって、言ったから?」

「なんでいまさら。夜一が女の子にモテモテなのは、元の世界の時から知ってたから!」

 

元の世界から面倒をかける。

 

「この際だから言っておく、私が思うに今以上に彼女が増えるのは構わないの。その娘たちを不幸にしないなら、文句はないよ」

 

流石、元の世界からの婚約者。

 

「ですが!アッチ(元の世界)からの正妻を差し置いて、キスされるなんて油断しすぎ!隙だらけ!そこは防御して!完全防御です!」

「いや、あれは、さけられな.....」

「言い訳は、見苦しいんだよ。夜一♪」

「はい!」ビシッ

 

夜一は、その場で立ち敬礼する。

 

「夜一!....抱きしめてキスをして下さい。時間がないのです!」

「時間がないって、....もしかして、今いる彼女たち全員と....キスですか?」

「話が早くて助かります♪」

 

後が、つかえているのなら仕方がない。

帝姫にキスをする。今までのお詫びも兼ねて濃厚なキスを。

 

「ちゅ.....ちゅぅちゅぱっ.....ちゅるっれろっ......ちゅるるるっ.......ちゅっちゅぅぢゅるぢゅるるるるっ.....れろっちゅぱっ.....」

「えへへ。やっとしてもらいました!では、レオナと交代しますね♪夜一」

「.......はい」

 

レオナが帝姫と交代に入ってきてキスをする。そして、交代で入ってきたユミナとキスをし、次々に交代で入ってきてキスする。

翌日、焼き菓子とケーキを何種類かを手土産に用意する。いろいろ詰め合わせ、それを小脇にし、右手にケーキを詰めた箱を持つ。あと、ティーセットを一式を【ストレージ】に収納。

 

「『瞬雷』:神界」バリッ!

 

~~~神界~~~

 

バリッと移動し、目の前にはたたみ畳(タタミ)敷き(ジキ)の狭い(セマイ)四畳半(ヨジョウハン)、家具は変わっておらず、茶箪笥があり、黒電話があり、ちゃぶ台の上では煎餅(センベイ)を食べている。世界神様と恋愛神。

 

「.....お、おー。君か。来るなら来ると連絡してくれよ」

「久しぶりぃ~。夜一ちゃん」

「お久しぶりです、世界神様と恋愛神」

「もぉ~。私のことはこれから、華恋(カレン)お姉ちゃんと呼んでね♪夜一ちゃん」

「何故、お姉ちゃん?」

「夜一ちゃんを助けに地上に下り立った時の名前よ」

「.....わかりました。華恋お姉ちゃん♪」

「なぁに、夜一ちゃん♪」

「夜一。わしも地上に下り立った時の名前を決めているのじゃが、いいか?鳴神(ナルカミ) 神之介(シンノスケ)、どうじゃ?」

「神之介.......、神凰(シンオウ)に変えてください」

「何故じゃ?」

「元の世界(アッチ)の祖父の名前が雷凰(ライオウ)なので」

「わかった。神凰と名乗るとしよう」

「それで、夜一ちゃんの用事はなんなのよ♪」

「その前に、この焼き菓子か何種類かのケーキを食べながら、話しませんか?」

「やった~、大好きよ。夜一ちゃん♪」

 

神凰お祖父ちゃんは抹茶ケーキと湯飲みに抹茶を入れ、華恋お姉ちゃんはショートケーキとカップに紅茶を注ぎ入れ、僕はチーズケーキとカップに紅茶を注ぎ入れ、準備が整った。

華恋お姉ちゃんがショートケーキを1口パクッと食べる。

 

「夜一ちゃんの用事は、この世界が一夫一妻(イッブイッサイ)か一夫多妻(イップタサイ)かを聞きたいのよね?」

「はい。華恋お姉ちゃん」

「それわねぇ。........一夫多妻制よ♪」

「彼女がたくさんいても大丈夫なんですね」

 

黙々と抹茶ケーキを食べ、抹茶を啜っていた神凰お祖父ちゃんが口を開く。

 

「夜一は、元の世界でも、彼女がたくさんいたじゃろ。だから、今さら一妻か多妻で悩む必要があるのかのぉ」

「仰る(オッシャル)通りです。神凰お祖父ちゃん」

 

僕は、チーズケーキを全部食べて、気持ちを落ち着かせる。

 

「これで、夜一ちゃんの用事も終わりだね」

「それでは、神凰お祖父ちゃんと華恋お姉ちゃん、また、顔を出しますね♪」

「『瞬雷:ベルファストの御屋敷正門前』」バリッ!

 

~~~御屋敷正門前~~~

 

バリバリッ、と現れた主人を見た門番のトマスが剣を構える。

 

「僕です。トマスさん」

「若様、でしたか」

 

~~~リビング~~~

 

僕が神界から帰ってくると、もう夕方だった。リビングには、僕の彼女以外には席を外してもらっている。彼女が34人と僕だけだ。だけと言っていい彼女の数ではないが。

 

「えっと、今は結婚しません。僕が18歳の誕生日を迎えたら、結婚をしますので、これからは、婚約者として」

 

...........。帝姫が口を開いた。

 

「びっくりした~。いきなり、結婚しませんって言われたから。夜一を追いかけてアッチ(元の世界)から、神様にお願いしてここまで追いかけてきたのに、無駄になったのかと思ったよ♪」

「わかりました。夜一様♥私たちは、婚約者として、これからよろしくお願いいたします♪」

 

彼女たちが喜んでくれて、良かった。

 

~~~自分の部屋~~~

 

僕は自分のベッドの上で、これからの事を考えていると、ノックがしたので、返事をすると、メイド服に身を包んだシェスカがベッドの横の椅子に腰掛ける。

 

「ご主人様に、お話があって来ました。メッセージを預かっています」

「メッセージ.....?誰からって....レジーナ博士しかいないよね」

「はい、レジーナ・バビロン博士から、ご主人様への」

 

シェスカが左手の手首を右手で脈を測るような仕草をすると、左手首の内側が開き、コネクタが引き出された。そのコネクタの先を僕に差し出してきた。

僕は、そのコネクタの先をまじまじと見る。

 

(......この形って、どこかで見たような......!?まさか?)

「このコネクタって....まさか?」

「ハイ。そのまさかデス。ご主人様」

 

壁にかけてあったコートの懐からスマートフォンを取り出し、シェスカの差し出してきたコネクタを接続する。

独特な電子音が響き、半透明(ハントウメイ)なゲージが画面に表示され、少しずつ見通しのゲージが貯まっていく。やがて緑のゲージが100%になると、スマートフォンの画面が輝き始めた。

光がおさまると、なんと綺麗な女性が椅子に腰掛け、此方(コチラ)を見据えていた。

 

「レジーナ・バビロン博士デス」

「この綺麗な女性が......?....まぁ、綺麗な薔薇には、刺があるって言うしね♪」

『やあやあ、初めまして。ボクがレジーナ・バビロン。まずは[庭園]及び、ネフレンとフランシェスカを引き取ってくれた礼を述べよう。ありがとう、「鳴神 夜一」君』

「こちらこそ。......?」

 

どういうことだ?

 

『わかるよ。君の疑問はもっともだ。それを知りたくなるのも当然だよね。君は「そういう人間」なのだから』

 

そういう人間って.....。

 

『君の疑問に答えようじゃないか。じっくりと見るといい』

 

そう言うと、博士は自らのスカートを捲し上げた。レースのついた黒いパンティが目に飛び込んでくる。ブゥバァッ!刺激的なパンティをお穿きで。

 

『ボクのお気に入りだ』

「有難う御座います!」ビシッ!

 

僕は直立し敬礼した。

 

『なぜボクが君のことを知っているのか?それはボクが未来の出来事を覗くことができる道具を持っているからだ』

 

未来を覗く道具?

