正ヒロインムーヴ人肌知らない佳人薄命氷属性術師白うさぎ
(人の温もりを)分からせてやらねば……。
これは彼女の寿命がちょっとだけ残っていた世界の話
思っていたよりもえっちシーンに時間かかりました
前回と同じ童貞と処女なのにどうしてここまで濃さに差が出てしまったのか
様々なウィンドウが展開されているディスプレイに目を走らせつつ、手元にある書類を並行して確認していく。
季節は冬。視界の端に映る窓を見れば深々と雪が降っており、空調は整っているはずの室内にいても刺すような寒さを時々覚えてしまう。今頃はカーディを筆頭とした元気なオペレーター達が外で駆けずり回っているのだろうか。ペッローという点で言えば、意外とポデンコなんかもはしゃいでいるかもしれない。
しかしそんな平和で行動的な想像とは違って、私は執務室で鋭意仕事中だ。時たま併設されている給湯室で飲み物を作りながらひたすら字面を捌いていく。
「______ただいま、ドクター」
バリバリと机に向かって業務をこなしていると、高級オルガンから発せられるような良く通るアルトボイスが前方から聞こえた。顔を見ずとも誰か分かる。
「____おかえり、
「……極力安静にして、後半年だそうだ。意外と早くはなかったな」
答えてから顔を上げる。
エレーナ___元レユニオン幹部・フロストノヴァは、執務室のデスクからは少し離れたワインレッドのソファに腰を掛けた。同時に上から着ていたロドスの制服を脱いで隣のスペースに丁寧に畳んで置いている。
彼女にはきっとこの部屋は暑いのだろう。
「____……半年か。それだけあれば、きっといろんなことが出来るだろうよ」
「……そうだな。私が今まで出来なかったことをしてみるのも良いかもしれない。ロドスには多様な人間がいると聞く」
「ああ、いるさ。オシャレに造詣の深い者、お菓子作りが得意な者、その他にも自分の拘りを持ったオペレーター達が沢山いる。ありすぎて、半年程度では足りないくらいかもな」
「それは……大変だ。半年後には今よりもずっと、死ぬのが惜しくなっているかもしれない」
他愛のない会話。昔からは考えられないほど彼女の声音は暖かみを帯びている。
彼女とはかつて敵同士として数度戦ったことがある。その時はどちらにも譲れないものがあり、互いに命がけで血を散らした。
そして遂に“フロストノヴァ”はロドスの力を認め、私たちと共にあることを選んだ。
それからというものの、私たちは____
彼女の力が必要だったからとかではない。
私が………彼女に少しでも生きてほしい、そう願ったからだ。彼女の想いを知りながらそれを無視して私の願いを優先させてしまったからだ。
その時は焦っていてその現実に気が付かなかったが、ロドスに帰ってからようやく自分が何をしたのかを理解し、気が触れそうになった。
だが______。
「……すまない、エレーナ。君を延命させてしまって」
「……良いんだドクター。こんな死にかけの体でありながら、今更“もっと生きていたい”と思ってしまったのは他ならない私なのだから」
___こうやって彼女は、残された短い命をゆったりと生きることを決めた。そんな彼女に、私は最大限協力することを決めた。
ささやかな贖罪になればいいと思って。
「それで、一先ず何をするかは決まっているのか?アズリウスやグムにならすぐに話は付きそうだが」
手元は動かしながら彼女に問う。
残りの命をやったことのないものに費やそうとしている彼女にとっては何もかもが初めてだろうから、何からしても良さそうだが。
「ん………そうだな…………」
しばらく考え込む素振りを見せるエレーナ。
ちなみに私が彼女のことを名前で呼んでいるのは、仲間意識の表れでもあり、また私の意思でもある。
彼女のことをコードネームではなく名前で呼ぶことによって、少しだけ歩み寄りが可能になった気がする。
その甲斐があったのかどうか、彼女は敵対峙と比べて随分と雰囲気が和らいだような気さえするが、真意は分からない。
私があれやこれやと思い返しているうちに、彼女は立ち上がってこちらに歩み寄ってくる。
そうして、私の机の前______ではなく、私の隣にやって来た。
「____そうだな、私くらいの年齢だと、“青春”なるものを謳歌していたと聞く」
「青春………って、なんだ?」
「教育を受ける施設に行っていろいろ教わったり、そこで知り合った人と出かけたりするらしい。アンジェリーナという娘に聞いたのだが」
「ああ………アンジェは確かに、ついこの間まで学生だったな」
もうほぼゼロ距離と言える距離まで近づいてきたエレーナ。暖房がかかっているのに彼女の体から発せられる微かな冷気が私の身体を震わせる。
かつて雪の化身のような激烈な寒気を纏っていた彼女も、今は比較的落ち着いている。
「____普通に生きる人々がどういうことをしていたのか、少し気になるんだ。今からでも遅くはないだろうか」
「……遅くはないだろうよ。それで、何がしたいんだ?」
「…………ん……」
私から離れ、机の真正面までぐるっと回ってきた彼女は、こちらに手袋に包まれた右手を差し出した。
「_____付き合ってくれないか?」
「………はい?」
*************
「いらっしゃい、ドクター……と、フロストノヴァさんだ!」
「頑張っているな、グム。このパフェを1人分作ってほしい………1人分だよな、エレーナ?」
「ああ」
「1人分で良いの?」
「構わない」
曰く、「学生は授業が終わった後に集団でスイーツを食べたりしていたらしい」とのことで、仕事をほっぽりだして調整して急遽、食堂に来ていた。
昼下がりの時間帯なため、想像のつかないほど食堂はがらんどうである。
「それでエレーナ、何をするんだ?わざわざ1人分しか注文しないなんて」
「料理が届いてからのお楽しみだ」
適当に近くのスペースに対面で座る。というか、こんなに寒いのにパフェを頼むのは如何なものだろうか。
そんな私の当然の疑問は口には出さずにしばらく歓談していると、程なくしてカラフルな逆三角形が運ばれてきた。
「……そう言えば、こういったものを食べるのは初めてかもしれないな」
「お前もか。奇遇だな、私もなんだ」
そう言って彼女がトレーからパフェを降ろし、私たちの丁度真ん中辺りに置いた。白い生クリームを基調として色とりどりのフルーツが散りばめられており、非常に美味しそうに見える。
グムの気遣い(というか誰でもそうするだろうが)により二つあったスプーンのうち、彼女は片方を手に取り、そしてもう片方を私が取ろうとして何故か空振った。
どうしたものかと思って顔を上げれば、何故か二つのスプーンを両手に持って薄く笑っている白うさぎの姿。
「………エレーナ?」
「スプーンを持つのは私一人だからな」
「…………何で?」
普通、2人で食べるのであれば私も道具を持って然るべきでは?
