グリアが僕の奴隷(一応)になってからしばらく経った。
最初の頃は全てに反抗していたグリアも、今は少し大人しくなった。といっても性格は相変わらずだけどね。
そんなわけか、身体を求めるのもあんまりしてこなかった。無理矢理して苦痛を与えるのは僕のやり方じゃないし。
人を傷つけるのが嫌、というよりかはそれじゃあ父さんとやってる事が変わらない。
そんなある日の事だった。
僕は自分専用の研究室みたいなのを城の中に持っている。何かの仕事、ではなく単なる趣味だ。
魔法や科学、その他諸々の研究を自分だけで行なっている。
今日も今日とて研究室に篭って、趣味を満喫していた。ただし今日は一人じゃない。
「なぁ、私はいつまで付き合わされるんだ?」
「グリア、そこの資料取って」
「おい、人の話を………はぁ、はい」
僕はグリアから資料を受け取ると、それと睨めっこする。
グリアはこの城に来て特にする事が無い。当たり前だよね、だって来る前からちゃんと生活出来てたんだし。
それなら僕の趣味に付き合ってもらうかな、という事で研究室に連れ込んだ。
研究室は僕の部屋の真隣で、繋がっている。
入る道が僕の部屋を経由するしか出来ないようになっているので、入られる人間は限られる。
というのもここにあんまり人を入れなく無いんだよね、理由は色々あるけど。
でもグリアなら別にいい。むしろ彼女には見てもらいたいからな。
「それにしても色んなものがあるんだな。これ全部貴様が作ったのだろう?」
「まぁね」
グリアは棚に置いてある僕の作ったものを触れて眺めている。見ては欲しいけど、危ないものもあるから気をつけてよ。
グリアは僕のあげたスーツではなく、黒いネグリジェを着ている。まぁこれも僕があげたやつだけど。
長い金髪をまとめて肩から胸へと垂らしている。
似合ってはいるんだけど、どうしても肌の露出が増えてしまうとのと、グリアの白い肌とネグリジェの色が相まって、とても艶かしい。
しかもグリアの煽情的なスタイルも浮き彫りになっているため、近くにいるとどうしても緊張する。
初めて着てるのを見た時は、つい抱き締めてしまった。まぁ思いっきり突き飛ばされたけど。
こんな艶やかな美人がいつも隣にいるのを想像して欲しい。まぁまぁ酷い生殺しだ。
思わず襲いたくなるけど、まず抵抗されるだろうし。苦痛を与えるのは嫌だ。
そうなると我慢するしかないんだよなぁ。眼福なのでそれはそれで嬉しいんだけど。
奴隷という立場なのにグリアは僕に対してタメ口だ。
僕は全然気にしないし、父さんの前ではちゃんと敬語に戻してくれるから問題ない。
「これは魔法のポーションか?それで………何だこれは?水と石ばかりじゃないか」
「そう見えるでしょ?でもね、それぞれ特徴あるんだよ」
「ふーん、これは何だ?」
「それは塩水に適当に電気流したらできたヤツ。気体と液体が出たから気体の方は水と混ぜた」
この世界で研究って言ったら大抵魔法だけど、僕はそれだけじゃない。
自然界にあるものを手当たり次第に集めては、色んなことをして試している。
「右の方は布の色抜きとかに使えて、左の方は肉が溶けるよ」
「ほぉ………こっちは?」
「西の方に温泉地があったでしょ?たまに人が原因不明で死んでる所。そこの温泉の水を、蛍石にかけたら何か気体が出てきたからそれを水に溶かしたの」
ちなみにそれに骨つき肉突っ込んだら、骨ごと溶けたからね。正直ビビった。
「なるほど。それにしても部屋は新そうなのに、置いてあるものは古そうだな」
「あぁ、それ部屋を修理したからだよ。ちょっとボヤがあってね」
「何をしたんだ?」
「金属って混ぜて火つけたらどうなるかなって思って、その辺にあった加熱して黒くなった鉄とアルミの粉混ぜて分量比変えながら火つけたら、粉入れた器ごと溶けちゃってね」
いやぁ、あれはビックリした。趣味の時間とはいえさすがに人呼んだな。
「後、さっき言った温泉水と何かの液体混ぜたのと、意味なく塩水の分解したのと油脂を混ぜてできたのがあって、油脂の方を温泉水の方にこぼしちゃったのね。しばらくしてから気がついて、仕方ないなぁってその辺のコップにバシャッて移したら、爆発した」
「貴様、よく今日まで生きてこれたな………」
僕の研究なんてそんなもんだって。
「しかしこんなもの作ってどうするんだ?何かの役に立つものは無さそうだぞ?」
「使い方の問題だよ。実際役立ちそうなのも作って使用人とか街の人達に使ってもらってるの」
「売っている、という事か?」
「いや、無料で配ってるだけ。安全なもののみ、だけどね。あ、父さんには秘密だから言わないでよ」
代金つけるようなものじゃないし、そんな面倒な事したくない。