 

『時空魔法と光魔法を組み合わせて、そこに無属性魔法の.....、とにかくその道具は未来を映し出すことができる。この道具は断片的(ダンペンテキ)な物事しか覗くことができない上に、覗く時代を決められてしまう欠点があるんだ。使用者と同じ生体波動を持つ者を時代を超えて(コエテ)捉え(トラエ)、映し出すシステムなんでね。ボクの場合、全属性持ちなんてことが逆に災い(ワザワイ)して、遠すぎる君の自宅しか覗けないわけだが』

 

この女性と同じ生体波動....お姉さま♪

 

『ま、それを使って君のことを見つけた。初めはちょっとした興味からだったんだけど、だんだんと楽しくなってきてね。君と君の仲間の冒険(ボウケン)と君の女性を惹き付ける「女の子ホイホイ」とかを楽しく眺めて(ナガメテ)いたんだが、ある時それが見えなくなってしまった。なぜかって?未来が変わってしまったのさ。いや、不確定になってしまったという方が正しいか』

 

不確定.....?

 

A(過去)ーーーーーーーB(未来)

 

という時の流れがあるとして、その間に変更点(ヘンコウテン)Cができたとしたら、その未来はBではなく、B'となる。

お姉さまが見ていた未来がBで、未来を揺るがす変更点Cが起きかけて、B'の未来が出来つつあった。

 

『パルテノの滅亡(メツボウ).....いや、実際、君たちの時代ではボクらの文明は滅んで(ホロンデ)いるのだし。とにかく人類の敵、フレイズどもの侵略(シンリャク)によるパルテノの滅亡は、すてまにボクが見ていた未来に織り込まれていたんだ』

 

フレイズ...。......フレイズだって!水晶の魔物ならコオロギ型を倒した。

 

『ボクらも戦ったが、幾万(イクマン)ものフレイズによるパルテノの滅亡は止められ(トメラレ)なかった。そしてそきつらが世界中に拡散したことによる世界の滅亡は目の前に迫っていたんだ。だから、ボクは未来が見えなくなった』

 

AーーーCーーーB'に変わりつつあった。

 

『そう、君も気づいている通りなぜか世界は滅亡しなかった。ある時を境にフレイズたちが世界から消えてしまったんだ。理由はわからない。でも、おかげでまた君たちの未来が見えるようになった』

 

B'にはならなかったと。

 

『ま、そういうわけでボクは君のことを知っていたというわけさ。あと、帝姫とレオナも一応全属性持ちだろう。弱いけど。ボクの造った「バビロン」は君のために遺した(ノコシタ)ものだ。好きに使ってくれたまえ』

 

弟をからかうお姉さま♪

 

『一応、君以外に「バビロン」が渡って(ワタッテ)しまうのはよろしくないので、分散させておいたが、ま、残りは見つけても見つけなくても構わない。気が向いたら探せばいいさ。あまり強すぎる力はその時代には必要ないらしいしね』

 

しかし、この時代にも、フレイズが2体出現している。

 

「......考えても仕方がないか。転送陣が見つかってからで」

「では、私ノ夜這いを?」

「じゃあ、明かりを消そう」

「ハイ、ご主人様!」

 

 

 

 

翌日、朝食の時、琥珀と出かけると言うと、誰が付いていくかで大騒ぎになった。そして、十重(トエ)に決まり、琥珀はその腕に抱かれ。王都の商業区である南区に出かけた。

目的地は宝石店。婚約指輪を34人分。買おうかと思いまして。

結婚・婚約合わせて計68個と僕の結婚指輪を買うと69個。

そんなことを考えながら商業区を歩いていると、なにやら揉めている声がしてきた。

 

「夜一お兄様。あそこの屋台からです」

 

十重が指差す方向を見る。

 

「あのな、お姉ちゃん。それがどこの金かわからねえが、それじゃあ支払えねえの。わかるかな?」

「困ったなあ。私、これしか持っていないんですよ.......」

 

僕より背が低い女の子がいた。黒髪ツインテールで身長140で、旅人風.....?というか、暗殺者風の黒いマントを羽織、その下は、白いドレスを着ていて、白いヒールを履いている。お嬢様のお忍び?手には食べかけのクレープを2枚持っている。

 

「金が無いな無銭飲食だ。警備兵のところへ突き出してやる」

「ええっ、だからこれで払えないの?これもお金だよ?」

「だからこの国ではそんな金使えねえって.....!」

「あのー.....」

 

たまらず声をかける。

 

「なんだい、アンタは?」

「その代金、僕が払います。それならいいでょ?」

「そりゃ金さえもらえりゃ文句はねえが.....」

 

銅貨を1枚払う。

 

「ありがとう。助かりました」

「いや、それより、お嬢様は共通通貨を持ってないのかな?」

「前はこれで買い物ができたのだけれど?」

「変わった形だね」

「気に入ってくれたのなら、差し上げます。先ほどのお礼に。この時代では使えないみたいなので」

「そう?じゃあ遠慮なくクレープ代として貰うよ」

「僕は夜一。鳴神 夜一。隣の娘が」

「私は夜一お兄様の彼女の十重。貴女は?」

「ヘスティア。よろしくお願いいたします、夜一」

 

ヘスティアさんか。可愛いな♪

 

(これが、夜一お兄様の「女の子ホイホイ」?)

 

「うーん、これからどうしようかな。お金がないといろいろ困るよね?」

 

ヘスティアが残りのクレープをパクパク食べながら、此方を見て首を傾ける。僕と十重もクレープを頬張りながら、広場の噴水前を行き交う人たちを眺めている。

 

「そりゃあ、なんか仕事をさがさないとね」

「夜一クンはなんの仕事をしているの?」

「僕?」

 

そういえば、僕の稼ぎって?

 

「僕は冒険者ギルドの仕事をこなしてお金を貰っている。魔獣とか倒したり、商人の護衛とか」

「ああ、なるほど。それなら私にもできるかもしれないね」

「ギルドに登録するのか?でも武器は無し?」

「う~ん、夜一クンと十重ちゃんだけ、特別ねっ。私、火魔法と無属性魔法がつかえるの」

「とにかくギルドまで案内するよ。僕もギルドに用があるから」

「ありがとう、夜一クン♪」

 

ヘスティアが抱きついてきた。たわわな胸が。それを見て十重が反対側に抱きつく。琥珀は僕の頭に。そのまま、僕たちはギルドへと歩き出した。

 

「どうして、ヘスティアは黒いマント羽織っているの?」

「私の存在がバレないように.....です」

「ヘスティアお姉ちゃん。街中では、バレちゃいますよ」

「どうしよう。私、このドレスしか持っていなくて」

「僕がプレゼントしますよ。この出会いに」

「いいのですか?夜一クン?.....十重ちゃんの目が....」

「十重ちゃんどうしたの?」

「べ....別に。私にもお洋服をプレゼントして下さい」

 

