そこに書いてあったのは……?
「うーん……ここ、だよな……」
色褪せた壁のペンキ。
錆のついた扉。
少しでも風が吹けば飛びそうな屋根。
僕は今、どう見ても廃屋のボロボロの物置小屋の前に立っている。
先程のトイレといい、どうして今日一日だけでこうもボロいものに縁があるのか……
僕がこんなところを訪れているのには、理由があった。
ーー(これは……地図?)
ガイダンスを聞きながらも、僕はトイレで女生徒から渡された紙をまじまじと見ていた。
折り畳まれた、メモ用紙。
そこには簡単な地図らしき図が描かれている。
大きな横向きの長方形が二つ。
その右横には、細長い長方形と、中くらいの波模様の長方形が並んでいる。
おそらく、学校の本校舎・副校舎と、その東に位置する体育館、プール棟を描いているのだろう。
そして地図にはもう一つ。
体育館の北側、副校舎の東に位置する場所に、小さな正方形が描かれていた。
ハートマークまでついている。
明らかに目立つ何か。
(多分……このハートのところに来いってことだろうな……)
あの女生徒の意図が全く読めない。
だけどあの時……トイレで感じた、興奮と高揚感。それが僕を掻き立てる。
怪しいとは思いながらも、心は誘われてしまう。
(行って、みようかな……)
窓の外に広がる青空を眺め、ぼんやりとそんなことを考えた。
ーーガイダンスを終えた放課後。
地図を頼りに今、あのハートマークの建物までたどり着く。
この場所は校舎からはっきりと見えない位置。遠目には確認しにくく、近づかないと分からなかった。
(だ、大丈夫かな……?)
いくらかの不安が募る。
ここ、下音田学園は歴史ある私立高校。
一昨年までは古い建物ばかりだったのを、昨年からの改修工事で新しくしている最中だ。
事実、校舎内はほとんど綺麗に直されている。プール棟と体育館、校舎西側にある部室棟さえも改修中の状態だ。
なぜここだけ取り残されているのか……
(こういう古い建物って、嫌なんだよなぁ……なんか、不良の溜まり場みたいな気がして……)
中学の時の記憶が蘇る。
地域の一般的な学校だったものだから、不良らしき人もいくらかいた。
カツアゲされてる生徒を遠目に見て、巻き添えにならないよう避けたこともある。
奴らは大体、こんな感じの古い倉庫やら部室棟やらにたむろし、よからぬことをやっていた。
思い出してしまったせいで、建物に入ることが躊躇われる。
(ひょっとすると、あの……オナニーしてた人、不良の仲間なんじゃ……)
そうだ。
あんな恥ずかしい姿を僕に見られて、何もせず去るはずがない。
きっと色仕掛けでここに呼んで、中にいる不良共に痛ぶらせる気なんだ。
(やっぱり……帰ろう……)
きっとここに入っても、何もいいことはない。気づかれないうちに立ち去ろう。
そう思い、真後ろに振り返った。
ところが。
「あれ?入らないの?」
不意に声がかかる。
いつの間にか、あの女生徒が近くに立っていた。
「あ……」
それ以上言葉が出ない。
思わず立ち止まってしまう。
ドクンッと心臓が大きく動くのを感じた。
先程目にした女生徒の尻が、脳裏を掠める。
興奮の再開!