僕はフラフラとしながら、城の中を歩いていた。
それから自分の部屋に着く、自分の部屋の前に来るとこれからの自由時間の事を思えるな。
そんな事を思いながら、僕は部屋の扉を開けた。
するとそこには大きく足を開いて身体を倒しているグリアがいた………艶かしい下着姿で。
「え………?」
「あ…………」
部屋に入ってきた僕はグリアと完全に目があった。
胸や秘所を申し訳程度に隠している下着を着て、しかも大きく足を開いているからか、グリアはとても煽情的に見えた。
自然と目がそちらへと向いてしまう。
グリアは僕と目が合った後、自分の身体を見下ろした。たちまち彼女の顔が赤くなっていく。
「ッ⁉︎ な、何をしているんだ貴様ァ‼︎」
「うわぁ⁉︎ご、こめん!」
僕は慌てて目を逸らした。
グリアは辺りを見回してベッドに飛び込んだ。毛布に包まり身体を隠す。
というか反射的に謝ったものの、自分の部屋に入っただけなのになんで謝らないといけないのか。
「だ、大体人の部屋で下着一枚になって何してたの⁉︎」
「ストレッチだ!貴様がくれた服では動きにくい!」
あぁ、そういう事。
「何で今さらそんな事してるの」
「習慣だ。それに身体が鈍ってしまうのは嫌だしな」
そんなもんかねぇ。
けどたしかにあぁいったピシッとしたスーツ姿では、思いっきり身体を動かすのには向いていないだろう。
「グリア。い、一応二人で暮らしてる部屋なんだし、その辺は気をつけてよ」
「そっくりそのままお前に返してやる!」
こんな風に言い合うのも今ではすっかり日常だ。
僕は大きくため息を吐くと、近くの椅子に座った。それからグダッと脱力する。
「どうした?やけに元気がないじゃないか」
「お、グリアも色々と分かってきたね」
「そ、そういうわけではない!何かあったのか?」
「今日剣術の授業があったんだよ。おかけでヘトヘトだ」
座学とかはむしろ好きなものすらあるんだけど、こういう体を動かしたりするヤツはほとんど苦手だ。
「貴様さっき出て行ってからそれほど時間は経ってないだろう。その間の剣術の稽古でここまでくたばるとは、情け無いな」
「苦手なんだし仕方ないでしょ。大体さ、剣だ槍だを持って正々堂々と勝負、なんて古臭いと思わない?」
戦のために武術を習う、と言われるたびに強く思う。
戦争の時そんな事せずに強い魔道具を作って、それで一気に殲滅した方がよっぽど効率がいい。
「あのなぁ、貴様騎士道という言葉を知ってるか?」
「君は効率という言葉を知らんみたいだな。より短時間で多くの敵を倒す、素晴らしいじゃないか」
だってそうすれば剣を振るうよりも何倍も楽に効率よく敵を倒せる。
「そういうのは戦いとは言わん。ただの虐殺だ」
「そんなもんかねぇ」
少しだけ寂しそうな顔をしたグリアを見て、僕は息を吐いた。
時代は常に進化している。その進化を利用しより強い力を手に入れるのなら、それはそれでいいと思うけど。
「どんな事にも正面から向き合う。たとえどんな結果でも、素晴らしい事だぞ」
「そうかなぁ?楽に済むならそれでいいと思うんだけど。そのための開発も色々してるしね」
より楽に戦えるようなものの開発は、僕が昔からやっている事だ。もちろん個人的にだが。
訓練なんてしなくても戦場にいなくても余裕で打ち勝つ力、ある分には全然いいと思うな。
「それにたとえ古臭くても、剣術とは良いものだ。心身共に鍛えられて健全な精神を養うだけでなく………」
なんだか熱が入ってツラツラ語り始めたグリアは放っておき、僕はゆっくり休もうとした。
「あ、そういえばその最終テスト、まだやってなかったなぁ」
どこかでやるか。と言ってもどうするか。
「何だ、またくだらないものの発明か?」
「安心して。金属の板切れ振り回すよりかはよっぽど画期的だから」
というわけでどこかてテストしたいなぁ。けどただやるだけじゃ意味ないし。
「それなら私が付き合ってやろうか?貴様のいう効率のいい戦いというもの、見せてみろ。さぞ強力な武器なのだろう?」
「そうだなぁ、他に付き合わせる人もいないし。いいよ、それじゃあ行くか」
「あぁ………と、とりあえず着替えるから、先に行っててくれ」
あ、そうね。
そんなわけで僕達は騎士団がいなくなったのを見計らって訓練場にお邪魔した。
「それでは始めるか………というか、発明とは言ったが、何を作ったんだ?」
「ん?これだよ」
僕が荷物の中から取り出したのはボウガンだった。ちなみに連射式。
「ふーん、見たところ普通だな。貴様の得意武器か」
「あれ?僕ボウガンが得意だなんて言ったことあったっけ?」
「逆に貴様が剣や槍が得意と言ったら、そっちの方が驚く。ボウガンは初心者にも、比較的扱いやすい武器だからな」
そういう事だ。強い力もみんなが使えなかったら意味がない。
「何かその辺の木剣とか使いなよ」
「そうだな………これでいいか」
グリアは近くにあった木剣を手に取って軽く振っている。まぁ軽い試合程度で………
「ハァッ‼︎」
するとグリアは僕を威嚇するかのよう鋭い突きを繰り出した。