ギルドへの足を、奥様方(オクサマガタ)の御用達(ゴヨウタシ)「クラシオン」に向かう。

 

~~~クラシオン~~~

 

話をしながら、だったので早く着いた。

 

「いらっしゃいませ。クラシオンへようこそ。お客様は当店は初めてですか?」

「いえ。違います」

「貴方は2人の彼女さんを連れていた、お客様ですね。今日は、どのような物をお探しですか?」

「此方の彼女たちなのですが」

 

十重とヘスティアを僕の前に。

 

「お嬢さんは、どのような物をお求めで?」

「私は、着物しか着たことがなく、似合う服がわかりません。教えて下さい。夜一お兄様に可愛いなって言われたいので」

「では、此方(コチラ)のドレスはどうでしょうか?」

「そちらの色違いは、ありますか?」

「置いてありますが。どの色を要望でございますか?」

「薄黄色なんですけど」

「少々お待ち下さい」

 

女性店員が帰ってくるまでに、ヘスティアの普段着を探すことにした。

 

「此方が薄黄色のドレス。お召しになりますか?」

 

十重は頷き、試着室へと向かう。

 

「彼方(アチラ)のお客様が試着している間に、此方のお嬢様のお求めですか?」

「あ....あの、普段着を持っていないので、探しているのですが?」

「それでは、今、着られているドレスと違う、普段着用のドレスを持ってきますね」

 

ヘスティアの普段着用ドレスを探しに行った女性を待っていると、十重の着替えが終わったようで、お披露目。

 

「夜一お兄様、私のドレス姿。可愛いですか?それとも、綺麗ですか?」

「十重ちゃん。とても綺麗だよ」

「此方のドレスは、銀貨3枚です。今、試着されてるお品も銀貨3枚です」

 

お金を女性店員に渡す前に、ヘスティアの試着室から現れる。

 

「どうですか、夜一クン?似合っていますか?」

「綺麗だよ。ヘスティア」

「では、2着分のお金、銀貨3枚です」

 

女性店員が持ってきていた銀盆に、6枚の銀貨を置く。そして、琥珀と十重を【ゲート】で家に送り、僕とヘスティアは冒険者ギルドへと向かう。

やがてギルドの看板が見えて来た。中に入ると、いつものようにボードの前では賑わいをみせている。受付のお姉さんの前にヘスティアを連れていく。

 

「鳴神 夜一様。今日はどのような御用件でしょうか?」

「此方の女性の登録の手続きをお願いします」

「かしこまりました」

 

ヘスティアが登録の説明をされている間に、依頼ボードの前にいき、眺めていると、絡まれた。

 

「おうおう、兄ちゃん。今日連れている姉ちゃんは見ない顔だな」

「冒険者になりたいというので、連れてきただけだ」

「兄ちゃんの連れじゃないのなら、俺たちが冒険者のイロハを手取り足取り教えてやっても?」

 

後ろの野郎どもも、エロい目でヘスティアを見ている。そこへ、ヘスティアが笑顔で走ってくる。

 

「夜一夜一。見て!」ジャーン

 

ヘスティアが黒いギルドカードを僕に見せてくれる。

 

「姉ちゃん。これから、冒険者になるなら、俺たちが手取り足取り教えてやろうか」

 

男たちのエロい目を見て、怖くなったのか、僕の後ろに隠れて震えている。

 

「ヘスティアが嫌がっているだろ!」

「兄ちゃんには、関係ないだろう。どけよ!」

 

このままでは、この男どもの餌食になってしまう。ここは仕方がない。僕はヘスティアを抱きしめキスをした。

 

「ちゅぅうぅぅぅぅぅぅぅ.....ぢゅるうぅぅぅぅぅ.....レロッぢゅる......ぢゅるぢゅるっ.......ぢゅるぢゅる....」

「ヘスティアは、俺の彼女だから、手を出そうものなら、死を覚悟してもらおう」

 

これでも、わかってもらえなかったので、僕のギルドカードを見せてやる。

 

「すみませんでした。夜一様!」ビシッ!

 

男どもが一斉に僕に対して敬礼する。

 

「ギルドカードを手に入れたなら、初めは簡単な依頼からして、徐々に上げていくといい」

「ありがとう。夜一クン」

 

さて、僕も依頼を受けないと、自分が使うお金が無い。家族全員分とは、別にしているからな。

 

~~~宝石店・個室~~~

 

「夜一様。先ほどのお話を伺いますと、34人のお嫁さんに婚約指輪と結婚指輪を渡すと、ここまではよろしいですか?」

 

僕は頷く。

 

「一般的に婚約指輪は1つ金貨5枚ですね。なので、34×5=170枚です」

「一般的に婚約指輪は1つ銀貨5枚ですね。なので、34×5=170枚です」

「わかりました。デザインは先ほど渡した形で、お願いします」

 

~~~御屋敷の談話室・嫁の集い~~~

 

十重を取り囲むように座っていた。

 

「十重!夜一殿と一緒だったであろう。どうしたのだ」

「えっえ~と。(全員分の結婚・婚約指輪を買いに宝石店に向かっていた事は、内緒だから)夜一お兄様は、私にこの街を案内してくれていたの」

「それで........はっ。わかったわ。十重ちゃんが悪くないの」

「私、何も言ってないよ。帝姫さん」

「だいたいわかるわ」

 

十重と綾音と椿とネフレンとシェスカ以外は頷いていた。

 

「夜一は『女の子ホイホイ』だから、困っている女性を助けてあげたんでしょ」

 

十重は頷く。

 

~~~冒険者ギルド・受付~~~

 

僕は、討伐依頼から帰って来て、冒険者ギルドに入り、受付のお姉さんのところへいく。

 

「夜一様。此方が今日の全討伐依頼の報酬です。金貨60枚、銀貨60枚、銅貨100枚になります」

「ありがとうございます♪」

 

十重への問い詰めが夕方にまでかかり、終わる頃に夜一が帰って来た。が、疲れたと言って、自分の部屋へと向かう。

 