「ほら、ただでさえ父さんのせいで、周りには迷惑かけてるからさ。せめてちょっとでも生活しやすくしてやりたいからさ」
度重なる侵略戦争によって、国民達は疲弊している。高額な税金によって、生活だって不安定な人が多い。
本当なら父さんを止めるべきなんだけど、それが出来れば苦労は無いわけで。だからせめてものおわびってわけだ。
「なるほど。貴様なりに、民に尽くしているのだな」
そう言うグリアの表情は、いつもよりも柔らかかった。ずっとその表情ならまだ愛嬌があるのに。
「そんなんじゃない、ただの気休め」
自分が出来ない事を別の事に置き換えて、やってる風に見せてるだけだ。大した事じゃない。
「そうか………っと、これは何だ?」
棚を物色していたグリアは、置いてあったものを手に取って眺めた。
それは大きな洗濯バサミのようなものだった。それが幾つも並んでいる
「あぁ、それは僕の作った魔道具だよ」
「貴様そんなのも作れるのか?ちなみにどんな効果があるんだ?」
「簡単に言えば物を通した人体への魔術付与だね。身につけてるものを介して、魔道具内の術式を付与する」
ただその術式ってのが一つしか付与出来ない。だから色んな術式を付与するためにはたくさんの魔道具がいる。
これがいくつもあるのはそのためだ。どうしたもんかね。
グリアはその魔道具を面白そうに眺めた。
「………ちなみにどんな魔術を付与出来るんだ?」
「ん?えっとね………何だったっけか?筋力増強、速度上昇、耐久性向上、魔力増強………後は知らん。色々作りすぎてて覚えてない」
大体作っても僕が使うことはないからな。試しに作ってみた、って感じだし。
「その付与するために介するものとは、例えば私の首輪や衣服もアリなのか?」
「まぁね。効果は割と大きめだよ」
さてと、グリアも眠いだろうし、今日はこの辺にしておこうかな。
そう思った時だった。
グリアが手に持っていた付与の魔道具を、自分の首輪に取り付けた。
「ちょッ⁉︎おい‼︎」
僕は驚いている隙を狙って、グリアが僕に飛びかかってきた。僕は辛うじて避けた。
「何するんだよ⁉︎」
「決まっている!貴様の発明品を使って、ここから逃げ出す!」
僕の首を絞めるつもりだろう。グリアはまた迫ってきた。次こそ捕まる!
ヤバい!……………っとぉ?
グリアの首についている魔道具を見て、僕は動きを止めた。
たしかあれに付与した魔術って………
「これで終わりだ!」
そう叫んでグリアは僕に襲いかかってきた………
が、その前にバタンッと僕の目の前で倒れる。
「ぐあッ⁉︎………な、何だ、これは………ッ⁉︎」
グリアは驚いて身体を動かそうとする。しかし身体は思うように動かない。
「あぁ………グリア、運悪いな。それ身体能力高めるヤツじゃないよ?」
「な、何?………しかし、貴様は………」
「いや、たしかに身体能力を向上させるものがあるとは言ったけど、それ以外のものが無いとは言ってない」
グリアがつけているヤツは、たしか催眠術とか暗示の術式だった気がする。付与の魔道具の中で数少ない能力向上以外の術式だ。
今グリアの身体は意識はあるものの、何か言われるまで身体は動かせない。いわば待機状態だ。話は出来るようにしてあるけど。
「まったく………逃げるにしても今はマズいって、何度も言ってるでしょ?大人しくしてな」
「うるさい!………こんな所に、いつまでもいるわけにはいかないのだ!私は………国を、取り戻さなくては………ッ」
このやり取りも何度目だ?いい加減落ち着いて欲しいな。
「分かったよ。それなら………」
僕は近くから小型の遮音の魔道具と、付与の魔道具の棚から筋力増強の魔道具を取った。
それを服につけて、グリアを抱きかかえる。いわゆるお姫様抱っこだ。
「なぁッ⁉︎何をする⁉︎離せ‼︎」
叫ぶグリアを無視して、寝室に入った。自分のベッドにグリアを寝かせる。
「ッ⁉︎な、何の真似だ‼︎」
おっと、これ以上叫ばれるのはちょっと嫌だな。周りに聞こえちゃう。
僕は筋力増強の魔道具を外すと、遮音装置を部屋の扉につけて鍵をかける。
これで部屋の中の音は周りには聞こえないし、誰かが入る心配もない。
そしてベッドに上がり、横になっているグリアに覆い被さる。
「しばらくそんな事考えられないように、久しぶりに調教してあげるよ」
「ッ⁉︎や、やめろ!離れろ‼︎」
「やだよ。襲おうとしたバツだ。大丈夫。痛い事はしないし、途中で邪魔も入らないから」
グリアの腕をそっと撫でた。あぁ、スベスベで柔らかい。
「正直こういうの我慢するのも難しいんだ。たまには、求めさせてよ」
こうして僕達だけの夜の時間が始まった。
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