※この作品はR-18です。

入試倍率300倍がなんぼのもんじゃい!!こちとら感度3000倍やぞ!!   作:露木曽人

4 / 6
+4 まだ友達とは呼べないかもだけど

「麗日さん、その、大丈夫かい?」

 

「ひゃい...」

 

限界を超える重力制御を行使してしまうと、体に負担がかかり吐いてしまう彼女だが、どうやら感度3000倍!!の衝撃で、体がそれどころではなくなってしまったようで、今回演習場に吐しゃ物を撒き散らす悲劇は避けられたようだ。

 

「はー...笑い時ぬかと思った」

 

「本物のヴィランとの戦闘だったら、そのまま本当に笑い死にさせられたかもしれないね」

 

俺の呟きに、ごくり、と彼女の喉が鳴る。これは演習だから助かった。本物のヒーローになったら、今ので殺されていてもおかしくはなかったのだ。飯田くんもそれを実感したのだろう。神妙な顔をしている。

 

「勝ったにせよ負けたにせよ、振り返ってこそ経験ってのは活きるんだ!」

 

そして、死んでしまったら振り返ることもできない。オールマイトの言葉に、皆が頷いているが、彼らはまだ本当の意味で理解してはいないのだろう。ヒーローになったら、ヴィランに殺されちゃうことだって普通にあるんだ、ってこと。

 

「そんなわけで、今戦のベストは飯田少年だ!何故かわかる人!」

 

「はいオールマイト先生。それは飯田さんが一番状況設定に適応していたからです」

 

八百万さんだっけ。女性版飯田くんみたいな真面目さを持つ彼女の開設に、皆が耳を傾ける。私怨丸出しの独断専行の挙げ句、建物が壊れようが何しようがお構いなしに暴れ回っていた爆豪くんは論外として、緑谷くんも両腕吹っ飛ばして一時的に再起不能。相澤先生が怒るよ?

 

麗日さんはまあ...あの飯田君の真面目ヴィランっぷりには俺も吹き出してしまいそうになったので、何も言えない。ただ、誤爆の可能性がある核兵器の取り扱いが軽すぎたのは確かだ。

 

「相手への対策をこなし、核の争奪をきちんと想定していたからこそ、飯田さんは最後対応に遅れた。そしてその遅れは、飯田さんのサポートに終始徹し続けていた大麻さんが見事に埋め合わせた。だからこその勝利ですわ」

 

凄いな、彼女。まだ学生の身で、そこまで冷静に状況を分析できるなんて、中々難しいだろうに。お陰でオールマイト先生がもう言うことがなくなって困ってしまっているようだ。

 

「ま、まあ飯田少年もまだ固すぎる節はあったりするわけだが、まあ正解だよ!!くうー!!」

 

模擬戦終了後。オールマイトは保健室に搬送された緑谷くんのところへ行き、俺たちは着替えて教室へ。そのまま午後の授業を終えて、放課後。

 

「みんな、よければなんだが、今日の訓練の反省会をやらないか?もちろん、他に用がある人は無理にとは言わないが」

 

「賛せーい!」

 

「いいな!やるか!」

 

そのまま解散、にはならず、飯田くんの発案により、模擬戦の反省会をやることになった。参加しない理由もないので、残る。何せ、ヒーローコスチュームに身を包んでの、初の実戦形式の授業だったのだ。誰もが興奮し、盛り上がっている。

 

そりゃそうだろう。ヒーローは戦ってなんぼの商売だ。今はまだ、死の危険や恐怖というものまではカリキュラムに含まれていないようだが、女性ヒーローがヴィランによる強姦殺人の被害に遭うことはさほど珍しいことではない。

 

むしろ殺してもらえたならまだいい方で、強力な個性を持った子供を配合するための母体として闇市場で取り引きされることだって珍しいことではないのだそうだ。俺は男だから関係ないし、と思う奴は、精子バンクが何のためにあるかを思い出すとよい。

 

「なあなあ、お前、大麻っつったっけ?すげー能力だったな!」

 

「ありがとう」

 

「いいなー!!羨ましいなー!!俺もお前みたいな個性だったら人生バラ色だったかもしれねーのに!!」

 

峰田くん、といったか。思春期男子の無邪気な欲望が、ものの見事に地雷を踏み抜いてくるのは珍しいことではない。施設にいた頃からそうだったのだ。女をエロい目に遭わせ放題じゃん!!羨ましい!!と。

 

「でもほら、バラって結構トゲがあるから」

 

「エロスのためならいくらでもトゲに刺されて本望だっ!!」

 

とはいえ、ここで彼に激昂したり、八つ当たりしてもしょうがない。悪意がないなら何をやってもいいとは言わないが、知らなかった相手に知らせなかった奴が一方的にキレても見苦しいだけだ。そもそも、今更この程度で何を思うような繊細な感性など残ってないし。

 

しかし彼、ここまで欲望があけすけだとかえって凄いなと思う反面、評価は大丈夫なのだろうかと心配になってしまう。爆豪くんといい峰田くんといい、ヒーローを志望するならもう少し外面を取り繕うということを覚えた方がよいのではないかと思うのだが、まあ、俺が口出しをすることではないか。

 

ああでもないこうでもないと話をしているうちに、やがて緑谷くんが戻ってきた。リカバリーガールの力をもってしても、全快復までにはしばらく時間がかかるそうだ。となると、彼とやりあう際には痛覚を3000倍にしてやれば簡単に...いかん、殺す気か。

 

「そろそろ帰るか―」

 

「ゲーセン寄ってく?」

 

「俺ラーメン」

 

日も傾いてきたので、反省会はお開きになった。思い思いにバラバラに帰っていく同級生たちとも、少しだけ打ち解けられたように思う。

 

「俺も、一緒に行っていい?」

 

「何言ってんだよ、いいに決まってんだろ!」

 

「何ラーメン行く?やっぱジロー?」

 

拝啓、天国(意味深)にいる父さん、母さん、お元気(意味深)ですか?俺は人生で生まれて初めて、同級生たちと学校帰りにラーメンを食べることになりました。

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