それから僕と倭文の主従関係は続いていった。
夜が明ければ街へ赴き、共に様子を見て変化が無いか調べる。夜の探索は倭文に任せて、それを朝聞き僕がどうするかを考える。
我ながらなかなかの団結力だと思うし、少しずつではあるものの街の不穏な気配も掴みかけてはいる。
しかし決定的なものはいまのところ何もなく、件の両替屋も結局怪しげなところは発見できていない。
「うーん、雲を掴もうとするかの如く、思うように進まないな」
「お力になれず、申し訳ございません」
「いやいや、そもそも本当に幕府転覆する者がいるかどうか、そこからの始まりだったからね。短期間でここまで調べられた倭文は、間違いなく優秀だよ」
夕日が落ちてご飯も食べ終えた夜。僕は倭文と今日の散策で得たものを話していた。倭文の服装は忍びの服となっている。
そう、倭文と再会して五日。倭文はこの短期間で不穏な者の影を掴んでくれた。ただそれを捕まえる算段をつけられない。
初めて倭文と街に散策しに行った以降、向こうも尻尾を掴ませるようなことはしていない。
ここは僕がなんとかしないと、だよなぁ。
「う〜〜ん、もう一度街の奥の路地行ってみるか」
「そこはたしか、初めて散策した時に野盗に襲われた所ですよね?やはり、あの野盗達を不自然に思われますか?」
「そりゃそうでしょう。普通はあんなに固まって襲うことはしないからね。街中なら尚更」
あんなに大人数で固まって街中で活動してたら目立って仕方ない。何故そんなことをしてたのか、そして何故それが出来ているのか。その辺を調べるか。
「というわけで、明日はその辺を重点的に散策するか」
「分かりました。いつも付き合わせてしまって申し訳ありません」
「僕が勝手にやってるんだし気にしないでよ。本当、城にいるばっかりだと疲れるからさ。倭文といると気が楽でいいんだよ」
「そうですか………そう言っていただけて、嬉しいです」
いつもの堅い表情ではなく、少しだけ柔らかく頰を緩ませた倭文に釣られて僕も笑った。
「っとぉ、それにしても今日は冷えるね」
突如襲ってきた冷たい風に、僕は身を震わせた。
「冬ですからね。最近は夜遅くまで起きられていますし、お体には気をつけてくださいね」
「ありがとう。そういえば、いつも倭文は外に出てっちゃうけど、寝る場所どうしてるの?里には戻ってないんでしょ?」
「そうですね。近くの宿を使うこともありますが、大抵は野宿です。日が変わった後も散策を続けることもありますから」
「この時期に野宿って………人の心配する前に自分の心配しなよ。身体壊さないでよ?」
「ご安心ください。忍びたるもの、冬季の野宿などよくある事です」
「慣れてればいいってものでもないでしょ。倭文に万が一のことがあったら嫌なの」
「そんな………もったいないお言葉でございます」
倭文は恭しく頭を下げた。もう少し砕けてくれてもいいんだけどなぁ。
僕は忍びとしての倭文ではなく、一人の友、大切な者として倭文に接してるつもりだ。
たとえそれが結果的に主従関係だったとしても、あまりそれを重視したことはない。
しかし倭文は僕のことをただの主としか見ていないのだろうか。
いくら忍びで僕の部下でも、もう少し距離は縮めたい。
「あぁでも、何か忍術で炎とか出せたりするんだよね?火遁の術、だっけ?それなら安心か」
「御屋形様、火遁の術は炎で身を隠す術でございます。身体を温めるものではございません」
目的達成できればなんでも良くない?
すると再び冷たい風が吹いた。身がすくみ上がる。
「うぅ………冗談はさておき、本当に冷えるな」
「私は里長から御屋形様の身の回りの手伝いも仰せつかっております。私に何かできることがあれば、何なりとお申し付けください」
「いや、特には………」
そう言いかけた時、頭にふとあることが浮かんだ。それはちょっとした悪戯のようなものだった。夜中だったこともあり、気が高揚していたのだろう。
「そ、それならさ………お互いに身を寄せ合って、身体を温めるか?」
もちろん冗談で、どうせ倭文は嫌がるだろうから、そしたらやめるつもりだ。
すると倭文は少しだけ顔を俯かせて、小さく口を開いた。
「………かしこまり、ました」
「え?」
思いもよらぬ返事に、僕の口から思わず変な声が出てしまった。
そんな僕をよそに倭文は僕の方へと近づいてくると、僕の背後に膝をついた。
「それでは、失礼します」
「え、ちょ、倭文………!」
僕が止めるよりも先に倭文が僕に手を伸ばした。後ろから僕の首に手を回すと優しく抱きしめる。
倭文のしなやかで柔らかい身体が、僕に押し付けられた。彼女の熱が服を通り伝わってくる。
「い、いかかでしょうか………」
耳元で倭文の声がする。熱い吐息が耳を撫でて心地よい。
「あ、う、うん………すごい、温まるよ。ありがとう」
本来なら気を遣って離れさせてやるべきなのかもしれない。
しかし倭文の身体の熱と感触が僕を離そうとしない。特に背中に当たる弾力に富んだ双丘が、僕の鼓動を速める。
「そう、ですか。よかったです。御屋形様も………温かいです」
どこか嬉しそうな声音の倭文が、少しだけ抱きしめる力を強くした。僕は回された倭文の手をそっと握る。
倭文の心音が温もりと共に伝わってきた。それが倭文と触れ合っていることをより強調させてくる。
「あ、あの、倭文………そろそろ離れないと………」
「え?………あっ………」
抱きついたまま戸惑っている倭文は、目線を落として僕を見ると目を見開いた。
