この二人、何やら訳ありのようで……。
自身初のオリジナル作品。時期に合わせてバレンタインデーネタもとりあえずほんの少しだけ入れてみました。
スマホが何か通知を受け取ったらしい。その音に反応して、大樹はひとまずそれを取り、通知の内容を知って軽く舌打ちをした。
そしてほんのしばらくしてから自分が住むアパートの玄関のチャイムが鳴る。もう来やがった、あの送信って直前かよと思いつつ、居留守を使う訳にもいかないので仕方無しにドアを開ける。
「おー生きてっか〜バカ兄貴〜。飲もうぜ〜」
そこにいたのはスーツ姿に身を包んだ女性だ。髪型は襟足の長めなショートヘア。可愛らしくも美しさを兼ね備え、利発そうな雰囲気さえ漂わせる。一方の肩にはバッグを下げていて、その辺りだけを見ればいかにも出来るキャリアウーマンといった印象だが、その反対側の手にはコンビニかどこかで購入したであろう、アルコール飲料の缶と、ツマミ類が入れられたビニール袋がぶら下がっていた。
「……俺の都合も考えろよ」
「都合って何? 兄貴暇じゃん」
大樹のクレームに対し彼女はいかにも図々しい態度でそう返し、そしてそのまま彼の部屋の室内へと入って来てしまった。
「靴ぐらい揃えてくれってんだよ」
玄関に散らかったハイヒールの位置を整えながら大樹は文句をつけるものの、
「えー? めんどい」
と言って彼女は一人暮らし用のローテーブルの前に腰を降ろした。
「彩香さあ、お前毎回毎回いきなり押しかけるの止めてくんね?」
玄関から戻って来た大樹は自宅を突然訪問した女性、すなわち彩香に向かって言う。しかし、当の彩香はと言うと、
「いやいや、抜き打ちじゃないと兄貴の生活チェックするのに支障きたすじゃないっすか」
と返してきて、少しも悪びれている様子がない。
「いや、生活別々な妹にチェックされる必要ねえよな?」
そう言って大樹は慌てるようにノートPCのブラウザを閉じようとするが、マウスを握る手が彩香によって押さえられた。
「やっぱエロいの見てるー。良い歳して恥ずかしくないのー?」
大樹の背中から覆いかぶさりつつ、彼女はからかうように言った。これまでのやりとりから分かる通り、彩香は大樹の妹である。一度就職したものの、何故かしばらくしてその会社を退職してしまい、未だに定職につかずフラフラとしている兄の大樹とは対照的に、妹の彩香は名の知れた企業へと就職する事に成功し、順調に出世街道を歩んでいるようだ。
そんな女性が職場を離れてもきちんとしているかと言われるとそうでもないらしく、彩香はスーツの上着を脱いで相変わらず兄の背後から覆いかぶさるかのように抱きつき、いかにもかったるそうな口調で相手に絡んでいる。
「ねー、ウチらアラサーって自覚あるー? ねー?」
「こんなのにアラサーもアラフォーもアラフィフもねえんじゃね?」
「ま、みんな結局エロいの好きなんだよねえ……嫌いな人ってどういう人なんだろ?」
「いや、知らねえけど。酒どうすんだ?」
とにかく、大樹はPCに表示されている画像から話題を逸らしたいのかそう言ってみるものの、それを聞いた彩香は大樹の顔を覗き込むように、揶揄うような表情で逆質問を飛ばす。
「おやおや、偉そうにお酒を御所望ですかあ?」
「お前が勝手に持って来たんだよなあ?」
苛立つように言う大樹。そんな彼に動揺するでもなく、
「ま、そうなんだけど。ちょっと待ってね」
そう言って酒を取りに戻ろうとした彩香は途中で振り返り、
「あ、画面閉じないで。どんなの見てたか興味あるし」
と、ノートPCを指差しつつ言う。
「……クソが」
実の妹と成人向け画像を鑑賞する羽目になった大樹は悪態を吐いた。
「でもさー、こういう気が強いだけの女が後で滅茶苦茶に犯されまくるのって結構愉悦だよねー」
缶ビールを片手にノートPCの画面を眺めながら彩香がケラケラと笑っている。どうやら今二人が見ているのは有料の成人向け漫画のページらしい。
「お前、本っ当性格悪りいな」
「ま、生まれつきなんでー」
大樹にそう言われても楽しげにそう返されるだけ。まさに暖簾に腕押しだ。
「あー、結局ラストで救いもねーの。こんなの買った兄貴も人の事言えないじゃん」
ニヤつきながら画面を指差しながら言ってくる彩香に対し、大樹は気まずそうに答えた。
「ハズレ引いたんだって。こんなんだって知ってたら買わなかったよ」
「何で買ったの?」
彩香の問いだ。シンプルだが、当然の疑問だろう。
「いや、まあその、絵がな……」
大樹は彩香から目を逸らしたまま、言葉を濁す。それを聞いた彩香は画面を再び見つめ、
