オレの身体はバカだ。どうして、自分からパンツを下ろそうとしている!?ああ、もう。快楽が悪いんだ。バカだ。クッソ流されてる。ああもう。なんで……右足をパンツから引き抜いた。左足も、続けて引き抜く。
べちゃべちゃに濡れた、パンツは湿った音を立てて床に落ちた。外気に触れたクリトリスが痛いほど勃起している。奴の視線がオレのあそこに突き刺さった。その視線だけで、身体が少し震えてしまう。パンツの布越しでもあんなに気持ちよかったんだ。直接だったらもっと気持ちいだろう。
「触って……ください」
「どこを?」
「クリトリスを……触ってください」
奴の指が、オレのクリトリスに伸びた。指先のごつごつした感触が、快楽となって脳に伝わった。ああ、気持ちがいい。快楽にうっとりしていると、クリトリスに先ほどとは違った感覚が流れる。この感触の正体をオレは知らない。
「な、そんなところ舐めるな……きたない、から」
舌は指先より温度が高かった。それに湿っていて気持ちがいい。オレはすぐに快楽に呑まれた。また、野生動物のような喘ぎ声が口から出てしまう。
「あ、イクっ」
「うひゃっ」
「出ちゃった……ごめん」
身体が緩んでしまったのだ。奴の顔にかけてしまった。多分。おしっこを……恥ずかしい。すごい恥ずかしい。
「そんなに感じてるのか?お前、ちょっと前まで男とか言ってたくせになぁ」
「う、うるひゃい」
奴が、ズボンのファスナーに手を掛けた。ズボンが降ろされ、パンツ越しにも勃起しているのが分かる一物が現れた。ごくり、とオレは唾を飲みこんだ。なんで、唾を飲みこんでいるんだ。バカか。だけど、目の前のそれから目が離せなかった。
「そんな見るなよ」
「見てない。断じて見てない」
奴がパンツを脱ぐのに合わせ、勃起したチンコをオレは目で追ってしまっている。クソ、他人のものなんかに興味なんてないはずなんだ、むしろ嫌悪しかない。でも、あれをオレのマンコの中に入れたらどんなに気持ちいいだろうか。
それを想像しただけで、また子宮がうずいた。ああ、もう。なんでだよ。奴のチンコをオレのマンコに入れるなんて絶対に狂っているのに。どうして、オレは興奮しているんだ。
「そんなお預けされた犬みたいな顔するなよ」
「してないからな!してないぞ!」
「だから、そんなに見るなって」
「……見てない」
これは自然の摂理だ。人間は動くものを自然に目で追ってしまうのだ。それが野郎のチンコであってもだ。つまり、オレは悪くない。
「挿れてほしいなら、「私の、ぐちょぬれ雌マンコにおちんぽ様をください」くらい言ったらどうだ?」
「な、ななな……」
「言わなければ、お預けだ」
こいつ、調子に乗りやがって。どうしてオレがそんなことを言うとでも思うのか?
「オ、私の、ぐちょ濡れ……に……てください」
「聞こえないよ」
「わ、私の、ぐちょ濡れ雌マンコにおちんぽ様をください!!」
あああああああ。バカァァァ。なんで、なんでオレの口はそんなことを言ったんだ。でも。奴の太いのが、オレのあそこに入るのか……クソ。喜ぶなよオレの身体。オレの手は、勝手にオレのマンコを広げていた。
「早く、挿れて!我慢できない……」
甘えた声が、オレの口から出ていた。
「お前、とんだ色狂いじゃないか。お前のアナルひくひくしてるぜ」
「うるさい……うう。早くしてよ」
「それじゃご遠慮なく」
何かが突き刺さったような感覚。入ってくる瞬間には少し痛みが有った。それから、また、大きな痛みがオレを襲った。多分処女膜が破れたんだと思う。けれど、その痛みもすぐに快感に変わった。オレはもう男というより完全に女だった。
「もっと。もっと。あっ。そこ、そこきもちぃいい!!ああヤバ。イク。イク」
女の子があげるような喘ぎ声だ。身体の芯から、こいつのチンコを受け入れていた。ああ、もう気持ちい。奴の腰を振る速度が速くなった。それに合わせて、オレに小さな絶頂の波が訪れた。
「またイクっ!ヤバイっへ。うへぁ。イク!イッてるかりゃあ」
