※この作品はR-18です。

エロゲ的な何か(仮)   作:MC RAT

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 『後輩編』もちょこちょこ投稿していきます。


第2話

 それから僕達は演習室でゲームをする日々を繰り返している。

 といってもこのゲームに一対一のバトルをするシステムなんて存在しない。

 普通に大人数の中に入って、ソイツらを皆殺しにするところから始まるのだ。

 その後に一騎討ちである。もちろん皆殺しにする前に出くわせば戦うが。

 結果は五分五分。僕が勝つこともあれば、地血(あかね)が勝つこともある。再戦するというのも、ただのがむしゃらではないようだ。

 長距離から僕が正確に撃ち抜くか、至近距離で地血が蜂の巣にするかである。

 時間が来たら学校を出て分かれて帰った。

 一緒にゲームを楽しむ仲、といえばある程度聞こえはいいけど、逆に言えばそれだけ。

 一緒に帰る事も家で連絡を取る事もない。ただ数時間黙って殺し合うだけの関係だった。

 けど僕はそれが心地良かった。

 人付き合いだからって気を遣う必要のない、あくまで敵。ただ殺し合う事だけを考えればいい関係。

 地血も必要以外は話すことがなく、ただ冷たい目で僕と向き合っているだけだ。

 何を考えているかは分からない。でも分かる必要も無い。ただ殺せばいいのだから。

 そんな距離感が楽で、最初は拒否していた関係はズルズルと引きずっていった。

 

 

 

 そんな関係が続き夏がやって来た。

 その日もいつも通りに演習室に行くと、既に地血は椅子を並べて待っていた。

 夏服になって短い袖から白く細い腕が剥き出しになっている。

 最近じゃ学校に来る大半の意味がこの時間になりつつある。

 一々面倒な人間関係を考えなきゃいけないクラスよりも、何も考えずに殺し合うだけのこの関係の方が気楽でいい。

 特に挨拶をする事もなく目線だけ合わせると、僕達は椅子に座った。上下関係もへったくれも無いけど、それもこの関係のいいところだ。

 お互い背中を向けて、地血はヘッドフォン、僕はイヤホンをつける。

 それじゃあゲーム開いて早速対戦を………

 

 

「「あ、アップデート中だ………」」

 

 

 僕と地血は同時に呟いた。そしてお互い顔を見合わせる。

「そういえば今日でしたね。完全に忘れてました」

 地血とゲームするようになってから、初めての平日のアップデートだった。

 しまったなぁ、この可能性をすっかり忘れていた。これまでは休日や祝日だったし。

「アップデートっていつまでですかね?」

「えっと………17時半まで、かな」

「結構遅くなっちゃいますね。学校は間違いなく閉まっちゃいます」

 地血がヘッドフォンを外して、面倒そうにため息を吐いた。

 さてどうしたものか。このまま無意味に時間を過ごしていても仕方ない。

「どうする?」

「それなら先輩。とりあえず学校出てその辺で時間潰しませんか?それでアップデートが終わったら、どこか場所探してやりましょう」

 ここで今日はやらないと言わない辺り、さすが地血だと思う。

「けどそれだと17時半まで外にいるって事になるよ?それやっちゃって大丈夫なの?門限とか」

「………それは、大丈夫ですよ」

 ほんの少し間があったのが気になったが、とりあえず大丈夫なようだ。となるとそれで決定だな。

「それじゃあ行くか」

「はい」

 僕達は演習室を出ると、昇降口に向かった。靴を履いて外に出る。

「というか、時間潰すって言ってもどこに行くの?ゲームセンターとか?」

「無駄に人がたむろしてる所でゲームはしたくありません。耳障りだし目障りですので」

 それに関しては同意だ。ちょっとあぁいう場所は苦手だな。殺し合う敵、ゲームに求める人間はそれだけだ。

 僕達は学校を出ると、フラフラとその辺を歩いて行った。

 そういえばこんな風に地血と歩くのは初めてな気がする。通学路のためか、同じ学校の生徒が何人も通り過ぎて行った。

 中には男女で仲睦まじく歩いている人もいる。きっと程よく気を遣いながら、みんなで仲良くしてるのかな。

 それはそれですごいけど、自分からそうしようとは思わない。

 僕達は特に何か話す事もなく、ただ足を前に進めて歩いている。どこを歩いてくるかは分かるけど目的地は無い。

 地血も話しかけるどころかこちらを振り向く様子もなく、ただ淡々と歩いている。

「それにしても、アップデートが17時半終わりとなると、ご飯はその前に取っておいた方がいいかな」

「ですね、帰ってからはゲームしたいですし」

 それだけ話すと、僕達は近くのファミレスに入った。理由は簡単目の前にあったから。

 案内された席に座り、軽めのものを注文した。その間に『Bullet Of Dead』のアップデート内容を再確認する。

 注文したものが来たのでそれぞれ食べ始めた。というか………

「地血、それ何?」

「? フルーツパンケーキですが?」

「夜に?しかもシロップの量………」

「いつも通りですが?」

 そうなの?結構すごい量かかってるよ?