「確かにこの女の子の描き方エッロいよねえ」
とまずは言い、オッパイの描き方とかさあ、などと感想を続ける。すっかり諦めが付いたらしい大樹は、
「ま、広告で騙されたよな」
と呆れたように言った。途端、
「アッハ、単純バカがなんか言ってる!!」
と彩香が再び笑い出す。
「うっせーなー……」
苦笑いしつつ、そう呟いて大樹はビールをあおった。
取り敢えず、大樹の見ていた成人向けサイトをチェックするのは止める気になってくれたらしい。その後は彩香の仕事やお互いの身辺に関する話題に移行した。すると、酒も進んでいく。
その内、彩香の視線がとある方向を向いた。そこには明るいラッピングが施された薄い形状の箱がいくつか。今日はバレンタインデーであった。どうやら彩香の兄は、ある程度のチョコを貰える程度のヒエラルキーには居るらしい。
「やっぱチョコ、貰ってんねえ?」
視線を大樹へと戻した彩香は、何やら得体の知れない微笑みを浮かべる。
「どうせ義理だろ」
とだけ、大樹は言う。その表情は実につまらなそうだ。そんな返答を聞いて、
「じゃあこれツマミにしちゃおうよ。アタシもお腹空いててさあ」
と言いながら、彩香はチョコレートの封を開け始める。
「何も食ってねーでここ来たのかよ? てか、チョコがツマミ?」
大樹は呆れ顔だ。
「知らないの? チョコってウイスキーとかハイボールと合うんだよ?」
そう言いながらいかにも高級そうなチョコレートの包装を乱暴に開け、ハイボールの缶の封を切った。カシュ、という小気味の良い音が鳴る。そんな彼女の姿を眺めながら、持ってきた飲料の内、やけにハイボールの缶が多いのはこれを予想していたからかなどと考えていると、
「はいそれじゃもう一度、カンパーイ!」
と彩香が威勢良く言ってきたせいで彼の思考は断ち切られてしまった。
彩香が新たに開けたハイボールの缶を威勢よく飲んでいる。元々彼女は酒が強い方のようだが、やはりその消費が早い気がして大樹は心配になった。
「お前、もう少し飲むペース抑えたほうがいいんじゃねえか?」
すると、彩香は流し目で大樹を見ながら、
「いやあ、兄貴といるとテンション上がるからさあ、つい酒進んじゃうんだよねえ」
と、答えてきた。その態度には来宅当初と比べて色っぽさが備わりつつある。
「分かんねえな。お前なら飲み仲間くらい居そうなもんだけど……」
大樹は首を傾げ、そんな台詞を聞いた彩香はフッと小さく笑った。
「などと、散々女を誘惑してきた男が申しており……」
「してねーから。バイアスだからそれ」
妹の発言を受けて、大樹は呆れ気味に手を振りながら彼女から視線を外した。そんな兄を見た彩香はハイボールの缶を再び口に付けて、もう一口、二口と中身を飲み干す。
ぷはっ、と息をついた彩香は、
「じゃー、誘惑するのやめて貰っていいっすかあ? アタシ今結構困ってるんでえ」
と言った。相手を見つめるその目は座っている。そんな彼女の事を大樹は複雑そうな表情で見つめ返しながら、単純な問いを発する。
「困るって、何がよ?」
その途端、彩香は缶をテーブルに置く。コツン、と缶から強めの音がなった。そして、のそのそと四つ足で大樹に近づき、彼の肩に抱きつく。
「わざわざ言わせる気っすかあ? そういうのセクハラってんですよぉー……」
かすれた小さな声で静かに語りかけてくる彩香。しかしその声色からは怒りは感じられない。まるで囁くような、むしろ楽しげで艶やかさをも含んだ声であった。
彼女は大樹に自身の体を密着させたまま、腕に力を込める。
「こうされるのと同じなんすよおー。どうっすかぁー?」
相変わらずかすれるような声で彩香に囁かれ、彼女の体温に色めくものを覚えた大樹は内心の動揺を極力表面に出さないように気を遣いつつ、
「お前がこの話題振ったんだよな?」
とツッコミを入れるものの、彩香は彩香で、
「いやあー、記憶にございませんなあー」
と、あっさりかわしてしまう。そんな彼女は相変わらずのささやき声で、そこには甘ったるささえも含まれ始めていた。
「あんま私を困らせないで下さいよおー……。ヤっちゃイケナイ事ヤりたくなるのって困るじゃないっすかあー」
「そうやって変な反応しなけりゃ良いんじゃねえの?」
「無理っしょ。なんか今の兄貴、雰囲気エロいもん」
このままでは本当に妹に襲われてしまいそうだ。そう思った大樹は彩香から遠い方の腕を使い、彼女の肩に手をかけて突き放そうと試みる。すると、すぐさまその手首が彼女の片手で強く掴まれた。