そんな疑問を抱くが、何故かそれを彼女にぶつけるのは論点がずれているような気がする。
状況が理解できずに思わず腕を伸ばしたまま困惑していると、エレーナは右手のスプーンでパフェの一番上を掬い取った。
そして______
「ドクター。あーん」
「………ん?」
それを、そのままこちらに差し出してきたのである。
………これ、って。
「ほうら、早く口に含んでくれ」
「……ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ!流石に記憶喪失の私にも分かるぞ、これがどういう状況か!」
____これ、所謂「あーん」という奴じゃないか!恋仲の男女がやるという噂の!
え、何で?
「私と君はそういう仲ではないだろう?!」
「まあ、そうだな。だがこれも私のしてみたいことに含まれている」
当の本人は事もなげな様子だ。
え、本当に?本当にこれがそうなのか?!
「とにかく、口を開けてくれ」
「…………わかった………あー……んむっ」
「………どうだ?」
「……美味い。が、それ以上に何故だか気恥ずかしい」
気恥ずかしい。
他人に食べさせてもらうという行為自体が原因なのか、それともエレーナがやるからなのか明確な原因はともかく、先ほどから自分の顔に熱が集まっているのが割かしはっきりと感じられていた。
「………ふむ、そうか。ではドクター」
使っていない方のスプーンを手渡された。本来私が使うはずのものだ。
「私にもやってみてくれ」
「………ほわっつ?」
「お前が感じた羞恥が普遍的なものなのか、私に体験させてほしい」
「………え、ええ……」
エレーナは言葉を切り、手に持っていたものをトレーに置く。
そして頬に掛かっていた髪をかき上げ、こちらに顔を突き出した。
「うおっ………」
僅かに口を開けて私の「あーん」を待つエレーナ。自然と口元に目が行く。
可愛らしさと綺麗さを兼ね備えた絶妙な唇。体勢的にキ……を待っているようなポーズにも見えて、一気に心臓が跳ねた。
緊張し始めた右手でスプーンを持ち、パフェの一部分を掬う。そしてゆっくりと彼女の口元へ持っていき、あてがった。
「あ、あーん………」
「あ……はむ」
「………どうだ?」
彼女はしばらく無言で咀嚼をしていたが、ややあって控えめな嚥下の音が響き___口元を押さえ顔を背けた。
その頬はうっすらと赤く染まっている。
「……意外と、される側は恥ずかしいものだな」
全くもって正しい一言だった。
*************
グム謹製のスイーツを美味しくいただいた後、私たちはロドスのあちこちを散策しようと歩き回っていた。勿論、エレーナに負担がかからない範囲で。
そして今、とある場所に来ている。
「____いらっしゃいドクターくん……と、フロストノヴァさん?2人とも珍しいわね」
医療オペレーターのパフューマーが管理している温室である。
療養庭園として存在しており、精神に疾患や問題を抱えたオペレーター達もやってくるが、私自身はあまり訪れたことはない。
「こんにちは、ラナ。今日も元気そうで何よりだ」
「あら、それはこっちの台詞よドクターくん。最近は忙しくて中々ドクターくんの所に行けていないから、体調が心配だったのだけれど」
「この通りだが」
両手を広げてくるりとその場で一回転。本当に珍しく、体が重くなければ頭痛もない。理性剤よりも源石で理性を維持しているからか。あの
「そう、それなら良かったわ。それで、フロストノヴァさんも一緒なんて、もしかして逢引だったりするのかしら」
「はは、まさか。私とエレーナがそんな「ああ、そうだな。逢引と言われればそうなのだろう」……エレーナ?!」
私の否定の言葉が遮られ、ある種の肯定の言葉が割り込んできた。
私としてはそのつもりは全くなく、素っ頓狂な声が出てしまう。
「男女が一緒に出掛けるのはそれは“
「……誰に聞いたんだ?」
「ウタゲという少女からだが」
「ウタゲか………」
ここまで彼女の知識源が全員女子学生なんだが。彼女は一体ロドスでどういった交流を重ねてしまったのか。
「うふふ、面白いわねフロストノヴァさんは」
「……そうだろうか。これでも周りからは“冷たい奴だ”と言われ続けてきたのだが」
「あら、全然そんな風には見えないわ。ドクターくんといるからかしら」
まさか。
確かにほとんどのロドスのオペレーター達よりかは私は彼女と多く言葉と戦を交わしたと思う。だがそれはあくまであの時_____一時的に地盤が崩落した時くらいだったし、ましてやその時は敵同士だったのだ。それが彼女が私の前でいっそう雰囲気が柔らかくなる理由にはならない。
………ならないが、確かに彼女の身に纏う雰囲気が柔らかくなっているのは確かだ。氷点下の
「ラナ。エレーナを揶揄うのはよしてやってくれ」
「ふふ、久しぶりにドクターくんを見れたからつい気分が高揚しちゃったわ。それで、今日は何の用かしら?」
よし、ようやく話が元に戻った。いや元々最初から脱線していた気がするが。
「ああ、これと言って特に用事はないんだが、今エレーナとロドスのあちこちを散策していてな。流れでここまでやって来たというわけだ」
「
なんでそういうことを平然と言っちゃうかなこの子。
エレーナの言葉に、ラナは一瞬悲しそうな顔をした。何も嘘ではないのがまた……。
「……そういうことなら、せっかくだしお茶でもいかが?」
「ああ、ありがたくいただくよ。エレーナも構わないか?」
「………そうだな。私もいいか、パフューマー」
「ええ、勿論よ」
