呪いの指輪じゃないのと思ったのは、夢の中で目覚めた後でした 作:木桜 春雨
ここ、どこだろう、ふと目が覚めると自分は知らない場所に来ていたなんて、異世界転生のラノベや漫画でならよくあるけど、それがいざ、自分の身に起こるとは正直、パニックだ。
しかも周りは真っ暗で、なんとなくかび臭い、湿っぽい、外だとは思うが、どこなのかわからない。
「どこから入ってきたんだ」
男の声に驚いて振り返るが、暗くてよく見えない、誰ですかと声をかけながら近寄ろうとしたのはいい、だが、躓いてそのまま、転んでしまった、慌てて立ち上がろうとしたが、膝を強く打ったのか、立ち上がるのも一苦労だ。
「宿無しなのか、地下に潜ってくるとは」
地下、宿無し、どういうこと、外だと思ったけど、近づいてくる相手は明かりを持っていた、服装も随分と変わっている、帽子、マント、手袋もだ、だが、それ異常に驚いたのは近づいてきた男が、仮面をつけていたことだ。
まさか、ここが19世紀のパリだなんて思いもしなかった、いや、予想を見事に外してびっくり仰天だ、しばらくは言葉が出てこなかった。
仮面をつけているから、もしかしてオペに座の怪人かもなんて思ったけど、自分はエリック、怪人でも幽霊でもないと言われて、そうなんだと納得したふりをして、それ以上、聞く事はしなかった、原作のオペラ座の怪人は歌姫のクリスチーヌに対しては優しくて、危害は加えないからと安心させるような事を言っていたけど、それは表向きだ。
陰ではオペラ座の支配人を恐喝、人殺しも平気でする。
コミュ障で自分は悪くないと言い訳して悪い事は平気でする、つまりは人間としては最低だ。
まあ、親から捨てられて、楽しい事より苦労が多ければ性格がねじ曲がってしまっても無理はないんだろうけど、パリの治安も良くないし善人ぶっていては生きていけないんだろう。
男が自分の家に招いてくれたのは嬉しかった、幸運だと思いながらも絶対に怒らせたらまずいと思っていたのだ。
男の家には本がたくさんあって、これは良かった英語が得意ならすらすらと読めたのかもしれないが、あいにくと学生時代から成績は悪かった、仕方ないから男に聞くことにしたのだが、これが良かったのか男は少しずつ好意的な話し方、接し方をしてくれるようになってきて嬉しかった。
カウチソファーに座って分からない単語などを教えてもらて本を読んでいるうちに、自分も小説を書きたいと思うようになってしまったのだ。
男に紙とペンを借りて机に向かって書いていると、自分のいた世界に戻った気分になって嬉しかったのだが、夢中になっていると、男が自分を見ている
事に気づいた。
もしかして機嫌が悪い、居候の人間を不快に思っている、考えてみれば男の家から殆ど出ずにいて、不悪だって男のズボンやシャツを借りているのだ、図々しいこと、この上ない。
追い出される前に自分から出て行った方がいいのではないかと思ったが、行く当てがない、そんな事を考えていると、だんだんと気分が沈んできた。
たまには外に出る事も必要だと思って、その日の朝、起きて散歩に出掛けることにした、ただ、外に出たい、街を自由に歩きたいというと男に駄目だと言われるかもしれない、だからこっそりと出掛ける事にしたのだが。
数時間の散策は楽しかった、ただ、いざ帰ろうと思ったとき、迷っていることに気づいた。
確か、こっちだった、見覚えのある建物だと思って歩き出すが堂々めぐりだ、日はだんだんと傾いて周りは暗くなってる、不安になって、どうすればいいのか迷ってしまう。
周りの人間の視線も気になった、パリの人間が全て善人とは限らない、どうすればいい、安全な場所がないかと思ったとき、地下を思い出した。
パリの街は地下道が迷路のようになっていて、逃げたり隠れたりするのは最適だ、勿論、危険も伴うが、この際、背に腹は代えられないというか、選択がない、もし殺されるようなひどい目に遭ったとしても、その時は仕方ないと諦めるだけだ。
地下に潜って、うろうろと歩き回っていて気づいたのは完全な暗闇ではないということだ、所々に灯りがある、誰かが管理しているのだろうか。
歩き回っていると何かを踏みつけた、乾いた音と感触から紙だと分かった、拾い上げていると何かが書かれている、ペンがあったら暇つぶしになるのにと思って周りを探してみたがない。
紙を拾い集めて読もうとしたが、にじんで何を書いてあるのかさっぱりだ。
地面に座って、ふと男の事を思い出した、自分がいなくなったことを知って怒っているだろうか、いや、反対に厄介な人間がいなくなってほっとしているかもしれない。
働いていないから金はない、無職の無駄飯ぐらいなんて役立たずもいいところだ。
だが、出てきて、こうして迷って帰れなくなってしまったが、それも良かったのかもしれないと思ってしまう自分がいた。
男の、時折、自分を見る目が気になるのだ、あれは欲望ではないだろうかと思っていた、パリの人間は恋愛に関しては大らかというか節操がないというか、挨拶代わりに女が初対面の男と関係を持っても不思議はない、性病になっても医者にかかる金もないと、そのまま平気だ、日本人の自分なら考えられないが、どうして、こんな外国のような場所に自分がいるのか分からないので、知らないふりをするのがいいと、自分の名前も思い出せないというと、男は名前をつけてくれた。
クリスティーナ、いかにも外国人、フランス人のような名前だ。
自分は、この地下で果てて死んでしまうのだろうか、悲観的な気持ちになってしまった。
だが、男が迎えに来てくれたのだ、驚きだ、もしかして怒っているかもしれないと思い、何も言わず勝手に外に出た事を謝った、道に迷って仕方なく、ここで朝になるのを待って帰ろうと、男の元に帰ろうとしたのだと謝った。
なるべく、怒らせないようにと殊勝な物言いになったのはいうまでもない、そのせいか、迎えに来たんだと言われ、抱きしめられてほっとした。
この時、初めてキスをされたが、されるがままだった、だが、それ以上の行為をされると思ったとき、緊張で体が硬直した。
「こ、こんな場所で」
思わず声が裏返った、いや、もしかしたら自分でも分からなかったが、震えていたのかもしれない。
「そ、そうだ、私としたことが」
このとき、視線に気づいた、暗がりの向こうから誰かが見ていると、もう一人の怪人だと、この時は気づきもしなかった。
今回の話でヒロインはケン・ヒル版の怪人に見つけてもらい、地上のアパートへ無事戻れる事になっています。
パリ事情を多少知っているヒロインにとって彼とのセックスは性病だけでなく、衛生管理、出産で命を落とすリスクが高いことを知っているので避妊などについても色々と考えていると思います。
性病になっても医者にかからないのは普通は日本人ならあり得ないし。
二次創作なので、そんな細かいことと思うでしょうが、他の人が書いていないので自分は、そのあたりは書いてみたいと思っています。
勢いで書いています、多少の辻褄がアレっと 思ってもスルーしてください。