腰に伝わる振動がえぐい。ああ。ヤバイ。来てる。ヤバイ。ああもう何も考えられない。オレの膣内に、熱いものが流し込まれた。精子だろう。妊娠という言葉が頭をよぎったけれど、まあ、出来たら出来たでいいや。
そんな感じで、奴が出した熱い精子で、オレも絶頂を迎えた。膣内を熱いものが蹂躙する。ひたすらに気持ちがよかった。やつはまだ、一発出しただけでは物足りなかったようで、腰を動かすのを再開した。オレとあいつとの結合部が、さらにいやらしい音を立てる。
オレの愛液と、あいつが出した精液。それが、膣には、収まらなくって溢れだしているのだろう。接合部は、白濁した液体が泡立っているはずだった。オレがイッた回数は、もう両手じゃ数えきれないだろう。
TS病に罹ると淫乱になるとか、書いてあったような……身をもってオレはその実例を示してしまっている。奴のピストンが激しくなった。パン、パン、パンと腰がぶつかる音に合わせ、オレの鳴き声が部屋に反響する。
「出るぞ」
奴は、二度目の中出しをした。また、私は絶頂に達した。ああ、もう駄目だ。もうおしまいだ。男としてのオレの矜持はどこかに行ってしまった。
「舐めろ」
精液と、オレの愛液に塗れた奴のチンコが、口の前に置かれた。これを受け入れたら、何かが終わりそうな気がする。チンコを突っ込まれたのに、何を言っているのか。オレが躊躇していると、頬にチンコがぶつかった。
べとべとしている。頬に伝ったその粘液をオレは舐めた。そして、舐めたことを後悔した。舌を突き出して、けほけほと、咳をした。それが、奴には気に食わなかったのだろう。奴は、オレの口に無理やりチンコを突っ込んだ。
喉の奥まで、無理やり入れられたそれで、オレは息が出来なかった。よっぽど噛んでやろうと思ったが、それをしたら殺されそうな気がした。仕方なく、オレは、口内のペニスを舐めた。塩辛い味と、生暖かさが気持ち悪い。
舌の上の血管がびくびくとひきつるように動いた。息が苦しくなってきた。早く射精させないとヤバイ。死ぬ。オレは舌先を使って、必死に奴のペニスを舐めた。口の中に、熱くて苦いものが広がった。気持ちが悪かった。
「う゛え゛っ。お゛えぇ、う゛ぇぇぇっ」
「吐くなよ、飲めよ」
無理やり、口を抑えられて、オレに出来ることは飲み込むことだけだった。酷く気持ちが悪かった。そこから先の記憶は残っていない。
目が覚めると、全裸だった。全身がべとべとで陰部が特に酷い状態になっている。
「うぐっ、痛っ」
シャワーを浴びようとベッドから、降りたら、股に痛みが走った。何が起こったのかは思い出したくない。シャワーで全身を洗う。お湯で乳首が痛んだ。ところどころに奴の歯形が付いている。クソ。ああ、むしゃくしゃする。
無毛の陰部を洗う。地味にお湯が染みる。妊娠しても別にいいけれど、膣内に奴の精液が残っている状態は嫌だった。奥まで、しっかり洗う。
「うわっ、気持ち悪っ」
膣内から、どろどろと流れ出す精液は見ていて気持ちがいいものでは無かった。シャワーを終えて、タオルで身体を拭き、適当に袋からパンツを取り出した。ダサいやつだが、気にしない。パンツだけではなく、ズボンも履き、長袖で肌をきちんと隠した。
ベッドわきに奴が転がっていた。全裸だった。呑気な寝顔を晒している。殺してやりたい。奴の服をまとめ、全裸のこいつを玄関に置き、ベッドの周りを拭いた。リビングも酷い。べちゃべちゃだ。この機会に汚部屋を掃除しよう。
オレは、そう誓った。そんなこんなで、時間が過ぎた。オレは包丁を構えながら奴が全裸で寝ている玄関に向かった。オレの貞操を奪いやがって。同意をしていないと言えば嘘になる。だが、あいつは、あんなことからこんなことまでしやがった。
「おはよう……えっ、なにそれは?」
「出てけ!この強姦魔!早く出てけ!」
包丁を構えた、オレに驚いたのか奴はあたふたした。
「早く、服を着て出てけ!」
「待ってくれ。昨日はさ、ほら楽しんだじゃないか?昨日のお前は可愛かったぞ」
下種な笑いがむかつく。コイツ、ここで殺しておいた方が人類のためじゃないだろうか?
