築三十数年平屋建て、六畳二間+台所+風呂+
トイレ+車庫。それが(元)我が家だ。家賃が
月5万の借家だけどな。
素っ裸にコート一丁の女の手を引きダッシュで
家に入る。扇風機形の電気ヒーターをつけて
彼女と共にその前に座ると、温かい空気が俺達を
包みこむ。
「はわぁ〜、あったかいですぅ…これ、便利な
からくりですねぇ♪」ホッコリ
「また古風な言い回しを…(平賀源内時分の神様
なんかな?)」
彼女が神様なのは間違いないっぽい。ご神体(?)
に触れたのは俺だし、何より裸でいることに全く
頓着していない。本人の性格なのか、はたまた
神様の世界が大らか? どのみち事情を聞かにゃ
対策も立てられん。
「そんで、さ…君の正体って何なの?」
「あっはい、実は…」
───ぐきゅるるるる
「あぅぅ〜…///」ウツムキ
「え" (; ̄▽ ̄)=3」ブフッ
「わっ、笑わないでくださいぃ〜!」テシテシ
「いていていてっ! す、すまんつい! だから
叩かんといて!」プクク
「この姿の時はお腹が減るんですー!」プンスカ
「わかった、わかったから! 今ご飯用意する
から落ち着けって!」アセアセ
「次笑ったら『メッ』ですからねっ!」ムゥ
神罰ちゃうんかい…心の中でツッコミながら、
作りおきしてあったカレー(中辛)を温める。俺が
唯一できる料理だ。親の見よう見真似で覚えた
ものだが、周囲には概ね好評だ。
「ちょっと辛いけど美味しいです〜♪」パクパク
「そかそか、たくさん作ってあるから好きなだけ
食べていいよ」
「はい〜♪」ニパッ
かわいい笑顔を見せる彼女。名前は忘れたけど、
名優と謳われた往年の女優に似てなくもない。
街を歩けば男女問わず振り返る気がする。
食後の後片付けを終えてから改めて話を聞いた。
お気づきでしょうが、私は水治神社に祀られて
おります水収之命(ミズオサメノミコト)と申す
者です。
九月にこの地域を台風が襲ったのをご存知です
よね。私はあの時、川の氾濫を抑えようと社の
外へ出たのですけど──あなた様が見たのは、
私の仮の姿の一つですし、今あなた様の前に
あるのもそうです──その際、強風に煽られた
どこかの看板で怪我をしたのです。そのため
十分な力が出せず、氾濫を抑えるだけで精一杯
でした。
「はー、それで動けなくてあんなところにね。
怪我した箇所がそこ?」
俺が彼女の右前腕部を指差すと彼女はコクリと
頷いた。まだ手拭いが巻いてあるが、その下は
完治したそうな。これが神の力ってか?
「あなた様のおかげで事なきを得ました。本当に
ありがとうございます」フカブカ
「いやいや、礼を言われるほどじゃないって。
それよか、何で俺には君が見えたの?」
「あなた様は幾度も境内で神楽を舞われてました
から、私の力があなた様に沁みこんだかと」
「うーむ、そういうもん? 目立つような変化っ
つーの? 自覚ないなぁ…」
納得するしないは脇に置いて、要は神楽経験者の
俺が偶然彼女と出会い俺に神力がついたって流れ
らしい。
「あ、あの…それでですね///」モジモジ
「ん?」
「あなた様を見込んでお願いします…わ、私を
お嫁さんにしてください///」ドゲザ
「………はい?」
神様を助けたらプロポーズされたって、どこの
RPGだよ。
「つい最近ですが、私は母の後を継いで神社の
祭神に就いたんです…」
世代交代は神々の領域でも普通らしい。彼女の
母親も力の衰えを自覚して、八百万(やおよろず)
の神を統べる天照大神(あまてらすおおみかみ)に
進退を伺って許され彼女に託した。それが今から
およそ200年前らしい。
「ほへ〜、君らの感覚だと俺は赤子にも劣るって
わけだ…その慣習と、君のような神様が俺に嫁ぐ
ことがどう繋がるの?」
「古より神と人が子をなすのは珍しいことでは
ございません。これ即ち神に認められた人…
神人(かんど)と呼びます」
「天皇家が現人神(あらひとがみ)と言われたのと
一緒か」
夢物語を聞いてる気分だわ。ほいだが、今は俺が
その当事者なんだよな。聞きづらいが意思確認は
せにゃあの。
「誠に不躾だけど…男女の営みは、理解なさって
おいででしょうか?」
ぼんっ☆
「ははははいっ! けけ境内ででままままぐわう
ところををみみみ見ていましししたのでわわわわ
わかっておりましゅ!(//◇//)」カァァ
(あー、知識はあるのね。おぼこいな〜)ホホエマー
まぁでも、神様を娶るのも人生冥利に尽きるか。
誰も絶対信じないだろうし墓まで持っていけば
いいだけの話だもんな。
何より俺、彼女に本気になっちまってる。一人の
男として彼女が欲しい。
静かに近づいて彼女を優しく抱きしめる。おぉ、
やぁらけぇ♪
「ふえっ?」コンワク
「名前、まだ知らんかったね。何ていうの?」
「え、えっと…ミズオサメノミコトですけど…」
「じゃなくて、人としての」
「それは…ないんです」
「確かに道理だよな(^^; 君の真の姿は水龍…
だっけ。そうだな…柳の子と書いて、りゆこって
どーかな?」
「りゆこ…柳子…素敵な名前です(*^▽^*)」ニパー
「好きだよ、柳子。俺、今すぐ柳子を抱きたい。
名実ともに夫婦(めおと)になろう」
「あぁ…(T▽T) 嬉しい…嬉しいです♥️」ギュッ
困っちゃうな〜
オフトゥンに誘われて♪
どうしよう〜
まだまだ早いかしら♪
早くない早くない ヾ(--;)