これが、3日間続いた。

 

~~~御屋敷・談話室~~~

 

僕は、この3日間の出来事を問われた。その事で、今、御屋敷の談話室に彼女たちに呼ばれている。

 

「で、夜一!この3日間の弁明は?」

「実は、婚約指輪と結婚指輪のお金を稼ぐために、朝から晩まで働き、やっと昨日、お金が用意でき、宝石店に行って、お金を払ってきた」

 

帝姫から始め、彼女たちに婚約指輪を渡していく。

 

 

 

次の日、冒険者ギルドへと向かうメンバーを選出する。

僕と琥珀、黒曜&珊瑚、帝姫とレオナとユミナ、エルゼとリンゼと八重、スゥシィとアルマ、クインズウェイとオハナとフェルクリンゲン、タイシェトとムルマンスクとレム。

 

ギルドへ辿り着くと、ざわざわと賑わうホール。

僕たちは受付のお姉さんのところへ。

帝姫とレオナとユミナ、エルゼとリンゼと八重、スゥシィとアルマとレムが黒曜&珊瑚を連れて、ボードの方へ依頼書を見に行った。

 

「あの、僕に連れられ冒険者登録をしたヘスティアって女の子なんですが」

「夜一様でしたか。はい。覚えていますよ。あれは格好良かったですよ。荒くれものの冒険者から守るためにキスをして「俺の彼女に手を出すな!」おほん。ヘスティアさんでしたよね。一角狼の討伐依頼をこなして、依頼料を受け取って行きましたよ」

 

初心者だったら、一角狼なら妥当か。

 

「?その依頼でヘマを?」

「依頼の失敗ではないのですが。依頼は一角狼の討伐、討伐数は5匹だったのですが、あの女性はそれ以上を狩ってきてしまいまして.......」

「討伐部位は角ですよね?何本持ってきたのですか?」

「確か50本以上はありましたね」

「50本以上!?」

 

狩り過ぎだろう!

 

「討伐依頼数は5匹でしたので、依頼料は定額しか出せませんでしたが、残りの角は相場で買い取らせていただきました。とても喜んでいましたよ」

 

僕たちは依頼ボードに食い気味に張り付いている8人のところへ戻った。

 

「どう、なんかいいのあった?」

「あ、夜一さん。これなんですけど......」

 

ユミナが赤い依頼書が貼られているボードを指差す。

僕とクインズウェイとオハナとフェルクリンゲンとタイシェトとムルマンスクの6人は、ランク銀。

帝姫とレオナとレムの3人は、ランク赤。

エルゼとリンゼと八重とスゥシィとアルマの5人は、ランク青。

ユミナは、ランク紫。

確か、依頼書の受けられる色に対して、パーティー内の半分以上がその依頼書の色以上の人数なら受けられたはずだ。だから、僕たちのパーティー内には、15人のうち9人いる。なのでユミナが指差した依頼書を読んでみる。

 

「ミスリル....ゴーレム?場所はメリシア山脈の麓、報酬は白金貨5枚.....ランク赤の割には安い気が.....」

「確かに安いですけど、相手はミスリルゴーレムです。その体は素材として破格の値段で取引されます。大きさ次第(シダイ)ではとてつもない金額になりますよ」

 

なるほど、家族のお金と自分用のお金が必要。

 

「なお、B級以上の称号持ちあれば、この依頼はランクを問わない....?」

 

称号ってあれかな?こないだ貰った「竜殺し(ドラゴンスレイヤー)」?

 

「『竜殺し』はA級称号に当たります。ですから.....」

「ユミナ以外は、『竜殺し』を持っていて、半分以上がランク銀と赤だから、受けられるね」

 

依頼書を剥がし、受付へと持っていく。

 

「はい、この場合パーティーの過半数が称号持ちとランク銀と赤が半分以上いてるので問題ありません。詳しく内容を聞かれますか?」

「はい、お願いします」

 

依頼内容メリシア山脈の麓、ステア鉱山の採石場にミスリルゴーレムが居着いてしまい、鉱山での採掘が全くできなくなってしまったそうだ。

 

「依頼内容はそのミスリルゴーレムの討伐。依頼を受けられますか?」

 

改めてみんなに確認し、依頼を受けることにする。討伐部位はゴーレムの中枢核。

今回の依頼を達成したら、憧れのミスリルが手に入るが取っておいて。

 

「それでメリシア山脈までどうやって行くの?」

 

と、エルゼが言う。

 

「そこは、この前手に入れた「バビロンの遺産[庭園]」で移動したい」

 

ムルマンスクが答える。

 

 

 

 

「では出発いたしマス」

 

何日かかけて、[庭園]をベルファストの御屋敷の上空まで持ってきていた。

現在の高度。200メートルほどを飛行中。

 

「予定では1時間ほどで到着しまス」

 

[庭園]の中央に設置された制御装置の前で、シェスカが答える。

僕たちは[庭園]の片隅(カタスミ)で大きなシートを敷いて、お茶会を開いている。

 

「あと1時間ほどで着くって」

 

クインとフェルの間に座るとフェルが可愛らしくサンドイッチを渡してくれた。ハムとチーズの簡単なサンドイッチだが、1口食べて、首をかしげる。

 

「どうかしたのかよ?」

「いや......いつもの味と違うが.....これも美味しいな」

「そ...そうか。作ったかいがあったな」

「これってフェルが?」

「そ...そうだ。私は今まで戦う事しかしてこなかったが、これからはそれだけではダメなんだ!夜一の嫁になるんだから、料理のひとつでもしないといけないから、フレアさんに教えてもらいながら...作ってみた」

「フェルの食べたの、なら、あたしもこれ作ったのよ。食べてみて」

「へえ。エルゼも。じゃあ頂くよ」

「あっ、それは.....」

 

差し出されたのは鶏肉の唐揚げ。

 

「モグモグ....モグモグ....スパイシー?激辛.....?」

「どう?美味しい?」

「この激辛唐揚げは、僕以外は耐えられない。だから、他の彼女たちは食べない方がいい」

「やった。初めて誉められた.....?他の彼女たちにはって?」

「夜一さん。辛い料理でも、平気なのですか?」

「こっちに来る前、御屋敷では、おばあちゃまが料理を作っていて、お母様は料理が下手ではなかったんだけれど、味覚が普通の人より刺激に強く、それを食べていたから僕は大丈夫だよ」

 

メリシア山脈に着くと山沿いを北上し、ステア鉱山の上空に[庭園]を静止させた。眼下に見える採掘場を眺め、【ゲート】を開いて転移する。シェスカは[庭園]で留守番。

地上に降り立つと静まりかえっていて、なんとも不気味な雰囲気を醸し(カモシ)出していた。

 

「誰もいないんでしょうか?」

「そりゃあ、ゴーレムの縄張りに近づく奴はいないわよ。アレは自分のテリトリーに侵入する者を排除しようとする習性があるらしいからね。多分あたしたちに気付いたら向こうからやってくるわ」

 

ユミナとエルゼの会話を聞きながら、僕はマップアプリで「ミスリルゴーレム」を検索する。ああ、いるな。4体。

僕とスゥシィとアルマがミスリルゴーレム1体に対して戦い、帝姫とクインズウェイとエルゼとリンゼの1組対ミスリルゴーレムが1体、レオナとオハナとフェルクリンゲンと八重の1組対ミスリルゴーレムが1体、レムとユミナとタイシェトとムルマンスクの1組対ミスリルゴーレムが1体と戦う。

 

「その採掘場に4体のミスリルゴーレムがいてるから」

 

僕は【ストレージ】から、聖霊龍牙刀(セイレイリュウガトウ)を取り出し構え、スゥシィは【ストレージ】から、クリスタルロッドを取り出し、光速爪甲(コウソクソウコウ)の籠手(コテ)を取り出し構える。

 

帝姫は【ストレージ】から、透刀(トウトウ)・封燐霞慚(フウリンカザン)を取り出し構える。クインズウェイが【ストレージ】から、大剣を構え、エルゼは【ストレージ】から、紅緋(コウヒ)のガントレットを取り出し構える。リンゼは【ストレージ】から、クリスタルロッドを取り出した。

 

レオナは【ストレージ】から、クリスタルロッドを取り出し、オハナが【ストレージ】から、双拳を取り出し構え、フェルクリンゲンが【ストレージ】から、爪拳取り出し構え、八重が、透刀(トウトウ)・暝響紫翠(メイキョウシスイ)と、透刀(トウトウ)・勲紫霰洛(クンシサンラク)を鞘から抜き構える。

 

レムは【ストレージ】から、モーニングスターを取り出し、ユミナは【ストレージ】から、迦深妃弓(カミヒキュウ)を取り出し構える。タイシェトは【ストレージ】から、魔鎌(マレン)を取り出し構え、ムルマンスクが【ストレージ】から、魔銃(マジュウ)を取り出し構える。

 

「ちょっと準備をしてくるから待っていて」

 

僕はみんなにそう言うと【ゲート】を開き、[庭園]のシェスカのところへ向かった。

準備をすませて採掘場へ戻ってくると、ズシン、ズシン、ズシン、ズシンという足音が複数聞こえてきた。どうやらミスリルゴーレムの感知能力は鋭かった。

 

「ちょっとどこ行ってたのよ!もう余裕ないわよ!?」

「来たでござる!」

 

坑道の入口から太陽に照らされたミスリルボディが現れた。

ゴツゴツとした岩のような体だが、全て金属の光沢を放ち、その大きさは6メートルはあるだろう。

 

「や...夜一さん、あれ!」

 

ユミナが指差す坑道から3体のゴーレムがのそりのそりのそりと姿を現した。

僕たちの気持ちなどお構い無しに、ゴーレムはそばにあった大岩を持ち上げてこちらに投げ飛ばしてきた。

先ほど分けた4人1組で散開してそれを避ける。地面に激突し、粉々に砕け散った岩石の欠片が四方八方に飛び散った。

 

「ちょっと試したいことがあるから、みんな!【アクセルブースト】!」

 

一瞬にしてゴーレムが4体とも消えた。

 

「や....夜一よ!?今、何をした.....?」

