憂いの篩 作:とある男子
夕飯もたらふく食べた。
後は寝るだけ。
隣のベッドが空っぽなのが少し気になるが、俺は憂いの篩に杖を振った。
レイブンクローの談話室。
記憶の主は2年生くらいの男の子で、6年生の女子生徒とチェスをしていた。
男の子がナイトを動かすと、クイーンを吹き飛ばしてキングをチェックメイトした。
「あら……降参するわ」
「やったあ!」
「ふふふ。おめでとう、おませさん。それじゃ、ご褒美ね?」
「うんっ」
6年生に手を引かれて談話室を抜け、女子トイレに入っていく。
個室はいくつか閉まっていて、前を横切る時に「じゅぽ、じゅぽ」とか「先輩、どうですか?」「うん、まだ1年生なのにすごく上手だよ」など聞こえてくる。
2人は空いている個室に入り、鍵をする。
女子生徒はシャツのボタンを外し、胸の谷間に男の子のものを挟む。
『んああっ、あ、やっ、あっ』
隣から幼い声が聞こえてきた。
「知り合い?」
「え、あ、はい。同じクラスの子です……」
「そう……じゃあ、ちょっと目を瞑ってみて?」
「え? ……はい」
「次は、その子としているのを想像しながら腰を動かしてみて」
「!」
少女の喘ぎ声に想像を掻き立てられながら、記憶の主は腰を激しく動かす。
『あっ、あっ、あっ……すごい、もうだめ……はい、まだきてません……んああっ、あつい!』
「ううっ」
少年が達する瞬間、女子生徒が先っぽを咥えた。
射精し終わっても離さず、イッたばかりで敏感な少年が自分の口で悶えるのを嬉しそうに見ている。
『やばい! 先生だ!』
トイレの中が慌ただしくなる。
記憶の主はズボンを上げ、チャックをする時間も惜しんで走り出す。
「きゃっ」
振り返ると1年生の女の子が転んでいた。
6年生の女子生徒がすぐに駆け寄り、抱き起す。
6年生はこちらに気づくと、険しい表情になった。
「早く、先に行きなさい!」
記憶の主は慌てて走り出した。
ここを曲がれば寮までもう少しというところで、ドタドタと大勢の足音が聞こえてきた。
慌てて柱の陰に隠れると、ハップルパフの男子4人と、チョウ・チャンが「2人」走り去っていった。
「待たんか!」
巡回の先生は彼らを追いかけているようだ。
……何故チョウが2人いるんだろう?
記憶の主も疑問に思ったのか、こっそりと後をつけ始めた。
チョウは途中で別れ、片方は階段を上り、もう片方は下りていく。
寮監は階段を上っていく。
急いで後を追うと、ドン、という大きな音がした。
そっと廊下の角から顔を出すと、廊下の真ん中で杖を構えた寮監と、蹲っているチョウがいた。
「うぅ……」
チョウの髪がだんだん伸びて銀色になっていき、着ていた服が紫色に変化していく。
「まさか……あなたは……」
チョウが素早く杖を取り出し、辺りが眩しい光に包まれる。
光が収まるとチョウの姿はなく、視界が霧に包まれていった。
「……」
翌日、俺は図書館に来ていた。
腕を組んで考え込んでいると、隣の席にハーマイオニーが座ってくる。
「こんにちは。呪文学なんて読んでるの。自習? その割には捗ってないみたいだけど」
「いや……会う度に正体を暴く呪文をかけるのもどうかなって思って……」
「なにそれ?」
「ポリジュース薬で変身してたらって思うと怖くてさ」
「ああ。あれって1時間しか効果ないから、気になるなら1時間以上一緒にいればいいのよ」
目から鱗だった。
思わずハーマイオニーを抱きしめる。
「ありがとう! ハーマイオニー!」
「ちょ!? れれれ、冷静になりましょ?」
ハーマイオニーの顔がトマトみたいに真っ赤になっていたのが少し面白かった。