*************
「フロストノヴァさん、ロドスは貴方の目にはどう見えてるの?」
唐突にそんなことを切り出すラナ。
確かに、明確に聞いたことはなかったな。敵から同胞へと変わっていった彼女ならではの率直な感想は少し聞いてみたい。Wは例外として。
そんな素朴な質問に、エレーナは飲んでいたカップを置き、ふっと顔に綻びを浮かべた。
「そうだな……レユニオンにいた頃は、私は
言葉が切れ、また一口ラナ特製のお茶を飲むエレーナ。何故か上品ささえ感じるその所作は見惚れるほど美しく、そしてあまりにも儚い。
「……ロドスは良い場所だ。医療設備は整っているし、老若男女問わず皆、自分に出来ることを行っているように見える。感染者非感染者問わず歓談をしている姿は、一種の夢であるとさえ思う______“楽園”、そう言えるだろう」
「………楽園、か」
確かに、そう言われればそうなのかもしれない。
社会において感染者の扱いは総じて劣悪だ。隔離は当然、処分なども簡単に行われていると聞く。鉱石病は誰しも罹る可能性が高いというのに。
それに比べてロドスは国家には無所属であるし、鉱石病のコントロールもある程度可能。更には一通りの生活まで出来てしまうのだから、感染者にとっては最後の砦、ひいては桃源郷のような扱いになっていそうだ。問題は、ロドスへのコンタクトが結構取りづらいらしい、ということだろうが。
いずれにせよ私には____引きこもってずっと仕事をしているだけの私には知り得ないことなのだ……。
「言い得て妙だな」
「少なくとも私にはそう見えた。他の奴らにも聞いてみるといい」
「………そうだな。今度そうするよ」
私は外のことを知らなさすぎる。
これをきっかけに私ももっと視野を広げておかなければならないな。
「さて、私たちはそろそろお暇しようか。ありがとうラナ、非常にリラックスした時間を過ごせたよ。心なしか体も軽い」
時計の短針が5を差していたのを見て立ち上がる。まだエレーナが散策を続ける意思があるかないかはともかく、あまり長くいてもここに本来の目的で来ているオペレーター達に多少なりとも迷惑がかかってしまいそうだ。
「……私からも、礼を言う」
「どういたしましてドクターくん、フロストノヴァさん。またいつでも遊びに来ていいわよ」
「ああ、また時間があればな。それじゃあ行こう、エレーナ」
「そうだな」
そうして、1時間ほど滞在してようやく療養庭園を出た。
*************
その後も様々な場所を訪れた。オペレーター皆が集う宿舎や、それぞれが持ち味を活かして働いている製造所や貿易所、応接室や事務室。果てにはバーや娯楽室、少年少女の教育場や農園まで。
執務室から出ることのなかった私は、改めてロドス・アイランドの広さに最後まで驚きっぱなしだった。
そうして方々に歩き回り、ようやく執務室へと帰着したのは実に午後8時のことだった。
「……アーミヤに詰問でもされたら言い訳出来ないなぁ……」
「大丈夫だろう、私にロドスを紹介していたとでも言っておけば」
「うーん……嘘は言ってないんだがな」
夕食は既に済ませ、今は食後のティータイムと洒落こんでいる。この期に及んで今から仕事を再開しようという気には、到底なれなかった。飲んでいるのはセイロンからもらった茶葉で、お茶請けはアズリウスから貰ったマドレーヌ。貰ってばかりで申し訳がない。
基本的に執務室には誰かしらが遊びにやってくる場合がほとんどだが、それでも今はエレーナと二人きり。時計の針の音さえはっきりと聞こえるような静けさは案外嫌いじゃない。
「……エレーナ、今日はどうだった?」
ふと、問いかける。
「そうだな……久しぶりに、“楽しい”という感情が沸き上がってきた……いや、あるいは初めてかもしれない」
「………そう、か。それは良かった」
何気ない一言から感じ取った彼女という存在の境遇。特段珍しくはないだろう、感染者としての劣悪な境遇。
小さく胸が痛む。
「ドクターは、私がしたいことをするときに協力してくれると言ったな」
「……ああ。私が勝手に、罪滅ぼしになればいいと思っていることだ」
「……気にしないでもいいと言っているのに、頑固な奴だ」
そして彼女は腰を上げる。向かい合って座っていた席を立ち、なんと私の隣まで移動してきた。
途端に香ってくる彼女の匂い。甘やかで、死期が近い人間の物とは思えないような生々しさを感じる。
少し心臓の鼓動が早まった気がした。
「ち……近くないか?」
「……そうだろうか。いや、そうかもしれない……だが、これくらいはいいだろう?」
「……そ、そうか?」
しかし不快というわけではなく彼女に距離を離してほしいとは思わない。
彼我の距離はほとんどゼロに近く、時折肩が触れてしまいそうだ。
そのまましばらく、無言で静寂な時間を過ごしていた。
元々私もエレーナも言葉少なな性格のために、特に会話がなくて気まずいとかいうことはない。
…………ずっとこの時間が続けば良いのにと、思わずにはいられない」
純然たる感情だった。
窓の外で白い華が降りしきっているのを横目に暖かい室内で過ごす静寂。外界の終末感と対比される中の灯りは私の心も温かくしてくれる。
「………奇遇だなドクター。私も、この時間がひどく心地いい。永久に続けばいいと思う」
……?!
「……もも、もしかして、言葉に出ていたか……?」
「……いや?『ずっとこの時間が続けば良いのに』という言葉しか聞こえていないが」
「それは結構重要なところだろう………!」
恥ずかしい……とても恥ずかしい。こういうのは心で思っても普通は言葉にしないものだろうに!
