※この作品はR-18です。

洗脳†無双   作:bytheway

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昨日は忙しくて更新できずに、すいませんでしたっ!


董卓軍と戦場

黄巾賊と連合軍が衝突する少し前。

 

バサリと、張譲の目を覆う布が取り払われる。数多くの美術品や調度品の置かれた部屋は、見慣れた自分の部屋。しかし、そこに漂う雰囲気は、自らの知るそれではない。

 

「失礼いたしました、張譲殿」

 

煌々と焚かれた明かりの向こう側、影の中から聞き覚えのある、儚げな声が張譲の耳を揺らした。それは自分達の身を守るため、体よく利用した辺境の少女、董仲頴の声だった。

 

「董卓…!?貴様っ!己が何をしたか分かっておるのか!?」

 

手足を縛られ、椅子を揺らすことしか出来ないにも関わらず、威勢良く吠えたてる張譲は、傍から見れば、滑稽ですらあるのかもしれない。しかしこの男は、その口だけで権謀術数渦巻く宮廷を泳ぎ切り、宦官の頂点である十常侍、その筆頭に収まった男なのだ。手足を縛られていようが、彼にはなんら問題ではない。宮廷で彼が築き上げた人脈、帝からの信頼、そして財力。それらこそが、彼が数々の政敵を葬ってきた最大の武器なのだから。

 

「おや、ご自身の状況が分からぬとは」

 

「ぉ、が!?ぬ、うぅぅ…!」

 

しかし彼女らは、そんな武器が通用する相手ではなかった。螺旋状に絡み合う赤い槍を携えた女が、彼の足にその槍を突き刺す。足の甲を貫通し、床にまで達するほど深く突き刺されたその槍に、女は体重を預けながらため息をついた。

 

「口には気を付けることですぞ、張譲殿。腹の御子に不快な音を聞かせれば、この趙子龍、怒りで手許が狂うやも知れませんからな」

 

「へぅ…♡」

 

御子。星がそう言えば、月は愛おし気に自らの大きく張り出た腹を撫でる。涼州州牧を得るために、将軍達が戦っている間、男の相手をし続けた月は、すでに男の子を身籠っていた。

それは同僚達にとっては喉から手が出るほどに欲した至宝であり、奉身教徒にとっては、神の血を引く御子。つまりは、あらゆる害毒から守るべき、掌中の珠。

 

「…なにが望みだ…?」

 

やはり張譲という男は優秀なのだろう。少なくとも、人の表情から考えを推し量る力に異常に長けていた。御子と語る星と月の表情から、狂気に満ち、どろりとした信仰にも似た忠誠を感じ取った彼は、御子には一切触れることをしなかった。どこが逆鱗かも分からぬ龍を撫でるような愚行を彼は犯さなかった。

 

「へぅぅ…♡…え?あぁ、そうでした」

 

恍惚とした表情で腹を撫でながら、内股を擦り合わせていた月は、張譲の言葉にふっと我に返った。

 

「張譲殿、今日はお願いがあって参りました」

 

どの口が言うかと張譲は心の中でそう毒づいた。誰が人に物を頼む時に、屋敷に侵入し、家主を椅子に縛り付け、その脚を槍で突き刺すのか。

 

「どんな願いか知らんが、儂がそれを聞き入れるとでも?」

 

普段でさえ、多額の賄賂を貰ってようやく首を縦に振るのが張譲という男だ。それを脅されたからといって、はいそうですかと頷くことなど出来る訳がない。

 

「ふふ。大丈夫です。とっても簡単な事ですから。…董卓軍に冀州の黄巾賊討伐を命令して欲しいのです。そしてその功績をキチンと評価して頂きたいのです」

 

「……よかろう、董卓軍に命じた司隷防衛の任を解き、黄巾賊討伐を命令する」

 

暫しの逡巡の後、張譲は司隷防衛から董卓軍を解き、黄巾賊討伐を下命した。本来であれば、皇帝の承認を必要とする命令変更だが、すでに皇帝は張譲の傀儡であり、たかが辺境の軍閥に命を下す程度の事は、事後承認で事足りる。

