「立派な心がけだこと。でも格好付けるなら実力が伴わないと」
レーネが長刀を構え一歩前に出てくる。
「実力もあるつもりだぜ」
そう、ある意味では女という足枷が無くなったとも言える俺に10人程度でどうにかなると思っているなら、思い知らせてやる。
「ならここで決闘を申し込みます」
「決闘?」
何言ってんだこの女?
たった10人とはいえ折角の数の優位を捨てる気か? 多対一は卑怯とか騎士みたいな事言い出すのか、クストーデ、マフィアの娘が世迷い言を。
「そうです。私が勝ったら大人しくこちらに従いなさい」
従うね~死んだら従うも糞も無いだろうに。この女は俺を殺すこと無く捕らえられるつもりか、思い上がりも甚だしい。それとももしかしてだが、道場でも勝負と勘違いしている痛い女なのか。
「俺が勝ったら?」
「クストーデはあなたに従います」
「ほう」
大きく出たがこんな小娘にそんな権限あるのか? 親が幹部とは言え、その上のボスだっているんだろ。そのボスが小娘の戯言に従うか? そもそも負けて生きていられるとなぜ思える?
やっぱ勝つことを当然と思っている思い上がり娘か。
「レーネ、勝手なこと」
ほれ見ろ、皮肉を言う暇も無く身内から異議が出てるじゃ無いか。
「お父様。ここで戦えば双方に被害でます。それでは今後に対応できなくなる可能性があります」
ふ~ん、一応俺の実力を考慮し、今後のことまで考えているようではある。
!!!
そうかようするに頭でっかちな女なんだな。でかいのは胸と尻だけにしとけば可愛いがってやるのに。
「確かに。分かった」
承諾したようなマギレウの顔、ありゃ内心勝てば約束通り、負ければ小娘が勝手にしたことと反故にする気だろうな~。それでこそマフィア。
「決闘受けて頂けますか?」
マギレウの内心を見透かした俺にレーネは真っ直ぐな瞳を向けてくる。
少なくてもこの女は本気だな。マギレウの奴、娘の教育をしくじったな。いい娘に育てたのならマフィアに関わらせるべきでは無く、マフィアにするならもっと狡猾にすべきだった。それが狡猾な娘なんか可愛くないと真っ直ぐに育て、可愛い娘に自分の財産も地位も譲りたいか。マギレウも所詮娘の親。
普通の人間なんだな。
「まあ、無難な提案だな」
「なら」
レーネが提案を受けて貰えて喜色を浮かべる寸前で放つ。
「だが、断る」
「なんですって!!!」
いいリアクション、実にからかい甲斐がある娘だ。
「俺とクストーデは決裂したんだ。それも卑怯な裏切りでな。俺達が気付かなかったら騙し討ちするきだったんだろ。そんな奴らと交渉も糞もあるか。
俺とお前達は敵だっ。俺は敵に対しては容赦しないぜ」
「ならクストーデの精鋭10人と戦うというのですか」
「戦わない」
「はい?」
レーネの凜々しい顔が歪む歪む、まじめな娘なんだろうな、斜め上の展開に思考が付いてこれなくなってきている。
「逃げる」
「えっ!」
うん、その顎が外れたような間の抜けた顔実に可愛い。出来ればベットの上ででも虐めたくなってくるぜ。
「逃走こそ、怪盗の本懐。
じゃあなオッサン、恨みっこ無しだぜ」
「ああ、恨みっこ無しだ。だからもしもの時は頼む」
俺はクラウンから手紙を預かっていた。もしもの時はそれを帝都にいるクラウンの知人に届けることになっている。これがあるからこそ自分が囮となって女達を裏から逃がすことに素直に同意したとも言える。そしてクラウンの考えは俺の考えと同じ、ここで禍根は断つ、先送りはしない。
しかし胡散臭そうなオッサンかと思っていたが、意外にいい奴だな。
・
・
・
「取り出したるわ~この手紙~はい注目」
俺はクラウンから預かった手紙を懐から出して掲げた。
「おっおい何をするつもりだ」
クラウンは秘策を俺が取り出したので何をする積もりだと慌てた。オッサンの慌てた可愛くないな。
「その手紙は?」
レーネが何かを察したような顔でこちらを見る。
察しのいい女は好きだぜ。
「この手紙はクラウン殿下が帝都にいるある上級貴族に宛てた秘密の手紙」
「まっまさか」
「察しのいい女は話しが早くて好きだぜ。
そうここでクラウン殿下を押さえても俺がこの手紙をその人物に届ければ、結局は軍が動くことになるぜ」
「いつの間にそんな用意を。まさか、こちらが怪しい動きを見せただけでそこまで準備をしたいうのか」
事態を悟ったマギレウが歯軋りしながら聞いてきた。
「俺は小心者でね。ついつい最悪を考えてフォロー策を練ってしまう。まあ、だから女には細かいとモテないんだけどな」
「なんでばらしたの? 黙って殿下を見捨てれば、あなただけは無害と見逃して貰えたかも知れないに」
あれだけいい顔を晒してくれていたレーネがこの問いばかりは引き締まった顔で問いかけてくる。そんなにこの女にとってこの問いは重要なのか。
「遊び好きなんでね。これだけでっかい遊びだ俺だけ仲間はずれは嫌だぜ。
さあ、始めようぜ。アーグラの命運を賭けた鬼ごっこを」
俺は宣言と同時にレーネに向かって走った。
「私を女だからと甘く見たかっ。簡単に抜かせると思うなっ」
まじめな質問ははぐらかされ、真っ先に狙われる。レーネは其処まで自分を侮るかと怒りのままに長刀を大上段に構えた。
「あんたの体なら十分抜けるぜっ」
「どこまでも巫山戯たことをっ」
突風となって襲いかかる横殴りの一閃。
速いが素直な太刀筋、甘い甘い所詮はお嬢ちゃんの実践知らず。
俺は長刀の下を掻い潜るヘッドスライディング。
「なっ」
道場剣術じゃあ、こういうトリッキーな動きに即応できない、ワンテンポ反応が遅れる。 そのワンテンポの合間に地面に左手をつき跳ね上がり、右手をレーネの股下から跳ね上げる。
バサッ。
レーネのスカートが捲れ上がった。
起き上がった俺の目には白磁のような肌で引き締まった太股の間にある秘宝が晒される。
「ほう黒か。清純そうで意外とやらし~。いいオカズになる、十分抜けるぜっ」
顔を真っ赤にしたレーネが慌ててスカートを押さえる。俺は脇を余裕ですり抜けていく。
街を歩いていても咎められないように、戦闘用から離れた服で来たのが命取り。
何とか呼吸を整え澄ました顔でレーネが振り返ったときには、俺は5歩は駆け抜けていた。
さあ、街の命運を賭けた鬼ごっこの始まりだぜ。