穴があれば入ってしまいたい衝動に駆られる。同時に彼女が私の言葉にどう思っているかが気になったが、しかし当の本人は何故か薄く笑みを浮かべている。
「……なぜ笑っているんだ」
「ん、ああ、すまない。お前は面白い奴だと思ってな」
「……よしてくれ。中々恥ずかしい」
顔の熱が割かしはっきりと自覚できているので、彼女から視線をふいと逸らす。あまり見られたくはない。
彼女は尚くつくつと笑って、逸らした私の顔に手を伸ばしてくる。抵抗しようと思えば出来たが、何故か私は彼女の為すがままに強制的に顔を戻された。
少し冷たい小さな両手で包み込まれている。
「ふふ、そうは言っているが______これから、お互いにもっと恥ずかしくなるかもしれないぞ」
「は……それって________」
呼気に交じって発せられるはずの声は出なかった。
「………ん、ちゅ」
「…………?!?!」
いつの間にか、目が閉じられたエレーナの白く整った顔はすぐ眼前にあり私の視界を支配している。同時に唇に感じる生暖かい感触は感じたことのないほど柔らかく、私の息はそこに消えていく。代わりに送られてくる彼女の熱い吐息。
その未知の感触は十秒ほどで離れ、元の距離感に戻る。しかし先ほどまでと違い彼女の顔は朱に染まっており、唇には未だに先ほどの感覚が残っていた。
目の前で起こっている現実を把握できずに頭がぼーっとしている。
「…………ドクター。一つ、お前に協力してほしいことがある」
「…………え、エレーナ……?」
切れ長な灰色の瞳が私を正確に射抜く。
互いに見つめ合った状態で、彼女は私の手を取りこう言った。
「______私に、愛を教えて欲しい」
__________
_____
__
_
執務室にはいくつかの部屋が併設されているが、そのうちの一つに“仮眠室”というものがある。
読んで字のごとく、主に私が仮眠するときに使う四畳半ほどの窓もない空間なのだが、最近は毎日ここで夜も眠っている。そもそも自室が与えられているのかどうかすらも知らないが。
そんな狭苦しい部屋にある簡素なベッド。その上に、私とエレーナは仲良く座っていた。
「…………エレーナ、本気なのか?」
ここに来て改めて問う。
いくら死期が近いとは言え、私ごときと交わってしまってもいいのか。
「……良いんだ。チェルノボーグでお前の手を掴んだとき、人はこれほど暖かいのだと知って得も言われぬ感情を抱いた。その温もりをくれたお前になら、私の残り全てをあげても構わない」
「…………っ」
打たれるのを恐れて投げた変化球が一切の迷いなくホームランで打ち返されたような、ストレートな言葉。あまりにもド真ん中を抜いてくる。
そこまで言われるのであれば、こちらもそれなりの覚悟を持つしかないようだ。
「……わかった。それじゃあ………まずは脱ごうか」
「……ああ」
お互いに自身の服に手を掛ける。何故か背を向け合いながら。
いつも身に着けているコートとマスクを外し傍にあった机に置く。ついで白衣を脱げば、途端に上裸で下はスラックスだけという状態になった。
「………とりあえず私は脱げた。そっちは________」
「……なかなかどうして、他人にこういう姿を見せるのは……恥ずかしいものだな……」
「………どう、だ……」
彼女は自身の着ていた服を丁寧に畳み横に置いている。
ひどく病的な白い肌の上に身に付けられている、黒色の布。彼女という存在に良く合っている控えめな乳房を覆っている下着。シンプルだが、肌のコントラストが眩しい。
両手なり後ろを向くなりで隠されてすらいない。はっきりと分かるほど赤面していながら、間違いなく自分のあられもない姿を私に見せるという意図の下、しっかりとこちらにさらけ出している。
死に際というにはあまりにも綺麗な体。病状が末期も末期なのか、鉱石の1つも見当たらない。足跡のついていない処女雪を彷彿とさせた。
「………ごくり」
思わず生唾を飲み込む。
私の中の本能があれを貪りたいと叫んでいるが、必死に自制した。その副次効果で手が震えているが。
「……ドクター、どうだろうか」
「あ、ああ………その、すごく……綺麗だと思う」
「……私もそう思う。鉱石病に蝕まれ続けた果ての体にしては、と………」
言葉は最後まで続かず、代わりに彼女の右手がこちらに伸びてくる。何をするのかと黙って見ていれば、不意に私の左手を掴まれた。
そしてそのまま引っ張られて、彼女の胸元へと連れられる。
「……え、あ」
_____ふにゅり。
何か言葉を発そうと思った矢先、私の手のひらは布に包まれている異次元の柔らかさをしっかりと感じ取っていた。
そしてその奥で、確かな命の鼓動が脈打っているのも。
「………どうだ。私の心臓は、これまでにないほど激しく脈打っている。こんな感覚は生まれて初めてだ」
「……ああ。分かるとも」
呆けてまともに言葉が出ない。
彼女の胸は、出来るだけ忖度してもあまり大きいとは言えない。谷間が出来ているとか、そういうわけでもない。しかし、それでも尚私の想像を軽く超えるほどの人体特有の柔らかさをしっかりと主張している。
被さっているブラジャーが比較的固いことには驚いたが、それが覆っていない乳房の付け根辺りは、指で軽く押し込むだけで簡単に沈み込んでいく。
では、これを取り払ってしまえばどんな感触が待っているか。
「………上を取るぞ、ドクター」
掴まれていた手を放される。力は入らずに放られっぱなし。
お互いに無言の状態で、彼女が両腕を自身の背中に回した。ややあって、パチリという金具の外れる音が四畳半の空間に響きわたる。
そして______
「…………ん」
「…………おお……」
パサリ、と身に着けていたものがベッドにすり落ちた。
視界に映るはわずかに丘陵の形を成している膨らみ、そしてその双丘のそれぞれの中心にある薄桃色の物体。
芸術品かのようにバランスが取れている肢体が、眼前に現れていた。
「………っ!」
途端に心臓が強く跳ね、下半身にある息子が臨戦態勢に入る。
「……そのズボンの膨らみは、私で興奮しているということか」
「………ああ。すごく綺麗で、いやらしい。今すぐにでも飛びつきたいくらいだ」
「………そう、か…………ふむ」
何かを決めたような様子のエレーナ。
「……どうかしたか?」
私の言葉には彼女は応えず、代わりに向き合った体勢のまま両手を上に挙げた。
