封印されていたアストルフォの宝具に俺は弄ばれる 作:ざーと/しゅりんかー
「マスターマスター! ボク、新しい宝具を思い出したんだ! 試し撃ちさせて!」
アストルフォは俺に抱き着いてきた。そのまま壁に押される。油断もあったが、華奢でも肉弾系サーヴァント。力押しには抵抗できない。
「発動条件は、これだよっ!」
むぐっ?! キスされた! いきなりで驚いた。これが条件なのか。
なら仕方ないな。サーヴァントの能力を引き出すためだ。受け入れてあげようじゃないかーーうへへ。アストルフォの唇、柔らかくて気持ちいい。
舌が入ってくる。絡みつくことなく、強く深く滑らかに俺の口内を蹂躙してくる。唾液を混ぜ合うのではなく、グイグイ流し込んでくる。ちょっと思ったのと違う。あくまで宝具のためってことか。アストルフォの要求に逆らうことなく、ごくっと飲み込んだ。それを確かめてアストルフォも口づけを解除した。とてもあっさりと。むむ。
俺に即座に状態が付与された。だが、何の状態なのかが分からない。テキスト表示が出ない。
「んふふ、状態付与の宝具が、自分以外に使えるようになったんだ。ただ、ちょっと特別なんだよ。そんでね、効果を試すために・・・」
アストルフォが腕を振りかぶった。
「マスター! 攻撃するよー! とりゃーっ!」
じゃれるような口調と共にパンチが向かってきた。見るからにおフザケのアストルフォ。向かってくるゲンコツも可愛らしーー
ん? おかしい。迫ってくるパンチがぐんぐん圧を増していく。拳の速度が、じゃない。存在感が、重さが、いや、大きさが増している。錯覚かと思ったが、しかし見間違いじゃない。アストルフォが急激に巨大化している! 伸びてくる右腕は、ついには暴走列車のような勢いになっている!
ビュオッ! ドゴンッ!!
アストルフォのパンチは頭上をかすめ、背後の壁にヒットしていた。かわすどころか、一歩も動けなかった。その腕は俺の身長より遥かに長く、太さはどう見ても1m近くあった。
「おやー、アハッ! マスターってば、小さくなりすぎて攻撃当たらない! 小人化回避状態付与、大成功だよ!」
天頂から覗き込むアストルフォと目が合った俺は、数秒ほど硬直し、腰を抜かしてへたり込んだ。攻撃が当たれば、吹き飛ばされるなんて生易しいものじゃ済まず、一撃で全身が粉砕骨折させられる威力があったに違いなかった。
改めて見渡す。アストルフォが巨大なだけじゃない。空間がとてつもなく広くなった。マイルームにいることは変わっていない。家具の形がそのままに、スケールが何もかも変わっていた。本当に俺の方が小人化したってことなのか。
ニコニコ顔で、アストルフォは俺に手のひらを翳す。俺の全身がスッポリ隠されてしまった。
「えーっと、身長8センチくらいだから、20分の1ってところかな。可愛くなったねマスター」
そのまま俺の体は、巨大な手の中に握られてしまう。掴まれても変に圧迫されることなく、この体格差にも関わらずソフトな肌触りの指に抱えられて。心地良い安定感だ。
アストルフォは優雅に立ち上がった。俺を包む手が、顔の前に持ち上げられる。こんなにも巨大なのに魅力が露ほども失われないアストルフォの微笑みが、キスされた時より近くに感じていた。そしてじっと見つめられる。妙な気分になる。
「えへへ、嬉しいなぁ。ボクに照れてるんだね、マスター」
照れるとかそんな次元じゃない。英雄としての魅力、同性でも抗し得ないカリスマ。そこに物理的な巨大さも掛け合わされたなら、心酔させる力は絶大となるに決まっている。その上、アストルフォの性を超えた艶は反則級だ。
アストルフォの吐息がかかる。唇に手が届きそう。もう少し近づけたらーー。
「あれー、そんなに体を乗り出してどうしたの、マスター? これ以上近くなったら、ボクの顔に引っ付いちゃうけど…って、なぁんだ」
急に後ろから押される感覚。アストルフォが俺をもっと間近に引き寄せたのだ。伸ばしていた小さな俺の手が、アストルフォの下唇にうずまってしまった。
「したいんだね、キス?」
囁き声のアストルフォ。小悪魔っぽくーーというのは錯覚。単純に近づき過ぎたから抑えたというだけなんだ。けど、本来なら小さいだろう声の響きが、俺の頭から足の先までビリビリさせる。控えめだったはずの瞳が俺を見下ろす。なんて大きく、なんて可愛らしく、なんてなまめかしいんだろう。
ああっ、アストルフォ、もう待たせないでくれ!
