※この作品はR-18です。

モブ喰い勇者 ~美少女ヒロイン? いえ、興味ありません~   作:布施鉱平

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第三十話、グレースの闇

「ヒヒッ……ヒヒヒッ……」

 

 エーギル13世が逃げ帰った後。

 

 薄暗い部屋の中で、グレースは一人、不気味な笑い声を漏らしていた。

 

 人を呪うことを生業とする魔女の娘として生まれ落ち、はや28年。

 

 友人は無く、もちろん恋人も無く、ただ暗い小屋に引きこもり、人々の恨みつらみを聞かされながら生きてきた。

 

 唯一の楽しみと言えば、オナニーによって得られる快楽に(ふけ)ることだけ……

 

 そんな、寂しい人生だった。

 

「ヒヒッ……勇者ユウ……世界を救った勇者、ユウ様……」

 

 ユウの名前を呟きながら、グレースは着ていたフード付きのローブを捲り上げ、床に脱ぎ捨てた。

 

 そしてそのまま、部屋の隅にある姿見の前まで歩いて行く。

 

「…………ヒヒッ」

 

 鏡に映った自分の姿を見て、グレースは引きつったように唇を歪め、笑みを漏らした。

 

 死人のように青白い肌。

 

 ほぼフラットな胸と尻。

 

 あばらの浮いた細い体と、肉付きの無い手足。

 

 そして、頭は小さいくせに目だけがギョロリと大きい、不気味な顔……

 

 愛される要素などどこにもない……いや、むしろ誰からも忌み嫌われる『魔女』を体現した姿が、そこにはあった。

 

「……ヒヒッ、あなたはきっと、誰からも愛されるのよね、ユウ様……」

 

 その瞳に狂気を宿しながら、グレースはささやかな胸に細い指先を伸ばしていく。

 

「んっ……♡」

 

 そして、乳首を摘まむと、コリコリと指を動かし、小さく喘ぎを漏らした。

 

 10代の頃から自主的に開発し続けてきた彼女の体は、どこもかしこも敏感だ。

 

 だが、他人がその性感を刺激してくれたことは、これまでにただの一度も無い。

 

「あぁ……っ♡」

 

 もう片方の手を股間に伸ばすと、そこはすでにヌメリ気を帯びていた。

 

 コリコリ、クチュクチュと自らの体を慰めながら、グレースは脳内にひとりの男を思い描く。

 

「……ユウ、様……っ♡」

 

 それは誰あろう、エーギル13世から不能(ED)になる呪いをかけるよう依頼された、勇者ユウその人だった。

 

「はぁっ、はぁっ……♡ ユ、ユウ様……ユウっ、そこ、もっと……っ♡」

 

 次第に指の動きを速めながら、グレースは何度もユウの名を呟いた。

 

 実はこの一年。

 

 望遠の魔術によってユウの姿を見てからずっと、グレースがオナネタに使ってきたのは、常にユウ一択だったのだ。

 

「んっ♡ ふっ♡ ユウっ、ユウっ……!♡ あっ、あっ……♡ ダメっ、もう……っ!♡」

 

 自らの手により開発され尽くしたグレースの肉体は、ユウに愛撫されるという妄想のブーストも加わり、あっという間に上り詰めていく。

 

 そして、グレースが中指を膣に入れながら、親指でクリトリスをグリッと押しつぶした瞬間────

 

「あぁっ!♡ あっ、あっ!♡」

 

 腰を前に突き出してガクガクと震わせ、グレースは立ったまま絶頂した。

 

 股間からプシュッと吹き出した潮が、姿見にかかって流れ落ちる。

 

「はぁ……はぁ……はぁ…………ヒッ、ヒヒヒッ……」

 

 荒い息を吐き、絶頂の余韻で太ももを小刻みに震わせながら、グレースはまた笑みを漏らした。

 

 そして、愛液で濡れた手を前にかざすと、鏡に映った自分の顔をグチャグチャと塗り潰していく。

 

「ヒヒッ…………ヒッ、ヒッ…………」

 

 そしてまた、笑う。

 

 だがその表情は、笑ってなどいない。

 

 むしろ悲しげだった。

 

 口角は引きつり、眉は垂れ下がり、大きな目には絶望が浮かんでいた。

 

「ヒッ……ヒッ……ヒッ………」

 

 泣き声のような、引き笑いのような声を漏らしながら、グレースは両手で顔を覆い、その場に座り込んだ。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 グレースは魔女である母親に、幼少の頃から呪いの術をたたき込まれてきた。

 

 母親は厳しかった。

 

 それはグレースに才能が無かったからではない。

 その逆で、グレースは母親すら凌ぐ才能の持ち主だった。

 

 だがその才能とは裏腹に、彼女は穏やかで心優しい性格だったのだ。

 

 人を呪うことを生業とする魔女に、人を思いやる気持ちなど必要ない。

 

 だから母親は、虐待にも近い方法でグレースを矯正しようとした。

 

 ろくに食事も与えず。

 

 笑顔を向けることも無く。

 

 抱きしめてやることはおろか、頭を撫でてやることすらなかった。

 

 それでもグレースは、優しい心を失わなかった。

 人に呪いをかけることを嫌がり、命を奪うことを嫌がった。

 

 それに業を煮やした母親は、とんでもない手段に出る。

 

 グレースに、呪いをかけたのだ。

 

 かけた呪いは二つ。

 

