「新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「は、はぁ………」
僕は目の前で礼儀正しく頭を下げる少女に、若干戸惑いながら応えた。
それも仕方ないだろう。僕と契約しているサキュバス・ミリーが華やかな着物姿で新年の挨拶をしてきたんだから。
ミリーの契約して早数ヶ月。彼女はすっかりこちらの生活に慣れて、この家の一員となりつつあった。
てっきり何か酷い目に遭うのでは、とすら思っていた僕の予想に反して、ミリーは明るく素直な悪魔だった。
色んなものに興味を示し、毎日を楽しく過ごしている。そういうところは素直に尊敬している。
まぁ今の一番の問題は、彼女とは毎晩のように身体を重ねていることだ。サキュバスとして必要不可欠な精力を補給するためなんだけどさ。
実際に彼女を抱くこともあれば、夢の中で抱くという時もある。双方それぞれにメリットはあるので、その時々で変えている。
体力的にかなりハードではあるものの、それを楽しみにしているのも事実で、休日などの余裕のある日は夜以外も許す時はある。まぁごく稀だが。
なので大抵の場合、朝は二人とも一糸纏わず同じベッドで朝を迎えるのだが、これは一体どういうことだろう。
ウチにあるはずのない着物を着たミリーが、僕が起きると同時に新年の挨拶をしてくれた。
たしかに今日は元旦だが、まさかまだ夢の中ってわけじゃないよな?
「あの、ミリー?どうしたのその格好?」
「え?あぁ、私が元々着てた服を魔法で変化したんだ。よく出来てるでしょ?」
まぁたしかに、本音を言うとめちゃくちゃ綺麗だ。
桃色の着物は花が彩られていて、ミリーの雰囲気とよく合っている。桜が飾られた髪飾りもミリーの髪色と相まってよく似合っている。
それでいて彼女の煽情的な体格は隠しきれずにいるので、何とも艶やかな様だった。
しかも悪魔のための仕様なのか、背中には羽を、腰の辺りからは悪魔特有の尻尾も生えていた。
「今日はお正月でしょ?『ハレギ』というものがあるって言うから、自分で再現してみたの」
「色々言いたいことはあるけど、そんなこと出来たんだ」
「まぁね〜♪これでも私、それなりの実力者だし?これくらいの魔法の一つや二つはお手のものよ」
誇らしげに胸を張るミリー。お手軽に着物着れるとか、サキュバスって便利だな。
「さてと、それじゃあ早くご飯食べて行こうよ!」
「行くって、どこに?」
「初詣だよ!ジンジャって所に行くんでしょ?それっていつもマスターが学校に行く時に通る所だよね?」
まぁ確かに東海林神社は学校行く時に通るけど。
「嫌だよ。冬休みで、しかも外寒いんだから、家の中でぬくぬくしてたいの」
こんな真冬の朝っぱらから外出するとか自殺行為だからな。もう少し寝る。
「えぇ〜!いいじゃん!行こうよ!近くなんだからすぐに戻って来れるって!」
楽しみにしていたのか、ミリーがベッドを揺すって騒がしくなり始めた。このままだとゆっくり出来そうにないな。
普通なら勝手に一人で行けよ、となるのだがミリーは僕から一定以上離れられない。
はぁ、仕方ない。
「分かったよ。行くから朝ご飯の用意しといて。冷蔵庫に餅あるから、トースター出しといて」
「うん!やったぁ!」
嬉しそうにキッチンに向かうミリーを見て、思わずため息をついた。
悪い奴ではないんだが、あの行動力はちょっと僕には釣り合わないよなぁ。
のんびりと着替えると着替えると僕もキッチンに向かい、ミリーと一緒に朝ご飯の準備をした。まぁ食べるのは僕だけだが。
実家から送られてきた餅とおせち数品をいただき、僕も出かける準備をした。防寒大事ね。
「よし、それじゃあ行くか」
「うん!レッツゴー、ひゃあぁぁぁっ⁉︎」
騒いでいるミリーを精神体にして、自分の体に取り込ませた。
〈ちょっと!別に学校行くわけじゃないんだし、外に出してよ!〉
「羽だの尻尾だの角だの生やしてる奴を出せるわけないでしょ?服は変えられるみたいだけど、そこ何とかならないの?」
〈無理に決まってるじゃん。サキュバスは基本的に夢を操る悪魔だから、別に普段は隠す必要無いんだし〉
まぁ夢の中で好き勝手出来るなら、現実で見た目を変える必要は無いよな。精神体がデフォルトなわけだし。
何でも夢の中で好き勝手できる身体と違い、服はどうしようもないので変化できるように作られてるんだと。服はどこまでいっても服という事だ。
「それならダメ。確実に目立つ」
〈えぇ〜!〉
コスプレと言えば何とかなるかもしれないが、それはそれで奇異の目で見られるのは間違いない。
ちょっとしょげてるミリーを連れて僕は家を出た。
〈うわぁ、松竹梅だ!マスター、鏡餅ってどこで見れるの?〉
「ミリーはやけに正月について知ってるな。また僕のスマホ勝手に使ったの?」
〈違うよ。マスターが図書室でキマツシケンとやらの勉強をしてる時、色々本で調べたの。透視能力あるから、手に取らなくても本読めるし〉
珍しく大人しいと思ったらそんな事してたのかよ。まぁ周りに迷惑かけないなら好きにすればいいが。
「にしても寒いなぁ」
〈マスター音を上げるの早すぎるって。まだ出かけて三分も経ってないよ?体力無いねぇ〉
「勝手な事言って………誰のせいで毎日体力カツカツだと思ってるんだよ」