「ほら」
「………?」
彼女の突然の行動に頭が追い付かず、怪訝な目を向ける。
するとエレーナは、そのポーズのままずいと近づいてきた。
「何を呆けている。遠慮せずに飛び込んでくるといい」
「………………え」
「どうやら、性行為においては女の胸を舐め回す、なんてこともするらしい。せっかくならどんなものか、感じてみたい……」
_________おいで。
「…………エレーナ………っ!」
「あっ………ふふ」
的確に私の理性の箍を外す一言に、体が反射的に動いた。
その白皙に足跡を付けるべく彼女の胸元へ一直線に飛びつき______
「ひゃっ………はっ、ぅん……」
「ちゅ…ぺろ……はむ、んむっ………」
そのなだらかな丘陵を、口に含んだ。
「ちゅぱ……っれろ、じゅる………」
「ふあっ、ああ……っひ………これ、は……っ」
「……すごく、柔らかいな……ぺろ……れる」
「ふっ……なかなか……くすぐった………」
右乳の、綺麗な桜色の乳首を責める。
唇で挟み込み、そのままやわやわと甘噛みする。そうして甘く刺激を加え続けていると、柔らかい乳房の感触が段々とグミのような固い感触へと変化していった。
「ちゅる、ちゅぱ……ちゅるるる、れるれる……」
「ひぅ……んん……やっ、そこ、吸うな……っ」
「ちゅううううううう……ちゅぱっ……」
「んあああっ…………」
ひと際大きく、赤子のように吸い付き一旦離す。
顔を赤く染め、明後日の方向を向きながらも浅くない呼吸で悶えている。そして首から下を見やれば、綺麗な形をした彼女の乳房が私の唾液で覆われて妖しい艶を見せていた。その先端にあるのは、もうすでにビンビンに固く尖っている少し小さめの乳首。
思わず、手が伸びる。
「……ここ、こんなに固くなるなんて……ひどくいやらしい光景だ………君の、悶える姿も」
「んあ……っ……それ、は……電流のような……刺激が………ぅあ……♡」
言いながら、伸ばした指で遺憾なく主張しているその突起を軽く摘まめば、面白いほどに彼女の体が反応する。
普段の彼女から聞こえる、澱みない綺麗なアルトボイスからは想像もつかないほど甲高く甘さを帯びた嬌声。それが耳に入る度に、私のペニスもガンガンに反応していた。
「んくっ……やっ……あっ……ひあっ♡」
「はっ、そのっ、指、カリカリするのっ、止めっ♡」
「あ、はぁ……そんなに、激しく……揉むなっ………♡」
両の人差し指と親指で、それぞれ乳首を弄んでいく。キュッキュッと一定の間隔で摘まんだり離したりを繰り返したり、指先で小刻みに弾いたり、あるいはその薄い___今となってはその膨らみの存在は十二分に柔らかいと断言できるが___胸をこねくり回すように揉みしだいたり。
「………はっ……はあっ…はー……っ……まさか、胸を刺激されることが……こんなに。これが、“気持ちいい”という奴か………」
「………エレーナ」
「……ふぅ、なんだドクター……」
「………下、触るぞ」
言うが早いか、力を抜いていた手をそっと彼女の下腹部へと押し当てる。
今の彼女は上裸ではあるが、ワンピースのような服を脱いでのことなので下は黒のタイツ一丁という中々アンバランスな服装になっている。
いつの間にか膝立ちになっていた彼女のすぐ隣まで近づき、そのタイツの中にへその位置から右手を添え、そのままタイツの中へと侵入させていく。
すると、程なくしてタイツではない別の布に指が触れた。
少し膨らんだ場所から更に手を降ろせば、湿っぽい触り心地とくっきりと浮いている一筋のしわのような感触。
「んっ………ド、ドクター………」
「…………ここだろう?」
「お、っ……じれったいのは、よしてくれ……あっ」
その正体はもうとっくに察しがついている。だからそのままその“
先ほどまではほんの一部にしか感じなかった湿っぽい感触がみるみるうちに広がっていくのを指先でしっかりと感じ取る。
「………っこ、これが……エレーナ、の………」
「………は、んっ……どうやら、ひ……私は、案外敏感らしいな……」
……まずい、まずい、まずい。
性的快感を感じている証拠たる粘液が染み出して、指の腹で感じ取っていく。それだけでもスラックスに当たって痛いほどにペニスはガンギマリしていた。
「……中、指入れるぞ」
いっぱいいっぱいな状態で先に進むと伝えれば、至近距離にある彼女の火照った顔は微か縦にこくんと振られた。
目をそらし、恥ずかしそうにしているのが視界の端にちらりと映る。
同意を確認し、湿ったショーツをなぞり擦っていた指を少し内腿の方へと動かす。布の端の感触を捉え、指を掛けた。
乳房とはまた違ったぷにぷにとした柔らかさ、それに伴う更なる粘性を感じて手が震える。
おぼつかない人差し指と中指でショーツのクロッチに当たる部分をずらす。
そして、ゆっくりと____まるで生まれたての赤子にするように____指を這わせる。
すると、ニチャリという音ともにビラビラした部分に触れた。
「んあっ………♡」
ビクンと彼女の下半身が跳ねる。
その反応に確かな手ごたえを感じ、更に指を動かす。
ビラビラとした一対の感触……おそらく布越しに触っていた筋の部分だろうが、そこを直に撫でていき、そのヒダの部分も二本の指で弄っていく。
布越しとは比較にならないほど彼女の秘部は愛液であふれており、もう私の手は粘液まみれだ。
「そこ……っ、まず……触られる度に、腰が砕けそうになる…………っ♡」
「……エレーナ……すまん、っ………」
「え、それは………ひっ!」
どうしても表面だけ弄るのがもどかしくて、とうとうその陰裂に指を狙い定める。一部分だけピンと尖っているもの、非常に小さい孔と順番になぞっていき、最後に奥めに控えている淫蜜の源泉の穴に、垂直に中指をあてがった。
そして、そのまま中の秘境に足を踏み入れようと、ずぶずぶと穴の中へと侵入していった。
「くひぃんっ……あ、ああっ……うぁ……♡」
「………こ、これはっ……なんて、感触だ……っ!」
____エレーナの膣内には、別の生き物が潜んでいた。
熱く水に浸したような膣壁は、ただ指を挿し入れているだけにも関わらずそれに反応し蠢ている。
360度すべての方向から細かなヒダが無数に締め付けてくる感覚。外部からの侵入者をあらゆる角度から絞ろうとする_____
それでも負けじと中指を動かして、こちらからも気持ちよくさせようとしていく。