 シロップがたっぷりかかったパンケーキを見て、僕は思わず苦笑いしてしまう。

 地血、甘党なんだ………

 無意識に地血の一面を見てしまった。まぁ本人がいいならいいけど。

 

 

 

 それから僕達は黙って食事をしていた。そこで僕は、ふと気になった事があった。

「というかさ、普通にゲームする事になってるけど、そうなるといつも通りにいけば帰るの19時くらいだよ?親心配しない?」

「親は………大丈夫ですよ。私の事、気にしてないと思うので」

「え?」

 それって、どういうことだ?地血は僕の方が心情を見透かしたように言った。

「別に、大した事じゃないですよ…………そうですね。先輩は、『Bullet Of Dead』の世界をどう思っていますか?」

「は?…………そりゃあ、現実のように向かい合いたいと思ってるよ。それは地血だって同じでしょ?」

 地血の『Bullet Of Dead』へのあの熱意。あれは生半可な気持ちでやってる人間じゃ、絶対に生まれないものだ。

「えぇ………たとえゲームだとしても、どうしても私はあの世界を現実に求めてしまいます」

 地血の食べるスピードが少しだけ落ちた。地血はぼんやりと外を見る。

 そこには通り過ぎる車やサラリーマン達が道を歩いている。すぐそこの当たり前のありふれた、でもどこか遠い世界。

 地血はアップデート中のゲーム画面を開くと、外の景色と比べるように掲げた。

「似てませんね」

「そりゃねぇ」

 シンプルな薄暗い草原を血が染めるゲームに比べて、ビルが立ち並び夜でも明るく汚れのない街並み。

「きっと、私達の求めるものは実現しない。分かってるはずなのに………」

 まぁそうだよね。僕も同じだ。

 あんまり良くない思考なのは理解してる。それでも現実にいて、そう思ってしまう事はある。

「あの世界って、私の理想なんですよね。一人で困らない。どんなに取り繕ったって、最後は自分の力で全てが決まる」

 地血は手を強く握った。その気持ちが僕には何となく分かった。

「あの世界には理不尽が無いんですよ。外見も、上下関係も、学校でのカーストも、身の上も関係ない。人と馴れ合えない私が求めていたものが、あの世界にはありました。平等からのスタート。全ての人間が自分の実力だけでどこまでも上に上がれる」

 理不尽、か………たしかにな。

 現実なんて理不尽の塊だ。それが当たり前なのも知ってるし、本来はそれを顧みずに努力するべきなんだろう。

 けどもし、自分の努力と実力だけでどこまでも上がれる世界があったら。

 そんな馬鹿らしい理想を求めていた。地血も同じなのかもしれない。

「言葉はいらない。代わりにたとえ一人でも努力の全てを弾丸に乗せてぶつけるだけ。そんな世界って、いいですよね」

「あぁ」

 こんなどうしようもない考え方をしてるからこそ、僕は地血と一緒にいられるんだろう。

「バカみたいな考えだよねぇ。ただの逃げなのに」

 どこか自嘲的な言葉が漏れた。それに釣られるように地血は目を伏せる。

「まったくです………」

 しかし地血は『でも………』と言葉を続けた。

 

 

 

「逃げるからこそ、私は全力でいたいです。中途半端に逃げたくない………ちゃんと、殺し合いたい」

 

 

 

 そういう地血の言葉はどこか力強く、彼女の意思が伝わってくる。こんな地血は初めて見た。

「何もなく平和なのは大切ですけど………それでに生きにくいなら、私は……………いえ、何でもないです」

 何かを言いかけた地血は口をつぐんだ。また食事を再開する。

「戦う道を選ぶ?」

 僕はふと地血の言いたかった事を予想して言った。何の根拠もない、ただの予想だ。

「………現実から逃げてる私が、言っていい台詞ではないでしょう?」

「ハッ………だな」

 僕達はお互いに鼻で嗤った。僕達には似合わない言葉だよ。

 現実から逃げてるだけの世界。けど、そんな世界を必死で生き抜くのも、悪くない悪くない。

「少し話しすぎたか」

「ですね………。そういえば先輩、そろそろアップデート終わるんじゃないですか?」

「ん?………あ、本当だ。そろそろ場所見つけるか」

 時刻は17時過ぎ。思ったよりもあっという間だった。

 手早く会計を済ませてファミレスを出ると、どこかゲーム出来る場所が無いか近くを見渡した。

 ファミレスでやるつもりはない。二人でゲームするには人が多すぎるからな。

「先輩、そこに公園ありましたよ。人もいません」

「じゃあそこにするか」

 というわけで僕達は近くの公園に行くと、近くにあったベンチに座った。薄暗くて、落ち着いた雰囲気だ。

 改めてイヤホンをつけて、地血と背中合わせに座る。

「アップデート終了………それじゃあ、先輩」

「あぁ、やるか」

 地血の目が冷たいものになる。いつもゲームをする時の特徴だ。まぁ僕もみたいだけど。

 僕達はこうして、今日も殺し合う。




 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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