※この作品はR-18です。

エロゲ的な何か(仮)   作:MC RAT

90 / 165
第18話(新着)

「お兄ちゃん、お風呂上がったよ」

「ん?あぁ」

 

 

 リビングのソファーで寛いでいると、お風呂から上がった鶏児草が顔を覗かせる。

 家事だったり課題だったりで、お風呂の順番はいつもバラバラだが、今日は僕が先に入った。

 パジャマ姿の鶏児草は、タオルで髪を拭きながら、リビングの端に置いてあったドライヤーを手に取る。

 それを目の端で捉えていた僕は、だらけていた体を起こして、何となく思いついたことを提案した。

「ドライヤー、やってやろうか?」

「えっ、お兄ちゃんが?」

「昔よくやってたじゃん。久しぶりにさ」

 鶏児草が小学校低学年くらいの時までは、ねだられてよくやっていた気がする。

 少しだけ考えた鶏児草が、首にかけていたタオルを差し出した。

「うん、お願い」

「んじゃ、おいで」

 

 

 鶏児草を脚の間に座らせると、渡されたタオルでくしゃくしゃと髪を拭いてやる。

 ある程度拭けたら、指先で頭を撫でるようにしながらドライヤーで乾かす。

 サラサラになっていく髪は、何とも心地よい感触だ。やっていて楽しくなる。

 そして一方、鶏児草はというと

「はぁ〜〜〜」

 気持ち良さそうな顔してるなぁ。撫でられるのが好きなのは、昔と変わってない。

「痒いとこないか?」

「うん………」

 声が若干溶けかけている。そんなに気持ち良さそうだと、こっちはこっちで嬉しいな。

 髪が乾いたら、リビングに置いてあった櫛で軽くとかしてやる。

「ほい、これでどう?」

「うん。ありがとう、お兄ちゃん」

 乾いた髪を触って、笑みを浮かべる。

 

 

 終わったから離れるかと思いきや、逆に鶏児草はこちらへと身体を傾けた。

「もうちょっと、このままでいい?」

「もちろん」

 僕もそのつもりだったし。

 鶏児草の腹に腕を回すと、後ろから優しく抱き締めた。

 お風呂から出たばかりだからか、少しだけ体温が高く感じる。

 心地よいのは鶏児草も同じようで、軽く喉を鳴らした。

 

「お兄ちゃん、明日って時間ある?」

「ん?まぁ、休みの日は基本的に暇。知ってるでしょ」

「それなら、家のお買い物付き合って欲しいな」

「いいよ」

 他愛ない会話を弾ませながら、恋人を後ろから眺める。意外とあまり機会なかったし。

 腕の中に収まりながらゆらゆら揺れることで、白い頸が黒髪で見え隠れしている。

 さらに抱き締めることで、フワッと漂う鶏児草の匂いが、衝動を掻き立てた。

 その香りに引き寄せられるように、後ろ髪をかき分けて頸に唇を触れさせる。

「ひゃっ⁉︎お、お兄ちゃん?」

「ごめん、つい」

 謝りつつも、僕は首筋から顔を離さない。

 一方で、鶏児草も嫌がる様子は見せなかった。

 むしろ自身に回された僕の手を、指先でツーッと撫でる。輪郭を確かめるようになぞってから、手の甲を包み込んだ。

 後ろからだと表情は見えないが、耳の先がほんのり赤い。

「ううん。びっくりしたけど………私ももっと欲しい、から、きゃっ⁉︎」

 少し触れ合えれば満足だったのに、もうそれでは物足りなくなってしまった。

 

 

 狭いソファーに押し倒すと、上から覆い被さる。

 すぐさま唇を奪うと、パジャマのボタンに手をかけた。

「んぅ、ちゅっ………お、お風呂、出たばっかりなのに………」

「また後で入り直せばいいよ」

 二つ目のボタンを外したところで、白い膨らみがチラリと覗いた。

 昂る衝動を我慢出来ず、唇を落とす。

「んっ………そしたら、一緒に入ってくれる?」

「あぁ」

 この後の予定をしっかり決めてから、お互い着たばかりのパジャマがソファーの下に落ちていく。

「それじゃあ………ずっと二人で、あぁッ!」

 鶏児草が最後まで言い終わる前に、僕達の肌がピタリと重なった。

 

 

 

「ッ⁉︎」

 目を覚ました僕は、部屋の明かりが眩しくて、すぐに目を細めた。

 明かりから逃げるように気怠い体を捻り、ベッドにうつ伏せになる。

 お昼ご飯を食べて、ベッドでスマホを見てるうちに、いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。

 眩しさに頭が慣れてくると、さっきまで見てた夢がじわじわと自動的に思い起こされる。

 あぁ………何やってるんだか。

 というか、仮にも妹相手にこんな夢見るとは。

 いや、今日だけじゃない。一人で暮らして、ふとした時にいつも考えてしまう。

 この後大丈夫かな………

「はぁ………」

 

 

 ピピピッ!

