モブ喰い勇者 ~美少女ヒロイン? いえ、興味ありません~ 作:布施鉱平
「────というわけで、僕はエーギル王国と袂を分かつことにしたんだ」
「そう、だったのですね」
ユウの説明は、メイにとって衝撃的なものだった。
勇者の実情、王国の策謀…………どれも彼女には抱えきれないほどの真実だ。
メイは情けなく思う。
王宮でメイドとして働いていながら、何も知らなかった自分のことを。
そして、全く無関係な異世界の青年を召喚し、命懸けで戦わせてきたこの世界のことを。
「ユウ様…………申し訳ありません」
自分が謝罪したところで、どれほどの慰めになるわけでもないだろう。
だがメイは頭を下げた。
この世界を代表して謝る、などとそんな大それた考えなどない。
許されることを願っているわけでもない。
それでも謝りたかった。
「そして改めて、ありがとうございます、勇者様。あなたに対してひどい行いをした私たちを見捨てることなく救っていただいて…………」
ユウは別の世界に拉致された上、命懸けの仕事を押し付けられた。
自分たちの身勝手な願いなど聞く筋合いなどないはずなのだ。
それなのに、ユウは魔王を倒してくれた。
文句一つ言うでもなく、この世界を救ってくれたのだ。
「そう言ってもらえると、頑張ったかいがあるよ」
メイの言葉に、ユウが真剣な表情を浮かべていた顔を、いつものにこやかな表情に戻した。
「それでね、その頑張ったご褒美というわけでもないんだけど、メイに了承して欲しいことがあるんだ」
「なんでしょう、ユウ様。私に出来ることであれば、どのようなことでも…………」
いたします、と続けようとしたメイだったが、その言葉はユウの隣から発せられた声によって遮られた。
「ひぅっ!」
急にスーが悲鳴を上げたのだ。
びっくりしたメイが視線をスーに移すと、スーは膝をガクガクと震わせながら真っ赤な顔で俯いていた。
「ど、どうしたんですか、スーちゃん!?」
ただ事ではないスーの様子に、メイが慌てる。
近寄って様子を見ようと立ち上がるが、
「ああ、多分いきなり色々なことを聞かされてショックだったんだろうね。職場が変わったばかりで、慣れない環境に疲れも溜まってたんだろう。隣の部屋で寝かせてくるよ」
「え、あ、はい」
ユウに軽く手で制され、その場に立ち止まる。
「あの、スーちゃん、本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。ねぇ、スー」
「は、はひ…………」
ユウにお姫様抱っこされたスーは、呂律の回らない口調で答えた。
「じゃあ、メイは待っててね、すぐ戻るから」
そう言って、ユウはスーを抱えたまま部屋から出ていってしまった。
すとん、とソファーに腰を落とすメイ。
なにか釈然としないのだが、ユウが大丈夫だというなら大丈夫なのだろう。
「了承してほしいことって、なにかな…………」
スーが大丈夫なのだとわかれば、当然気になるのは先ほどのユウの言葉だ。
「了承…………まさか、結婚して欲しい、とか…………これから一緒に暮らすって言ってたし…………」
呟き、顔を赤らめた直後「まさか、そんなわけないよね」と自分自身の言葉を否定する。
ユウにこの館に連れてこられ、荒々しく抱かれた(アナルを)のは確かだが、それはあくまで性欲を発散するだけの目的だったのだろう。
それがなぜパッとしない外見の自分だったのかという理由も、ユウの話を聞いた今なら想像がつく。
王城で働いているメイドには貴族の子女が多いが、メイの身分はその中でもかなり低い。
男爵の娘、しかも五女という、実家の男爵家にしてもいなくなって構わないような存在なのだ。
ユウにしてみれば、自分をこの世界に拉致してきたエーギル王国と縁を結ぶための婚姻など、絶世の美女であるコーネリア姫が相手だったとしてもゴメンだろう。
しかし、なんの褒美を何も受け取らずに王国を去れば、王国のメンツを潰すことになる。
いくら勇者の力が強大だとは言え、ひとつの国と面と向かって敵対するのは避けたいはずだ。
だからこそ、まがいなりにも王国貴族の娘であるメイを褒美として受け取ったのだろう。
ふぅ、と軽く息を吐いて、メイはユウの部屋を見回す。
いつまでかは分からないが、これから生活を共にする人物の部屋だ。
まして
気にならないわけがない。
だが、ユウの部屋は最低限の家具しかない、殺風景な部屋だった。
目に付くのものといえば、天蓋付きのキングサイズベッドくらいなもの。
清潔そうなシーツに、ふかふかの掛け布団、そして二つ並んだ枕…………とメイの視線は動いていき、そして固まった。
枕の横に、思わず凝視してしまう異物を発見したのである。
それは────────
男性の性器を模した大人のおもちゃ、
しかもそれだけではない。
丸い玉がいくつも連なった謎の器具や、口枷、アイマスク、紐が付いたピンク色の球体などなど、明らかに性的な目的に使われるであろう道具が、隠されることもなく堂々と置かれていたのである。
メイの額を、一筋の汗が流れた。
いったいアレらは、
自然と息が荒くなる。
いま、この部屋にいるのは自分ひとりだ。
スーはユウに抱えられて別室へと運ばれていった。
先ほど見た状態から考えて、スーがすぐに戻ってくることはないだろう。
となると、必然的にユウが戻ってくればメイと二人きりになるわけで…………
「やあ、お待たせ、メイ」
肩をビクリと震わせて、メイは振り返った。
そこには、いつも以上ににこやかな笑顔を浮かべたユウが立っていた。
…………ズボンの上からでもわかるくらいに、チンコをガチガチに勃起させた状態で。