入試倍率300倍がなんぼのもんじゃい!!こちとら感度3000倍やぞ!! 作:露木曽人
委員長を決めたり、マスコミが学校の敷地内に侵入してきたり、その一件で生徒の避難誘導に大活躍した飯田くんが委員長になる予定だった緑谷くんから男子委員長に推薦されたりと、アレコレと賑やかな日常が続く雄英生活にも慣れてきた頃。
「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもうひとりの三人体制で見ることになった」
「何するんですか?」
「災害水難なんでもござれ。レスキュー訓練だ」
スペースヒーロー、13号。ブラックホールを自由自在に操る、雄英勤務の教師のひとり。彼が受け持っているのは、レスキュー部門だ。ヒーローの中でも人命救助に重きを置くかのヒーローが監修した、ありとあらゆる災害や事故に対応するための訓練施設。
それが嘘の災害や事故ルーム、略してUSJ。あまりにも大規模すぎるこの施設はヒーロー科の子供たちの教育のためは勿論のこと、新人ヒーローやサイドキックなどの研修のためにも外部利用されることもあるんだとか。
「皆さんご存知とは思いますが、僕の個性はブラックホール。どんなものでも吸い込んで塵にしてしまいます」
「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!!」
「ええ。しかし、簡単に人を殺せる力です」
13号先生の真剣な言葉に、皆が耳を傾ける。
「みんなの中にもそういう個性がいるでしょう?超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。しかし一歩間違えれば、容易に人を殺せる行きすぎた個性を我々が持っていることを、忘れないでください」
容易に人を殺せる力。生まれた時に母親を廃人しかけ、父親を狂わせ子殺しに走らせ、そしてそんな父親さえも発狂させた俺の耳には痛い話だ。
「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では心機一転!人命のために個性をどう活用するかと学んでいきましょう!君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」
13号先生の言葉に、みんなが拍手喝采。もちろん、俺も拍手。さすが、日本一のヒーロー養成学校の教師。言葉の重みが違う。何て、盛り上がっていた矢先、それは現れた。
「よーし、そんじゃまずは」
「先生、何か来ます!!」
「大麻?」
ビリビリと、3000倍になった直感を刺すような嫌な感じ。
「っ!一塊になって動くな!13号、生徒を守れ!」
「何だ?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「あれはヴィランだ」
空間に空いたブラックホールのような穴が闇となって溢れ出し、その中から異形の者たちが姿を現す。
「先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが」
「どこだよ?折角こんなに大衆引き連れて来たのにさ。子供を殺せば、来るのかな?」
突然のヴィランの襲来。悪意はいつだってどこからだって、何の前触れもなく襲ってくる。それを理解した生徒たちの間に広がる不安。
「初めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして。本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはず。ですが何か変更があったのでしょうか?まあそれとは関係なしに私の役目はこれ」
暗闇の化身のようなヴィランが言い終わる前に、爆豪くんと切島くんが殴り掛かる。
「危ない、危ない。生徒といえど、優秀な金の卵」
「駄目だ!!どきなさいふたりとも!!」
「私の役目はあなたたちを散らしてから嬲り殺す!」
一瞬で広がった闇のドーム。それに呑み込まれるよりも速く、ほんの一瞬だけ3000倍になった身体能力で飛び退く。
「消えた?」
「おや、一匹逃しましたか」
「障子くん、みんなは?」
「散り散りになってはいるが、この施設内にいる」
「クソ!!物理攻撃無効でワープって最悪の個性だぜおい!」
全員がバラバラに飛ばされたわけではないらしく、何人か残された生徒たちと、13号先生。
「委員長、君に託します。学校まで走ってこのことを伝えてください」
「な!?」
「警報器は赤外線式。先輩、いや、イレイザーヘッドが下で個性を消して回っているにも係わらず無作動なのは恐らく、それを妨害可能な個性がいて、即座に隠したのでしょう。となるとそれを見つけ出すより君が入った方が早い!」
「しかしクラスのみんなを置いていくなど委員長の風上にも」
「行けって非常口!外に出れば警報がある!!だからこいつらはこん中だけで事を起こしてんだろ?」
「お前の足でこのモヤを振り切れ!」
「手段がないとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますか!」
「バレても問題ないから語ったんでしょうが!ブラックホール!」
闇が、分裂して襲いかかってくる。だが13号先生のブラックホールに吸い込まれ、分散できない。
「なるほど、驚異的な個性です。しかし13号、あなたは災害救助で活躍するヒーロー。やはり戦闘経験は一般ヒーローに比べて半歩劣る!」
「ワープゲート!?」
なるほど、自分とブラックホールの間にワープゲートを作れば、吸引力はワープ先に転移させられる。そしてそれは、13号先生自身の背後だ。自分の生み出したブラックホールに自分で吸い込まれそうになり、13号先生が咄嗟に能力を解除する。
「飯田走れって!急げ!」
「クソオオオ!!」
絶叫しながら、扉に向かって駆け出す飯田くん。
「生意気だぞ眼鏡、消えンホオオオ!?」
「な!?」
「何アレ、気持ち悪ッ!?」
「な、何らこれは!?ぐっ!?このわらしがこんな、ぬふううう!?」
突然の出来事に、みんな驚いただろう。本当は使いたくなかった。でも、使わない理由がない。突然豹変し、縦横無尽に暴れ回る闇から避難しながら、みんながドン引きしている。本当はもうちょっとマイルドにやりたかったのだが、俺の個性は加減が利かないのだ。
何であれ、必ず3000倍。2999倍にも、3001倍にもできない。その代わりといっては何だが、発動条件はかなり緩い。相手に触れるか、一度降れたものに、次に触れたものがそうなるようトラップ式に仕掛けておくか...何てのは、ぶっちゃけ大人を安心させるための、表向きの嘘だ。
「皮膚感度、神経感度。それに、肉体の反応感度も増強してあげようか。感度3000倍。男に生まれてしまったことを、後悔しなよ」
「んほおおお!?」
男の射精は、ほんの数秒で終わる。だが3000倍に引き延ばされたあのヴィランは、普段の3000倍気持ちいい射精を、およそ3000のx秒、まあ、仮に彼の普段の射精が5秒だったと仮定するなら、15000秒、およそ体感時間で4時間ちょっともの間、延々続く快感に責め苛まれることとなる。
闇に呑まれ、普段の3000倍の量噴出しているであろう精子がクラスメイトたちから見えていないのは幸いだった。まずは一体、謎のワープヴィラン、行動不能。