※この作品はR-18です。

re世界を覆せ 黒き勇者   作:コトナガレ ガク

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第29話 悪意の巣窟Ⅰ

 月夜に浮かぶ白亜のアーグラ城、堀に囲まれアーグラの街の中央に鎮座する。

ここがアーグラの本丸でありもう城壁は無い。堀と反り返るほどに高い壁を持つ本城があるだけだ。街を囲む城壁が破られた場合街の人々が逃げ込み立て籠もる最後の砦。尤も街の人間全員は収納できないけどな。

 俺はその最後の砦の裏方にある林の中を歩きながら木々の隙間から城を見上げている。

 城に潜り込んでいるクストーデの者による追加情報に寄れば、反対派を地下に連行した後プスィッタにより地下は全面封鎖されたそうだ。地下への入り口には見張りが立てられ厳重に警戒されている。そんな中プスィッタだけが毎日地下へ一人で足を運んでいるらしい。

 怪しすぎだろ、どう考えても地下で人目を憚ることをしているだろ。人体実験か、倒錯した性の発露か。リークできればスキャンダル間違い無し、アーグラの人心は離れるだろう。だがヴィザナミ中央が介入してくることは無い。捕らえた反逆者をどうしようが勝者の特権、敗者に人権などないのがヴィザナミ帝国なのだから。

 っとなると乗せられているようで癪に障るがクストーデの言うとおり姫様奪還が一番現実的なのだろうか。オッサン救出は次策だな。正義の怪盗がとらわれの姫を助け出す、王道だがいい物語だ。それだけに民衆も乗ってくれる。一番のコンボは姫様救出→悪事のリーク→姫を御旗に民衆の蜂起だろうな。

 罪の無い民衆を危険に晒す、こんな行為は悪か? 俺は民衆を唆す悪魔か? だが黙っていれば誰かが助けてくれると思っている民衆に罪は無いのか? 怠惰は大罪だぜ。

 ふっ自己の正当化とは俺も弱気になっているのか。

 悪は悪。俺は信念を持って悪を貫くのみ。 

「ここです」

 考え事をしている内に付いたようだ。先程から俺を先導していたクストーデから派遣された案内人は堀のある一角で止まった。全身をすっぽりと黒のローブに包んだ彼(彼女?)はクストーデのアーグラ支部の残り少ないセグレートだそうだ。多くのアサシン、セグレートを権力争いの時に失ったそうだ。声色を使って話す此奴は、無能故に使われず生き残ったのか、切り札故に残されたのか。それはおいおい分かるだろう。

「ここなら見張りの兵からの死角になっています」

「そうか」

 ざっと見では、ここから歩哨は見えない。一応信じてもいいか。

 本来こういった下見は自分でじっくり行うのが怪盗フォックスの信条だが今回はゆっくり時間を掛けているわけにはいかない。それにクストーデと呉越同舟、俺を無闇に陥れはしないだろうと読んでのこと。

「後万が一のための城の抜け道の鍵です」

 案内人は俺に菱形のペンダントを渡した。話しによれば城の地下に秘密の通路があるそうなんだが、封鎖されている地下に行ってもどうしょうも無いので、万が一の退路として利用することにした。

「さてと」

 ざっと見ると堀の幅は10m前後、水深は話しに寄れば1.5mくらい。泳いだり潜って渡ろうとすれば、堀の中で飼われている肉食魚が一斉に寄ってきて食われてしまうという寸法。というわけで城の衛兵に紛した俺が林の中引っ掛からないようにえっちらほっちら持ってきた長さ3mは有ろうかという棒が役に立つ。

「じゃあ頼む」

「はい」

 俺は棒に縛り付けておいた紐の端を案内人に渡す。そういえ此奴の名前聞いてないな。

「そういや名乗ってなかったな。俺はシチハ」

 フードで顔は分からないが戸惑っているのか案内人からの返事は無い。まっ信頼関係なんて期待してなかったけどな。

「一応私はここで夜明けまでは待機しております」

 沈黙の後何事も無かったように話し出した。

「よろしく、んじゃ行くぜ」

 俺は棒を水平に構えて堀から距離を取っていく。助走に十分な距離を取るとゴムが引き戻されるように一気に加速して堀に向かった。

 ぐんぐん迫る堀の縁、踏み込みはぎりぎりで堀の角に足を掛け飛び上がった。

 月を背景に放物線を描く跳躍。怪盗という商売柄身軽な俺は人より高く遠く飛べるが10mはやはり遠い。半場を過ぎたところで失速し放物線は堀へとダイブするコースを取る。

 ここからが怪盗の腕の見せ所、頭からダイブする体勢から棒を前に突き出し堀の底に突き当てる。コツンと当たった感触から直ぐさま体を捻って、棒を起点として逆振り子に体を振って、再ジャンプ。

 俺は再度舞い上がった。

 棒を手放し迫り来る壁に向かって手足をヤモリの如く突き出し、音も無く壁に着地しそのまま壁に張り付いた。

「ふう~」

 堀の方に振り返れば棒は案内人が紐を手繰り寄せ回収している。これで一応城に潜入した痕跡は消せる。侵入がうまくいって今日一日で終わればいいが、最悪再度侵入するはめになる可能性もある。痕跡は出来るだけ消すべきだ。

「さて」

 案内人が仕事を果たしてくれたので憂い無し。俺は再度壁に向き直すと、石と石が組み合わされた僅かな隙間に指を引っかけ昇っていく。ロッククライミングという文明崩壊前から伝わる技術だ。何とこの技術、怪盗が忍び込むために発達させた技術で無く、一銭にもならない危険な山を只登るためだけに編み出された技術だそうだ。文明崩壊前の世界は一体どんな世界だったんだよ理解できない。精神性は理解できないが技術は活用させて貰うけどな。