「じゃ、いいよ」
その迷いのなさは、俺との絆の証。俺の頭より厚みのある唇が一瞬にして迫ってきて、顔が丸ごとアストルフォに占拠された。
俺の口はアストルフォの唇に密着している。みずみずしい弾力でぎっちり抑え込まれたまま、離すことも口を開くことも許してくれない。鼻は辛うじて隙間が出来て塞がれていないが、吸い込む空気はアストルフォの匂いしかしない。男臭いなんてことはなく、可憐な香りとさえ思った。
少しして、アストルフォが舌での責めを始めた。俺をいたぶらないよう、閉じた唇の隙間からチロチロさせるだけ。だけ、なのだがーーそれでさえ唾液がべっとりと、俺の顔を覆う。アストルフォの唾液、気持ち悪いことはない。けれど、蒸散する匂いが格段に濃密になる。違う空気を吸うという逃げ道は無い。肺の中まで彼の色に染められた気がした。
舌はほぼ筋肉で出来ている。20倍もの屈強さになれば、まさに鋼のような肉鞭になってしまう。そんな、渾身の力でもビクともしないサーモピンクの竜が、変幻自在に俺を翻弄する。
俺の体の何倍もの姿を口内に隠しているその舌を、負けじと舐め返す。当然1ミリもへこませることさえかなわない。明らかに矮小すぎる奉仕を、アストルフォが感じてくれたとは思えない。ただ、アストルフォらしい繊細な味がした。
「ん。はい、おしまい!」
やはりというか、余韻も無くアストルフォは俺を開放する。結構しっかりとしたキスをした直後に、こんな屈託のない陽気な表情が出来るのがアストルフォの長所。
そして同時に、本気で俺に惚れてくれないところ。ちょっとだけ、名残惜しく吸い付かれてみたかった。多分内臓まで吸われるけど。
「じゃあマスターのおねだりも叶えたし、ボクの番」
左手で俺をつかみ空中に静止。右手をすぐ目前に。そして構える。これは、デコピンの型。
普通に額を狙うのだけど、体格差で俺の頭と同じくらいの太さがある中指は、恐ろしくないと言えばウソだ。
「宝具効果が重ねがけ出来るはずなんだ。いけるかどうか、ちょっと攻撃していいね?」
回避状態のことか、縮小か。それとも両方? と、怯んでいたが断るタイミングも無く、ぐぶっ!!
あ、頭が、真後ろに飛びそうになったぞ! 鼻を骨折したかと思ったほどものすごい痛い!
「ああ、力入れないでチョンとするだけで正解だった。ごめんマスター、回避が効いてないみたい・・・」
あーやっちゃった、という表情だ。いたずらっ子め。仕方がない。暗く自省するのはかえってアストルフォとして変だ。敵の攻撃でみんなが殺されるのには悲しみ怒っても、勢い余って自分の手でリタイヤさせてしまったらやっぱり、あーやっちゃった、だと思う。
「そっか思い出したよ! この宝具の欠点。一度された攻撃手段には、もう回避できないんだった。だから手でやると当たっちゃうんだな~」
思い出したことでスッキリ笑顔。
ああ、感情の切り替えも芸術的なんだなぁ理性無しは。さすがにちょっとは俺のダメージも心配して欲しかったなぁ。
「じゃあ、こんな攻撃はどうかな、マスター♡」
スッと俺を床に置いて、自らは立ち上がったかと思うとーータイツ脱ぎだしたぞアストルフォオイ! ってか股間が見えてる! パンツも一緒にかい!
「そのサイズのマスターから見ても、かわいいでしょ? コレ」
全く言葉通りじゃない、俺と同等の長さのお竿を堂々突き出すアストルフォ。半立ちだよ・・・なんかすごい絵面。
キスで興奮したか、これからすることに歓喜しているのかはどうでもいい。
「ふふん、ボクの小便鉄砲、くらえー!」
うはっ、やっぱりアストルフォだ。お遊びなんだろうけど、さすがに躱すぞこれは!