大樹はしばらく固まり、そしてゆっくりと彩香の顔を見る。
「……何でそうやってすぐ避けようとすんの?」
その目付きからはすっかり酔いが払われていた。
「これって冗談だよね? 今日の私の本当の目的、ちゃんと分かってるよね?」
やっぱりこうなるか、と思って大樹の顔は引きつる。自分の前ではやたらとふざけ、揶揄うような態度をとる姿勢は、彼女にとって一種の仮面のようなものである事ぐらい十分に大樹は知っていた。
「兄貴は優しいからさあ、その辺り間違えないよね?」
その妹の眼力に耐えられず、大樹は目を逸らした。と、両手が彼の頬に添えられ、彼女の方へと半ば強引に向けさせられる。
「一応は信じてるわけそこんとこ。兄貴ならいつも通りだって。私を本気で怒らせたら知らないけどね……」
大樹の顔を覗き込みながら彩香は言い、そして彼の事をゆっくりと押し倒した。
「いきなり会社辞めて実家から逃げ出したりしてさあ」
実兄の事を見下ろしながら彩香は続ける。
「思い切り凹まされてさあ、微妙に腹立ったよね」
そして彼女の目付きが更に鋭くなる。
「良い歳して妹とセックスしてるの、バラされたいの?」
この二人が実の兄妹でありながらも、身体の関係まで持ってしまったのは、性というものを意識し始めてすぐであった。元々、喧嘩をする事もほとんど無い仲の良い兄妹なのだ。むしろ身体の関係を持つ程に仲が良すぎたと言っても良いのかもしれない。
世間的に行ってはならない行為だという事は当時も分かっていたが、それは極めて軽いもの、例えて言えば、全く自動車の来る様子がない閑散とした狭い交差点で赤信号を渡るような、当初はそんな感覚であった。
だが、その程度だった意識は年齢を重ねるにつれて重みを増していった。
しかし、それを決して忘れる事が出来なかったのもまた事実である。特に、彩香にとっては深刻で、自分が自立した後も、先に実家を出てしまった大樹の元へと度々押しかけ、身体を重ねるという関係が未だにズルズルと続いてしまっている。
「お前が自重してくれれば済む話だと思うんだけどな……」
上から見下ろしてくる妹を相手に大樹は困惑したような表情で言う。
「……で、さっきみたいなエロサイトで抜いてろって? 無理。兄貴がどうか知らないけど、アタシは生身の方がずっと良いもん」
「だったらさ、俺とか一番不味いだろ。生身の男ってのはいくらでも居るわけだからさあ……」
大樹はあくまで正論を言ったつもりであった。が、それも彩香に通用したのかどうか。
「そーだねー……実の兄貴となんてキモくてしょうがないよねえー……」
そんな事を言いつつ吐息も荒く、彩香は大樹の身体を弄り始めていた。どうやら彼女は実兄とのセックスに期待してすっかり興奮してしまっているらしい。
「血が繋がった兄妹でヤるなんて狂ってるもんねえ……」
彩香はそう一人ごちる。そして彼女は兄の服をはだけさせていくが、
「床、痛え」
と言う声が聞こえた。虚げな表情で彩香が顔を上げると、渋い表情の大樹が、
「フローリングでずっとはキツイって。せめてベッドに行こうぜ」
と言った。
「ま、それもそっか」
と呟いた彩香はまず自らが起き上がって移動し、大樹のベッドに寝そべった。その姿は誰が見ても扇情的であったろう。
(クッソエロく感じるの腹立つな)
大樹は自分の神経を苦々しく思った。そんな彼の苦悩が分かるのか、
「本当これ以上困らせられるの迷惑なんすよねー。これ以上……」
と呟く彩香の表情には、若干ながら暗さが走った。
「ダメな兄とセックスして子供孕んで、産んで、その子を夫婦として育てる……なにそのネットのダメ記事?」
ベッドに上半身を寝そべらせた姿勢で独りごちている。彼女の雰囲気は実に妖艶で、そんな妹に劣情を抱き、行為に及んだ事のある大樹なら尚更であろう。彼女の目元はほんのりと赤くなっていたが、果たしてそれはアルコールだけに由来するのだろうか。
そして、彼女のスーツのスカートはすっかりめくり上げられてショーツが丸出しであった。そこをよくよく見れば、彼女の下半身を包むストッキングも季節に合っているものとは思えない。だから大樹は聞く。
「お前のそれデニールいくつよ?」
「確か30くらいかな、この季節寒いよね」
大樹の知る限り、露骨に季節に合わない数字である。無論、男を誘惑したいと思わなければだが。だから彼は呆れてこんな事を言う。
「今の季節タイツ履くくらいでいいだろ?」
途端、
「やだよお」
そう言って彩香は覆いかぶさる大樹に抱き付き、そして口付けた。