「あ、あの………御屋形様。その、御屋形様、のが………」
倭文は僕の下腹部に目を向けると、恥ずかしそうに顔を赤らめて顔を逸らした。
倭文と触れ合ったことによって僕のモノが大きくなり、着物を内側から押し上げている。
それを倭文に見られて、僕の顔がカァッと熱くなっていった。隠そうと体を丸める。
「あ、いや、その………これは………ご、ごめん」
「いえ、その、そうですよね………殿方は、その、欲求を溜め込んでしまうと、そのようになってしまうのですよね。最近は任務で忙しかったですし………」
「わ、悪い………そんなつもりじゃ、無いのに………」
倭文のことを異性として見てないと言ったら嘘になる。美人だとは思うし、隣にいて胸が高鳴ることもある。
とはいえあくまで主従関係である人に、自分の欲求を向けてしまうような事をしてしまうとは、情けない。
「ごめん、気にしないで………って、倭文?」
てっきり自分から離れると思った倭文は、離れることなく僕をジッと見ている。
「あ、その………私なんかでよろしければ、御屋形様の猛りを鎮めるお手伝いを、いたしましょうか………」
「えっ………⁉︎」
予想もしてなかった提案に僕は声をあげた。
「い、いや、大丈夫だから!倭文にそんな事させられないよ!」
「いえ、その………何かあっては、これからの任務に、支障が出てしまいますから」
倭文は僕の前に回ると正座して僕を見上げた。その表情が少しだけシュンとなる。
「そ、それとも………私では、役不足でしょうか………」
「そんな事ない!すごい嬉しい!けど………いいの?その、無理しなくても………」
「いえ、先ほども申し上げた通り、御屋形様の身の回りの手伝いも私の任務です。その………御屋形様の夜伽も、私の務めにございます」
「そうじゃなくて………!」
気が動転していることもあってか、少しだけ口調が強くなってしまった。倭文が動きを止める。
「倭文が忍びとして
「御屋形様………」
「僕は求めたいのは、『忍び』だけとしての倭文ではなく、一人の女子としての倭文なんだ」
仮にも部下に何を言ってしまっているのか。それでも僕は止まらなかった。
九年前僕と共にいてくれて、僕なんかのために忍びになって、身体を張って守ろうとしてくれる。
そんな彼女を僕は求めてしまう。対等な存在として。
「御屋形様………私は………」
僕を見つめて倭文は何かを言いかけた。しかし小さく首を振るとギュッと抱きついてきた。
「御屋形様。過去がどうであれ、今の私は忍びです。忍びは影に生きて、いかなる手を使ってでも命をかけてこの世を守る者。そのような者が心の内を曝け出すなど言語道断。その相手が主であるのなら尚更です」
倭文は身体を離すと、せめてもの繋がりを示すように僕の手に触れた。そして自分の首にある鷹の羽の首飾りを見る。
「ですから私は、忍びとしてしか御屋形様を求められません。しかし………御屋形様のために全てを捧げる。その想いは御屋形様に助けていただいたあの日からある、私自身のものです」
倭文はゆっくりと顔を上げた。その瞳は揺らぎ濡れている。
「後は、何も聞かないでください」
「………分かった。ありがとう」
「いえ、こちらこそ。何年経とうと、御屋形様はお優しいのですね。そんな方に求めていただけて、私は幸せです」
恥ずかしそうにしながらも僕を真っ直ぐ見つめる倭文に、僕の心臓が激しく高鳴った。自分の本能が、その高鳴りを受け入れる。
「え、えっと………何するか、分かってるん、だよね?」
「は、はい。私は忍びです。房中術を会得していますので、ご安心を。どうぞ御屋形様は気を楽にしていてください」
そうなのか。となるとやっぱり、倭文は経験があるのかな?
そんな事を思いながら、僕達は布団へと向かった。正面から向かい合うと、丁寧な所作で頭を下げた。
「今宵の夜伽。私倭文がお供し、務めさせていただきます」
頭を上げた倭文は僕と見つめ合うと、再び強く抱き合った。そのまま布団へと倒れ込む。彼女は自分の服に手をかけた。
「それでは、失礼します」
倭文は身につけている忍びの装束をはだけさせた。
肌着として着ている鎖帷子をたくし上げると、胸にはサラシが巻かれていた。
そのサラシを解くと、予想よりもはるかに豊かな胸が揺れながら露わになる。
倭文が豊満な胸を持つことは前から分かっていたが、それすらもサラシによって押さえつけられていた。
こうして実際に隠すものがなく露わになったそれは、思わず息を呑むほどに美しい。
ハリのある白い肌に赤みがさし、大きな美曲線を描いている。その先は赤い突起があり硬くなっているのが分かる。
美しい双丘を目の前にして、僕は思わず唾を飲み込んだ。
そわそしている倭文の手が身体を隠そうか隠すまいかで悩んでいる。そしてぎこちないにがらも、何かを求めるような顔を見せた。
「御屋形様………私に御屋形様の猛りを、ぶつけてください………」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
評価、感想等ありましたら、ぜひよろしくお願いします。
なお、小説とは関係ありませんし私ごとで申し訳ありませんが、この度Youtubeチャンネルにて動画投稿を始めました。
下記のURLからご覧になれますので、ぜひご視聴ください。一人でも多くの方に見ていただけたら幸いです。
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