モブ喰い勇者 ~美少女ヒロイン? いえ、興味ありません~ 作:布施鉱平
それから十日ほど、ユウはメイとセックスしたり、スーにいたずらしたり、メイとセックスしたりしながら悠々自適な生活を送っていた。
時にはギルドから仕事を依頼されることもあったが、世界最強の存在であるユウに達成するのが困難な依頼などない。
日帰りの行楽気分で高難易度の依頼を達成しては、また家に帰って地味っ娘二人とイチャイチャする毎日。
…………だが、そんな平穏な日々に影を差す存在が、ユウたちの暮らすドーマ王国へと近づいているのだった。
◇
「…………情報に間違いはないのか?」
「はっ。ドーマ王国に放っていたスパイから、ナイトと名乗る冒険者が勇者に酷似しているとの報告がありました」
時は遡ること十日前。
エーギル王国の騎士団用宿舎の一室で、二人の怪しげな人物が話し合っていた。
深夜という時間帯の上にカーテンを締め切られた室内は暗く、話し合うふたりの姿を明確に捉えることはできない。
しかし、声の様子から立って報告を受けている人物が男、跪いて頭を下げている方が女だと推測できる。
「酷似だと……? 完全に同一と断定できない理由は?」
「ナイトを名乗る冒険者は、目元を隠す仮面を被っているようです」
「仮面か……では逆に、そのナイトが勇者だと思う根拠はなんだ?」
「身長、体格、髪の色、目の色が一致しており、声も同じであると報告が上がっております。
また、ナイトはA級到達の最短記録を塗り替えるほどの強者だとの報告も……」
ふむ、と男は頷いた。
「ならば、十中八九間違いはないだろう。住居も突き止めてあるのだな?」
「はっ」
「よし、では早速部隊を編成してドーマ王国に向かう」
「了解しました。編成はどのようにいたしますか?」
「そうだな……襲撃部隊は二十一人。イーゴル、ロビン、ウッドペッカーにそれぞれ六人を率いらせ、勇者の屋敷を強襲する」
「二十一人、ですか?」
ただの田舎貴族の娘を暗殺するにしては多すぎる人員配置に、跪いていた女は初めて顔を上げ、男に疑問を投げかけた。
「そうだ、二十一人だ。プラス私も加わるので計二十二人だな」
「オウル様まで……」
女が、ごくりと唾を飲み込んだ。
エーギル王国暗部のトップであるオウルは、かつて単身敵国に潜入し、その国の将軍や重臣など複数の重要人物を暗殺したという過去を持つ、伝説の暗殺者である。
そのオウルまでもが加わるという異常事態に、女は今回の作戦の重要度を再認識した。
「襲撃部隊はそれでいいとして、勇者を屋敷から引き離す陽動部隊には……そうだな、スパロウ、スワン、ピジョンを使う」
「それは、
オウルの上げた名前は、暗部で最も美しいとされる女たちだった。
「ふふふ、勇者といえど男だからな」
オウルの言葉に、女は三人の姿を思い浮かべる。
背が小さく童顔なスパロウ(ロリ)。
スレンダーで背が高く、気品のあるスワン(キレイ系)。
お淑やかな外見の割に胸が大きいピジョン(ベッドでは淫乱な清楚系)。
確かに、男の欲望を凝縮したようなこの三人に誘惑されれば、いくら勇者といえど抗えはしないだろう。
ただ────
「…………オウル様、私はどういたしましょうか」
自分の名前が一度も呼ばれていないことに気づき、女はやや硬い声で指示を仰いだ。
「クロウよ、お前のように地味な外見では勇者の食指も動くまい。見届け役として陽動部隊のサポートにまわれ」
「……かしこまりました。陽動部隊のサポートに回ります」
クロウと呼ばれた女は、また頭を下げてオウルからの命を復唱する。
そして跪いた姿勢のまま後ずさっていき…………そのまま、闇の中へと消えていった。
◇
「くそっ」
宿舎を離れ近くの林まで歩いて行ったクロウは、木を殴りつけながら悪態を吐いた。
また、実働部隊から外された。
幼い頃から暗部の諜報員として教育を受けてきたクロウにとって、それは今まで生きてきた人生を否定されるにも等しいことであった。
潜入、暗殺、色仕掛け…………
その全てにおいて、クロウはこれまで一度ととして実行役を任されたことがない。
確かに、上には上が居ることは認めざるを得ないだろう。
今回の襲撃部隊を率いるイーゴル、ロビン、ウッドペッカーには、戦闘能力では逆立ちをしてもかなわない。
また、陽動を任されたスパロウ、スワン、ピジョンのように優れた容姿も、クロウにはない。
クロウは背が低く、肉付きが悪く、肌の色も青白い。
それだけならまだ特殊な性癖の持ち主に対して需要があるのだろうが、残念なことにクロウは目つきが悪かった。
目尻は釣り上がり、目の下には隈ができ、しかも白目の多い三白眼。
また他のパーツにしても、鼻は低く、唇も薄く、うっすらとソバカスも浮いている。
どう贔屓目にみても、可愛くも美しくもない容貌だ。
「あたしは、必要とされていない…………こんな汚れ仕事ですらも…………」
クロウは悔しげにそう呟きながらも、オウルからの指示を各所に伝達するため、その場を後にするのだった。