柔らかい口付けが繰り返され、それだけでもお互いに頭の中が甘ったるいそれへと書き換えられそうになる。そして、ふと視線が合ったのち、彩香がフッと笑い、
「やっぱ、続けよ?」
とささやきながら、自らのシャツのボタンを外し始めた。
シャツのボタンに続いて、ブラのフロントホックも外す。
「まずさあ、アタシのオッパイ味わってみたくない?」
「え、うん、まあ……」
一瞬躊躇した兄の姿が面白かったのか、彩香はこんな台詞を吐く。
「あー、アタシのが小さいからって嫌がってるー」
「嫌がってねえよ! 大体、別に小さくねえじゃねえか!」
文句を垂れつつも、大樹は彩香の乳房をゆっくりと触り始めた。
「あ……」
この時点で彩香の体に暖かいものが広がり始める。彼女とて、兄以外の男との経験がない訳ではない。しかし、気持ちの問題なのだろうか、兄の触ってくる感触は他の男とは別次元だと常々思ってしまう。
そのうち、大樹の唇が彩香の乳首をパクリと咥え込んだ。
「んああっ……!」
それだけで痺れるような快感が走る。そんな感覚に耐えながらも、自身の乳房を吸う兄を愛おしそうに見つめ、その頭をゆっくりと撫でる。
その内興奮が昂ってきたのか、乳房どころか内股にさえ寂しさが宿るようになった。いい加減切ない、と思ったその直後、兄の体が起き上がった。
「下、抜いでくんね?」
いよいよ相手は自分のメスとしての中枢にアクセスするつもりのようだ。期待と不安がない混ぜになったかのような感情と共に、彩香はストッキングとショーツを綺麗に脱ぎ去ってしまう。すると、更に大樹は、
「股、開けろよ」
と、そう言った。
それに応じて彼女は素直に股間を広げる。ただし、その形態はM字開脚に近い物である。
そこで情欲に浸されて熟れてしまっていた陰唇に彼は吸い付いた。
「う、あ、あ、あああっ!!」
彼女は嬌声をあげる。
「ちゃんと洗ってるか? 微妙に臭えぞ」
「ざ、ざけ……おあああっ!!」
彼の頭を両手で押さえつけながら彼女は声を上げるが、相手は一顧だにせず、口唇愛撫を継続する。
「あああっ!! それっ!! 止めっ!!」
ガニ股で寝そべったような体勢で大樹の頭を両手で押さえつつ、彩香は慌て気味に叫ぶ。何せ、兄のクンニリングスはこれまで経験した誰よりも強烈なのである。まるで吸い付くようにその女陰に優しくしゃぶりつき、そこを犯して快楽を侵食させてくるだけでなく、クリトリスや周囲の性感帯をこれ以上なく絶妙に刺激する事で相手を悦楽の頂上へと追い込んでしまうのだ。
じっくりと優しく、しかし確実に快感を自身の肉体に押し込んで来る大樹の口唇愛撫。
「あおおおおうっ! おおおうっ!」
と、普段のキャリアウーマンとしての凛とした姿が嘘であるかのように、その体をのけ反らせ、相変わらず兄の頭をおさえて懸命に、動物のような低く獣のような声で喘ぐ彩香。しかし兄の攻撃は止まる気配を見せない。
女の下半身を優しくほぐし、快楽を浸み渡らせていくような兄の口唇愛撫は極めて危険で、一度知ってしまえばこれ無しでいられるかと思わずにいられない。とても優しく、相手を慈しむような前戯を施してくる彼は、その気になれば女たらしに化けることも出来るであろう。そんな彼を今だけは独占出来ている、というのが妹としての密かな自尊心を満たしていたりする。
「もおっ、やめてよおおおっ!!」
とうとう彩香は自分の足を押さえ込んでいる兄の腕を掴みながら叫ぶように懇願する。それ以上続けられれば身体がどうにかなってしまいそうだ。しかしその舌と唇を使った巧妙な刺激ははなかなか止まず、彼女のすっかり蕩けきってふやけた陰唇を蹂躙する。とうとう彩香は快感を堪えるように歯を食いしばり始めた。すると、ようやくクンニをやめてくれた彼は、その代わりにそれまでの前戯で溶けきったかのような彼女の蜜壺をさらに追い込むべく、ゆっくりと指を侵入させて穏やかにかき回し始めたのである。
「お、おおおおおっ!! 指、やめえっ!!」
「こういうとこ、相変わらず弱いのな」
「う、うるせっ……! あ、ああああああっ!!」
もはや彩香のそこは表側のみならず、その内側もが既にすっかりとふやけてしまっていた。感度がすっかり上がってしまっているその膣壁を優しく、しかも自分の好みを押さえたかのように捏ねるような、慈しむかのような手マンは彼女をよりたかぶらせてしまう。その弄り方は絶妙な程に彼女好みなのだが、兄妹が体を重ねてきた事だけがこんな結果をもたらしているとも思えない。
(そ、そういうとこ、直せよぉ!)