 

「ありがとうございます、張譲殿」

 

「ふん、さっさと出てい…ぬ、ぐぅう…!」

 

「おや、失礼」

 

深々と頭を下げる月と、乱暴に張譲の足から槍を引き抜いた星。あっさりと背を向け去っていく二人を、張譲は憎々し気に睨みつける。

 

「このままで済むと思うなよ…!!」

 

 

「ぁ、がっ…ば、けものぉ…!」

 

「く、ははは!!温い!温すぎるぞ貴様らァ!!」

 

左肩から右腰までを大斧で斬り裂かれた黄巾兵が、鮮血を噴き出しながら地面へと崩れる。辺りには、黄巾兵の死体から溢れる血が、池かと見間違うほどに、大地を赤く染めている。

桃香を抱き抱えているにも関わらず、華雄の武には一分の隙も存在しない。それは恋とは異なるが、紛う事なき武の極致。かつて目指した頂きに、華雄が到達したことを示す、破壊の大嵐だった。

 

「華雄将軍!お待たせ致しました!!」

 

数百人はいたであろう黄巾賊の陣幕を、単騎で壊滅させた華雄の下に、数多の異民族や賊を肉塊に変えてきた精鋭歩兵達が、濃厚な血の臭いを漂わせて跪く。各々が持つ武器は既に血に濡れており、彼らが別の陣幕を殲滅してきたことを、静かに示していた。

 

「…来たか、では行くぞ」

 

「はっ!!」

 

黄巾賊の戦列は、すでに大混乱に陥っていた。華雄達だけでなく、恋や霞、翠に蒲公英など、董卓軍全軍による容赦のない殺戮が繰り広げられている。

 

「くくく…まだまだ食い足りんな……む?」

 

真っ赤な舌で唇を舐める華雄は、ふと、片手に抱いた桃香を思い出す。どうしたものかと、彼女の顔を覗き見た華雄は、桃香の目に、自分と同じ信仰の光を見た。

 

「そう、だよ…こうすれば良いんだ…これが、私の理想…!天使様ぁ…!」

 

狂気と信仰の入り交じった目を華雄に向ける桃香。彼女の理想は、この一連の戦いで歪み、変質した。悪とは賊であり、賊を殺すことが正義。それに疑問を持つことは許されず、嬉々として殺さねば、罪なき民が泣く。

であれば、華雄こそ彼女が求める理想の体現者である。クズ共を一切寄せ付けず、害虫の様に踏み潰していくその姿は、まさに戦天使。しかも悪が滅ぶ姿を、こんなに間近で自分に見せ、啓示を与えてくれる慈悲深さも兼ね備えた天使なのだ。

 

「く、ふ…ははは!そうだ…!私こそが、神罰の代行者…!神に逆らう愚物の首を刎ね、平和を齎すことこそ我が悲願…!」

 

「か、み…さま…?」

 

桃香の目に灯る、華雄への信仰が、この場に華雄を贈ってくれた神への信仰へと変わっていく。なぜならば、悪意の坩堝から自らを救い上げ、理想を示した戦天使が信仰を捧げる神。

それはきっと何よりも尊い存在。天子などと僭称する紛い物など、足元にも及ばない、正義そのものなのだから。

 

「天使さま…!私に、神託を…」

 

「賊を殺せ!一匹残らず、奴らを地上から消し去れ…!」

 

桃香の目が喜びに染まる。誰もが分かろうとしなかった自分の理想は、間違ってなどいなかった。間違っていたのは皆の方だったのだと、他ならぬ、神の使徒がそう言ったのだ。

しかし桃香は義勇軍を恨まない。神のシモベとなった己が憎しみなどという下賤な感情を持つべきではないからだ。

 

「皆にも教えてあげなきゃ…愛紗ちゃんにも、鈴々ちゃんにも、朱里ちゃんにも、雛里ちゃんにも…。うん、でも今は…」

 

 

 

かみさまにさからうくずを、ころさないと

 