「ああっ……んくぅ………ゆび、出し入れするな………っ♡」
「や、あ……っ、おとを、立て……るなぁ……♡」
「ま、て……ドクター……それ、続けられると………んはぁっ………♡」
中指、あるいは追加で簡単にぬるりと入ってしまった人差し指を抜いたり入れたりする。
余りにも愛液があふれ出てくるために、普通に指を動かしていても絶えずヌチュヌチュという卑猥な水音が聞こえてくる。
指を曲げたり伸ばしたりして、痛がらせないように丁寧に膣壁をトントンとリズミカルに押し込み敏感な場所を探し当てる。一部分だけ他と違いざらざらした箇所を指の腹でこすれば、ひと際ビクンと彼女の体が痙攣する。
「あっ、ドクター、まて……何か、来る…………っ♡」
「……いい。そのまま、我慢するな……っ!」
エレーナの言葉に合わせてこちらも速度を上げていく。
ぶちゅぶちゅと肘先まで愛液は垂れて、ベッドに大きな染みを形成していた。
「うぁっ、来る、あっ、来る、来てしまう、き……っ______」
「_____っ~~~~~~~~………っ♡」
私の袖を両手でぎゅっと掴み、陸に揚げられた魚のようにビクビクと体を痙攣させるエレーナ。同時に、彼女のヴァギナからプシャアアアと蛇口を勢いよく捻ったかの如く無色透明の液体が噴き出て私の腕を濡らした。
突然の出来事に頭が一瞬思考停止する。
「あ……うぁ…………………まだ、腰が……も、立てな…………♡」
「………う、わ……」
自分の意志に関わらず排尿させられたように見える
未だに腰の震えが止まらずにこちらにもたれかかってくる彼女を受け止めた。
「…………イッたんだな」
「………はぁ、はぁ……そうか、これが…………初めての感覚だった。お前に性器を触られるたびに背中に電流のようなものが走り、下半身に力が入らなくなって……果てには、こんな……失禁まで………」
「……エレーナ。これは恐らく尿ではなく、“潮吹き”と呼ばれる別のものだ」
「………潮吹き………そういうのがあるのだな…………はぁ、ふぅ……」
しばらくその状態のまま休んでいた私たち。
互いに上裸で密着しているために彼女の胸の感触を直に感じており、むにゅりと形を変えているソレを味わいたくて、少し彼女の背中に腕を回して抱きしめる。
「……こうして誰かに抱擁されたのは、何時振りだろうか…………」
「……………
「…………それは、楽しみだ」
何でもない会話を挟むが、すぐに途切れる。理由は互いに分かっていた。
その証拠として彼女の視線は私の一部分が異様に膨らんだ下半身に行き、私は先ほどまで指で弄っていた彼女の淫穴をガン見している。
言葉はなく、ただ押さえつけられた二つの荒い呼吸だけが部屋に響いていた。
「……ドクターのこれを、私の中に入れるのだろう?」
「………ああ」
「……分かるとも。主張の激しい膨らみを見ているだけで、私のここは疼き、足腰は震え、下腹部がもどかしくなっている。これを迎え入れようと期待しているのだと、体が訴えている………」
彼女は私から離れる。
手を伸ばし、私の腰に手を添え、スラックスを降ろさんとする。意図を察し、少しだけ腰を浮かせて彼女に脱がせられた。
出てくるのは、先ほどよりも更にペニスの形がくっきりと浮かんでいる下着一枚。取ったスラックスを横に放ったエレーナは、それを見てこくりと息を呑んだ。
「……エレーナも、下を脱いで」
「……ああ」
そして彼女も膝立ちになり、既にびしょびしょになったタイツとショーツのウエストに手をかけゆっくりと降ろしていく。
「………おお……」
「……………あまり、見るな……っ」
するすると身に着けるものを取っ払っていった彼女は、膝立ちのまま両手をへその前で組んでいる。
上を見ればこりこりに勃起した乳首となだらかな膨らみを持つ乳房があり、そして下を見やれば、薄く生えている白色の毛と内腿まで愛液が垂れている生殖器が何にも隠されずに堂々と存在している。
余りの羞恥からか、全身が朱に染まっており切れ長の目は伏せられている。白い肌に彼女の感情がよく表れていた。
しばしの間呆ける。
「……………挿れたい」
思わず、本音が漏れ出てしまった。
私の欲を端的に表した言葉にエレーナは伏せていた視線をこちらに向ける。
彼女の瞳と私の目が重なり合う。その奥には確かに情欲の色が宿っていた。
「…………」
自分の手で自分のパンツを脱ぐ。ウエストのゴムに引っかかったペニスは、ぶるりと勢いよくその怒張を外気に晒す。
茸のような形をしていながらも、先端に位置する亀頭は赤く充血して茎も太く固く仕上がっており、興奮具合が先走りとして鈴口からあふれ出ていた。
「………っ、それ、を…………」
「……ああ。君の中に挿入する」
「…………望む、ところだ」
膝を曲げて足を開きながら座っている私に、エレーナが膝で立ったまま緩慢な動きで跨ってくる。
私の肩に手を掛けた彼女の蜜に塗れたヴァギナと、私の天を衝かんとしているペニスの距離はもう30㎝もない。
すぐそこに快楽の坩堝が迫っている現実に期待と興奮が間欠泉のように湧き出し、余波でがちがちに硬くなっているペニスが先をビクビクと震え、カウパーが更ににじみ出る。
さながら餌を目の前に「待て」と言われているペットのような。
「…………ドクター」
「………なんだい、エレーナ」
顔をあげ、二人で再度見つめ合う。今の体勢では彼女の方が頭一つ分高いため、彼女は私を見下ろし私は彼女を見上げる。
彼女は肩で息ををする中で一つ、大きな深呼吸。
白く細い肢体と同様の熱を持った呼気が私にもはっきりと感じ取れた。
「______私を、愛してくれ」
「_____勿論だ」
柳のように細くくびれた腰をそっと両側から掴む。エレーナに目線で合図し、彼女の体の制御権を私が握った。
そしてそのままゆっくりと、ゆっくりと手を降ろしていく。腕には力が入らないが、彼女が私の動きに合わせて腰を降ろしてくれている。
「ふーっ……ふーっ………♡」
「はーっ………はーっ………」
互いの呼吸はもう臨界点。
彼女は私の肩に置いていた手をどけて、自分の性器にあてがい、なんと指でくぱぁとヒダを左右に拡げたのだ。
瞬間、そこから湧き水よろしくあふれ出ていた愛液が、銀糸を伸ばしながら反り立った頂点である亀頭にねっとりと垂れ落ちた。
「うぐぅ………っ!」
挿入れたい、挿入れたい、挿入れたい、挿入れたい、挿入れたい…………っ!