1センチも無い差で、派手なおしっこのしぶきが床に飛び散った。宣言からわずかなタイムラグがあって幸運だった。
「あーっもう、自分で逃げちゃダメだって! 受けて自動で回避しなきゃ、宝具効果は出ないよ」
うぐ。
俺の足が止まれば、すぐに打たせ湯が追いついた。
ばしゃばしゃばしゃっと引っかぶる。そうすると、体がおしっこを弾いて液面の外に出た。押し流される。回避宝具によるのか、結界らしき効果のおかげで濡れはしない。が、水たまりの端に追い出されるのと同時に、またドンドンと視界が広くなっていく。つまり俺はまた縮小させられているんだ。その間、30秒もない。鉄砲水だったものが華厳の滝に見えていた。
「ふう・・・スッキリ。アハハ、ちょっとだけ出して止めることできなかったよ」
マイルームの床にアストルフォの小水が広がった。やってくれたなぁ。常識人じゃないのは分かってたけど。掃除してもしばらく、彼の匂いに悶えそうだ。エロい意味で。
「また20分の1になったはずだから合わせて400分の1、4ミリメートル。見た感じでも合ってるよ。喜んでいいよマスター!」
アストルフォのでっかさ。東京名所スカイツリーを真下からこの目で見上げたことは無かった。でも、同じような大きさのアストルフォを見上げてしまった。
しゃがみ込んできて、空を占めるような広いアストルフォの笑顔を見ていると、縮小という状態異常に恐怖するより、このサイズでしか経験できない良いアングルで見れたことが嬉しい。俺は本当にちっぽけでーーまあ実際小さくなってるんだけどーーカルデアの未来とかで悩むのは後回しでいい。そんな爽快感。
にしても、黄色い湖のほとりにいて、かすかにコレが湯気を立てているのは、大温泉のようで温かそうだ。なんだろう、体が冷えてきた、震えてしまう。そうか、分かった。こんなに小さい人間はいない、恒温動物の条件から外れたんだ。
変に冷静に頭が回る。なのに、この金の温泉に飛び込みたいってイカレタ考えも、一緒に出てくる。
「無理してないで、暖を取った方がいいよ・・・回避状態ももう、ボクのおしっこには無効なはずじゃないかな」
アストルフォも気づいた。理性は足りなくても、地頭はいい方だったっけな。
やれるなら肌で暖めてほしいが、マッ〇フライポテトの幅ほどの身長で、実物大の指につままれたらどんなに微細でも、筋肉のけいれんが起きたら全身砕かれ、血袋になるだけだ。
手のひらまで登って包んでもらうのはどうか。話しかけてみた、が、俺の声はアストルフォに聞こえていないらしい。ほんの4ミリの虚弱人間の体から発する叫びは、スカイツリーの展望室に届けるには小さすぎる。やはり察してくれず、アストルフォは手を差し出そうとしない。
彼が薦める最後の選択は、俺が誘惑されているのと同じ羞恥プレイ。ああ、わざとだな。悪意がない悪戯。
もう止むを得ない。踏み入って中で泳ぎ始める。ふう・・・染みる。あったかさも、アンモニア臭も。広々とした浴場を占拠、ではなかった。おしっこ溜まりに浮いている肉くずゴミ虫こと俺。
こっぱずかしい。でも、アストルフォ以外誰も見てない。彼だけが俺の痴態を独り占めしている。大きな瞳で飽きずに俺を見つめる。このシチュエーション、なんか興奮する。甘々な二人の時が続くかと思っていた。
その一瞬を俺は見逃さなかった。ニヘラァと愉悦に歪む眦だけの笑み。アストルフォがそんな顔をするのか疑い瞬きすると、彼はペニスをさすり始めた。英雄の柱が、俺から見て何十メートルもの真の姿になる。
そこに感じたのは危機。
命だったなら安いものだ。この状況は宝具攻撃なのに攻撃ではない。ただの縮小ではありえない。
人理が迎えた危機のオマージュであるとしたらどうだ。俺が存在を消却されるのだろうか?
その疑念は一瞬にして、俺を闇に囚わせた。