僕はそこでハッと目が覚めた。あ、そうだ………僕授業中で………
「はーい、それじゃあ今日はここまででーす」
それと同時に先生の授業の終わる声が聞こえてきた。
最後に時計を見た時、授業時間の四分の三は終わってたし、本当に夢の中だと時間の流れ方が違うんだな。
反射的に体を起こして立とうとすると、体が思うように動かない。物凄い倦怠感が体を襲い、ついフラついてしまった。
周りに悟られないように自分の席に座った。体の感覚がはっきりしてきた。
実際に激しい運動をしたわけではないのに呼吸が荒くなる。
ヤバいな、これは流石にマズい。この後の授業ちゃんと受けられるかな?
〈あ、マスター。おはよう!〉
すると僕の肩に腰掛けるようにして浮いているミリーがいた。さっきまでの全裸でも白衣姿でもなく、朝のパーカーを着ている。
その肌はツヤツヤとしていて満面の笑みを浮かべている。どうやら満足してもらえたようだ。
僕以外には見えない彼女を、僕はキッと睨む。
「お前なぁ………」
〈そ、そう怖い顔しないでよ。お腹空いちゃったの、仕方ないじゃん〉
「だからって夢の中に入って襲うなよ。びっくりするでしょ」
〈ごめんってば。回復させようとしたんだけど、マスターすぐに気絶しちゃったし。キスで回復してあげようか?〉
「そしたらまた襲うつもりじゃないのか?」
〈………ダメ?〉
「ダメ」
いいわけないだろって。こんなの毎日続けてたら、体が壊れそうだ。
「今後こういうことはしないように。命に関わるのはゴメンだからね」
〈えぇ〜!私はただ、こうしないと生きていけないだけなのに………〉
ミリーはシュンとしてしまった。
うっ………そうだよな。ミリーからしたらただ食事したいだけだもんな。こうしないと生きていけないわけだし。
別にミリーに悪意は無いんだよなぁ。獣の狩りみたいなものだし、それを制限するのも変な話か。
「ま、まぁ、契約者の僕の体に支障があったらミリーも困るでしょって話。違う?」
〈それは、そうだけど………〉
「でしょ?そうでなければ後は好きにしていいよ」
自分の身は自分で守る。僕がそれを徹底すれば問題無いもんな。そこに主従関係を持ち込むのは変か。
一応コントロールは出来るみたいだし、過度に押さえつけるのもなぁ。
〈う〜ん………なるほど〉
「無理に協調性を持てとか言うつもりはない。でも、何をするにしてもこの状況にはこの状況に合ったやり方があるって事」
そんなこんなで六時間目の授業はほとんど頭に入らず、何とか帰るまでに家に行くまでの体力は回復出来た。
「さてと、帰るか。行くよ」
〈は〜い〉
僕とミリーは学校を出ると、そのまま真っ直ぐに家に帰った。もうどこか寄り道する体力は残ってなさそうだ。
家に着くと僕は右腕に浮かび上がっている契約の証の紋章を軽くなぞった。
さっきまで僕にしか見えなかったミリーが実体化して、大きさも僕と同じくらいになる。床に着地すると大きく伸びをした。
「ん〜〜〜!やっぱり伸び伸びできた方が気持ちいい!」
そりゃよぅござんした。
僕は自室で着替えると、そのままベッドにゴロンと横になった。なんかここ最近で一番疲れた気がする。
「マスターはこれからどうするの?」
「ん?まぁ夕ご飯にするにはまだちょっと早いし、少しだけゆっくりしてるよ。ミリーもゆっくりしてな」
「そう、だね………分かった」
ミリーもこの世界来たばっかりらしいし、色んなものに触れたいだろう。今日一日で色々知れたはすだし。
「一応物壊すのはやめてくれよ」
それだけ言うと、僕は自室に引きこもりスマホゲームを開いた。
しばらくは遊んでいたが、その内眠くなってしまい意識を手放した。
「ん………って、あれ?」
それからしばらくして僕は目が覚めた。
また寝ちゃったのかぁ。けどその割にはミリー何もしてこなかったな。さすがに懲りたか。疲れもいつの間にか回復している。
って、あれ?スマホがない。持ってたはずなんだが。
探そうと思って立ち上がった時、下から何やらいい匂いがしてきた。
気になって降りてみると、そこにはキッチンに立っているミリーがいた。何やら難しい顔をしている。
「ミリー?何してるの?」
「あ、マスター。実は、その………」
言い淀むんだミリーが立っている調理台の上には、温かそうなご飯が並んでいる。白米、サラダ、卵焼き、味噌汁………
「え?………何これ?」
「あれから色々考えたんだけどさ、まずは私がマスターに馴染むようになったらいいんじゃないかなって思ってね。マスターや人間を学ぶためにも作ってみた」
「ミリーが⁉︎」
あの常識のじの字も知らなかったミリーがここまで出来るとは。多少見た目が不恰好とはいえ美味しそうだし。
「よく作り方分かったね」
「マスターが朝から使ってたこれで調べた」
そう言って隣に置いてあったスマホを見せた。ミリーが持って行ったのか。
けど調べたってロックが………あ、ミリーの前で堂々とパスコード入力してたわ。
「はい、どうぞ。美味しくできてればいいけど」
「あ、あぁ、ありがとう」
まさか出会って一日しか経ってない女子にご飯を作ってもらう事になるとは。嬉しいやら申し訳ないやらで。
ご飯の準備をして席についた。ミリーはやはりいらないらしい。
「それじゃあ、いただきます」
とりあえず卵焼きから。箸で割ってぱくっと………
「どう?割と良くできたと思うんだけど」
「えっと………ミリー、これレシピ通り作った?」
「え?うん。分量も規定通りだよ?」
「ちょっとそれ見してみ」
「はい」
スマホを渡されて、そこに映ってるレシピを見る。………なるほど。
「ミリー、最初に何した?」
「え?そりゃ卵をかき混ぜて………」
「うん、合ってるよ。合ってるけどね………殻は取り除いてくれ」
結論から言うと、この卵焼きめちゃくちゃ痛い!殻がガッツリ入っててジャリジャリする!