互いに透明な粘液でべちょべちょになった性器が15㎝、10cm、5㎝、と近づいていき、そして______
「ひああぁっ…………!♡」
「うあっ………!」
______ヌチュ、と粘液同士が接触する音を立てて、膣口と鈴口がキスをした。
それだけで私たち二人ともが腰を浮かせてしまう。
「……ドクター…………んちゅ、ちゅうっ、じゅる、はむっ、んぁっ……♡」
「んぶ……んじゅ、ちゅる、れるっ……はぁっ、エレーナっ………んん……」
上の口でもキスをする。
絡み合う前に交わした“口づけ”とは違い、ただ単に相手の口内を求め貪り合うような“相互捕食”。
こちらの舌を彼女の中にねじ込み、呼気で熱くぬめった空間を余すところなくなぞっていく。
すると彼女も負けじとそれに追従し、途端に始まる舌先でのじゃれ合い。
つついたり、なめ合ったり、絡み合ったりと自由自在に遊ぶ。
「んんっ……!?ん、んむぅっ………!」
「んふうううぅぅ………んあっ、はぁん……ちゅるぅ………♡」
並行して下の方も深く深くとつながっていく。
徐々にペニスが肉壁に覆われている感覚。ずる剥けの亀頭が直に膣内をこすり上げていて、今すぐにでも腰を振りたい欲望があふれ出す。
中は狭く、必然的にペニスで膣道を割り開くようなギチギチの快楽が下半身を支配している。
ぐぶぐぶと淫穴に埋まった陰茎と、彼女との唾液に塗れたディープキス。
上も下も初めての快感に慣れているはずもなく、脳がとっくにオーバーフローを起こしていた。
やがて、亀頭がコツンと何かに当たる感触。
「ひ…………あ、あぁ、ああああぁぁっ…………♡」
「うぐぅ……おあっ…………」
彼女との唇での戯れを解除した瞬間の出来事だったため、エレーナはおとがいを上げて深い嬌声を発している。
私もまた、秘境たる膣内に己の分身が飲み込まれた衝撃で思わず射精しそうになるのを必死に堪えていた。
「………はーっ……はーっ………脳天を突く快楽で……頭、白く……腰が、砕ける…繋がっているところから、広がる……これが……気持ち、いい…………っ♡」
「………エレーナの、膣が………私のペニスを……食べようとしている………っ、だめだ、気を……抜いたら、出てしまう………!」
あまりの快楽にどちらも動けない。
至近距離で抱き合ったまま、対面座位の体勢でしばらくじっとしている。M字に足を開き私の上に乗っているエレーナは絶えず足先まで痙攣させているし、私も私で先ほどから腰回りに力を入れて踏ん張っている。
「射精せ、射精せ、射精せ」と強硬手段に出ているような、膣内にある無数のヒダのうねり。
「………あ、あ………んぁ……少し、落ち着いてきたな………それでも、んっ……頭がボーっとしているが…………♡」
「………私は、全く落ち着いていないが………!」
何が問題かといえば、それは実際に肉棒で感じている快感だけでなく視覚的にも非常に興奮を煽られるような状態になっていることか。
快楽の発生源……私と彼女との接合部は私からはがっつりと見えている。深く口づけを交わしたとき以上、水風船が破裂したのかと疑うほど辺りは愛液に塗れていて、陰核がピンと勃起している生殖器に私のモノがずぶりと根元まで咥え込まれていた。
その光景は眩暈がするほどいやらしい。
「………少しずつ、動いてくれ………エレーナの体調も不安だしな………」
「……………どうせ
「……すまない、期待で思わず…………じゃあ、自分の好きなペースで腰を上げ下げしてくれ……」
言うなり、彼女が自身の手を私の方へと置き直す。支えにするつもりなのだろう。
「……ぅん……んあ………はんっ………♡」
そして、緩慢なペースでそのくびれた腰を上下し始めた。
先ほどまで猿のように激しく交尾したいと思っていた獣欲はなりを潜めたが、その分彼女の中を時間をかけてじっくりと味わう羽目になっているために返ってもどかしい快感が腰から全身に浸されていく。
ペチ、ペチとテンポのわりに小気味良く鳴るのは肉と肉がぶつかる音。その代わりに勢いよく飛び散っているのはもうコップ一杯分じゃ済まされないほど垂れ流れている透明な粘液。
「ぐ……エレーナ、気持ちいいぞ…………!」
「………これでも、かなり……あんっ、力を入れて………ひぅ……私では、これが限界………ひぃっ♡」
言葉通り、よく見ると彼女の足はプルプルと震えている。恐らく自分で動かしていることによる主体的な快感と、先の力を入れていることの両方が原因だろう。
「あっ……」
そのとき、確かに彼女の全身から力が抜けるのを察知した。
「あ゛っ……………♡」
「……ぐああっ…………!」
____ゴチュンという鈍い突撃音と共に、亀頭が何かにぶつかった。
「イ、っ………ああああっ…………♡」
私の胡座で大きく体を震わせるエレーナ。私にしなだれかかり、顔を伏せながらしばしの間痙攣している。
「おおおおっ………!!」
彼女が絶頂を迎えたことを示す膣内の締め付けに限界まで陰茎が刺激され、脳天まで貫くような快感が走った。
射精してしまわぬように思いっきり尻を引き締め、何とか食いしばる。
「……これ、今当たっているのは………っ」
「……うあ………ああ、お前の雄々しい陰茎が、私の最奥にたどり着いた………あまりの衝撃に、また達してしまったが………すまない、私は……これ以上は動けない………♡」
「………分かった。なら少し体勢を変えよう、寝転がってくれ」
彼女の体をトンと軽く前に押す。もう何の力も入らないのか、いとも簡単にポスリと背中がマットレスに投げ出されていた。
「………いつ見ても、綺麗だ」
「………なかなかどうして、お前にそう褒められるのは悪くないな」
俯瞰で艶やかな肢体を見つめ、見惚れる。
上半身は芸術品と見紛うほど均整がとれているのに、すぐ下に目を向ければ未だに繋がったままの淫猥な部分が丸見え。あまりのギャップに一瞬視界が霞む。
「………エレーナ」
「………どうした」
「…………体の力を抜け」
「………善処する」
再度彼女の細っこい腰を
決して彼女の感じる快楽を逃さないように。
そして、負担を掛けないようにゆっくりと挿入していく。先ほど事故で奥深くへ到達してしまったため、比較的スムーズに押し進められる。
ほどなくして、コツンと塞がれた穴のような箇所にたどり着いた。
「……んくぅ………下腹部が……熱く満たされている………大きい………♡」
「……興奮を、煽らないでくれ……っ……動くぞ…………」
少しづつ腰を前後に動かし始める。
8割ほど埋まって見えなくなっているペニスをずるずると引き戻し、そしてまたスローペースで子宮口にぶつけるのを繰り返していく。
「うっ……どうだ……きつくは、ないか………エレーナ……っ」
