雫ちゃんは靡かない 作:リデウス
「うんっ、あっ、んぅ!」
「あー、雫ちゃんのおまんこすっげぇ絡みついてきて最高だよ。このまま一発出すぞ」
「出すなバカ」
「やーだよー。それ以前に吸い付きすごくて抜けそうにないもん。口じゃ嫌嫌言っておきながら相当エロいぜ、雫ちゃんはよ!」
「てきとう言うなぁあ!」
僕の小さな体は荷物のように持たれて、真下から真上に突き上げるようにして貫かれている。痛みよりも快楽の方が強く、気が狂いそうになった。
それでも負けてなるものかと言葉を荒げて抵抗する。
抵抗はすれど、僕の女の部分は男の物を掴んで離さないみたいだ。
意識はしてない……けど、僕はやっぱり母の子供なんだと思い知らされた。
幼い頃から父親がいないのが当たり前。
会いに来るお父さん候補は多く、それでも母の気分によって顔ぶれが変わる。
僕は幼心にそれも仕方のないことだと思っていた。
女は一人では生きていけない。
妊娠して子供を持てば尚更だ。
妊娠すれば稼ぐ時間が減り、何日も収入が得られない日が続く。
それでも食べなきゃ生きていけないから、僕はアルバイトを始めた。
母が男に頼らなくてもいいように、女である僕が男のフリをして家にお金を入れる事にしたのだ。
でも、それももう無理になる。
今日この場で男の慰み者になった今だからこそ理解する。
この快楽を一度知れば、元の生活には戻れそうにもないと。
お金を稼ぐ手段以外に体が疼くのだ。
その疼きを抑える為には男は必要で、そして母のような人間が出来上がる。
妹ももしかしたら何処かで僕のような経験を済ませているのだろうか?
だからあんなにも男に狂ったように毎夜毎夜自分を慰めているのかな?
僕はその輪に入ろうとしている。
心の奥底では否定しながらも、内側に吐き出された自分以外の熱に浮かされながら、僕の意識は押し流されるように白く染められていった。
◇
「あー、スッキリした。雫ちゃんサンキューな」
「アホ! 出しすぎだバカ! 妊娠したら責任取ってもらうからな!」
「えー、途中から雫ちゃんも楽しんでたでしょ? そこ、いいのぉ♡って」
「言ってない」
「言ってたって」
「言ってないよ!」
熱った体からも熱が引き、僕はすっかり冷静さを取り戻して強気な態度で応戦した。
トイレットペーパーで顔や髪に付着した男の種を拭う。
けど一度こびりついた異臭はなかなか落ちずに僕を悩ませるのだった。
一度吐き出された種は、お腹に力を込めれば降りてくる。全てを書き出すのは難しいけど、後で専用のケア商品を買い足すべきだろう。ああ、余計な出費が嵩んでいく……今月は追ってる小説の新刊が出るのに最悪の気分だ。
「はいこれ、飲んでおいて」
「なにこれ?」
男から手渡されたのは錠剤だった。
「アフターピル。雫ちゃん、妊娠しないか気にしてたみたいだし、確実ってわけじゃないけど、確率は減るよ」
「こういう気遣いはできるのになんでレイプなんてするかなぁ。だったらゴムつけてよ。その方が安心でしょ」
「俺は生派なの。男を知らない雫ちゃんに是非生中出しの気持ちよさを伝えたい一心で頑張ったんだぞ? 雫ちゃんだって途中から自分でも腰振ってたじゃんか」
「まったく覚えがない」
「ま、いいけど。後これ、匂いが気になるならスプレー貸したげる」
「本当さぁ、なんでここまで用意がいいの?」
手渡されたのはバニラシトラスの香りの制汗スプレーだった。
軽く振って噴霧すれば、不思議と先程の異臭は収まった。普段香水をつけない僕がさせない香りだ。それを見守りつつ、男はズボンから携帯を取り出しこちらに向けた。
僕はなにをされるのか分からずに身構える。
もしかしていつの間にか撮られた写真で脅さられるのかと肝を冷やす。
「あとLIMEの連絡先交換しよ」
「なんで?」
「またシたくなった時、いつでも迎えにいけるようにだけど?」
「なんで僕がそんな事……無理矢理処女を奪ってマウント取った気?」
「なんだったら日々のお悩み相談にだってお答えするぞ? 普段から暇してるし」
「女の敵! クソ野郎!」
僕は手元の制汗スプレーを投げつけた。
妊娠させておいて認知せずに逃げ出す男が嫌いだ。
女が動けない時に働いて生活を支えるのは孕ませた男の責任だろ?
