ちょっと私事でバタバタしていまして時間がありませんでした。
今後もゆっくりになるかもです。
中間テスト当日、教室内は緊張感に包まれていた。俺は恵と復習しながら先生が来るのを待っていた。
「みんなおはよ〜。今日はついにテスト本番ね。1教科でも赤点を取ったら即退学だけど大丈夫かな?」
再度告げられたそのルールにやはり若干怯むものの、俺たちからは確かな自信が顔を覗かせていた。そのくらいこの2週間は勉強尽くしだった。そんな様子を、星之宮先生は愉しげに眺めていた。
「...うん、みんないい顔になったわね。そうね〜、もし今回の中間テストと7月にある期末テストの両方を赤点退学者なしだったら、あなたたちにご褒美をあげる。夏にバカンスに連れててってあげるわ!」
クラス中に歓声が沸く。もちろん俺も例外ではなく想像を膨らませる。
「青い海、満天の星空、そして生まれる恋。きっと想い出となる、夢のような生活が送れるわ!」
恵の固かった表情も先生の話でほぐれていた。これで恵は100%の力が発揮できるだろうと安堵し、俺はテストに臨んだ。心の奥底ではバカンスという言葉が引っ掛かりながら。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中間テスト結果発表当日。
教室の中はやはり緊張感で溢れていた。恵から聞いた感じでは全教科65点ほどに収まっていたため大丈夫だと思うが、それでも緊張する。原因はもし退学が決まってしまったら、それを救える手段が思い付かないからだろう。星之宮先生から聞いた話だと2000万prが必要とのことだった。
「みんな揃ってるわね。今からHRだけど、その前に中間テストの結果発表をするわ」
そう言って星之宮先生は、生徒の名前と点数の書かれた紙を黒板に貼り付けた。
「……みんなよく頑張ったわね。5教科のクラス平均は68.8点。今回の赤点ラインは34点よ。……そして赤点によるBクラス内の退学者はゼロよ。次の期末でも赤点を取らないようにがんばってね!」
クラスメイトたちは皆が一様に安堵し、退学者なしだったことに歓喜していた。もちろん俺も例外ではなく、安堵のため息をついていた。かなり気を張っていたようだ。恵もこちらに満点の笑顔を向けていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
放課後、俺たちBクラスはカラオケで打ち上げを行っていた。ここ2週間の勉強漬けの反動か、かなり盛り上がっていた。恵も女子の友達とわいわい騒いで楽しそうに笑っている。
俺はトイレに行く振りをして、少し外の空気を吸いに来ていた。皆で騒ぐのは好きだけど疲れてしまう。あまりこういうのが得意じゃないんだろう。適当に自販機で買った水を飲みながらぼーっとしていると、後ろから声を掛けられた。
「山本君。何してるの?」
振り向くと一之瀬がきょとんと首を傾げていた。
「あ、もしかしてこういう打ち上げとか嫌いだった?」
「いや、そんなことないよ。ちょっと疲れただけ。すぐ戻るから先戻っててよ」
「…うーん、私もちょっと休憩!」
そう言って一之瀬は俺の隣に腰を掛けた。
「山本君ってさ、歌上手いんだね。私びっくりしたなぁ」
「……まあ俺の場合は恵に連れられて歌わされることが多いからな。他の男子より慣れてるってだけだ」
「あはは。2人とも仲良いよねー。いつから付き合ってるんだっけ?」
「去年の5月終わりからだから、もうすぐ1年だな。意外と早いもんだな。一之瀬は好きなやつとかいないのか?」
