第1話
草が生茂り、木々が聳え立つ森の中を僕は歩いている。
どこかに行く当ても無い、家も家族もいない。当たり前か、それを求めるために旅をしているのだから。
別に周りから拒絶されたわけじゃないけど、自分の安住の地を探している。
デコボコな自分がピッタリ収まれるような場所、そんなものはどこかに無いのだろうか。
そんな事を考えながら旅を続けていたある日の事。
空の上を細い何かが飛んでいる。鳥などの類では無さそうだ。
それは宙に浮くかのようにして飛んでいた。何だあれ?
しかしその飛行物体はある程度のところまで飛ぶと、ゆっくりと弧を描いて落ちてきた。
おおよその推定だと、このままで落ちてくる場所は………僕の足元か?
そう思った瞬間、予想通り僕の足元にその飛行物体が突き刺さる。
「危なッ⁉︎」
僕は咄嗟に後退した。何なんだこれ?落ちてきたものをマジマジと見てみる。
これは………矢だな。矢ってあんなに飛距離は無かったはずなんだけど。ってかあんな飛び方物理的にあり得ないだろ。
僕は降ってきた矢を観察する。特に何も無さそうだな。
この辺りは人がいないはずだから矢なんて来ないはずなんだけど。どこのだ?
降ってきた矢が気になった僕は、それを引き抜こうとして掴んだ。
その瞬間その矢から眩い光が放たれた。
「ッ⁉︎ 何だこれ⁉︎」
そう思うも虚しく、僕の意識は遠のいた。
「んっ………」
意識の戻った僕は、ゆっくりと目を開けた。どことなく騒がしさがある。
ここは、どこだ………
そう思って横を見てみると、自分が寝ている事に気がついた。しかも高い木の葉が真横に見える。
どこか高台にでも上って昼寝してたのだろうか。なんだか柔らかい物の上にいるようだ。
そう思って今度は目線を前に向けて空を見上げた。
その時、僕の視界に何かが割り込んできた。
「あ!目覚めました?」
それは女の子だった。見た感じ僕とそこまでの歳差は無く、十代後半なのは分かった。
褐色の肌をしていて、銀色の長髪を後ろで結っている。何かの毛皮で作ったようなチューブトップのような服を着て、下もミニスカのような作りになっている。
まぁ一言で言うなら、めちゃくちゃ肌の露出が多い。
明るそうな印象があり、悪い人とは思えないけどそれなりに驚く。
飛び上がってその場がベッドのような物の上だと気がついた。
「ッ⁉︎だ、誰ですか⁉︎」
「落ち着いてください。大丈夫ですから」
すると別の方向から声が聞こえてきた。
振り返って見ると、そこにも一人の女性がいた。さっきの女性同様に褐色の肌に銀髪である。
こちらはさっきの女性に比べたら、まだ肌の露出が少ないかな。でも一般的に比べたら多い。チューブトップからキャミソールへと変わっている。
どこか大人っぽい印象があり、三十前後辺りな気がする。長い髪をまとめて肩から垂らしている。
二人ともスタイル抜群で肌の露出が結構あるので、つい目のやり場に困る。
「え、あの………ここは?」
「ここはファール族の村里ですよ。その中の儀式の間です」
「祭壇?」
大人っぽい方の女性の言葉に、僕は首を傾げた。
というか………
「ファール族?って、あの女性しかいないって言う?」
「あら?私達をご存知ですか?」
「まぁ、ちょっとだけなら」
ファール族
女性しか存在しない部族で、森の中でまとまって暮らしている。外に出てくる事はほとんどないらしい。
だから分からない事も結構ある、というか存在しか分かってないという方が正解か。
とまぁそれくらいしか知らないわけだけども。つまりここはファール族の村里、ここでファール族が暮らしてるのか。
「私はファール族の族長、スフィア。この子は私の娘のリーナです」
「よろしく!」
明るそうな少女、リーナが挨拶してくる。というか親子⁉︎パッと見た感じ年の離れた姉妹に見える。
しかもこんな若そうな人が族長って………
「ふふっ、我々ファール族はエルフなどと同様に長命種ですから。こう見えてもとっても年寄りなんですよ?」
「そ、そう、ですか………」
僕はそう言ってリーナを見た。それじゃあこんな明るそうな子も人間からしたら老人とかかな?