逃げんなよ! 子供の誕生を祝えよ! そして養えよ!
それもせずに逃げるな!
だったらそういう行為をするな!
僕は怒り心頭で己の正義をぶつけた。
結局LIME交換はした。
男は自分の竿の自信があるのか、僕が負けたと思っているようだがそんな事はない。
僕は男が言い逃れしないように管理する為に交換したのだ。
決してエッチ中気持ちよかった、またしたいと思ったからではない。
アフターケアもバッチリだし、ゴムつけるなら考えなくもないかなとは微塵も考えてないからな!
「じゃあね、雫ちゃん。連絡待ってるよ」
「速攻削除するから!」
そう言いなが男は僕を男子トイレに置き去りにして去った。
気遣いするなら最後までしてけよー。
その後ちょっとドキドキしながら脱出する羽目になったろ。
◇
結局その日は二限目に顔を出すことになった。
担任には生理が重くてトイレで項垂れて居たと虚偽の報告をして事なきを得る。
特に僕は普段から生理中にこの世の終わりみたいな顔をしてるから今回の言い訳は覿面だった。
「白峰さん、生きてる?」
「なんとか。呼吸はできてる」
「本当生理重そうだよねー。何かお手伝いできることがあれば言ってね?」
「うん、ありがとう」
女の辛さは女が一番よく理解してくれる。
隣の席の須藤さんが苦しそうな僕を見て手伝いしてあげると優しい声をかけてくれる。
天使かな?
ただ、今現在僕が項垂れてるのはレイプ後の不快感であり、それを共有してくれるかどうかはまったくの別問題だったりする。
「須藤さんてさ──」
自慰した事ある?
そう言いかけた時、なにを考えてるんだと僕はその言葉を飲み込んだ。
「なに?」
清純そうな顔立ちが僕に向けられた。
この子はそんなことしなさそうだ。
するはずが無い。そう思うことにした。そう願わずにはいられない。
すでにあの男に食い物にされてるとは思いたくなかった。
「ううん、なんでもない。なんで僕にそんなによくしてくれるのかなって、そんなふうに思って」
「そうね。白峰さんてちっちゃくて可愛いし妹ができたみたいで……ごめんなさい。私一人っ子でそう言うのに憧れてて」
彼女は白状しながら胸の前で手を合わせて小さく頭を下げた。
「僕一応お姉ちゃんなんですけど? 高校生なんですけど?」
「本当、ごめんなさい」
こっちこそよからぬ質問をしそうになってごめんなさいと心の中で謝罪する。
「うん、許します。許すもなにもお世話になってるのは僕だし」
「ありがとう白峰さん。あ、雫ちゃんて呼んでもいい?」
「うん、いいよ」
「私はあかりって呼んでくれると嬉しいな。女子校って初めてで、いまだに慣れなくて」
「僕も、中学まで教学だった」
「そっかーおそろいだ」
他愛もないことで会話が盛り上がり、僕は高校で初めて友達が出来た。
朝から嫌なことが発生したけど、それだけじゃないんだ。世界は残酷なだけじゃないってひかりちゃんと出会って痛感した。
その後授業を乗り越え、お昼を一緒にいただいて、残りの授業を終えて帰宅の時間になった。
「じゃあ私こっちだから」
「うん、また明日」
ひかりちゃんは帰り際にずっと携帯に視線を落として誰かからの連絡を待っている感じだった。それを確認すると上機嫌であの男子トイレに向かって歩いていく。
まさかと思った。
僕は違う方に歩いていきながらその後を追う。
そこでは、朝僕をレイプした男と楽しそうに談笑しながら男子トイレに入っていくひかりちゃんの姿があった。
僕はやっぱりこの世界はクソであるのだと断言した。