※この作品はR-18です。

入試倍率300倍がなんぼのもんじゃい!!こちとら感度3000倍やぞ!!   作:露木曽人

3 / 6
+3 21人のクラスで2人組を作れという

『んほおおお朝からしゅごいのおおお!!』

 

『お目覚めハッピーモーニングタイドおおお!!』

 

まだ能力が制御できなかった子供の頃、俺は結構な嫌われ者であると同時に、人気者だった。年少院はその名の通り、少年院にぶち込めない幼い子供を隔離監視教育するための施設だ。なので当然、思春期の男の子たちの中には夢精をしてしまう子がいる。

 

朝から感度3000倍の射精で叩き起こされるというのは中々にやばい光景だろう。施設のあちこちで朝から少年たちのハートマークが乱舞するような絶頂が木霊し、地獄絵図となる。だから俺は、はよ能力制御せいとよくしばかれたものだ。

 

他人の痛みを知れ、という名目で、自分を対象に個性を発動させられたこともある。お陰で俺は、感度3000倍の世界に耐性を得た。考えてもみてほしい。感度3000倍になった目では、降り注ぐ太陽光さえ劇物だ。

 

半径3km以内で発生した全ての音が余すことなく全て自分の耳に飛び込んできたら、脳がパンクする。酷い時には、パンツをはいているというただそれだけで布地が擦れて立っていられないほどにアヘってしまった。

 

何年も何年も、能力を維持したまま生活する訓練をしながら、徐々に徐々に、俺の体は感度3000倍の世界に適応していった。そうでなければ、ヒーローなんて目指してはいられなかっただろう。だから、今では感謝すらしている。

 

「君らにはこれからヴィラン組とヒーロー組に分かれて、2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

 

「勝敗のシステムはどうなりますか?」

 

「ぶっ飛ばしてもいいすんか?」

 

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか?」

 

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか?」

 

「このマントやばくない?」

 

「この人数だと1人余りますが」

 

「んんんん聖徳太子~!!」

 

さすがに1人だけはぶられるということはなかったようで、1チームだけヴィラングループが3人組になることになった。入学して以来、未だに友達のひとりもできずにいるぼっちの俺としてはありがたい限りだ。

 

「2対3ではヒーロー側が不利だと思うかもしれないが、ヒーローというのはいつだって不利な状況であろうと何だろうと戦わなければならないものさ!そう、相手がプラスワンなら、こっちはプラスウルトラだ!!」

 

ミスターヒーローオブヒーローであるオールマイトにそう言われてしまえば誰も反論はできない。相手がこちらより多いからといって、卑怯だぞ!何て言ってたらヒーローは務まらないからね。

 

模擬戦のルールは簡単。ヴィラン組が核兵器という設定の大道具を持っているから、ヒーロー組はそれを回収するかヴィラン組を全滅させること。ヴィラン組はそれを守るかヒーロー組を全滅させること。チーム分けはくじ引きでランダム。

 

「よろしく」

 

「ああ、大麻くんだっけか。よろしく頼む」

 

「チッ!クソドラッグにクソ眼鏡かよ!」

 

俺の引いたくじはD。爆豪くん、飯田くんとの3人組になった。

 

「クソザコども二匹ぶっ飛ばすなんぞ、俺ひとりで十分なんだ。足引っ張んじゃねえぞクソザコども」

 

「爆豪くん!これはチーム戦だ。それに、ヒーローがそんな言い方をするのはどうかと思うが!」

 

早速飯田くんと爆豪くんが言い争いを始めてしまった。委員長と不良では水と油なのだろう。俺?界面活性剤にはなれないよ。テーブルの上に置かれている折れたマドラーぐらいの存在感しかない男だから。

 

「最初の対戦相手はこいつらだァ!!Aコンビがヒーロー!!Dコンビがヴィランだ!!」

 

「早速だね」

 

「ああ!トップバッターだ!頑張ろうじゃないか!」

 