「ん?ああ【ゲート】を使って転移させた」

 

スゥシィが僕に尋ねてきたので軽く説明する。

 

「転移させたって、どこへですか?」

 

アルマの質問に、僕は人差し指を上に向けた。

 

「「は!?」」

「「「「は!?」」」」

「「「「は!?」」」」

「「「「は!?」」」」

 

さっきシェスカに10000メートル上空まで行ってもらい、このための出口を確認してきた。

やがてキィイィイイイイィィィィンという甲高い(カンダカイ)音と共に、採掘場の四方、東西南北それぞれのところへととてつもない衝撃音が轟いてきた。それを合図に僕たちは散開する。

 

僕たちは北の爆震地(バクシンチ)へ向かう。

アルマは【アクセルブースト】を発動し、その速度のまま、中枢核が隠されている胸部目掛けて攻撃を繰り出す。【アブレーショングリン】と、そこから弾き出された中枢核に目掛けて、【アクセルブースト】で近づいたスゥシィが魔法剣を放つ。氷魔法【フロストブレイド】で斬りつける。僕は【ストレージ/イン:ミスリル】でミスリルを回収する。

 

帝姫たちは南の爆震地へ向かう。

エルゼが【アクセルブースト】を発動し、その速度のまま、中枢核が隠されている胸部目掛けて攻撃を繰り出す。紅緋(コウヒ)に付与されている『灼熱』が胸部を溶かし、中枢核が露になる。

そして、リンゼは露になった中枢核目掛けて。

 

「【水よ来たれ、バブルボム】」

 

中枢核に大きな亀裂が走り、そこを目掛けてクインズウェイの剣撃【如麗火薩(ニョライボサツ)が炸裂する。帝姫はクインズウェイの後に、炎魔法を纏わせた、封燐霞慚で斬りつける。そして、残ったミスリルは僕が【ストレージ】に回収する。

 

レオナたちは東の爆震地へ向かう。

フェルクリンゲンが【アクセルブースト】を発動し、その速度のまま中枢核が隠されている胸部目掛けて【火砂紋天(ビシャモンテン)】で攻撃して、中枢核が露になり、そこへ、オハナが桜嵐(オウラン)】を放ち砕き、レオナが止めの氷魔法『グレイズ』で粉々に。残ったミスリルは僕が【ストレージ】に回収する。

 

レムたちは西のばくしへ向かう。

ムルマンスクがその場から狙いを定めて【シャイニングレイン】を撃ち、中枢核が隠されている胸部を撃ち抜き、ユミナがそこへ【迦深妃弓】で、【スパイラルアロー】を放ち、胸部の中枢核を射抜き(イヌキ)、そこへレムのモーニングスターに氷魔法を纏わせた【アイシクルショット】が打ち砕く。残ったミスリルは僕が【ストレージ】に回収する。

 

「よし、じゃあ家に帰るとしようか」

 

ギルドへの報告は明日にしよう。【ゲート】を開いて、[庭園]へと繋ぎ、みんなで戻り、シェスカに依頼が完了したことを報告して、ベルファストの御屋敷へと移動して、夕御飯までリビングで休憩していると、アリエルとリーンとポーラが入ってきた。

 

「夜一よ。残りのバビロンの転送陣を探さないのか?」

「それで、転送陣の情報は?」

「これといった確かな情報はないわね」

「なら、確かな情報が入ってきたら、行ってみよう」

 

アリエルとリーンにありがとうと、2人からキスの褒美が。

 

 

 

 

「ミスリルゴーレムが4体ですか.....。申し訳ございません。こちらの調査ミスですね」

 

そう言ってギルド受付のお姉さんが頭を下げる。ゴーレムの討伐という依頼内容に間違いはないのだが、鉱山の解放が目的だったのならば4体討伐と書くべきだったのだろう。

 

「この場合、きちんと4体分の討伐部位とございますし、こちらの手落ちでもございますので、報酬の4倍、白金貨20枚を支払わせていただきます。もちろんギルドポイントも4倍にさせていただきます」

 

まぁ、それが当たり前だよね。

カウンターに白金貨を20枚並べ、僕たちのカードにいつものように、ポンポンポンポンポンポンポンとハンコを押していく。

 

「このポイントで夜一(ヤイチ)様とクインズウェイ様とオハナ様とフェルクリンゲン様とタイシェト様とムルマンスク様の6人以外の方々のギルドランクが上がりました。おめでとうございます」

 

帝姫が叫ぶ。

 

「なんで、夜一たちのギルドランクが上がらないのですか?」

「それはですね。その6人はギルドランク最高の銀なのです。なので、これ以上上がりません」

 

レオナが手を挙げて質問する。

 

「確か、ランク金があったでしょう。あれは?」

「ギルドランク金は、簡単にはなれないのです。ですので、今回ギルドランク銀になられた方は帝姫(ミイ)様とレオナ様とレム様の3人です。そして、ギルドランク赤になられた方はエルゼ様とリンゼ様と八重(ヤエ)様とスゥシィ様とアルマ様の5人です。最後のユミナ様はギルドランク緑になりました」

 

あれ?ユミナ以外のギルドカードに新しいシンボルが加わっていた。それは「ドラゴンスレイヤー」のシンボルの横に追加されていた。ごーれの頭のシルエットにヒビが入っている四角いシンボル。

 

「さらに今回の討伐により、ゴーレム討伐の証、『ゴーレムバスター』の称号をギルドから贈らせていただきます」

 

そのままギルドを出て、彼女たちは御屋敷に帰るというので、帝姫たちに琥珀がついていく。僕は黒曜と珊瑚を連れて訓練場へ向かう。

 

「おい貴様、ここで何をしている」

 

声をかけられ振り向くと、若い騎士たちが10人ほどこちらをうかがっていた。

 

「見慣れん顔だな。誰かの使用人か?ここは貴様のような者が来るところではないぞ!」

「ああ、いや、レオン将軍を探していて」

「こいつも軍に入ろうとしてるんだろ。レオン将軍に取り入って」

「軍の方は数を揃えないと格好がつかないからな。平民どもでもいないよりはマシなのさ。我々騎士団のように少数精鋭、選ばれた名誉ある者とは違う」

「おいお前、レオン将軍がたまに連れてる女の男なのか?」

「......だったらなんです?」

「あの女を捜すなら将軍のところのベッドの中でも捜すんだな。今ごろいい声をあげて、ぎゃあぁぁぁぁ!?」

 

そいつの言葉を最後までまたず、【ストレージ】から聖霊龍牙刀を取り出し、超神速(チョウシンソク)抜刀術(バットウジュツ) 無忘(ムボウ)・儚搦悔刃(ボウジャクブジン)を茶髪(チャハツ)の頭に斬り(キリ)刻む(キザム)。

 

「ぐぅあっ!?お前、何をした」

「改心してもらうつもりだよ♪俺がその精神を叩き直してやる。かかってきな」

 

足下で頭を抱えている茶髪の横腹に蹴りを入れる。

 

「貴様!その者はバロー子爵(シシャク)家の次男だぞ!それを殴ってタダですむと.......」

「子爵だぁーー?俺は、侯爵(コウシャク)なんだけど。それは、まぁいい。今は、お前らがかかってこいよ!あぁーん!!」

 

僕の周りを若手の騎士たちが取り囲む。剣を抜いて構え、殺気がこちらに向けられるのがわかった。一(ヒィ)、二(フゥ)、三(ミィ)..........十(トォ).....10人ねぇ♪

僕は、剣を鞘に納め、超神速抜刀術の構えをとる。

 

「おいおい、今さら怖じ気づいたのか!」

 

.............。

 

1人が斬りかかってくるが、殺気が漂っているので、交わすのと同時に、超神速抜刀術 無忘・儚搦悔刃を刻む。これで9人。

 

「がぁはっ!」

 

相手はよろめき地面へと倒れた。仲間が斬られた(ヤラレタ)と思ったのか、残りの奴らは腰が引けていた。

 

「一斉に斬りかかれ!同時に攻撃するんだ!」

 

金髪(キンハツ)が叫ぶ。どうやらあいつがリーダーらしい。

 

向こうが行動を起こす前にこちらから斬り刻む。軌道が見え見えの剣筋をかわし、頭を斬り刻む。そして、刻まれて苦しみ(クルシミ)3人は倒れる。残り7人。

それだけで他の者も動揺して動きが鈍る。話にならない。後はもう、お遊びのようなもの、次々と苦しみ倒れていく。残りは金髪1人になっていた。

 

「うっ、うわあぁあぁあっ!」

 

大声を上げて金髪が一目散に逃げ出した。仲間を見捨てて敵前逃亡とは、なってないね!

 

「【アクセルブースト】!」

 

金髪を抜き去りざまに、超神速抜刀術 無忘・儚搦悔刃を頭に斬り刻む。

 

「間に合わなかったか」

 

声をかけられたが、遅かったようだ。僕は納刀してから振り向くと、1人の騎士が立っていた。40代の銀髪(ギンハツ)の騎士。

 

「ふ、副団長!こ、こいつがこいつがいきなり!」

 

茶髪が朦朧(モウロウ)としながら、銀髪の騎士に訴えかけて意識が失った。副団長?

 

「今までは実家の方がうまく揉み消していたようだが、今回はいかない。集団で1人に襲いかかり、挙句の果て(アゲクノハテ)、返り討ち。情けないことこの上ない。お前たちの処分は追って通達する。倒れている奴らにも伝えておけ。言っておくが、意趣返し(イシュカエシ)などは考えない方がいいぞ。彼に手を出せばお前たちだけではかく、家が取り潰しになりかねんからな」

「あの、副団長さん、副団長さん。その茶髪の奴はもう意識を失っています」

 

副団長さんが今度は僕の方へ視線を向けて、深々と頭を下げた。

 

「そうかすまない、迷惑をかけた。騎士団の者が全てこんな奴らではないとわかってほしい」

「.....いえ、殺してはいませんから。どうかお気になさらず」

「しかし、殺られていないとは言っても、倒れた奴ら苦しんでたぞ?倒れる前」

「そ.....それは、先ほどの剣技は、過去におろかな行いを犯している者ほど苦しみが酷く、目覚めるのも遅くなります」

「そうか.....。改めて。王国騎士団副団長、ニール・スレイマンだ」

「鳴神(ナルカミ) 夜一(ヤイチ)です。よろしく」