「え⁉︎卵をかき混ぜるって書いてあったから、全部砕いて混ぜるのかと」
「違うよ!」
でも卵を割るという概念がないとそうなるのか。なんか今日一日で凄まじいカルチャーショックを受けたな。
まぁ、これはこれで悪くないか。
僕は苦笑いしながら、卵焼きを食べた。
「あ、美味しくないなら食べなくても………」
「味は好きなんだよ。ありがとうね、僕のこと分かろうとしてくれて」
「………うん!」
ミリーは嬉しそうに頷いた。
そんなこんなで夕食(他は美味しかった)を終えて片付けをすると、僕はお風呂に入った。
「ふぅ。さっぱりしたぁ。あ、ミリーはお風呂入る?」
「お風呂って、体の汚れを落とすためのものでしょ?私ある意味無縁なんだよねぇ」
そりゃ精神体でフヨフヨ出来る悪魔にゃ無縁だろうな。
「湯船に浸かるだけでもしてきたらどう?結構さっぱりするよ」
「それなら………ちょっと試してこようかな」
ミリーはそう言って風呂場の方へと向かっていった。せっかく一緒に住むなら、色々慣れて欲しいからね。
僕はのんびりしながらスマホをイジっている。せっかくミリーが僕のこと分かろうとしてくれたんだし、僕もミリーに寄り添ってみよう。
とは言っても、ミリーが人間を調べる時とは違い、当たり前だけどミリーのことやサキュバスに関する正確なことがインターネットにあるわけもなく。
契約解除の方法は………信憑性の低いものか宗教の勧誘しかないや。
まぁミリーが嘘つくメリットも無いし、本当に命捧げるしか無いんだろうな。
祓えれば楽かもしれないが、ちょっと心にくるな。そもそも出来るか知らんし。
今は現状維持しかないのかねぇ。悪い子じゃないのは分かったんだけどさ、体が保つ自信がないんだよなぁ。後精神衛生的にもちょっとね。
そんなことを悶々と考えていると、ミリーがお風呂から出る音がした。特に問題無かったかな。まぁお風呂自体は知ってたみたいだし。
そういえばミリーの寝場所どうするかな?僕の中に入ってもらうか?
するとミリーが僕の部屋へとやって来た。ノックもせずに扉を開ける。
「いや〜、たしかにお風呂って結構さっぱりするね!」
「そりゃよかったな………って、お、おい!」
顔を上げた僕はすぐにミリーから目を逸らした。
ミリーのベビーピンクの髪は濡れていて艶が増している。
それだけでもドキドキするが、彼女は朝貸してやったパーカーを着て、それ以外には何も着ていなかった。
パーカーが大きくて隠れているが、下半身は何も身につけていない。
白くてしなやかな脚が剥き出しになっていて、黒い尻尾がゆらゆらと揺れている。
「な、何でそんな格好してんだよ!」
「え〜?マスターが服は着ろって言ったんでしょ?だから上だけ着た」
「上下着ろよ!っていうか恥ずかしくないの⁉︎」
僕が直視出来ずに目を逸らしていると、ミリーがイタズラっぽく微笑んでベッドに上がってきた。
「な〜に〜?ちゃんとこっち見てよ。私の裸いっぱい見てたじゃん」
「い、いや、そうだけどさ………」
チラッとミリーに目を向けると、屈んでいるせいで襟から彼女の胸の谷間が見えてしまっている。
「もしかして、ヤラシいことしたくなっちゃった?」
ミリーは僕の方にお尻を向けた。秘所を尻尾で隠しているのが、より卑猥に感じる。
「ちょ、ミリー………!」
僕が止める間もなく、ミリーは僕に抱きついて来た。パーカー越しにミリーの柔肌の感触が伝わる。
「シたいならシてもいいんだよ?私が、い〜っぱい気持ちよくしてあげる」
ミリーの囁きに思わず手が伸びかけたが、それでは昼間の繰り返しだ。そこはグッと堪える。
「そ、そんなこと言って………また好き勝手にするんだろ?これ以上は体が保たないの」
「まぁそれもそうだけど………」
ミリーは抱きついたまま、優しく唇を重ねてきた。そっと唇を離して微笑むと僕に身を預ける。
「私だって、いっぱい気持ちよくなりたいんだけどなぁ」
僕の手を取ると自分の太ももの付け根に潜り込ませた。そこはねっとりと湿っている。
ズルいなぁこの笑顔。こんなの、断れないって………これがサキュバスの魅了する力なのかな。
するとミリーの尻尾が僕のモノをズボン越しになぞった。甘い快感に身を震わせる。
最初から夜もするつもりだったんだろうな。
「こっちはもう準備万端だね。それじゃあ………いただきます♡」
「………はぁ、召し上がれ」
そんな確信めいた予想をして、僕とミリーはベッドに倒れ込んだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。ここでこの章は一旦止めます。
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