「死にたくなければ出てけよ!」
「分かった分かったからさ……」
奴は、服を着ると玄関から出ていった、未練がましく振り返ってオレの顔をチラチラ見た。さっさとくたばれ。早く死ね!奴が、ようやく玄関から出た。オレは図具に玄関の扉の鍵を閉めた。それから、部屋中の窓の鍵を閉めた。
「汚い」
部屋が汚い。オレは部屋を片付けることにした。ゴミを分別して随分前に買ったゴミ袋に詰めていく。このゴミ袋を買ったのはいつだろう。ゴミ出しはしようとしていたのだ。ゴミ袋を買っただけで満足したのだけれど……
「だいたい、終わった」
昼頃には、玄関にゴミ袋の山が出来ていた。ゴミの汁で服が汚れてしまっている。なので、シャワーを浴びる。身体を石鹸でこすった。オレ自身が汚れているような錯覚に襲われた。自分は汚れてはいない。汚れてはいないはずなのだ。
オレは、自分が気持ち悪かった。嬌声を上げるオレの姿が脳裏に焼き付いている。男に犯されてオレは喜んでいた。
ゴシゴシと、スポンジが皮膚の上をせわしなく行き交う。皮膚が痛い。見てみると皮膚が真っ赤に晴れていた。オレは汚い。なんで、あんなことを許してしまったんだろうか。穢れている。いやらしい。自己嫌悪が全身から湧き出てくる。
「オレは、汚くない。汚れてない。やめろ。そんな目で見るな。汚くない」
元の男の姿をしたオレが、こちらをじっと見ていた。何を考えているか、よく分からない顔だ。オレは、風呂場の鏡に写る男のオレを殴った。拳が痛かった。鏡にはヒビ一つ入っていない。鏡に写った男のオレは嘲笑の笑みを残して消えていった。
昼飯を取るべきだったろうけど、オレにそんな元気は無かった。自己嫌悪が脳を支配していた。オレは汚い。どこまでも、薄汚れている。疲れが残っているのだろう。オレはベッドに向かった。
「男?今のお前は女だろ?」
ベッドに奴が腰かけていた。また、幻覚だ。オレは、殴りかかって、そのまま固いベッドに身を投げた。
「クソっ!クソ!クソ!クソが!オレを嗤うな!」
体液でぐちゃぐちゃになった布団は、洗濯機に投げ込んでしまっている。ベッドが固い。眠れない。ああ、もう嫌だ。何もかもが嫌だ。オレは台所にふらふらと移動していた。包丁を手に持っていた。
「これで刺したら死ねるんだよな?」
手入れされていない包丁には微妙に錆が浮かんでいる。切れ味が良いようには見えなかった。
「刺さらなそうだな」
切れ味の鈍そうな包丁を見て、なぜか笑いが止まらなくなった。
「バカだ。オレは馬鹿だ。ほんとは嫌だったし、もう、なんでうぁああ、ふぐぅ。ああ、うぁぁぁ」
なぜか涙が溢れてしまう。身体のバグだ。別にオレはどこも傷ついてない。オレはなにも悲しいことはない。
「妊娠したくない……いやだ。なんで、おれがぁ。やだよう。やだ。いやだ」
涙が溢れて止まらなかった。赤子のようにオレは泣いた。あいつに身体を犯されたのは、嫌だった。初めてで、怖かったし。ほんとうに嫌だった。酒に飲まれた自分も嫌だったし。こんな身体も嫌だった。なにも出来ない自分が嫌だ。
オレは、スマホから実家に電話を掛けた。あれほど嫌がっていた家に、オレは電話をかけてしまったのだ。電話に出た、母は驚いていた。病室に来たことは無かったし、病気のことは知らせて無かったのだ。性別が変わっていても、オレを息子だと分かったらしい。
家族にみっともなく縋り付いたことで、オレの精神状態は多少、落ち着いた。とりあえず、ゴミ袋をゴミ捨て場に置いてくることにした。肌を隠して、フードを被り、外に出た。視線が怖かった。オレを見てくる人間はいなかった。
昼過ぎだ。こんな時間に外を歩く人間は珍しいのだろう。明日は燃えるゴミの日なので、これで、間違っていないはずだ。ゴミ袋を置き、オレは家に戻った。なんというか、オレ自身が変わらないといけないように思えてしまったのだ。
洗濯機で洗った洗濯物をベランダに干す。だいたい、家の中は綺麗になった。携帯に残っていたあいつの電話番号やSNSを全てブロックした。やることは、大体終わってしまった。なんだか。やることがなくなってしまった。
溜息を吐く。まだ、メンタルは弱っているみたいで、オレはまた泣いてしまった。