ミリーの夜の相手を楽しみにしてないと言ったら嘘になるが、それ以上に疲労は残る。
〈とか何とか言っちゃって、この前は一日中抱いてくれてたじゃん♡〉
「夢の中でな。本当に時間感覚がおかしくなる」
この前寝たのはかなり遅いのに、一日中ミリーを抱いていた夢を見たことがある。
〈やっぱりマスターと私、身体の相性めっちゃいいんだよ〉
「そりゃどうも」
サキュバスに褒められたんだし、喜ぶべきなのかな。
そんなこんなで近場の東海林神社に着いた僕達は、参拝客の列に並んでのんびりしていた。
しばらくして僕達の番が来た。賽銭を入れて鐘を鳴らして二礼二拍手一礼、っと。
ふと隣を見てみると、僕の中にいるミリーも同じようにやっていた。本当によく調べたんだなぁ。
「というか、ここ仮にも神様祀ってる所だよ?悪魔が神頼みとかいいの、それ?」
〈う〜ん、こういったらアレだけど、こういうのって本気で神頼み、ってよりは頼んで気合い入れる、って意味合いの方が強くない?だからあんまり気にしないよ〉
「え?ま、まぁ、そうかな………」
〈それに、叶えたい願いもあったからさ〉
「………そうか」
少しだけ真剣な表情になったミリーを見て、僕は小さな声で応えた。
あんまり初詣って行ったことないからなぁ。わざわざ寒い中出向いて神に頼むような願いもないし。
「さてと、来たついでだし甘酒でも貰っておくか」
〈アマザケ?〉
この寒い中ただ初詣しただけで帰れるか。温かい飲み物飲まなきゃやってられない。
えっとたしかテントが………あ、あったあった。
「すみません、一つください」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
テントにいた人に温かい甘酒を受け取った。いい匂いがするなぁ。
〈これが甘酒………って、この世界ってマスターの年だとお酒ダメなんじゃないの?〉
「これなら大丈夫なの、酔わないからね」
〈へぇ、いいなぁ。それ私にもちょうだい〉
「その状態じゃ飲み食い出来ないでしょ?」
〈えぇ〜!それじゃあ出してよ!私も甘酒の飲みたい!〉
「ダメだよ、お前出しちゃマズいんだから。大体、ミリーは人の食べ物食べられないでしょ?」
〈む〜!食べられないことはない、はず!〉
「でもダメ」
〈マスターばっかりズルい!この鬼!悪魔!〉
「悪魔はそっちだろ」
ミリーのお願いを断ると、僕は甘酒を飲んだ。その好奇心は大したものなんだけどね。
軽く温まった僕はミリーを連れてアパートに帰った。部屋に入るとミリーを外に出す。
「よっと、ふぅ。それにしてもこの着物、結構動きにくいんだね」
「そういえば、いつまでその格好でいるの?」
「今日いっぱいはこの格好でいようかなって。マスターも気に入ってくれたみたいだし」
「ま、まぁね………」
ニヤニヤとイタズラっぽく笑うミリーに僕は目を逸らした。本当に綺麗なんだよな。
「というか、ちょっと前まで服着るの嫌がってたのに、今は自分で服を作ったりするんだ」
「ん?ほら、学校の古文の先生が言ってたでしょ?マスター達日本人って少し隠れたものの方が美しく感じるって。新鮮味っていう意味でも無駄に露出多いよりかは、こうやって服着てた方がスる時に興奮するかなって」
ミリーに余計な知識を与えるのはマズい気がする。思考がミリーの思う壺になりそうだ。
僕はスマホを充電器に繋げると、ベッドの上に寝転んだ。ミリーもベッドに寄りかかるようにして座った。
「それでマスター!これから何するの?」
「昼寝」
「せっかくお正月なんだから、それっぽいことしようよ!お正月の遊びとかあるんでしょ?後ネンガジョウ書いたりカキゾメしたり」
「全部必要な道具があるの。そんなものここには無いし。というか昼なのにまだ寒いし」
「ふ〜ん…………あ、そうだ!一つあるよ、物使わずに部屋の中で出来る正月ならではのこと」
「ん?何やるの?暇だし、ものによっては付き合うよ」
特にやることもないし、たまにはコイツのやることに付き合うのも一興だろう。
「本当に?それなら、ちょっと体起こしてよ」
言われるがままに体を起こすと、ミリーがベッドの上に上がって僕の脚の間に座ると抱きついてきた。彼女の温かさが伝わってくる。
「ちょ、ミリー⁉︎何するつもり⁉︎」
「ん〜?年が明けて初めてエッチすること、姫始めって言うんだって」
その瞬間、全身に快感走った。ミリーがズボンの上から僕のモノを撫でている。
「ふふっ、マスターこの格好気に入ってくれたみたいだし、このままでシちゃおうかな」
晴れ着姿のミリーは尻尾を嬉しそうに揺らしながら僕のモノを撫でる。
「み、ミリー………ダメだよ、こんな昼間から………」
「でもぉ、マスターのここ、もうこんなに大きくなってるよ?ずっとシたかったんじゃないの?」
たしかに、晴れ着姿のミリーは綺麗だと思った。けどこんな流されるようにするのは………
揶揄うように笑ったミリーは、触れ合うギリギリまで顔を近づけた。
ミリーは楽しそうに笑うと、僕と唇を重ねた。柔らかい唇が押しつけられていい匂いがする。
「んちゅっ♡…………だから、私と姫始めしよ♡」
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