「知ってるよ。知る人ぞ知る有名人だからな」

 

笑いながら差し出された手を、僕は複雑な思いで軽く握った。

 

「少数だがやはり家柄とかにしがみつく者がいてな。伯爵家の新兵が男爵家の隊長に従おうとしなかったり、また逆に隊長の方が新兵に媚びたりな。まったくくだらない話さ」

 

ニールさんが苦々しく話す。

 

「まあ、今回は渡りに船だったよ。あいつらは騎士団にとって獅子身中の虫になりかねんからな。今までは実家の手回しでかわしてきたが、今回はそうはいかん。なにせ姫様のフィアンセに手を出したのだからな。首がつながっているだけありがたく思ってもらいたいもんだ」

 

この人、初めから僕とあいつらが揉めるのを見てたな。

 

 

 

**********

 

 

 

「........昨日の今日とは」

 

月明かりに浮かぶ我が家の庭に、50人ほどの襲撃者が転がっていた。外傷は無いが血を吐き死んでいた。中にはあのときの金髪や茶髪、赤髪も交じっている。あとは屈強な男たち。私兵団か雇われた傭兵。

怪しい集団がこっちに向かっているとラピスから情報を得て、門番のトムさんに居眠りをしているフリをしてもらった。

怪しい集団が闇夜に紛れて庭に侵入してきたのだ。

庭で待ち受けていた僕に驚いたようだが、1人とわかると一斉に飛びかかってきた。

僕は【ストレージ】から取り出していた、透刀(トウトウ)・瞬華襲刀(シュンカシュウトウ)の技が一閃。超神速(チョウシンソク)抜刀術(バットウジュツ)が。

 

「無犠(ムギ)・除帰消葬(ジキショウソウ)!」

 

50人もの不埒者(フラチモノ)を外傷なく、庭に転がっている。

 

「あれかな、ニールさんが言ったこと.......、言っても意味が無いね。死人(シニン)にには届かないね♪御愁傷様(ゴシュウショウサマ)」

 

血を吐き、転がっている金髪たちの所へ歩み寄る。確かに殺ったね(ヤッタネ)♪

 

「片付いた、夜一」

「あぁ。帝姫か。確実に殺ったよ(ヤッタヨ)♪」

「殺る(ヤル)のはいいけど。あんたは身内に手を出されたら殺らない(ヤラナイ)と止まらないん(トマラナイン)だから、みんなに引かれないよう、しないといけないね」

「もう、遅いかも.....」

 

レオナを始め、彼女たちが駆けつけてきた。

 

「この死体(シタイ)たち、どうしますか?」

「まあ、俺の身内に言葉だけだとしても、手を....口を出したからには、死(シ)を持って償って(ツグナッテ)貰わなければ(モラワナケレバ)ならない」

 

トムさんには、ニール副団長とその部下を呼んできてもらっている。

 

「夜一殿。殺されて仕舞われたのですね」

「仕方がないんだと、諦めて下さい」

「今回のことは、此方の監督(カントク)不行き届き(フユキトドキ)。此れから(コレカラ)は此のような(コノヨウナ)ことがないように致します。遺体(イタイ)此方で処分をさせてもらいます」

 

数日後、俺の身内に手をいや、口を出した、いくつかの家に爵位剥奪という、国王陛下のお言葉が下ったという。

騎士団はこれを恥とし、1層の規律遵守を心がけ、この後、家柄による格差は騎士団内では無意味とされたそうである。

 

 

 

 

 

「んー、やっぱり立体映像みたいにはならないか?」

 

映し出された映像を見て僕は首を捻る。俺1人では?僕1人の無属性魔法だけでは、ダメみたいなので、帝姫とレオナをシャルちゃんに呼んできてもらう。

覚えたというのは、無属性魔法【ミラージュ】。

 

 

コンコンコンと扉をノックする音が聞こえたので、僕は扉を開ける。

帝姫とレオナに入ってきてもらい、2人にも、無属性魔法【ミラージュ】を覚えてもらい、もう一度、挑戦してみる。

この【ミラージュ】2人にも僕のスマートフォンの動画再生アプリに【エンチャント】すれば、立体映像になるのではと思い、やってみた。

 

「正面から見る分には問題はないのだけれど」

「夜一、これって、紙芝居だね」

「紙芝居ですか?帝姫」

「これでは、立体映像ではないの。レオナ」

 

空中に投影できるだけでもすごいんだが。

 

「むむう.......やっぱりプロジェクターとして使うしかないのかな」

「やいちおにいしゃん、これはなんでしゅか?漫画?アニメ」

 

僕と帝姫とレオナとシャルちゃんでプロジェクターを楽しんでいると、コンコンコンと扉をノックする音が聞こえた。

 

「夜一兄ちゃん、お昼ごはんが......うわあ、なにこれ!?」

「レネお姉ちゃん、アニメを見ていりゅの♪一緒にみりゅ?」

「シャル、アニメってなに?」

 

シャルちゃんがアニメについて、レネに色々教えてくれている。聞き終わったレネは、目をキラキラさせていた。

 

「ね...ね、夜一兄ちゃん、私もシャルと一緒にアニメを見ていていいかな?」

「見ていていいよ。僕はごはんを食べにいくね」

 

シャルちゃんとレネは、プロジェクターで映されたアニメを見ている。今、見ているアニメはかなり昔の外国のサイレントアニメだ。

人間の出演はなく、動物たちが登場するわかりやすいアニメ。気が付くと琥珀と黒曜&珊瑚の3人も夢中に見ている。

僕と帝姫とレオナが扉に向かうと、コンコンコンと扉がノックされた。僕が扉を開けようと手を伸ばすと、扉が開かれた。

 

「旦那様ぁ~?レネちゃんがこっちに......うわあ、びっくりしたぁ~」

 

扉が開かれて、セシルとぶつかりかけた。レネが部屋の中にいるのか覗いたセシルが映像を見て、駆け込んでいった。マズイ流れだなぁ、これ。案の定、セシルもシャルちゃんとレネの間に座り、アニメを見始めてしまった。

1話が終わり「次のは?」みたいな顔を3人どころか琥珀と黒曜&珊瑚にまでされていたその時、コンコンコンと扉をノックする音が聞こえ、扉が開いた。

 

「夜一お兄様、お昼ごはんが冷めてしまいます」

「夜一、昼ごはん。食べないの♪」

 

アリエルとリーンとポーラが部屋に入ってきた。そして、3人も加わりうるうるした瞳(ヒトミ)で見てくる。

次は、カラーになり始めのサイレントアニメを全話をプロジェクターで流す。

スマートフォンに【プログラム】してあるので、僕が呼び出せばいつでも手元に戻ってくる。『吸雷(キュウライ)』と『瞬雷(シュンライ)』の併用。一応盗難対策。

リビングの扉を開けると、ラピスが僕と帝姫とレオナの食事を準備していた。エルゼにリンゼに八重にユミナの4人はテラスでお昼ごはんを食べている。今日の昼食はクラブハウスサンドとオニオンスープ、サラダとチーズ。

 

「シャルとレネとセシルはどうしたのでしょうか?」

 

僕のグラスに果汁水を注ぎながら、ラピスが一向にかえってこない3人に眉をひそめる。このままでは3人が怒られる?シャルちゃんは僕専属だから、2人が怒られてしまいそうなので、ラピスも同じ穴のムジナになってもらおうか。

 

「ちょっと僕の魔法の手伝いをしてもらっているんだよ。ラピスもここはいいから僕の部屋へ行ってみるといいよ」

「はあ.....?」

 

わけのわからない顔でリビングか僕の部屋へ向かう。

 

 

 

 

 

テラスから室内へと戻り、リビングに入っていたエルゼとリンゼと八重とユミナの4人かソファーに座る。

 

「夜一は午後からどうするの?」

 

ソファーに座っているエルゼが紅茶を自分で注ぎ、1口飲み切り出してくる。

 

「重兵衛(ジュウベエ)さんと七重(ナナエ)さんにはもう挨拶はしてあるから。エルゼとリンゼの叔父さんのところに行かないといけないんだけど?」

「あたしたちのところは別に後回しでもいいけど。元の世界(アッチ)の婚約者とパプニカの王女(オウジョ)様とベルファストの王女(オウジョ)様と同じところにお嫁に行くって知ったら、叔父さんも叔母さん卒倒(ソットウ)しかねないし」

 

エルゼとリンゼの出身は、ここ、ベルファスト王国のお隣、西に隣接するリーフリース皇国である。2人はその国の東、限りなくベルファストに近い側の小さな町、サレットで農園を営んでいる叔父夫妻に育てられたそうだ。ご両親は幼少の頃、どちらも病気で亡くなったそうだ。

 

「それでも会いに行かせてもらわないと。ご両親のお墓にも報告しないといけないだろう?」

「......ありがとうございます、夜一さん」向かいのソファーに座っているリンゼが嬉しそうに微笑む。

 

「さて、彼女たちの様子を見にいきますか」

 

食事が終わり、みんなと連れたって僕の部屋に入ると、予想通り4人とも夢中になってアニメを見ていた。黒曜&珊瑚はシャルちゃんの膝の上で浮いていて、琥珀はレネの膝の上で映像を眺めている。エルゼたちもその映像に釘付けになり、全話が終わるまで、まだ、時間がかかりそうなので、夕食の配膳もあるので、18時にアラームがなると映像が切れるようにしておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

19時に夕食が終わるとみんなに早く早くと急かされて、とりあえず、今から3時間後、22時までという約束で動画再生アプリを起動した。

部屋の中にはレオナ、エルゼ、リンゼ、八重(ヤエ)、スゥシィ、アルマ、シャルちゃん、ユミナ、シャル、クレア、クインズウェイ、オハナ、フェルクリンゲン、タイシェト、ムルマンスク、レム、キャロル、クリス、響(ヒビキ)、オリガ、ミア、アリエル、リーン、ラピス、セシル、レネ、リム、十重(トエ)、綾音(アヤネ)、椿(ツバキ)、ミカ、アエル、ネフレン、シェスカ、琥珀、黒曜&珊瑚、ポーラの彼女たちと召喚獣。僕と帝姫はみんなが見ている姿を後ろから眺めている。

 