爆豪くんは何も言わずに対戦相手を睨んでいる。緑谷くんだっけか。やたらと仲が悪いみたいだが、同じ中学出身同士、ライバル意識でもあるのだろうか。

 

「ヴィランチームは先に入ってセッティングを5分後にヒーローチームが潜入でスタートする」

 

核爆弾、という設定の、黒いミサイルのようなものが鎮座していた。

 

「訓練とはいえヴィランになるのは心苦しいな。これを守ればいいのか」

 

「そうみたい」

 

「おい、デクは個性があるんだな?」

 

「あの怪力を見たろ?どうやらリスクが大きいようだが」

 

(この俺を騙してたのか...クソナードが!!)

 

試験開始と同時に、爆豪くんは作戦も立てずに飛び出していった。

 

「あっ!待ってくれ爆ご...」

 

「行っちゃったね」

 

どうする?と顔を見合わせていると、小型無線機で通信が入った。

 

『クソデクは俺が潰す!!ついでにあのクソ女もぶっ飛ばす!!テメエらは精々そいつを守ってやがれ!!ま、その必要もなくぶっ潰すがな!!』

 

「だ、そうだけど」

 

「勝手に飛び出しといて...何なのだ彼は!!もう!!」

 

強力な個性を持って生まれた子供というのは、得てして我が強く傲慢になりやすいものだ。爆豪くんは、施設に来たばかりの、個性に絶対の自信があった子供たちによく似ている。そういった子供たちは大抵半月もかからないうちに矯正されるものだが、娑婆の人間はそうはいかないことがほとんどだ。

 

あの性格で、ヒーロー免許が取得できるのだろうか、という疑問はあるが、案外彼も俺と同じように、野放しにしてはヴィランに傾倒しかねない、と判断され、入学を許可された組なのかもしれない。俺の勝手な推測だが。

 

「どうする?俺か飯田くんのどっちかが爆豪くんの援護に回る?」

 

「いや、それには及ぶまい。爆豪くんはナチュラルに悪いが今回の訓練に対しては的を得ていると思うよ」

 

とりあえず、障害物を片そう、という飯田くんのアイデアにより、このフロアにあった仮想核爆弾以外の全てのものを上のフロアへと運び出していく。ほとんど飯田くんがひとりで超スピードで片してくれたので助かった。

 

今回の敵である緑谷くんは身体強化型の個性、麗日さんは触れたものの重力を軽減し、浮かせる個性。ならば、彼女の武器となってしまうようなものは極力排除する。なるほど、いい作戦だ。

 

「そっか。なら、僕たちもヴィランに徹するべきかもしれないね」

 

「そうだね。これも飯田家の名に恥じぬ立派な人間となるための試練だと思うことにするよ。なりきろう!ヒーローになるために悪に染まれ!...グフフフ!!俺は至極悪いぞおー!!」

 

「ヒャーハッハッハ。俺らは最低最悪のワルだぜえ!」

 

真面目な子だなと思う。正義感が強く、いかにもな委員長気質といった性格ながら、やや天然のきらいあり。こういう子がひとりいるだけで、団体というのはまとまっていくものだ。無論、反発する人間も出てくるが。

 

(真面目や!)

 

「ん!?来たか麗日くん!」

 

「あっ!」

 

そして、柱の陰で思わず吹き出してしまった麗日さん。3000倍の感度の聴覚、もはやレーダーといってもよいそれは、彼女の存在を捉えていたが、実は俺気づいてましたアピールしてもしょうがないので黙っている。

 

「くんがひとりで来ることは爆豪くんが飛び出した時点でわかっていた!!触れた対象を浮かせてしまう個性。だから先程くん対策で、このフロアのものは全て片づけておいた!!これでくんの小細工はできない!!ぬかったなヒーロー!!フハハハハ!!」

 

「様に...なってる!」

 

何てほのぼのしていると、突然階下から、凄まじい勢いの爆発音が鳴り響き、震動がビルを襲った。

 

「?」

 

「きゃ!?」

 

「爆豪くん応答しろ!一体何をしたんだ!?」

 

小型無線機から聞こえてきた会話から推察するに、緑谷くんと爆豪くんには何らかの因縁があり、それが暴発した、といった感じだろうか。凄まじい火力だなと、吹っ飛ばされた建物の瓦礫を窓から見下ろし、思う。

 

あれが人間に向けられるわけか。緑谷くんも相当なプレッシャーだろうに、それでもヒーローになるためには、この程度の死の恐怖ぐらいは乗り越えていかなければならないわけだ。

 

(チャンス!格の回収で私たちの勝ち!!)