とは思うものの、これを別の女に再び仕掛けるようになったら洒落にならない。実にもどかしい。どうせなら自分の為だけに使ってくれたらとさえ思ってしまう。
そんな彩香に、更なる攻撃が追加された。指で蜜道をかき回しながら、陰核に大樹が吸い付き、唇と舌で愛撫を開始したのだ。
「ク、クリ……!? いやあああああっ!!」
とうとう彼女は悲鳴のような声をあげた。絶妙な手マンに加えて陰核へのクンニリングス、股間部に対する二重攻撃は熾烈極まりない。
「いい加減うるせーぞ。お隣だっているんだから」
大樹の冷えたような発言は無粋なのかもしれない。だが、そこまで彩香の肉体を追い込んでしまっているのはその大樹本人なのである。しかしながら、そこに気づくほどの余裕はこの時の彩香にあったのであろうか。
「ふううっ……! ふうううっ……!」
もはや大股を開いたまま、両手で懸命に口を抑えてどうにか声を抑えようとする彩香。強烈な快感が脳髄を侵食し、理性ももはや溶け切ってしまいそうである。
意識を飛ばしてしまいそうなほどに朦朧としてくると、先に身体の方が耐えきれなかったのだろう。彼が顔を離し、指を抜いた途端に陰唇がその奥底から震え、プシャ、と透明な液体を吹いた。
「ああっ!!」
まだも吐き出したりないと言った感じの彼女の女性器は更にビュル、と一筋の粘液をブルッとした痙攣と共にその濡れきった割れ目から吐き出す。
「相変わらず感度たけーな、おい」
ベッドの上でひくついている彩香を横目で見つめながら、粘液に浸された自分の指を赤い舌で舐めつつ、大樹は言った。
「……誰の、せいだよお……」
恥ずかしいのか、顔を両腕で隠しながら彩香はそう反発した。
大樹は妹が絶頂したのを見届けたからか、
「気分転換にはなったろ。そういやもう終電近いんじゃねーか? だからさっさと帰……」
と言いかけてベッドから離れようとしたところ、その腕が彩香によって掴まれていた。当の彩香は震えながら顔を伏せて荒い息を繰り返している。
「ま、待ってよ。ここまで来てもう無しとか、酷くない?」
彼女は焦っているのか、兄の腕を掴みながら切なそうに言った。
「兄貴が出してくれないとか、ヤなんだけど……」
大樹はしばらく無言で彩香の事を見つめていたが、やがて、
「じゃ、フェラでしてくんね?」
と言った。
「いきなり出すとか、きついわ」
よく見れば彼の股間はすっかり膨れ上がっていた。
おずおずと起き上がった彩香は、まるで吸い寄せられるように大樹の股間に自身の顔を寄せる。興奮で冷静さを失ったかのような表情で大樹のズボンのベルトを外し、それらを引き下ろして陰茎を露出させた。
すっかり虜になったかのような表情で彩香はその剛直をほんの少しばかり見つめていたが、やがてこらえ切れないといった様子でパクリとそれを咥え込んだ。
「……っ!」
一瞬、大樹の息が乱れたのが彩香にも聞き取れた。やはり自分のフェラチオが兄にとっても気持ちの良いものらしいという事を改めて把握した彼女は嬉しくなってしまい、つい激しい刺激をその口で剛直に対して加えてしまう。
「ちょ、強えって!!」
焦ったような大樹の声。しかし、それは彩香の精神的な充足感を満たすだけであった。
(ふふふ、やっぱ気持ちいいんだあ。だったらもっと良くしてあげなきゃ)
首を振って兄の陰茎に徹底的に刺激を加える。グポグポ、という音と共に、兄の荒い息遣いも聞こえる。相手が、ましてや自分の兄が快感を覚えているという感覚は彩香にとって特別な意味を持つ。その肉体も再び興奮し始めたらしく、股間を放置するのはままならなくなった。彼女は自分の片手をその淫裂に差し込み、かき回し始める。
「ふうっ、ふうっ、ふうっ……!」
その口で夢中に兄の剛直をしごいていると、大樹がその手を彼女の頭を押し除けるように添えて、
「くっ、彩香っ! 出るっ!!」
とうめいた。途端、彼女の口内には熱い液体が放たれる。
「……! ん、ぶ」
彩香は一気に大樹の剛直を口の奥深くまでのめり込ませ、放たれる白濁液を飲み込み始めた。大樹が出来る事と言えば射精の快感に耐えながらその様子を眺める事だけである。
「っは。濃いねえ。溜まってたね?」
ようやく口を自ら解放した彩香は嬉しそうに大樹に向かって言う。そんな彼女に対して、
「かもな」
とだけ大樹は答えた。
「ふうん……」
彩香はニヤつきながら大樹の陰茎を眺めるが、それは未だに硬度を保ったままだ。
「それで、これはどうするの?」
期待感満載の表情で聞く彩香。そして、
「いや、終わりだろ」
と、あっさり言う大樹。
「……っは!?」
兄の発言には思わず呆然とした表情を浮かべてしまう。
「出したじゃん、俺。お前の口で」
大樹は冷えた表情でそう言った。トンチを効かせたつもりだったらしい。だが、そんなものは彩香にとってバカらしい限りだ。