~~~次の日~~~

 

今日は、彼女のミカが最近景気が悪いみたいで客足が遠のいているというので、彼氏として、力を使う。

 

「お客さんの数が減っちゃってね。父さんが将棋で町を盛り上げようとしてるんだけど、イマイチなんだよね」

 

リフレットの銀月にあるミカの部屋とここ王都にある姿見か移動できるようにしてある。その姿見を置いてある場所は僕と彼女たちだけが楽しむ2階にある大広間(リビング)と使っている部屋の扉を開いて中に入り、右手の隅にある。

 

「何かのイベント?......祭?......祭は一過性だからな」

「そうなんだ。祭だと、その期間だけ潤うけど、終わるとねぇ」

 

常に客を呼び込むためには、なにか「銀月(ココ)」にしか無いものを作るしかないよな。やっぱり温泉が1番いいんだけど......。

 

「......てきるな。温泉」

「え?温泉を.....でも、この近くに?」

 

うん、できる。しかもかなり簡単に。温泉があるところから、【ゲート】でお湯を引っ張ってきて、掛け流しにし、流れたお湯をまた【ゲート】で戻せば問題ない。

 

「本当に温泉ができるの?」

「できますよ、たぶん。しかもたいして手間もかからず」

「それが本当ならすごく助かるけど.....。えっと、どうしたらいいかしら?夜一さま」

 

ミカがあたふたとし始めているので、キスをする。

 

「ちゅ.....ちゅちゅうちゅぱっ......ちゅちゅるっぢゅるるる.....んっ......れろっぢゅるぢゅるっ......ちゅちゅう......」

「落ち着いて下さい、ミカ。俺の彼女なんですから♪」

「.....うん♥」

 

お義父さんのドランさんが帰ってきた。温泉を作るという話にドランさんが飛びつき、内容を確認する。

 

「つまり婿(ムコ)の魔法で、遠くのおんせとここをつないでしまおうってことか?そんなことができるのか?」

「ええ、多分。ま、とにかくできるか試してみます」

 

スマートフォンを取り出し「温泉」を検索してみる。メリシア山脈の外れ、南の森の中にあるな。ミカに確認してもらったが、こんなところに温泉があるなんて聞いたこともないと言う。秘湯か。

『瞬雷』を使い、一旦御屋敷へ戻ってシェスカを連れ出し、今度は[庭園]へと転移。目的地の秘湯へと向かってもらう。

 

「マスターがこんな山奥の温泉に連れ出しテまで、私の裸を見たいなんテ......。一言命令して下されバ、いつでもスポーンと脱いで差し上げまスのに」

「御屋敷では、彼女たちの目があるから、そんなこと出来ないだろ。だから、温泉を確認してから、それまで待っていてくれ♪今は、スカートを下ろさないで、メリシア山脈まで急いでくれ」

 

やがて[庭園]は目的地に辿り着き、俺はシェスカを連れて地上へと転移した。おお、この匂い。まさしく温泉がある気配。

薮をかき分けていくと、森の中に天然温泉があった。見た目水質も良さそうで、濁ってはいない。近づいて手を入れてみる。若干熱いか?

よく見るとここ以外にも、彼方(アチラ)此方(コチラ)に源泉があるようで、水量にも問題はなさそうだ。

 

「シェスカ。温泉の温度、水量の確認ができたから、温泉に楽しみながら、しようか♪」

「マスター。やっとなのですネ」スポポーン♪

 

シェスカは、服とスカートを脱いで、温泉に浸かる。

 

「マスターのご立派なおちんちんは、準備万端ですネ♪いただきマス♪」

 

シェスカが俺のおちんちんをうっとりした眼差しデ、口咥える。

 

「ペロッペロッ.....ちゅるちゅるっ......ちゅるちゅるぢゅるぢゅるっ.....ぢゅるるるぢゅるるるるるるっ.....」

 

頬が紅潮し、興奮して呼吸が荒くなって、シェスカのおまんこはもう、ぐちゅぐちゅになっていた。

 

「マス.....ター♥私のおまんこハ、おちんちんを欲しがっているのデ、挿入しますね♪じゅぶ....じゅぶじゅぶ.....じゅぶじゅぶじゅぶっ.....はあっ....ぢゅぶぢゅぶぢゅぶ.....ぢゅぶぢゅぶ.....んっ....ぢゅぶぢゅぶぢゅぶぢゅぼっぢゅぼっぢゅぼっ......ハッ.....」

 

どぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっどぴゅっ♪

 

