AR・I・CAという女性は愛に生きている。
暇さえあれば夜の街を練り歩き、道行く見目麗しい美女や美青年、美少女美少年を吟味し一夜の関係を築く。
彼女がこのインフィニット・デンドログラムをプレイし始めてから体を重ねた人数はもはや常人であれば数え切れないだろう。
だが彼女、AR・I・CAは違った。
彼女は今まで自分が肉体関係を持った人間のことは全て覚えている。
どこで出会いどこに行き、どんな話をしたのか。
名前を名乗ったのであれば名前を、それがたとえ偽名であっても覚えている。
それは常人からすれば特異なことだが、彼女にとっては全くもってそんなことはなかった。
なぜならそれは彼女にとっての当たり前だから。
カルディナでの彼女の評価は見目麗しい人間になら誰彼構わず声をかける好色家というものがほとんどだ、しかし実際はそうではない。
彼女は吟味する。
未来を見る瞳をじっと留めて、見目麗しさのなかにある様々なものを見て決めるのだ。
そして言う。
「こんばんわお嬢さん、突然だけど私と今夜お付き合いくださらない?」
風呂場から出た私はバスタオルを巻き、髪の毛を乾かすためにドライヤーを手に取る。
マスター増加に伴いこういった便利な道具が市場に出回るようになりティアンである私たちの生活水準もかなり上がってきている。
しかしスラムや路地裏で育つ子供の割合が特に高いこのカルディナでは、ティアンがこれらを手にすることはかなり珍しいことだろう。
髪の毛を乾かし終えるとラックにかけた給仕服を見る。
そういえば着て欲しいって言ってたわね、着た方がいいのかしら。
ラックには私の給仕服の他にAR・I・CAのジャケットがかかっており、下着以外の服もそのまま残されている。
つまり今ベットルームにいる彼女はおそらく下着一枚の丸腰ということになる。
そうなると今ならあるいは…
「やめた方がいいわね」
彼女に不意打ちは効かない、私が彼女を害そうと行動を取ろうと考えた時点で《瞬間装備》などのスキルで防がれ今度こそ殺されるだろう。
今夜はおとなしく彼女の言いなりになったほうが良い。
下着をつけ上から給仕服を纏って鏡の前に立つ。
たしかにちょっとメイド服っぽいわね。
AR・I・CAにこれから好き放題されるのを想像すると少し気が滅入るが、私も裏社会に身を置いていた人間だ、雇い主の命令で男の情欲を解消することもたまにあった。
だから今日もそれと変わらない、相手が超級であろうとも。
「…はあ」
私はため息をつくと、AR・I・CAのいる寝室へと向かった。
「やっぱり、その服とっても似合うね」
下着姿のAR・I・CAがベッドに腰掛け足を組んでいる。
脱衣所から出てきた私を上から下まで見る彼女はとても嬉しそうだ。
「で?何をすればいいの、キスする?それとも裸にでもなればいいかしら」
そんな彼女とは対照的に私の対応はかなり淡白なものだ。
これから散々いたぶられるのだし、自分から媚を売るなんてめんどうだわ。
「そんな言い方されるとお姉さんちょっとだけ傷ついちゃうなあ、でもエリーちゃんからのキスなら大歓迎だけどね♪」
そんな私の心情など関係ないとでも言うかのようにAR・I・CAはニコニコと笑う。
「よいしょっと…じゃあメイドさん、こっちに来て」
AR・I・CAそう言うと自分の手を大きく広げる、私とて言われなくてもその意味を理解し彼女の下着一枚の身体に自分の体を預けた。
「どうかな?」
「どうってなによ」
暖かい。
AR・I・CAの肌はサラサラしていてとても心地よい、あと何故かとても安心する匂い。
正直このまま目を閉じて眠ってしまいたい。
「なんだか眠そうだね」
「ええ、あなたも今日はもう寝ればいいんじゃないかしら」
私の冗談にAR・I・CAはそうはいかないと笑う。
しばらく抱きしめあったあと彼女が口を開いた。
「そろそろハグはおしまい、次のステップに行こうかな…よいしょ」
そう言うとAR・I・CAは私の背後に周り再び私を抱きしめる。
こうしてみると私と彼女は頭ひとつぶんくらい身長が離れているのね。
そんなことを考えていると、私を抱きしめたまま彼女はベットへと倒れた。
