「ねぇ、今度の週末って時間ある?」
こんな関係が続いておよそ半年。彼女との関係、不倫は特に問題なく続いていた。
ただ何となく落ち着いてきた感じはあるかな。
前はただの身体だけの関係と言っても否定出来なかったけど、最近は少し変わっていた。
外に出かけたり、俤さん家か僕の部屋でゆったりとした時間を過ごしたり。そんな時間が増えていった。
だからといって身体を重ねることが無くなったのかと言われると、そんな事はない。
むしろラブホという何にも邪魔されない場所を獲得した僕達は、お互いの欲求を増長している。
考え方によってはそういうことがあったから、余裕ができたと考えてもいい。
俤さんの目論見もうまくいってるようで、旦那さんに関係をバレる事なく外出出来るようになったそうだ。
そんな中で僕は俤さんの変化にも気がついた。
というのもこれまでは何となくで、流されるように俤さんと身体を重ねていた。
生憎と僕にそういう事を誘う度胸は無いし、俤さんも誘いにくいところはあるだろうし。
だから俤さんが今日はシたいっていうのを、言葉以外で教えてくれるようになった。
家にいる時はいつも俤さんのご飯(とっても美味しい)をいただいているのだが、俤さんが食後にお茶を出してくれる時とそうでない時がある。
食事が割と遅めでその上にお茶、当然ゆったりと話したりしてるから外はもう真っ暗。そういうわけである。
外出する時だと、分かりやすく回り道をしようとする。行く予定の場所を増やしたり、電車で行く時は乗れた電車を敢えて見送ったり。
僕達の住む所はあんまり都会ともいえないので、そういう事をすると夜になってしまう。というわけだ。
そんな俤さんの誘いを何となく感じ取ると、家ならお風呂を使わせてもらい(バレない範囲で)俤さんと旦那さんの寝室へ。外出ならラブホへ、というわけだ。
そして夜を共に過ごす。お互いの生活に支障をきたす事もなく、割と落ち着いたな。
何がすごいって割と痕跡が残りそうなものなのに全くバレない事ね。俤さんって思った以上にしっかりしてるみたい。
その日も学校帰り、というか期末テストも終わりカット授業で午後がまるっと暇で、夕方くらいに俤さんの元を訪ねた。
ご飯をごちそうになり、食後にお茶を出してくれた。
お風呂を使われてもらって、そのまま寝室へ向かう。
そしていつものように激しく俤さんを抱いた。まぁたまにお風呂から、なんて事もあるけど。
そして僕が二、三回果てて、俤さんが僕のモノからゴムを外して処理してくれた。
タオルケットをかけて俤さんはベッドに寝そべった。それだけでもとても美しい。
そんな俤さんとくっついたまま横になり、大きく息を吐く。身体を襲う倦怠感が心地よい。俤さんが言ってきたのはその時だった。
というわけで冒頭の台詞に戻ろう。
「今週末、ですか?まぁ大丈夫ですが。というか休日なんて勉強か趣味以外は何もしないですよ」
「そう?よかった」
「でもわざわざ聞くってことは、お出かけって事ですか?どこに行くんですか?」
すると俤さんは少し言いにくそうにしていた。ん?どうかしたのかな?
そして僕をジッと見ながら、戸惑いがちにボソッと言った。
「その、ね………プールに行きたいなぁ、って」
「はい?プール?」
俤さんの提案に、僕は思わずポカンとしてしまった。あまりにも予想外の誘いだったからだ。
俤さんと出かける時は何か遊びに行く、というより鑑賞するって方が多い。
博物館とか水族館とか、あと何か展覧会が近くであるとよく行くな。俤さんそういうの結構知識あるのよ。
そんなわけで俤さんが純粋に遊ぶための場所に行こうというのは、結構驚いた。
「意外、ですね………俤さんがアウトドアに誘うなんて」
「え、えっと………ほら、たまには、いいかなぁって」
けどそうか。もうそんな季節だもんなぁ。というか………
「あ、その、別に絶対ってわけじゃないんだよ?ただ、その、よかったらどうかなぁ。って………」
「もちろん、いいに決まってるじゃないですか」
「え?………本当に?」
「はい」
だってプールに行くって事は、俤さんの水着姿が見れるって事だよね?そんなの断るわけがない。
プールに遊びに行くなんて何年ぶりだろうか。というか十代になってあったか?