 

 

 大きなため息を吐くと、枕元に置いてあったスマホが鳴り響いた。

「えっ?あっ、時間か」

 ハッとしてアラームを消すと、慌てて着替えた。必要最低限の物だけ持って、部屋を飛び出す。

 もう少し余裕を持って出ていく予定だったのに、こりゃギリギリになりそうだ。

 予想通り、駅に着くと同時にポケットに入れていたスマホが震えた。

『そろそろ着くよ』

 短いメッセージを確認すると、改札の手前で今か今かと待ち構える。

 さっきまでのこともあって、少し緊張するな。

 数人の人が通り過ぎていく中、彼女は僕を見つけて手を振った。

 

 

「あっ、お兄ちゃん」

 

 

 決して大きな声ではなかったけど、この人混みの中でもはっきりと伝わった。

 顔を上げると、早足で改札を抜けてやって来る。

 白いワンピースとヒールサンダルを身にまとい、長い髪を揺らす彼女に、自分の中で湧き上がる高揚感を感じた。

「お待たせ、久しぶりだね」

「あぁ、久しぶり鶏児草」

 見た目は変わっても、中身は相変わらずのようだ。

 

 

 三月のお別れの時、僕達は夏休みに会おうと約束した。

 そして約束通り鶏児草は来てくれた。叔母さん達には、僕の様子を見てくるという理由で通したらしい。

「髪伸びた?」

「うん、最近伸ばしてるの。変じゃないかな?」

「そんなことないよ、似合ってる。大人っぽくなったな」

「そ、そう?よかったぁ」

 不安だったのか、鶏児草は安堵の息を吐く。

 少しだけ成長した姿にドキッとはしたものの、何とか自然に話せて、僕は僕で安堵した。

 それにしても………

「何かやけに大荷物だな。一つ持つよ」

「あっ、ありがとう」

 泊まるからスーツケースはいいとして、追加で肩にかけてる大きめのボストンバッグは何なのか。

 とりあえずそっちのバッグを持ってあげる。

 

 

 さて、こんな人混みの中にいたんじゃ、話したいことも話しにくい。

 僕達は駅を出ると、大通りを外れて小道を進んでいく。

 人気が減るにつれて喧騒も止み、二人だけの空間となる。

「というかウチに来るとはいえ、二泊三日の外泊とかよくサラッと許可されたな。叔母さん達は、何も言ってなかった?」

「うーん、特には。むしろ偏った食事してないかとか心配だから、ちゃんと見てきてあげてって。その荷物も、いくつかお兄ちゃん用のレトルト食品とか入ってるよ」

「大きなお世話だって」

 何かゴツゴツした荷物だと思ったら、そういうことか。

 変に怪しまれるよりかは数倍マシだが、そこまで心配されるほど子供じゃないつもりなんだけどな。

 

 

「実際、大学はどうなの?」

「特に可もなく不可もなく。のんびり過ごしてるよ。そっちは?」

「クラスの人達とも仲良くなれて、結構慣れてきたよ。勉強も難しくなってきたけど、頑張って何とかやれてる」

「そっか」

 高校は中学の時に比べて、人間関係の変化が激しい。人見知りな鶏児草が上手くやっていけるか心配だったが、とりあえず大丈夫かな。

「もう進路考えろとか言われてるでしょ?何か決まってるの?」

「それは………一つだけ、決めてる」

「おっ、何?」

 身内とはいえ、進路のことは話しにくいのか、言葉尻が段々と小さくなっていく。

 少しだけ俯いてから、僕だけに聞こえる声で呟く。

「お、お兄ちゃんと同じ大学に行きたい、かな」

「あぁ………」

 その言葉から、いや鶏児草の伏せた目を見れば、その意図はすぐに分かった。

 もちろん、今の時代離れてるからって関係が絶たれるわけじゃない。連絡先だって交換してるし、いつでも電話できる。

 それでもやっぱり、会えないのは寂しいものだ。だからこそ夢まで見る。

 きっと鶏児草も同じだろう。

「ウチ結構面白い先生多いし、いいと思うよ。叔母さん達も一人暮らしさせるよりは安心するだろうし、楽しみにしてる」

 いつも薄ぼんやりと感じていたことでも、こうして話せば、改めて一人にさせてしまっているんだと痛感する。

 寂しい想いをさせてしまっていることは申し訳ないと思う一方で、自分と同じ気持ちなのは、安心というか嬉しい。

 

 

「鶏児草。手、いいかな?」

「えっ?」

「その方が、ちゃんと会えたって気がするじゃん」

 どんな顔して言えばいいか思い出せず、その分真っ直ぐ伝わるように手を差し出す。

 離れてたって声は聞けるし、顔は見れる。でも触れ合うことは、会わなくちゃ出来ない。

 だから、鶏児草と触れ合いたい。こうして会えたことを実感するために。

 その意図は伝わってくれたようだ。

「うん」

 鶏児草は小さくもしっかり頷くと、僕の手を握った。

 指を絡めて隣り合うと、少しだけ下がり気味だった口角が上がる。

 実家やその周りだと、周囲の目を気にしなければならなかったが、ここでは僕達の関係を知る人はいない。

 だから、外で堂々と手を繋ぐことだって出来る。

 数ヶ月ぶりに感じられた、鶏児草の手の感触。変わらぬ柔らかさと体温で安心する。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。それなら、さ………私からもいい?」

「ん?」

 首を傾げると、鶏児草は半歩こちらに寄った。

 ただでさえ隣り合っているのに、さらに距離を縮めると、握った手はそのままに腕に抱きつく。

 ふにっと布越しに感じる感触に、心臓が跳ね上がる。

「よ、鶏児草?」

「お兄ちゃんと会えたって、もっと実感したいな」

 積極さは寂しさの裏返しなのか。手を握る力が、少しだけ強まった。

 鶏児草の顔がほんのり赤く染まったのも、繋いだ手が汗ばんだのも。きっと暑さだけじゃないはずだ。

 抑えようと思っていたものの蓋が、あっという間に緩んでいく。

「いい、かな?」

「………コンビニ、寄るか。買うもの思い出した」

「うん」

 何を買うかを聞いてくることはなく、進路を変更する。

 斜め向かいにあったコンビニで必要なものを買った僕達は、真っ直ぐ家へと向かった。




 最後まで読んでいただきありがとうございます。
 評価、感想等ありましたら、ぜひよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。