 

 

桃香が再び剣を握る、己の理想に蓋をしたのではない。私の理想は間違っていなかった。

間違っていたのは、手段。足りなかったのは、他者への啓蒙。

今度は間違えない。なぜなら、神さまが導いてくれるのだから。

 

「く、はは…良い拾い物だな」

 

 

「連中は連合に勝って気が緩んでるわ!一気に押し潰して!!」

 

詠の号令一喝の下、董卓軍が襲いかかる。恋を先陣にした騎馬部隊が、まるで槍のように敵陣を貫いていく。恋が方天画戟を一振りする度に賊徒が宙を舞い、その身から赤黒い血を降らせながら絶命する。

 

「…邪魔…死ね」

 

「ひ、飛将軍…!?」

「なんで董卓軍がここにいるんだ!?司隷にいるんじゃねえのかよ!!」

「ひっ、ひぃぃぃ!」

 

黄巾賊の中には、かつて涼州で暴れた者がごく僅かではあるものの存在していた。董卓軍の苛烈な賊狩りに追われ、涼州を去った彼らの脳裏には、黄巾賊などよりも、遥かに残虐な董卓軍の武力が刻み込まれている。

そうした者たちは、董の旗を見ただけで戦意を失い、我先にと逃げ出していく。

 

「神へ奉仕せよ…!」

「これこそが悦び!命を捧ぐ悦びを感じよ…!」

「あぁ口惜しや!使徒様に殺される栄誉に浴せぬとは…」

 

黄巾賊の背後に展開する狂信者達が、神への奉仕を拒否した逃亡兵に無慈悲な刃を振り下ろす。黄巾賊がここで滅ぶことは、神が定めた絶対の理。だからこそ、狂信者達の瞳には一切の躊躇いなどない。

 

「ははは!!ほら逃げろよ!!」

 

翠がまるで狩りでもするかのように馬を走らせ、賊徒を槍で突き殺していく。心が折れ、ただ自分を守るために戦う翠にとって、この戦いはただの憂さ晴らしでしかない。民や誇り高い戦士ではなく、絶望を撒き散らすだけの賊徒を殺すことは、彼女にとって良心の呵責に悩まされずに済む、この上なく楽な仕事なのだ。

 

「お姉さまったら~♪…舐めてんの?」

 

「!?」

 

しかし底冷えのする蒲公英の一言が、冷水を掛けられたかのように翠の頭を冷やす。

本人の懇願により、人格を作り変えられていない翠を信用している者など、董卓軍には一人もいない。蒲公英は、そんな彼女に付けられた監視役なのだ。彼女の一言で、翠の運命は決まる。

 

「ご主人様への貢物を集める時は辛気臭い顔してるくせに、今日は随分楽しそうだよね?あれれ?お姉様って、もしかして…ご主人様のこと、好きじゃないの??」

 

ぞわりと、翠の背筋が凍る。あの男への貢物、それは各地から女や財宝を略奪するということ。保身のためにそれを行ってきた翠だったが、気乗りしない仕事である事に間違いはない。それを蒲公英に咎められる。

 

「ぁ、いや…!ちがっ」

 

「明日から兵士達の相手な」

 

絶望が、翠を襲った。あんな目に二度と会いたくないから、誰だって殺してきた、命じられれば、あの男の目の前で排泄すらしてきた。しかし、翠の扱いは蒲公英に全て任されている。

 

「た、頼む…!つ、次はちゃんとするからっ…!」

 

「五百」

 

「…え?」

 

「今から戦いが終わるまでに五百人の首、持ってきたら許してあげる♪あ、当たり前だけどアンタ一人でね」

 

蒲公英は、ぞくぞくとした快感に犯されながら、ほとんど不可能な条件を提示した。今にも壊乱しそうな黄巾賊が降伏するまでに、一人で500人の首級を上げることなど、出来る訳がない。

 

「分かった…!」

 

しかしそれでも、翠は地獄から逃げるため、馬を走らせた。一刻の猶予もない、我武者羅に槍を振るい、賊徒を殺さなければ、あの地獄が大口を開けて待っているのだ。

 