ベットに倒れたAR・I・CAに後ろから抱きすくめられる。
「なに?苦しいわよ」
「ごめんごめん」
AR・I・CAはそう言って私の頭を撫でる。
その手は耳を通り肩までスルスルと降りる。
「触るね」
AR・I・CA指先が服越しに私の胸に触れる。
下着を介して彼女が優しく私の胸を揉みしだく感覚が伝わってくる。
正直言ってあまりいいものではない。
「エリーちゃん、こういうこと初めてじゃないでしょ?」
背後から私を抱きしめながら、AR・I・CAが耳元で優しく囁く。
「そうよ、悪い?女性同士でするのはその…初めてだから、それで我慢してちょうだい」
「そっか、じゃあいっぱい気持ちよくできるように頑張るね♪」
そう言うとAR・I・CAは胸を揉むのを一旦止めると、私の顔を持ち上げる。
「キス、するね」
「ん」
AR・I・CAの唇が私の唇に触れる。
抱きしめられながら優しく労るようなキスに、思わず全身の力が抜けてしまう。
「んちゅ、ん」
一旦唇を離し、もう一度重ねる。
なにかしら、なんだかすごくその…恥ずかしい。
「んん…」
キスなんてもう何度も奪われてきたのに…性欲に支配され股間膨らませた男にされてきた自分勝手なキスとは違う優しいキス。
私を労り、愛していると言わんばかりのキスになんだかとても気恥ずかしくなってしまう。
「んん…ちょっといったん…やめ…んちゅ」
全身の力が奪われてしまっているかのような錯覚を覚える。
まずい、彼女にペースに呑まれてしまいそう。
「キスでこんなに可愛い顔してくれるなんてお姉さん嬉しくなっちゃうな」
唇を離したAR・I・CAがキスで溶かされた私の顔を見る。
なんだかとても恥ずかしくなり顔を背ける。
「次は大人のキスしよっか」
「んんっちょっ、ちゅぱ」
私の顔を強引に引き寄せた彼女は不意をつかれて無防備な私の唇に、自分の下を侵入させる。
「んぅっ♡」
完全に不意をつかれた私は無防備な口内を彼女の舌に蹂躙され情けない呻き声をあげる。
全身が強ばり思わず彼女の腕を掴んでしまう。
「っちゅ♡ふぁっんんんぅっ♡」
こんなキス…私の知ってるキスとは別物だ…まずい…まずいまずい、彼女から早く離れないと…でも全身をギュッと抱きしめられているこの状況でどうすれば。
「っは♡ぁんっ♡っふぅ♡っ♡んんっ♡」
そんなことを考えている間にもAR・I・CAは私の身体を存分に堪能している。
体を抱きしめていた左手は再び胸を揉みしだき、服越しとはいえ僅かな快感を与えてくる。
たまにぐりぐりと乳首を押し込むようにして刺激を与えてくるのだ。
知らないキスの快感でいっぱいいっぱいな私にはその僅かな刺激でさえ大きな快感となってしまっている。
「いやっ♡胸…いまは嫌ぁ」
掴んだ腕に力を込めて胸を揉みしだく彼女の左手を止めようとするが、彼女の力が強いのか私の力が弱まっているのか全く止められる気がしない。
下腹部がキュンキュンと快感に悶え、その感覚に体が震え思わず太ももを擦り合わせてしまう。
「えへへ、気持ちよくなってるエリーちゃんも可愛いね♪お姉さんちょっと本気出しちゃいそう」
「…ぇ?今まで本気じゃ…んっ!?」
ニコリと笑ったAR・I・CAの顔が近づき再び唇同士が重なる。
すると彼女は舌を私の口内に入れると今までとは比べものにならないほど激しく、でも丁寧に私の舌を絡めとり、ぬちゅりと自分の舌で責め立てる。
「ひぅっ♡ぅあ♡んっ♡んんんぅ♡ふああっ♡♡♡」
さっきまでとは違う荒々しいキスに私の口内はなすすべなく蹂躙され、同時にぐりぐりと押し込まれるだけだった胸の刺激はキュッと乳首をつまみ上げられるさらに強い刺激になっており、まだ触れられてもいない下半身が勝手にカクカクッと上下に動く。
「ほんとにっ一旦やめて…いやぁ」
体の震えを止められず、彼女が喜ぶ。
「エリーちゃん可愛いね…♡」
目に涙を浮かべ、息を荒くする私の耳元でAR・I・CAが囁く。
「お姉さんもう我慢できないかも」
「ぇ…?」
AR・I・CAの左手が私の下半身にそっと触れた。
気長に待ってくれれば幸いです。