 一つは逃げ出せないよう、この小屋から離れることが出来なくなる呪い。

 

 そしてもう一つは、呪いの依頼を受けた場合、それが達成不可能なもので無いかぎり、断ることが出来なくなる呪い……

 

 どちらも破れば、全身から血が吹き出し、苦しみ抜いた末に死ぬ呪いだ。

 

 グレースにこの呪いをかけ、母親は姿を消した。

 当時まだ10歳に過ぎなかった彼女が、すでに独り立ちできるほどの能力を有しており、後は経験(・・)さえ積めば一流の魔女になれると確信していたからだ。

 

 それ以来、グレースは依頼を全て受けざるを得なかった。

 どれだけ優しい心を持っていようとも、まだほんの10歳でしか無い少女が、苦しみ抜いて死ぬ恐怖に抗えるはずが無い。

 

 罪悪感と自己嫌悪で体は痩せ細り。

 

 心は日を追うごとに壊れていった。

 

 ストレスからオナニーに依存するようになり。

 

 孤独と静寂を紛らわすためか、楽しくも無いのに笑い声が漏れるようにもなった。

 

 そして10代が終わる頃には、人に呪いをかけても何も感じなくなっていた。

 

 依頼人に裏切られてからは、依頼人にも呪いをかけるようになった。

 

 人を呪い、笑い、オナニーし、笑い、人を呪う。

 

 何も考えず、ただそれだけを繰り返し、気づけば『呪怨のグレース』と呼ばれるほど有名になっていた。

 

 心は壊れ、笑う数は増え、あれほど依存してたオナニーも、いつの間にか無味乾燥なものになっていた。

 

 ────だが一年前、変化が訪れた。

 

 エーギル王国により異世界から召喚されたという勇者。

 なんとはなしにその姿を望遠の魔術で覗いた瞬間────気づけばグレースはオナニーし、絶頂していたのだ。

 

 人を想ってオナニーしたのは、初めてだった。

 

 潮を吹くほどイったのも、初めてだった。

 

 それが初恋だと気づいたのは、十数回の連続絶頂による気絶から目覚めた後だ。

 

 以来、グレースはユウのストーカーになった。

 

 毎日ユウの姿を覗き見て、彼に抱かれる事を妄想しながら、ひたすらオナニーに精を出した。

  

 途中からユウの力が強くなりすぎて、望遠の魔術を弾かれてしまうようになったが、それでも妄想の中でユウと交わり続けた。

 

 だが、現実には、ユウはいない。

 

 生身のユウに会ったことも無ければ、彼の声を聞いたことすら無い。

 

 次第にグレースは、ユウを想ってのオナニーだけでは満足できなくなっていった。

 

 ユウに会いたい。

 

 ユウの声が聞きたい。

 

 ユウの笑顔が見たい。

 

 ユウに名前を呼んで貰いたい。

 

 ユウに抱きしめて貰いたい。

 

 ユウとセックスがしたい。

 

 その想いはどんどん強くなっていき、もはや爆発する寸前まで高まっていた。

 

 そこに現れたのが────エーギル13世だ。

 

 彼に呪う相手がユウだと言われたとき、グレースは天啓を受けたような気持ちになった。

 

 どうあがいてもユウに接触する手段は無いと思っていたが、自分の得意分野である『呪い』ならばユウにも届く。

 それに気づいたからだ。

 

 ユウであれば、例えグレースが死の呪いを放ったところで本当に死ぬことは無いだろう。

 

 それくらい、ユウの能力とグレースの能力は懸け離れている。

 

 だが、自分に対して呪いを放った存在を、ユウが放っておく訳がない。

 

 きっと、会いに来てくれるはずだ。

 

 エーギル13世に話を合わせながら、グレースはそのことばかりを考えていた。

 

 そして10倍の依頼料をふっかけた上でエーギル13世を脅し、怯えきったその姿をあざ笑いながら送り出し、昂ぶった気持ちのままにオナニーをしようと服を脱ぎ捨て……

 

 そこでようやく、我に返った。

 

 鏡の前に立ち、自らの貧相な体を改めて確認し、乾いた笑い声を漏らす。

 

 こんな女を、ユウが抱いてくれるわけが無い。

 

 妄想の中のユウはどこまでも優しく、グレースに愛を囁いてくれた。

 

 だが、それはあくまで妄想の中だ。

 

 それに世界を救った勇者であるユウなら、すでに何人もの女を侍らせていても不思議は無い。

 

 そこに自分が加われると思うほど、グレースはイカれてはいなかった。

 

 悲しくて、情けなくて、悔しくて、恐ろしくて。

 

 グレースはまた、オナニーに逃げた。

 

 ユウのことを想いながらするオナニーは、これまで通り最高の快楽を与えてくれた。

 

 だが、終わった後。

 

 グレースの心には、自己嫌悪と虚しさだけが残った。

 

「ヒッ……ヒッ……ヒッ………」

 

 両手で顔を覆いながら床に崩れ落ち、グレースは願った。

 

 

 どうせ叶わぬ恋ならば。

 

 このまま地獄のような人生が続いていくのならば。

 

 

 

 

 

 いっそのこと、愛しいユウの手で終わらせてほしい。

 

 

 

 

 

 心から、そう願ったのだ。









グレースちゃん(28)は貞子系のオゾいヒロイン。

外見は呪田四姉妹の長女かな。(知ってる?)
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