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久し振りに見た、鮮明な景色。
モノクロじゃねェ…真っ赤な血は俺の身体の底から沸き上がるドス黒い感情に追い討ちを掛けやがる。
覚醒し掛けていた意識を無理矢理奮い立たせ、周囲を確認してみる。
血の海に沈んだ、バラバラの綺麗なピンク色の肉片だ。元の形は綺麗な女だったんだろうな。
俺の身体も、同じ様に鮮血をバケツで浴びたかの様に真っ赤だった。
芳醇で淫靡な香りが俺の鼻腔を擽る。
頬を伝うヌルリとした鮮血を舌で掬い、咥内で転がすだけで絶頂にも似た多幸感が俺を満たして行く。
何となく、下を向く。
元は黒だったハズのコンバットブーツは、真っ赤に染まり、靴底には頭蓋骨や髪の生えた頭皮、グチャグチャに潰れた眼球がへばり付いていた。
背筋がゾワリと粟立ち、その直後に言い得ぬ快感の波が襲って来た。
「…ヤベェ…気持ち良くなって来ちまったなァ…」
息が荒くなり、身体が昂る。
下半身に熱が集中し始めたのに気付き、俺は息を深く吸い込む。
肺一杯に血生臭さが広がり、無意識に紅潮した頬は更に熱を帯びる。それに連れて下半身は更に熱を帯び、脳が蕩ける様な……
「ヒィッ!!?」
眼を瞑り、意識を嗅覚に集中させていると、背後から驚愕と恐怖が入り交じった声が聞こえて来る。
閉じた眼を開き、首だけをゆっくり後方へ向けた。
「う…ぁ……ひ、ひぃ…ぃ……ッ」
白い髪に犬みてェな耳、涙を溜めた紅くて大きな眼をした少女。
人間に限り無く近い容姿だが、俺は少女を一目見た瞬間から人間では無いと理解した。
「な…なん……で…、何で…みん…な…が…?」
尻餅をつき、ガクガクと震えながら俺を見上げる少女。
俺は少女に向かって笑顔を返し、怯える少女に近付きながら言ってやった。
「…少し…付き合えよ…」
頭を銃で吹き飛ばされた女が座っていた鉄製のイスから、女を引き摺り降ろす。
「ほら…ここ座れ」
そう言ってイスを指差した瞬間、少女の表情が更に強張った。
目を見開き、小さな声で「大天狗様…」と何度も呟きながら座ろうとしないので、髪を掴んで無理矢理座らせた。
「痛いッ!痛いですッ!!離してくださいッ!!」
泣きながら俺の腕を、小さい手で掴む少女を見ていると、やはり言い得ぬ感情が心中に渦巻く。
だがこのまま掴んでいても話が進まないので、何本か髪を引きちぎりながら離してやる。
「オイ、お前名前は?」
「……いた…い……」
「……名前は?」
「…い、犬走…椛…です…っ」
「そうか…椛……良い名前じゃねェか」
そう言うと、少女改め椛は俺を睨み付けて来た。
どうやら俺が笑ってるのに腹を立てたらしい。
何とも嗜虐心を擽る可愛らしい表情だ…
「何故……何故皆を…殺したんですか!!?」
噛み付かんばかりに叫ぶ椛。
そんな椛の手足を、イスの足と肘掛けにワイヤーで縛り付けながら俺は答える。
「ン~……何となく?」
「ッ!!き…貴様ァ!!」
その言葉を聴いた瞬間、今にも俺に飛び掛からんと椛の身体が大きく動く。
ワイヤーが手首に深く食い込み、苦痛に表情を歪ませながらも俺に向かって椛は吠え続けた。
「何で…何の怨みがあって……こんな…こんなに酷い事をするんですか…ッ!?」
「怨み?イヤイヤ、そんなモンは微塵もねェよ?第一、俺とテメェらは初対面だしよォ」
噴き出しそうになった。
泣きながら何を言うかと思えば…こっちからすりゃあただの暇潰しだってのに。
「なら……一体何のために…私達を……」
悲痛な心の叫びを遮り、俺は現実を口にする。
「暇潰し」
一瞬、時が止まる。
そして5秒程の間を空けてから、椛は再び口を開いた。
「…え…?」
「だから、暇潰し。お前等だって暇な時にテーブルゲームしたりすンだろ?アレと全くおんなじだって」
「暇……潰し……?」
「そう、暇潰し」
満面の笑みで返す。
すると目の前の少女は絶望した表情…イヤ、官能的な表情で項垂れた。
「…ざ…るな………」
「ン?何て?」
「…ふざけるなッ!!」
「ふざけてねェですよ?」
「五月蝿い五月蝿い五月蝿いッ!!そんなの納得出来るワケが無い!!!!」
「キャーキャーウルセェなァ……猿かテメェは…よッとォ!!」
軽く放った右の拳が、身動き一つ出来ない少女の柔らかい腹部に吸い込まれる。
悔し涙を流しながら必死の抗議をしていた椛は、突然襲い掛かる腹部への衝撃と、ドスッと響く鈍音により目を見開く。
「ッ!!??ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!!」
食堂を競り上がる吐瀉物を飲み込み、無理矢理空気を吐き出さされる苦しみと戦いながら、椛は目の前の大男を潤んだ瞳で睨み付けた。
そんな椛の姿を大男、改めグレン・ブレスウェートは、ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべながら楽しそうに眺めていた。
「苦しいか?ン?それとも気持ち良いかなァ…?」
椛の小さな頭を、大きな手で掴んだグレンは、涙が伝う白い頬を真っ赤な舌でベロリと舐める。
生理的な嫌悪感から椛は更に涙を溢す。
「ひっ……」
頬を這う舌は、やがて椛の唇へと延びる。
グレンの大きな掌が、椛の頬を支え、グレンの舌は椛の固く閉ざされた唇を抉じ開けんと動く。
「…ハァ、柔らかい唇だなァ…思わず噛み千切りたくなるぜ…」
グレンの人差し指が、椛の唇を撫でる。
椛はただ震えながらグレンを見上げていた。
はい。
てなワケで簡潔に書かせて頂きました。
今回の話は、グレンが天狗に襲われている椛に出会っていなければ起きたかも知れないお話です。
続きに関しては…まぁ、需要があれば書きますが需要が無ければ書きません。
ではまた次回があれば。