「ん?どうかした?あ!ちなみに私は見たまんまの年齢だよ!今年で17」
あ、この子は普通なんだ。何ともめんどくさい。
「でも、何で僕がここに?」
「あなた、我々の放った矢に触れたませんでしたか?」
「え?………あ、あれか」
さっき降ってきた矢、ファール族のヤツだったのか。
「あれは放った後選ばれた者の所へと飛ぶのですよ。そして触れた者をここへ呼び寄せる」
どんな仕組みだよ、と思ったが、人からよく知られていないファール族だ。そんな技術があっても不思議じゃない。
それで話を聞く限り僕が選ばれたって話になるんだろうけど………
「えっと………選ばれるって、何にですか?」
僕は見ての通りのただの旅人だ。そんな選ばれるような大層な人間じゃあない。
「それはもちろん、ファール族の儀式の主催者としてです」
「へ?いや、僕あなた達とそもそも関わりが………というか儀式って何するんですか?」
そんなの聞いたこと無いし、あっても僕とは無縁のもの気がするんだけどなぁ。聖職者でも無いし。
「そんなに堅いものではありません」
女性は僕にグッと近づいてくる。さらに耳元に口を寄せて囁いた。
「子供を作る儀式、ですよ」
「………は?」
わけな分からない言葉に、僕は思わず呆然とした。
「ですから、今からここで、子供を作ってもらうんです。私達と、ね」
艶やかな声が僕の耳を撫でた。思わずゾクゾクッとしか感覚に見舞われる。
「な、何かの冗談、ですか?」
「いえ。知っての通り我々ファール族には男性はおりません。ですから外の世界にいる種族の男性を捕まえて密かに交尾し、子を産みます」
「そ、それなら………別に僕じゃなくても。ほら、探せばシたい人なんていくらでも………」
「これまでは我々が外の世界に出て、子種をもらえる男性を探しておりました。しかしそれが周りに広められてしまい、騙されたり攫われたりする同胞が増えてしまったのです」
なるほど。『子種をあげる』だの言ってついて行ったら捕まって奴隷にされたとか、あり得そうだなぁ。
「ですから男性をこの村に引き入れて、子種をいただく事にしたのです。そしてその男性に選ばれたのが、あなたです」
「な、何で………?」
「あなたは普通の人より精力が強いと思われます。それにこの状況で我々に対する悪意も感じられない。いつも一人ならここを出ても誰かに話してしまう事も無い。そして何より………」
スフィアさんは僕の身体に手を這わせてきた。心臓の鼓動が速くなったのがはっきりと分かる。顔が熱い。
「あなたは居場所を求めている。自分のいれる場所を」
そう言われて僕は思わずドキッとした。
「別にそこにつけ込もうとは思っていません。嫌でしたらお帰りいただいても構いません。でももし、このままここにいていただけるなら、ぜひその子種を………我々に与えてはいただけませんか?」
居場所、かぁ………
「でも、この村の人達、受け入れてくれますかね?僕一応他所者なわけですし」
「そんな事ないよ。ほら!」
そう言うとリーナさんは儀式の間の外を指さした。ここは割と高い位置にあるようでその外が見えない。
まるで物見櫓のような場所で、外からは僕達の様子を見ようと思えば見れるのだろう。
儀式の間から身を乗り出して外の様子を見てみる。何と儀式の間の周りは泉のように水が溜まっていた。
その周りにはファール族の女性達が儀式の間を見つめていた。
褐色の肌の人々が僕を見上げて何か話している。って、めちゃくちゃいるな!
「この村の人達ですよ。この儀式が始まるのを心待ちにしております」
「って、まさか、あの人達の前で………その、するんですか?」
それってどうなんだろう。色んな意味で。というかそもそもそういう経験無いのに、いきなりハードル高いなぁ。
「えぇ。というより、あの方々とも子作りをしていただきますよ?」
「え⁉︎ いい、んですか?」
「もちろんです。みんなあなたと交わりたくてウズウズしています」
そうは言っても、見た目もみんなバラバラで、僕より一回り小さな子もいれば逆に一回りくらい年上の人もいる。
「今回の儀式はそのための予行のような意味もあるのですよ。みんなの前でどんな事をするのか、見てもらうのです」
そういう感じなんだ。それなら見てもらう必要がある、のか?
「どうでしょう?我々の助けになってはくれないでしょうか」
「ね!お願い!」
リーナさんとスフィアさんは僕のことをジッと見てくる。
どうせこのまま旅をしてしたって、自分の求めてるものは見つからない。世界はそんなに易しくはない。
それなら………
「分かりました。こんな僕で良ければ、儀式だけでもさせてください」
たとえわけが分からなくても、やる事のある所にいるのも悪くない。
「ッ⁉︎ ありがとう‼︎」
リーナさんは嬉しそうに笑うと僕に抱きついてきた。薄い布に包まれた胸が僕に押しつけられる。
や、柔らかいぃッ‼︎
「一緒に、気持ちよくなろうね。
耳元でそう囁かれた。さっきからドキドキしっぱなしだなぁ。
「主人、様?」
「君のことだよ。この村みんなのご主人様、みたいな?あ、私の事は呼び捨てでいいよ。敬語もいらないから」
そういう捉え方でいいのかな?まぁいいか。
「ふふっ、リーナとも仲良くしてあげてください。彼女はあなたの子を産み妻となる………おっと、それは私達みんなに言える事でしたね」
僕は美人二人に挟まれて動けないでいた。どことなくいい匂いがして鼓動が収まらない。
「それでは、儀式を始めましょうか」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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