「頑張ってね~♪」

 

 

「ふふ…ようやくか…」

 

秋蘭は、縛り上げた虎豹騎達を天幕に押し込むと、あえて火焔兵に自陣を包囲させ、熾烈な戦いを演出していた。

しかしそれもようやく終わりを告げる。董卓軍による殴り込みを受け、混乱している黄巾賊を余所に、秋蘭はその弓で的確に火焔兵を射殺していく。

 

「申し上げます、程昱様、李典様が賈詡様と合流されました」

 

「そうか…では、帰るか…」

 

風と真桜が、詠と合流したということは、作戦が最終段階に入ったことを意味する。つまり、後はひたすらに黄巾賊を殺し尽くすのみ。賊徒共を血祭に上げ、教主へと信仰と忠誠を示す機会が得られなかったことを残念に思う秋蘭だが、ここで曹操軍が活躍することは避けなければならない。

 

(クソ…本当に忌々しい餓鬼だ、曹操め…)

 

火焔兵達が開けた道を、秋蘭とその配下が駆ける。背後では、見目麗しい虎豹騎の女達が悲鳴を上げながら奉身教徒の手によって攫われていく。次に会う時は、彼女たちも同志となるだろう。

風からは、曹操軍内における工作の一切を任されている秋蘭。配下となる彼女たちで少しくらい遊ぶのも良いだろうと、鞍に擦れる性器を期待で濡らしながら、華琳の下へと馬を走らせた。

 

 

鬱蒼とした森の中で、蛮族のように泥だらけになりながら歩く一団の姿があった。それはかの小覇王の軍勢、その残党だった。主力はとっくに壊滅し、僅か数百騎にまで数を減らしながらも、流民のような足取りで南を目指す敗残兵達。

 

「…皆は大丈夫…?」

 

すっかり焦燥しきった顔で、雪蓮は親友へと問いかける。多くの犠牲を払いつつ、なんとか戦場を脱した孫策軍だったが、袁術軍による執拗な追撃を受け、脱落者が続出していた。

 

「あぁ…だが、そろそろ限界だ。今はなんとか亞莎が抑えてくれているが、そう長くはもたんだろうな…」

 

追撃により、次々と兵を失う雪蓮に対し、兵の不満は次第に高まっていた。本来であれば、不満を宥めてくれたであろう古参兵達は、『孫策』として死に、今残っているのは今回の戦の為に徴兵した新兵か、忠誠心が高いとは言えない兵ばかりであった。

 

「そう…仕方ないわね。部下を囮にして逃げた私を、信用してくれる訳…ないもの…」

 

果断苛烈な小覇王とは思えないほどに小さくなったその背中を、冥琳は擦ってやることしか出来なかった。

『孫策様は、今度は自分達を囮にして、また逃げるつもりだ』

それは亞莎から伝えられた兵達の不満の言葉。勝利に裏打ちされた雪蓮への信頼が揺らいでいることを示すその言葉に、冥琳は反論することが出来なかった。

 

『雪蓮を守るために死ね』

 

それが紛れもない、彼女の本心だったがゆえに。

 

「冥琳、お願い…」

 

「あぁ…」

 

弱弱しい声で抱き着く雪蓮を、冥琳は拒まなかった。いつもの戦場の熱を冷ますための行為ではなく、ただ、互いを慰めるために肌を交わす。

 

「ん、ちゅ…ぇあ…」

 

「は、ん、ぁ…」

 

唇を合わせ、舌を絡め合いながら、身に纏う邪魔な服を脱ぎ去っていく。森の冷たい空気に晒され、ピンと立った雪蓮の乳首を、冥琳が口へと含み、舌で転がす。心の傷を埋めるように、互いを抱き寄せ、温もりを甘受する二人。

しかしそれを、亞莎に様子を見てくる様に言われた兵士が、木の陰から覗いていた

 




一応次回で、黄巾編終了です!

月、ママになります。
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