 暫く昇っていくと指定された窓に辿り着いた。

「はて、仕事は果たしてくれたかな」

 サイコロを振る気持ちで窓を引っ張ると鍵は掛かって無く、すんなりと外に引けた。ここの窓の鍵を開けといてくれたクストーデの息の掛かったメイドさんに感謝しつつ、城の内部に忍び込む。

 窓を閉め直し鍵も掛けておく。これでメイドさんが職務怠慢で怒られることも無い。しかし窓からの光しか光源の無い城内の廊下は暗い。帝都と違いガス灯すら配備されていない田舎の都市、夜に明かりを求めればランプや松明などがいる。だが金は掛かるし火事の心配もあるしで特別な日でも無い限り廊下に設置されていたりしない。見回りはランプを携帯して行っている。

 夜中にトイレに起きたら真っ暗で大変な田舎城、しかし怪盗にとってはこの闇は友達さ。

 さて頭の中の見取り図を頼りにアーリア姫の寝室まで行くとするか。

 何か夜這いするみたいだな俺。

 

「あっあっ」

 ランプで照らされる部屋、一家四人くらいは眠れそうな豪華なベットの上で白い少女の裸体が影のように浮き上がる。

 腰が浮き上がるたびに、白い肌にうっすらと浮かぶ汗は若い肌に弾かれ玉になってきらきら輝き肌を滑り落ちていく。掌にすっぽりと収まりそうなまだ未成熟な膨らみかけの胸が僅かに揺れ少女は甘い吐息を噛みしめる。

 赤毛を伸ばした少女の顔立ちはシャム猫のようでいて、悪戯好きで気が強そうな感じでこのまま成長すれば姉御とでも呼ばれそうである。

 その少女の上で腰を振っている男は金髪碧眼で体も適度に引きまり顔立ちもどこか少女と似て整っている。

 一見普通の恋仲男女の愛の睦み合いに見えるが、腰を突き入れられる少女の肘から先、膝から先が無かった、肉達磨である。

「うっ」

 男は少女にひときわ深く突き入れ欲望を吐き出した。そして一物を引き抜くとそのまま少女の頭を掴んで腰に持ってくる。

「ほれ舐めろ」

 少女の愛液でまだ湯気が出る一物を少女の口に近づける。少女は大人しく口を開け、そこに一物が入りきる寸前男は腰を引いた。

 ガチン、歯と歯が激しくぶつかり合うとこが響いた。

「危ない危ない。まだそんな気力があったか。嬉しいぞっ我が妹よ」

 男は遠慮無く少女の頬をぶっ叩いた。

「いい加減諦めたらどうだ」

 手足を無くし叩かれた後だというのに少女は燃えるような瞳で男を睨み付けた。

「へへっあきらめは悪いのさ」

「いいぞいいぞ。その歯ごたえが心地いい。お前が逆らえば逆らうほどに俺の快楽は増す。その心をへし折りたくなる。お前はつくづく俺を楽しませてくれる。はっはっは」

 男は一物の汚れを少女の顔でぬぐい取るとベットから降りガウンを纏って部屋から出て行った。

「ちきしょう」

「楽にしてやろうか」

「えっ」

 いきなり表れ話しけた俺に少女は驚いた顔を見せ、その顔は年相応に幼く見える。

 赤毛で活発で気の強うそうな少女、これがアーリア姫だろう。そして今出ていった男がその兄のバーホだろう。

 当初の予定ではこのアーリア姫を救い出し、クーデターの御輿にするだはずだった。

 それがこれだ。

 バーホにより手足を切り取られ、性処理人形にされたアーリア。

 それでも絶望せず心を強く持つ気高き少女。彼女なら手足を切り取られ性処理人形にされていても、クーデターの御輿になれる。この気高き心なら、その不幸すら民衆を奮い立たせるスパイスに出来るかもしれない。

 だがこの気高き少女をこれ以上晒し者にできるのか?

 一歩間違えれば彼奴がこうなっていてもおかしくなかった。

 そう思ったら全てを台無しにすると分かっていても、言ってしまった。もう後には引けない、少女がはいと願ったら俺は躊躇わず少女のその胸に剣を突き入れる。その覚悟があって俺は問いかけた。 

「いい。あたいはまだ負けてない」

「そうか。余計なことだったな」

 俺はハンカチを取り出し少女の顔を拭いてやり、髪を手櫛で整えてやった。やはりこの少女は美しいな。内面に秘めた思いが美しさを引き立てるが、外見を整えてやればもっと美しくなる。

「あたいはアーリア、あんたは?」

「俺の名はフォックス」

「ひゅう~あんたが帝都を騒がせる怪盗さんか、へっへ生きてる内に会えて嬉しいぜ。噂を聞いてあたい結構あんたに憧れていたんだ」

「そうか。なら俺の仲間に成るか?」

「嬉しい誘いだけど今は行けないや。それより、あんたに頼みがあんだけど」

「なんだ」

「地下に叔父さんが捕まっているはずさね。助けてやってくれないか」

「バーホを殺せじゃないんだな」

「それは自分の手でやるよ」

 こんな状態でもこの少女が言うなら成し遂げられそうに聞こえる。

「おやおや、逢い引きですか、そんな事していますとお兄様に怒られますよ」

「逃げろ」

 突然掛かった声の方を睨み付けるアーリアの視線の先を見れば、赤のプールポワンに肩章を付けた紳士然とした男が部屋の入口にいた。

 見た瞬間全身の鳥肌が立った。

 手裏剣を投げつけ、すれ違い様に横殴りに剣で切りつけ、俺は逃げた。

 

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