「……口でやらせたって、そういう意味かよ!!」
と彩香は低い声で言って立ち上がり、大樹の顔を覗き込んで、
「ぜってえ許せねえ……こっちで出すまで帰らねえから!!」
自身の下腹部に手を当てながら彼女は凄んだ。その淫らな下の口はすっかりとろけるどころか、飢えてよだれまで垂らしている。
「ここ放ったらかされるとか、シャレになんないんだけど……」
切なさが混ざった彩香の声。ここを訪れた当初から、彼女が望んでいるのはペニスをヴァギナに挿入させる、純粋なる交合である。小手先の誤魔化しでは決して無い。
「いや、やっぱ兄妹って……無しだろ?」
彩香の顔を見上げながら、未だ割り切れないような表情をした大樹は言う。そんな彼を見つめて、彩香はチッと舌打ちをする。
「ったく、誰が勝手に決めたルールなんだか……」
大樹に腰を寄せ、その未だ硬い剛直を片手に握る。もはや相手は特に抵抗もせず、無言で相手を見つめたままだ。
亀頭と陰唇が触れてクチュリ、という音が静かに鳴る。
「……挿れるから」
彩香は静かに言う。それに対して大樹は静かに目を伏せた。
それを肯定と受け取ったのか、彩香はその腰をゆっくりと沈め始める。飢えに飢えた蜜肉を掻き分けるようにして兄の肉棒が侵入してくる感触は、何物にも替えがたい快感を彼女にもたらした。
「はああっ……!」
兄の熱を伴った快感が自分の中へと侵入していく。
「……。……っ」
大樹もまたこらえるように挿入していく感覚に耐えていた。彼の経験を辿る限り、彩香の内部はどうも具合が良すぎるのだ。仮にもっと自分が欲望に忠実だったらと、ついそんな事を考えてしまう。
やがて、兄妹の密着は完了した。実に嬉しそうな表情で彩香は言う。
「気持ち良さそうじゃん」
それに対して大樹は無言であったが、やがて彩香の背中に腕を回し、力強く抱きしめる。
「んん、ああああ……」
彩香から甘ったるい声が上がった。自身の内部を埋める熱い剛直が、更に潜り込んできて、膣壁をより押し広げ、そして彼女の性感帯である蜜壺の最奥部さえ圧迫して奥深い快感を与えてくる。
天井を向いていた彩香はやがてゆっくりと顔を下に向けた。そこにあるのは自身を優しく見つめる兄の顔だ。目を細めた彼女はそんな兄の頬を両手で押さえ、そっと唇を重ねた。
「んっ、ちゅ、んんっ、んっぶ、ちゅる、んんん……」
対面座位で密着し、唇でも交わる。肉体的にも、精神的にも、その充足感は凄まじい。
(ねえ分かる!? こんなに気持ち良くって、一杯一杯にさせられちゃうの兄貴だけなんだよ!?)
彩香は心の中でそう叫んでいた。最早夢中で貪らざるを得ない相手が実兄というのは倫理的には極めて不味いが、既に彩香には兄を求める以外の手段など残されていないと言って良い。兄を忘れようとして他の男と付き合ってみた事があるものの、その尽くが失敗に終わっていたからだ。
やがてその顔が離れ、お互いに見つめるような姿勢になる。大樹から見ると、彩香の瞳は何故か震えているように感じられた。大樹はそんな彼女の頭をゆっくりと撫でる。
「どうしたんだよお、いきなりさあ……」
彩香はせめてもの軽口を吐いた。
「んー、なんかすげー可愛く見えてきちゃったからさ」
そう言う大樹に対して、
「なんだよ、普段可愛く無いってのかよお」
と、彩香が口を尖らせる。そんな彼女に対して茶々を入れた。
「実際、可愛くねーじゃん」
「んだコラ」
「うっ……」
大樹は軽くうめく。彩香がわざと膣を締め付けてきたのである。彼女の攻撃は極めて効果的であった。
「やめろって、それ」
「何で?」
「すぐ出るからだよ。今は彩香の膣内に居させろって」
恥ずかしそうに大樹は言う。途端、嬉しそうな顔をした彩香は、
「そっかそっか。それじゃ、好きなだけ居な?」
と言って兄の事を抱きしめた。
それからどれだけ時間が経っただろうか、対面座位の状態でお互いに抱きしめ合い、たまに身体を揺さぶって刺激を与え合うという行為が繰り返されていた。その間に交わされるのは先程のような、とても情事には似つかわしいと思えない気の置けない会話である。
「なんか、ボーっとしてきた……」
「分かるわー……」
緩やかな快感に浸りきっているのか、お互いに陶然としてきてしまったらしい。どうも膣壁から与えられる快感がさらにその蜜肉を次第に締め付けるように作用しているらしく、それによってジワリジワリとお互いに受ける快感が緩やかな上昇を続けている事もその理由であろう。
そんな最中、またも唇が自然と重なる。
「ちゅ、る、んんぅ……」
そしてこれ以上なく蕩けたような顔をした彩香に向かって大樹は言った。
「な、そろそろ、出して良いか?」
「……ん、え?」
快楽に浸りきって久しい彩香は兄の言った事が一瞬分からなかったらしい。