「マス...タ....ー♥ありがとうございマス♪」

 

シェスカとの、エッチを終わり。温泉で洗い流し、銀月に温泉を引く準備を始める。

ここに【ゲート】をエンチャントしたパイプを設置して、「銀月」へとお湯を導き、また【ゲート】を通して此方のパイプに戻すようにする。温泉の流れの間に「銀月」を挟む。

まずは【ストレージ】からミスリルの塊を取り出して、直径10センチ、長さ30センチ程のパイプをいくつか作る。そのパイプをいくつかの源泉に取り付けていく。【モデリング】を使い、流されないように完全に固定した。

 

「よし、これで準備OK」

 

じゃあ【ゲート】でリフレットに戻るために、隣で作業を見ていたシェスカと一緒に[庭園]に『瞬雷』で移動する。

そして、「銀月」の裏庭に出て、土魔法を使って深さ30センチくらいの水路を造る。長さは1メートルほど。周りを石で固めて水が濁らないようにする。

【ストレージ】からミスリルの塊を取り出して、お金持ちのお風呂場にあるようなライオンが口を開けた顔の像を作り、水路の片方の上に設置した。このまま【ゲート】を付与したらお湯がダバダバ出てくるよね.......。

【プログラム】を使い、「開放・閉鎖」のキーワードで【ゲート】を開閉できるようにした。

一旦「閉鎖」にしておいて、今度は反対側の水路の上の方にミスリルのパイプを埋める。

此方のパイプを通ったお湯は再び秘湯のパイプへと戻される仕組みだ。給水管と配水管。

 

「これで大丈夫だと思いますけど」

 

僕に抱きつくミカとドランさんが見ている中、ライオンの像の頭に触れて、「開放」と唱えた瞬間、口からダバババババッとお湯が噴き出した。

 

「おおっ!?」

「お湯がでたわ!」

 

やがてライオンの口から流れ出たお湯は水路を満たしていき、反対側のパイプの高さに達したところで止まった。排水のパイプへお湯が流れ、秘湯へと戻っていっている。

裸足になり、お湯の中へ足を突っ込む。うん。少し熱い気がするけど大丈夫だろ。

 

「いや.....すごいな、これは....」

「夜一さま、温泉が出てもウチには露天風呂とかを造る敷地はないわよ?どうするの?」

 

流れるお湯を呆然(ボウゼン)と見つめるドランさんと、現実問題に顔をしかめ、潤んだ瞳で俺を見る。

 

「(可愛いな、ミカ♥)裏手の大きな2軒の家って確か空き家ですよね?」

「そうだが.....どうするんだ?」

「買っちゃいましょう。ミカの為、お義父さんの「銀月」の為に」

 

うん、それが1番手っ取り早い。とりあえず不動産屋さんのところに行って裏手の家がそれぞれどれくらいの値段で売り出されているか確認する。どちらも白金貨8枚とのことだったので即金で払った。

ミスリルゴーレムの砕けた欠片をある程度売ったら、それだけでとんでもない額になったので、あの家はあの家で使い道がある。

契約書にサインをし、正式に買い取るとそれを持って「銀月」に戻った。

 

「ホントに買ってきちゃったの!?夜一さま♥」

「さっきも言ったけど、ミカの為、お義父さんの「銀月」の為だから、気にしない。さて、一気にやってしまいましょうか!」

 

まずは【ゲート】を地面に発動させ、裏手の「家全部」を[庭園]に転移させる。すとーん、と2軒の家が地面に沈み、あっという間に消え失せた。

 

「うえっ!?」

 

驚くドランお義父さんをよそに、続けざまに「銀月」との塀も同じように消してくいく。

土魔法で浴場の形を大まかに整えていく。かなり広めに造る。そのあと【モデリング】で細かいところを変形させていく。

 

「リフレットの町の、男と女性の割合ってどんな感じですか?ドランお義父さん」

「そうだな、.....女性が8割、男は2割ってところかな」

「わかりました」

 

 

男湯を少し小さく、女湯を少し大きめに浴場を造る。周りを岩壁で囲み、石畳で洗い場などを、屋根と柱を檜で作り、男湯と女湯の間も檜の塀で分断する。さらに塀の上には『芯雷(シンライ)』を付与しておく。覗き野郎には天罰を。

小さな脱衣場を両方に作り、暖簾(ノレン)をかけて外観はとりあえず完成。

最後に露天風呂の庇(ヒサシ)に【ミラージュ】を【エンチャント】して、上からの視覚を木々の幻影で完全に遮断するようにし、宿の上階からも見えないようにした。逆に風呂側からも宿が見えないように木々の幻影が浮かぶようになっている。人の姿があると気になってしまう。

完全に日本風な露天風呂になってしまった。なかなかいい出来だ。うん。

 

「いや......もう驚くのに疲れたな.......」

「ありがとう、夜一さま♥」

「っていうか、この露天風呂を俺が商売に使っていいのか?」

「気にしないで下さい。ミカの頼みだから」

「ありがたく使わせてもらうか」

「この温泉の効能は身体異常にはかなり効果的ですよ。目が悪いとか、腰が痛いとか、毒の後遺症とかなら浸かっていればやがて治ります」

「そんなに効き目があるのか?」

 

そりゃあもう。【リカバリー】を【プログラム】しておきましたからねえ。じわじわとお湯に溶けて、ゆっくり効くようにしてある。

とりあえず試運転。男湯と女湯、どちらも「開放」し、お湯をためていく。この間にミカとドランさんが今日は無料だと知り合いを呼んで来た。

男湯の方にはドランさんの他に、「武器屋熊八」の店主、バラルさんや、道具屋のシモンさん、「ファッションキングザナック」のザナックさんがやって来た。

女湯の方にはミカの他に喫茶店「パレント」のアエルやその従業員さんたちが入っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




夜一の家族の所持金[35人] 愛人[1人]王金貨20枚
白金貨43枚、金貨47枚、銀貨25枚、銅貨300枚
夜一の手持ち
白金貨1枚、金貨52枚、銀貨50枚、銅貨349枚
帝姫の手持ち
白金貨1枚、金貨7枚、銀貨20枚、銅貨120枚
レオナの手持ち
白金貨13枚、金貨15枚、銀貨40枚、銅貨100枚
エルゼの手持ち
白金貨5枚、金貨10枚、銀貨55枚、銅貨90枚
リンゼの手持ち
白金貨13枚、金貨10枚、銀貨60枚、銅貨80枚
八重の手持ち
白金貨13枚、金貨10枚、銀貨30枚、銅貨5枚
スゥシィの手持ち
白金貨1枚、金貨14枚、銀貨28枚、銅貨68枚
アルマの手持ち
白金貨1枚、金貨12枚、銀貨27枚、銅貨68枚
シャルちゃんの手持ち
白金貨1枚、金貨0枚、銀貨0枚、銅貨9枚
ユミナの手持ち
白金貨2枚、金貨0枚、銀貨0枚、銅貨0枚
クインズウェイの手持ち
白金貨2枚、金貨15枚、銀貨190枚、銅貨310枚
オハナの手持ち
白金貨1枚、金貨13枚、銀貨130枚、銅貨190枚
フェルクリンゲンの手持ち
白金貨2枚、金貨10枚、銀貨115枚、銅貨260枚
タイシェトの手持ち
白金貨2枚、金貨10枚、銀貨90枚、銅貨250枚
ムルマンスクの手持ち
白金貨3枚、金貨9枚、銀貨120枚、銅貨200枚
レムの手持ち
白金貨1枚、金貨7枚、銀貨35枚、銅貨70枚
夜一のパーティーの所持金
白金貨16枚、金貨13枚、銀貨45枚、銅貨90枚

銅貨10枚=銀貨1枚
銀貨10枚=金貨1枚
金貨10枚=白金貨1枚
白金貨10枚=王金貨1枚

銅貨1枚=1000円
銀貨1枚=1万円
金貨1枚=10万円
白金貨1枚=100万円
王金貨1枚=1000万円
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