「はっ……ひ………遠慮、するな………はぁんっ、もっと激しくても……問題ない…………お前の、好きにしろ………っ♡」
「………分かったッ………!」
甘い嬌声で聞く最上級の誘い文句は、今の私にとっては凶暴な肉食獣を檻から解き放つための鍵のようなものだった。
彼女の体の心配も忘れて、ぐっと腰に神経を集中させる。
そして肉棒が抜けるギリギリまで腰を引き、思いっきりドチュンと腰を打ち付けた。
「くひぃん?!♡」
「エレーナっ、声を、抑えずにっ、もっと、気持ち良く、なってくれっ!」
「んはぁっ、もう、とっくにっ、あっ、なって、やぁっ♡」
膣口、膣内、子宮口を通して頭のてっぺんまで快楽に溺れさせるべく、理性の箍を外してガンガンと突いていく。
パチュパチュと先ほどまでとは比べ物にならないほどの淫音を立てて互いの体液が四方にまき散らされる。
「ひぃん、しかいっ、チカチカしてっ、あ゛っ、からだの、かんかくっ♡」
「エレーナ、エレーナっ、エレーナっ!」
「ひぐぅ、なまえっ、よばれると、おなかっ、ぁ、うずくからっ♡」
「なら、もっと、呼んでやるっ、エレーナ、エレーナ、エレーナぁっ!」
蒙昧とした理性が己のペニスの奥で熱いものが脈打つのを感知したが、もう止めようもないし止める気もない。
ない体力を振り絞ってラストスパートをかける。
「んぐ、おおっ、そろそろ、射精そうだ、エレーナっ!」
「うあっ、あひぃっ、わたしも、くる、きてしまう、せなか、ぞくぞくって♡」
止まらない。
熱いマグマのような己の精がどんどん発射までの力を溜めている。もう秒読みだ。
乱暴な腰つきでドチュドチュと打ち付け、絶頂へと昇っていく。
激流のごとき射出欲が急速にせり上がってきて、反射的に歯を食いしばった。
____駄目だ、もう保たない………っ。
「がぁっ、射精すぞ、君の、中に、一滴残らずっ!!!」
「くひぃんっ、わたしも、、や、あっ、あっ、あっ、くる、くるっ、イ、く______」
「ぐおおおおおおっ…………っ!!!」
「あああああああああああああああああああああっ♡」
ドビュッ、ビュルルルルル、ビュプププ………。
全神経と全快楽がペニスを解放し、体の奥から引きずり出されるような感覚と共に強烈な勢いで彼女の子宮口に精液を叩きつけた。
呼応するかのように、膣内も一滴たりとも逃さないと言わんばかりに締め付けてくる。その相乗効果で体内の白濁とした情欲を全て注ぎ込んでいく。
「うぐううぁぁぁぁ………………」
「はあああああぁぁっ…………………♡」
力の入らない下半身を生魚のようにびくつかせながら、彼女に覆いかぶさった状態で向き合う。
そして、性交が終了した合図に一瞬だけ接吻を交わしたのだった。
「……ぷはぁっ、はあっ、はあ、はぁぁ………っ」
「はーっ………はーっ……はーっ………下腹部が、熱い…………んあっ♡」
ヌポンと役目を終えた陰茎を膣口から引き抜く。
勃起したソレを飲み込んでいた穴は見るも淫らに拡がっていて、しばらくしてそこから白くどろっとしたものが垂れてきた。
「……私の持ちうる全てを、君に注ぎ込んだからな…………全く、ひどい匂いだ……」
全身がだるい。
胡坐を解いて後ろにへたり込んでしまう。
「………ドクター………ありがとう……
「………エレーナ…………」
むくりと体を起こした彼女。足だけでなく腕も腰も肩も震えていて今にも倒れそうだ。
背中に手を回してゆっくりと上体を起こしてやる。
そして流れでハグをした。火照った彼女の体が何よりも行為の激しさを物語っている。
「………本当に、お前には感謝している。ちゅ……」
「んっ………」
「………っふ」
もう一回、唇を合わせるだけのキス。
離せば、彼女は泣きそうな顔で微笑を浮かべていた。
「……………本当に、つめたくて、あたたかいひと…………」
力ない彼女を、いつまでも抱きしめ続けていた。
*************
私はあるものを抱きかかえてロドスの廊下を歩いていた。すれ違う者はいない。いるはずがない。
足音がかつかつと反響する無機質な廊下をただひたすらに歩いていく。腕に抱えるものは非常に軽く、足取りは重くはなかった。
目的の部屋にたどり着き、認証したのち自動扉を経て入室する。
いくつか空いた中から目的のものを見つけ、抱えたものをそっとその中に入れた。
「……気付いていた。君の寿命が半年も残っているはずがないと」
何故彼女があんな嘘を吐いたのかは分からない。言葉通りに生きたかったのかもしれないし、ロドスならとも思っていたのかもしれない。
しかし現実はそう有情ではなかった。
死に際も死に際だった彼女の体はもうとっくにボロボロになっており、いつ死んでもおかしくない状況だった、とケルシーは語っていた。
当たり前だ。
もう一年もたないと言われているケオベでさえなんら普通の鉱石病患者と変わりなく源石が体表に分布して人並みの体重があるのだ。それなのに彼女はそうではない、ということはあり得ない。
片膝を立てて、初めてであった時のように冷たい彼女の顔をそっと撫でる。
苦しみなどなかったかのように安らかな寝顔だ。
「………君の意志は私が引き継ぐ。君の怒号は私が代わりに知らしめる。君の望みは、私が叶えてみせよう…………だから、エレーナ」
悲しむことではない。
その代わりに、私もなけなしの笑顔で語りかける。
「……傍で見ていてくれ……私を、ロドスを。私たちが切り開く未来を、私の側で見続けていてくれ」
立ち上がって部屋を出ようと扉に向かう。
『ああ……____私が、ロドスの一員としてドクターの側にいる。だから______』
どこからともなく、そんな凛々しい声が聞こえたような気がした。
☆1特殊 フロストノヴァ 汎用印使用不可
特性
戦闘で1度だけ配置可能 攻撃行動を行わない
敵からの攻撃を受けない
素質
<凍てつく怒り> 配置後20秒の間、周囲8マスの敵の攻撃力-50%、攻撃速度-50
配置されている<アーミヤ>ユニットの攻撃力、防御力+40%
フロストノヴァの印
赤い紙に包まれた飴玉。独特の辛みで彼女の心を満たし続けてきたそれは、今や我々と彼女との協力を結ぶシンボルとなった。
フロストノヴァの潜在解放に用いられる。
フレーバーテキスト
死闘の果ての雪解け。
第一級出撃制限オペレーター、フロストノヴァ。戦えはしないものの、身に宿した怒りと決意は戦場を凍らす吹雪となる。
最期に彼女には笑っていて欲しい
アフターは書きませんが、その代わりとしてアナザーを書きます。
アフターは連チャンでは投稿しませんのでお気を付けください(訳:プラチナのアフターももう少し待って)。