「だから、お前の膣内に出させろっての。どうせ最初から生なんだからよ」
整わない呼吸で必死そうな表情を見せる大樹。彩香はそんな彼にフワリと柔らかい微笑みを浮かべて、
「ん、薬飲んでるし、いーよ。アタシ、中に欲しいもん」
それを聞いて、大樹は彩香との結合を維持したまま、ゆっくりと彼女を寝そべらせる。相変わらずトロンとしたような表情で自分を見つめてくる妹の事を愛しく想いながら、大樹は激しく腰を振り始めた。
「あああああっ!? あああっ!?」
突然の激しい性感に思わず困惑してしまう彩香。元々、兄の剛直が自身の蜜壺と極めて相性が良いというのは自覚していた。しかし、今日に限ってはジックリと長時間にわたって結合を続け、その肉壁が蕩けるようになり、感度が向上してしまっていたというのがその感覚の強烈さに拍車をかけたようだ。
「おおおおっ!! おおおおおおっ!!」
これまでになく敏感になってしまった蜜壺の内側を、自分の中で最高と言える男の剛直が懸命に擦り、暴れ、虐めまくっているのだ。こんな悦楽を他で得る事など出来るだろうか。
しかし、この時の快感は下腹部だけに留まらなかった。大樹は乳房もさえも弄り回したのである。
「ああっ! そこはっ! 止めっ!」
だが大樹は聞こえなくなっているのか、口と両手を使った彩香の乳房に対する愛撫を止めようとしない。すでに興奮の余り乳房全体に血流が集まって、心なしか膨張しているように見えており、乳首に至っては普段とは明らかに異なる勃起状態に陥っていた。そんな部分を刺激されては堪らない。
「ねえ、やめっ! やめてええっ! アタシ、アタシィっ……!」
その瞬間、体を起こした大樹は彩香に口付ける。
(……っ!?)
快感に塗れた困惑の中、自身の胎内奥深くに粘性のある液体が脈動と共に流し込まれる感覚を覚える。兄の射精であった。そしてその事を理解するのは頭ではなく、身体の方が早かったのであろう。ゾクリとした感覚が一瞬だけ走った後、全身がこれ以上あるだろうかという快感を伴う痙攣に襲われた。
「ううううっ!! ううううううっ!!」
激しい痙攣を続ける彩香から、大樹は口だけを解放する。
「あああうっ!! ああああうっ!!」
激しい痙攣と共に思わず獣じみた咆哮が彩香の口から放たれる。そんな彼女の腕と足は、兄の身体を決して離さないよう、抱き締め続けていた。
(すごい気持ち良い……ねえ、兄貴はどう……?)
薄れ行きそうな意識の中、彩香はそんな事をぼんやりと思っていた。
「本っ当ヤバかったあ。気持ち良すぎだもん」
トロンとした表情で彩香はベッドに寝そべっていた。
「そりゃよかったな」
大樹はため息をつきつつそう返す。
「んだよ、褒めてんだから喜べよお」
彩香は寝転がり、兄の事を見上げながらそう言うが、
「妹に褒められてもなあ……」
と、大樹は兄として至極真っ当な返答をする。それを気にする様子を見せず、彩香は目を細めながら、
「だってさ、アタシも一応経験あるつもりだけど、あんなに気持ちよくしてくれる人いないよ? 兄貴は色んな女にあんな事してんだよね?」
と聞くと、
「別に色んな女って訳じゃ……」
と、大樹は言葉を濁す。それを聞いた途端、彩香は真顔になった。
「でも、そーゆー相手はいたりする訳でしょ、実際?」
彼女は大樹にそう問い、
「今はいねーよ」
と大樹は答えた。
「『今』は?」
彩香は兄の言葉を断じて聞き逃さなかった。そして、妹の追及を大樹は否定しなかった。
「結局、いたんじゃん」
彩香は不機嫌そうに言った。
翌朝に大樹が目を覚ますと、そこには朝食を用意している彩香の姿があった。
「あ、起きた? もう少しで出来るから待ってて?」
寝起きでボンヤリとした頭をどうにか働かせようとしている大樹とは対照的に、彩香はテキパキと調理を済ませてしまう。
「ほら、さっさと食べなって。朝食べとかないと頭に血回らないよ?」
出来上がった料理の前に兄を引きずり出しながら彩香は言う。
「味はどう?」
と彼女は聞いてくる。実際、食べてみるとなかなかに美味であるし、家庭を任せるのであれば問題はあるまい。
「美味いと思うけど」
と、大樹がそう言った途端、彩香がその顔に浮かべたのは柔らかく、華やかな笑顔であった。
が、この料理のスキル、もっと言えば、笑顔を自分以外に見せるのかと問われれば、それに対して彩香は断固として「ノー」と答えるのではあるまいか、大樹はそんな事を考えていた。
元々、男の入れ替わりの頻度が高いらしい、そんな事を実家の両親から不安そうな口調で大樹は聞かされていた。恐らく、自分の代わりになる男を求めていたのであろう。それが見つからないからこそ、昨日のようにここへと押しかけてくるのである。
そんな事を考えつつ、大樹が見つめていると、突然、「あっ」と言って自身のバッグを探り始める。大樹は何かと思っていたが、すぐに綺麗なラッピングに包まれた箱が現れた。