「そうなんだー。長いね。私?私はまだそういうのはあんまりかな?告白とかもされたことないし、あんま想像できないのかも」
もったいないな、と少し思う。これだけ魅力的なら引く手数多だろうに。
「それに今はクラスのことでいっぱいいっぱいだから」
「……あんまり思い詰めるなよ。もっと気軽にクラスメイトを頼っていいと思うぞ」
このままでは近い将来壊れてしまいそうで不安になる。Bクラスは良くも悪くも一之瀬のクラスだ。その彼女が不安定なのはまずい。
「…………ありがと。山本君は優しいね。……じゃあさ、早速だけど頼らせてもらっていい?」
「……っ、あぁ、いいぞ。どうしたんだ?」
一之瀬は体をこちらに近づけ、上目遣いで聞いてくる。元からのパーソナルスペースの狭さも相まって、もはや体は密着している。そしていつもの元気溌剌さと、現在の儚さのギャップが凄まじい。こう胸にぐっとくるものがある。俺には恵という可愛い彼女がいるが、男なら今の一之瀬に反応してしまうのは仕方ないと言いたい。
「……これから先さ、この前のCクラスからの攻撃みたいなのからさ、クラスメイトをちゃんと守れるのかなって。……多分、星之宮先生が言ってた、バカンスで何か特殊なイベントがあると思うんだよね。それが心配で、ちょっと恐いな、って」
引っ掛かってたバカンスはそういう意味だったか。確かにそんなものでもないと追いつけないクラスポイント差だしな。やはり優秀だな。
そしてこのメンタルの弱さが彼女がBクラスに落とされた理由か?いや、それはないか。この程度で落とされるならAクラスは化け物しかいなくなってしまう。
「…………そっか。俺からのアドバイスがあるとすれば、一之瀬は何でもかんでもしようとしすぎだな。クラスをまとめて、クラスを守って。Aクラスに上がるために情報を集めて、他クラスへの攻撃も視野に入れて。いくら優秀な一之瀬でもこんなにたくさんのことを一緒にはできない。そうだな、……今から一之瀬はクラスを守ることだけを考えてみたらどうだ?思考を完全に防御型に振り切るんだ。これだけで随分楽になると思う。……そして、他クラスへの攻撃は俺に任せろ」
「…………!ふふっ、そう……だね。考えすぎでパンクしてたかも。じゃあそうしてみよっかな。でも、山本君がすごいのは4月の頃から分かってるけど、1人で他クラスへの攻撃をするっていうのは危険だよ」
一之瀬に少し活力が戻ってきたのを感じる。やっぱり計り知れない重圧を感じていたのだろう。
「大丈夫だ。1人って言っても、恵には手伝ってもらうし、神崎にも手伝ってもらうかもだし。それに攻撃って言っても軽くだよ。基本は情報収集になるだろうから、人数は少ない方がいい」
ここは無理にでも、一之瀬からの了承を勝ち取りたい。今後を考えると、単独で動いても一之瀬に変に思われない立ち位置が欲しいのだ。
「…………うーん。……わかったよ。でも危ないって思ったらすぐに止めてね」
「あぁそのつもりだ。それと、この前のCクラスからの不意打ちは引きずらなくても大丈夫だ。そう何度も成功しないし、あれは龍園の策を誉めるべきで、仕方ないと割り切っていい」
「……ありがと。よしっ!ちょっと弱気だったな。山本君。おかげで楽になったよ、ありがとう!カラオケ戻ろっか♪」
一之瀬はそう言って立ち上がり、俺の腕を掴んで走り出した。そこには先ほどの弱気な一之瀬などどこにもなく、ただひたすらに前を向いて走っていく、我らがリーダーの姿があった。
やっぱり一之瀬に裏の顔があるとは思えないな。恵も一之瀬への警戒はいらないと思うって言ってたしな。ほんと何でBクラスなんだろう?