目にも止まらぬ速さに、僕は思わず手を止める。
「うむ、やはり少し腕が落ちたな」
さてウチの騎士団に今の突きを捌けるヤツが何人いるだろうか。
そういえば今はあんなだから忘れてたけど、アイツ元騎士なんだよな。それも実力だけで割とトップの方に位置する。
もしかして実験頼む相手間違えたかな?いや、大丈夫だ。こういうヤツのために開発したんだし。
「そうだ。せっかくこういう形で試合するのだ。ただやるだけじゃつまらんだろう。何か賭けないか?勝ったほうが一つ負けた方に何でもお願い出来る、みたいな」
「は?グリアってそういうのするの?」
「騎士団にいた時にはあまりしなかったな。だが、久しぶりの戦いに少し気が昂っているのは確かだ。魔法の一撃くらいなら受け止められるぞ」
あ、ダメだ。完全に実験マウスを選び間違えた。
「いや、あのさ………これただの実験なんよ。別に本気で戦うつもりは………」
そう言いかけて、僕はふと言葉を止める。五秒ほど黙って考える。
………よし。
「分かったよ。その方が盛り上がるしな」
「決まりだな。騎士に二言は無い。よし、いつでもいいぞ!」
意気揚々としたグリアは木剣を構えた。こんな生き生きしたグリアは初めて見た。
何とまぁ可愛いじゃないか。普段からその笑顔を見せてくれればなぁ。
僕達は距離を取って向かい合った。
「それじゃあ、いくよ!」
僕もボウガンを構えると、引き金を引いた。
この矢には魔法が付与されていて、機動変化や氷結、中には炎を纏うものなんかもある。
それは当たらなくても十分効果がある、というか矢の速度もそこそこ速い。
標的補足機能もあるから、素人が使っても軍人を相手出来るだろう。
普通なら狙い通り剣だけ弾き飛ばして………
「ふん、甘いな!」
グリアは避ける事すらせずに放った矢を正確に剣で叩き落とした。矢は剣によってへし折られてその場に落ちてしまう。
ちょ、嘘だろ⁉︎
僕は心を落ち着けてどんどん放っていく。ポンプを引いた次の矢を装填し放った。
狙いは完璧なはずだが、グリアはそれを全て剣で叩き落とした。炎を纏ったものも臆せず捌いていく。
薄暗い訓練場に乾いた音が鳴り響く。
「どうした、こんなものか!」
威力だって決して弱くはないのに、グリアは正確に捌いて僕との距離を縮めてくる。方向転換したものすらもあっさりと叩き落とす。
何とか撃った瞬間に距離を取るが、それももうすぐ追いつかれる。矢も次が最後だ。
風の魔法が付与されていて、矢の速度は一番速い。これなら………
僕は狙いを定めると、引き金を引いた。
今までで一番強力な矢が放たれた。外す事はまず無いだろう。
するとグリアは僕に向けた剣を返した。ん?何してるんだ?
矢はグリアに向かって真っ直ぐ進んでくる。
その事を恐れる事なく、自分の目前に迫った矢に手を伸ばした。
そして森の獣すら追い越す速度の矢を素手で掴んだのだ。
「なぁッ⁉︎」
矢の勢いを落とすように回りながら僕との距離を詰めた。
「私にとってこの程度の攻撃、どうという事はない!」
回りながら勢いのついたグリアの拳が僕に迫ってくる。当たれば間違いなく気絶するだろう。
目の前に迫ったグリアの拳が僕の顔にめり込む………
「ぐぁッ⁉︎」
前に、僕の目の前でグリアいきなりが倒れた。
僕は予想していたようにグリアから距離を取る。
「ぐっ⁉︎ な、何だこれは⁉︎ 身体が………動か、ないッ‼︎」
「いやぁ、焦った焦った。まさかここまでやるとは。すごいね」
僕はボウガンを降ろして崩れた服を直す。
「貴様ッ!何だ、これは………!」
「ん?ただの麻痺だよ。前にも食らった事あるでしょ?」
「けど、矢は確かに全部………」
「あぁ、おかげで矢は折れたから作り直しだな。けど、そんな事想定済みなんだよ。この矢はこうやって落ちる事に意味があるの」
普通の矢は当たる事が前提だろう。けど僕のは発射してどこかに触れればそれでいい。究極的な話、矢をばら撒くだけでもいい。
「これは矢先の触れたとこから一定範囲内の生命体を麻痺させるんだよ。ちなみに魔法も使えない」
もちろん当たっても効果はある。けど誰も彼もがいつでも当てられるわけじゃない。素人なら尚更。その時も考えた構造だ。
まぁ僕は魔法阻害が付与された靴履いてるから大丈夫だけど。
「にしても、あの説明の後でよくもまぁ真正面から突っ込んできたね。武器の強さってのはエネルギーだけじゃないんだよ」
おそらくボウガン程度なら余裕で捌けるって分かってたからかな。けど、そんな事僕も知ってた。
「ぐぬぬ、卑怯者………!」
「言ったでしょ、僕は効率重視だって。訓練して力を手に入れるんじゃない、訓練してなくても使える最強武器を作るんだよ。その方が効率良く最強の戦士を生み出せる」
僕はその場にしゃがんでグリアと目を合わせる。グリアが悔しそうに僕を睨む。
「さてと、それじゃあ僕のお願い聞いてもらおうかな。騎士に二言は無い、でしょ?」
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