とにかくこれまでは外で遊ぶという事に、そこまで積極的じゃなかったからなぁ。
でも別に泳げないわけじゃない。それなら断る理由は無いだろう。
「よかったぁ。断られたらどうしようって思ってたから」
「そんな事しませんよ」
むしろ俤さんの水着姿が見れるなんて、こっちからお願いしたいくらいだ。
市民プールなら県内にいくつかあったはずだし、まぁ周りにバレる事はまず無いだろう。
「それじゃあ今度の………土曜日とかでいい?」
「はい。えっと、お昼ご飯とかどうしますか?午後から出かけるならいらないと思いますけど」
「ん? あぁ、ごめんね。大切なこと言ってなかったわ。行くのお昼じゃないのよ」
「え?でも行くのプールなら普通はお昼に………」
そこまで言いかけて、僕は俤さんが何処に誘おうとしてるのかを理解した。
「もしかして俤さんが行きたいのって………」
「うん。その………ナイトプール、だよ」
マジかぁ。普通のプールですら経験値低くてどうしたものかと思ったが、ナイトプールは確実にゼロ。どうしようもない。
「えっと、その………僕、行っても大丈夫なんですか?」
「うん。ネットで調べた感じだと」
なるほどねぇ………僕でも行けるには行けるのか。ただ何となく印象がなぁ………
「どう、かな?」
俤さんがどこか期待するような目で見つめてくる。
気後れしちゃうけど、それでも一応プールに行くだけだ。
響きだけで判断して、何となく忌避感を持っていたけど、別に違うのは時間帯だけ、なはずだし。
それなら別にいい………かな。
「分かりました。ナイトプール、行きましょう」
「ッ! うん!」
俤さんは嬉しそうに微笑んだ。その笑顔を包み込むように抱きしめると、彼女に覆い被さり肌を重ねた。
こうして僕の土曜日の予定が決まった。
というわけでさすがに学校の水着は無しなので、近くの適当に水着を購入。
俤さんと一緒に買うという選択肢もあったけど、それじゃあ本番の楽しみが半減だ。
水着はそれぞれで買って土曜日を待った。
そして迎えた土曜日の夕方。僕は駅へと向かった。今回は電車移動ということになった。
「お待たせ〜」
すると入り口の方から俤さんがやってきた。白いワンピースに黒のスカート、鍔の広い帽子を被り手にはベージュのバッグを握っている。
艶やかな黒髪を三つ編みにして肩から垂らしている。胸の上に乗った髪が、俤さんの胸の大きさを表していた。
とても大人っぽくて綺麗だなぁ。
「こんにちは。晴れてよかったね」
「そうですね」
僕はジッと俤さんを見つめた。いや、自然と目が惹きつけられてしまうのだ。
「ん?どうかした?」
「あ、いえ、その………すごい、綺麗だなぁ、って」
「ッ! あ、えっと………もう!こんな所で言わないでよ」
「そ、そうですね。それじゃあ行きますか」
「う、うん」
僕達は電車に乗って目的地へと向かった。その間僕達は他愛ない会話を楽しむ。
「そういえばナイトプールって言ってましたけど、帰りはどうしますか?というかご飯とかも、特に考えず来ちゃったんですけど」
「その辺は大丈夫みたいだよ。向こうで食事も出来るし、泊まる事も出来るから」
へぇ、そうなのか。夜間営業プールみたいな感覚だったけど、そうでないところもあるんだな。
デートとしては最悪かもしれないけど、ほとんど下調べとかしてないからさ。
そんなこんなで外も暗くなってきて、僕達は目的地に到着した。
途中で同じ目的地であろう人達とすれ違った。僕と俤さんはそれを何となく目で追った。
「俤さん。その、なんというか………」
「うん。一応すごい賑やかな所は避けたから。まぁ私達なりに楽しめばいいと思うよ。周り関係なく」
周りの年齢層とか雰囲気とか。何か上手い具合に僕達から外れてる気がする。
年齢は言うても大学生から二十代辺りだから、まぁそこまで気にしないとして。
雰囲気がさぁ、お洒落を具現化したらこんな感じって人の集まりなのよ。はっきり言って僕の苦手なタイプの集合体。
俤さんはともかく、僕なんかパーカーにリュックだよ?何となく場違い感。
いつもならショルダーバッグなんだけど、今日は水着あるからさ。黒いビニール袋だけはやめて正解だったか。
とはいえここまで来たのだ。このまま帰るなんてあり得ない。
泊まる部屋も予約してあるということで、そこに荷物を置いて必要なものだけ持って行った。
「そ、それじゃあ、また向こうで」
「はい」
僕達はそれぞれ更衣室に向かった。夏休み前に来て正解だったのかな。それなりに人はいるけど、思ったよりも少ない。
早く俤さんの水着姿が見たくて、トランクスタイプの水着と薄手のパーカーという着替えを手早く済ませた僕は、早速プールへと向かった。
人とすれ違うたびに間違えて上級生の教室に入ってしまったような感覚を味わいながら、僕は俤さんを待った。
「ごめんね。待たせちゃった?」
聴き慣れた声が聞こえてきた瞬間、僕は咄嗟に後ろを振り向いて、固まった。
そこにいたのは黒いビキニを着て、恥ずかしそうに僕を見る俤さんだった。
そりゃ俤さんの水着姿なんて綺麗に決まっている。
ただ、実際に見た美しさは、僕を衝撃で固まらせた。
大人っぽくて艶めかしい。さっきまで気になっていた周りが全て霞み、彼女だけに目が惹きつけられる。
余計な装飾がない黒い水着が俤さんの胸と秘所を申し訳程度に隠していて、太ももは露わになり胸は大きな谷間ができていた。
極限まで晒された白い肌が水着の色とよく合っていて、夜空によく映える。
手にはバッグを持っていて、さっきまで結っていた髪はほどいて、夏風に揺らめいていた。
「え、えっと………どう、かな?私の水着………」
「すごい………綺麗、です」
僕はそれだけしか言えなかった。それほどまでに彼女の魅力に惹き寄せられる。
「そ、そう?よかったぁ。君に喜んでもらえるように、頑張って考えたんだ」
そう言って俤さんは僕の手をとる。今の興奮も相待って、それだけで僕の心臓は跳ね上がる。
「それじゃあ、行こうか」
なんだ。こんなの、周りを気にする必要なんてなかったのかもな。
「はい………!」
どうせ彼女以外見えなくなってしまうのだから。
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