 

「させないぞヒーロー!!」

 

自分を浮かせて一気に仮想核爆弾に接近する彼女だが、フワフワ挙動の重力制御能力者では、高速移動の飯田君には部が悪かった。おまけに自分自身を浮かせるのは負担が大きいらしい。そういうものなのだろうか。まあ、個性は人それぞれだからな。

 

「君の個性は触れられない限り脅威ではない!このまま時間いっぱいまで粘らせてもらうぜ!!グヘヘヘヘ!!」

 

さっきから、ドッカンドッカンとんでもない爆発音が響き渡り、建物全体が地震かってレベルでグラグラ揺れている。恐らくあのふたりが本格的に戦っているのだろう。凄いな雄英。模擬戦でも半端じゃない。

 

とりあえず俺にできることは、核爆弾は飯田くんに任せて、彼の視界を塞がないよう注意しながら、ふたりの射線上に立っていることぐらいだ。麗日さんに、邪魔臭い、と思わせれば、っと。

 

「いくぞ麗日さん!」

 

「はい!」

 

「なんだ!?」

 

「あっぶな!」

 

床が、突然突き上がってきた。3000倍の反射神経と動体視力、瞬発力で咄嗟に飛び退かなければ、今頃俺は瓦礫と爆発に巻き込まれて死にかけていたかもしれない。本当に、半端じゃないな雄英は。一瞬の冷や汗を拭い、俺は爆弾を挟んで飯田君の反対側に立つ。

 

「飯田くん、大麻くん、ごめんね!即興必殺!!彗星ホームラン!!」

 

「ホームランではなくないかあああ!?」

 

障害物がないなら、作ればいいというわけだ。倒壊寸前の建物の瓦礫がそこかしこに散らばり、彼女は軽くした鉄骨をバット代わりに次々と瓦礫をこちらに撃ち出してくる。

 

「かいしゅ...きゃっ!?」

 

もし、俺か飯田君のどちらかひとりだけだったならば、彼女は無事、核爆弾を回収できたかもしれない。だが、爆弾を挟んで左右にいるふたり両方に向かって攻撃を仕掛ければ、必然的にその威力は半分になる。

 

「ごめんね」

 

「うひゃあああ!?」

 

素っ頓狂な悲鳴を上げて、核爆弾から滑り落ちる彼女。俺があらかじめ核兵器に仕掛けておいた罠だ。女性がこの核兵器に触れた瞬間、くすぐったさ、感度3000倍。そんな状態で核爆弾にだいしゅきホールド決めてしまったらどうなるか?こうなる。

 

「アヒャヒャヒャヒャ!?何これ、ちょ、やめれえ!ウヒャヒャヒャ!?」

 

「その、何というか...凄い個性だね!」

 

「飯田くんも凄かったよ。正統派に凄かった」

 

「ヒーローチーム、Lose!!」

 

オールマイト先生によるこちらの勝利宣言とともに、涙目になりながら笑い転げていた麗日さんが大人しくなり、ぐったりしながらゼエゼエと息を荒げる。性感3000倍にしなかったのは、さすがにそれをやったら明日から学校にいられなくなりそうだったからだ。

 

ようやくくすぐったさから解放され、あられもない姿で涙目になりながら、大きく呼吸をしているせいで胸を上下させている姿は、やや倒錯的と言えなくもない。

 

『なんか...エロっちいな!』

 

『最低ですわ!!』

 

世の中には、くすぐりフェチという人種もいるらしいからな。世界は広い。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。