ちなみに言っておこうか。一之瀬と一緒にカラオケルームに戻ったせいでクラスメイト達から変な目で見られたよね。男子からは嫉妬。女子からは好奇。そして恵からは不機嫌なオーラを纏わせて問い詰めるような視線が。
この後、ご機嫌を伺いに恵に話しかけても睨まれて無視。謝っても無視。プレゼントでの埋め合わせも、ポイントがない現状では厳しい。どうしようかと悩んでいると、夜にしっかり何があったのか話すという約束と、今皆の前でラブソングのデュエットで手を打ってくれた。
かなり冷やかされたことをここに記す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…………ということだったんです」
「ふ~ん」
俺は今、正座で必死の弁明を行っていた。やはりそう簡単には許してくれないらしい。まあ俺も恵が他の男と二人っきりで喋ってたら嫌なので、全面的に悪いと思っている。
「紛らわしいことしてほんとにゴメン。でも、一之瀬に対してそういう気はないことだけは信じて欲しい」
「別にそれは信じてるけどさ...。あたしは紅志が、あたし以外の女の子に優しくするのがイヤなの」
恵は頬を膨らませて、そっぽを向く。
何それかわいい。今すぐ抱きしめたい欲を何とか抑えつけて、真摯に返答する。
「...うん、わかった。俺の配慮が足りなかったな。今後はもっと気をつけるよ」
「...困った時はあたしを頼っていいから!いい!?これでこの話終わり!」
どうやらこれで説教のお時間は終わりのようで、俺は机を挟んで恵と向き合う。
「んで、他クラスへの攻撃ってやつだけど。あたしそんなの出来ないわよ?」
「そんな難しいことは頼まないから。今まで通り一之瀬の情報を集めるのと並行して、Aクラスの情報を集めて欲しいんだ」
「……まぁそれくらいなら。でもAクラスの情報って言っても何を調べればいいの?」
「まずはクラスをまとめるリーダーは誰で、どんなやつなのかってことを知りたいな。あとはクラスの中心人物が分かればもっと嬉しい」
恵は小さく頷いて、頼みを了承してくれた。この後も今後の予定を話ながら、夜が更けていくのを感じるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時は流れ、6月1日。朝pt確認のため携帯を見ると、そこには昨日と変わらない数字が並んでいた。
「…………これはどういうことだ?」
クラスポイントがいきなり0になったとは考えにくい。となると、学校側のミスか?
分からないことは星之宮先生から話が聞けるだろうと、俺たちはいつもより少し早く学校へ向かった。
教室に着いて神崎や柴田たちと話していると、もの凄く顔色の悪い星之宮先生が教室に入ってきて、HRが始まった。体調でも悪いのかな?と心配していると、最前列の生徒からお酒臭い!と悲鳴があがる。どうやらただの二日酔いらしい。心配を返してくれ。
「…皆おはよぉ。ぅぐぅ、あたま痛いぃ…。え~今月のポイントを発表しまぁす。ぅおぇ」
本当に大丈夫なのだろうか、この担任は。とりあえず吐きそうになっている先生を無視して、黒板に貼り出された各クラスのポイントを確認する。
Aクラス 1004pt
Bクラス 710pt
Cクラス 550pt
Dクラス 87pt
この結果を見る限り全クラスがポイントを伸ばしているようだ。ならなぜ今月のポイントが入っていないのだろう?
「はい注目~。皆気になってると思うけど、今ちょっとポイントの送付が遅れてるんだよねぇ。トラブルが解消され次第ポイントは振り込まれるから少し待っててね~」
先生の言葉通り、翌日には71000ptが振り込まれていた。
トラブルとやらがもう解決したのかと思ったら、そういうわけではないらしい。星之宮先生が言うには、今回のトラブルはCクラスとDクラス間での揉め事という事実確認が済んだため、A.Bクラスには先にポイントが振り込まれたということだった。
まあ何はともあれ久々のポイントだ。クラス貯金の分の3万ptを一之瀬に送り、前々から決めてあったことだが今週末に行うとしよう。
「恵、ちょっと遅くなっちゃったけど、1年記念ってことで今週末遊びに行こうか」
そう、1年記念のデートである。
恵は満面の笑みで応えてくれた。
ということで次話はまるまるデート回を予定しております。
エッチもあるよ❤️