「これ、アタシから。一日遅れだけど……」
そう彩香は照れ臭そうに言い、
「酒のツマミとかはNGだからね? きちんとこれ単体で味わう事。オーケー?」
と言ってきた為、大樹は黙ってうなづいた。
彩香は今日、そのまま出勤するつもりのようだ。服装を整えおえた彼女は昨日の乱れっぷりが嘘のような、いかにも仕事の出来る女性に変貌を遂げていた。
「頼むからもうここへは来ないでくれな?」
そう言われて一瞬大樹を見ながら固まった彩香は、すぐに、
「却下だよお、こんな危ない男ほっとけないもん」
と言い、
「今後も定期的に抜きに来るから、よろしく」
と、手を振りながら大樹の部屋を出て行ってしまった。
ここまで来れば大樹にも理解せざるを得ない。結局、彼女は実兄の存在を忘れることなど出来ないままにここまで生きてきたのである。可能なら、兄と一生を添い遂げたい。そんな願望を抱いていたのだ。
どうやら自分がダメ人間のままでいても彩香が自分を諦める事は無いらしい。いや、諦めたくても諦められないのだろう。そして彼女の内心は揺らぎ、密かに苦しんでいるのである。その事をようやく察した彼は一人、ため息をついた。
「次の会社、決まった」
大樹は彩香に対して書類を見せながら言う。前回、彩香の襲撃があってからしばらく経って、またも彼女が訪れた時の事であった。
「ふうん……」
書類にさらりと目を通した彩香は、いかにもつまらなそうにそう一言だけ言った。
「反応薄いな、何だよ?」
不審げに大樹がそう問うと、彩香はいかにも悪戯じみた表情を浮かべて、
「……別にアタシが養ってもいいかなー、って思ってたから拍子抜けしたってだけでさ」
と言ってのける。
「ぜってーヤダ」
「んだよぉ。人の厚意は素直に受け取れよお」
膨れっ面で顔を逸らす大樹に対して、相変わらず悪戯じみた表情で追及をかける彩香。そんな彼女に対して大樹は振り返り、
「個人的なプライドなの! 妹に養われるとか情けねーだろ! これだけは譲れないの!」
とハッキリと言った。しかし、彼女は「ハッ」と嘲笑うかのような声を発した後、こう返す。
「大体さあ、兄貴って実力あるからその気になれば就職くらい割と楽に出来るよねえ? 何でそんな奴がフリーター気取りで遊んでたんだろうなって、それが疑問なんだけど?」
その問いには流石に一瞬ばかり言葉が詰まる。が、この際である。自身の思う正直な気持ちを言ってしまう事にした。
「普通にやっていける自信がなかったし、気楽だからってのがでかいけど、やっぱ俺がダメ人間だからお前には諦めて欲しかったんだよ。強いて言えば一応、お前の為って事」
そんな言葉を聞いた途端、彩香は殺気を放ち始め、
「……ざけんな」
と低い声でうめく。そして体を乗り出し、
「諦めて幸せになんかぜってーなれねーから。アタシにだってどうしても諦めたくない欲しい物くらいあるんだけど?」
と大樹を睨みながらそう言い切る。そんな彼女を大樹はしばらく見つめていたが、やがて軽くため息をついて、
「本っ当に重いよなお前」
とだけ、言った。それを聞いた途端、彩香は苦笑い、
「分かってるよ。でも、そんなアタシも可愛いでしょ?」
と、あえてなのか明るく言う。
「否定はしねえけど……」
そう言い、大樹は彼女の頭をそっと撫で、彩香はその感触に酔ったように目を細めた。
そんなやりとりがあってから、大樹が部屋にかけられたカレンダーの日付を指差して、
「この間聞いたけどさ、お前ココとココは休みって事で良いんだよな?」
と彩香に聞く。当の彩香は不審そうに、
「ん、まあよっぽどの事が無い限り休みだよ。なんかしつこいけど何が言いたいの?」
と言う。すると、大樹が何やら取り出して彩香に手渡した。それが何なのかを確かめ、そして流石の彩香も目を丸くする。
「…………えー!? ココって、えー!?」
「あ、面白えツラ」
「いや、そういうツラするでしょ! えー?」
不思議でもあるまい。日本有数のテーマパークのチケットを手渡されたのだ。しかもこの場合、一緒に行こうと言う意味だ。驚いても仕方が無い。そのうち彩香は何やら気付いたようで、こんな質問をする。
「あ、そういやあそこってスマホで入れなかった?」
すると、即座に大樹からはこんな返答が来る。
「スマホはマルチデー対応してねーよ」
「へーそうなんだ……えっ?」
またも兄を見て唖然とした彩香は、次にチケットを見て、それをよくよく観察してから、再び大樹の顔を見た。彼女は相変わらずの呆け顔である。
「な。一応、二日間のやつ。泊まる場所はまだ決めてないけど」
目を逸らしながらそう言った彼の顔は少しばかり赤い。珍しく固まってしまっていた彩香は、やがてにやけた顔を浮かべ、言う。
「んふふー……。妹のアタシをお泊まりデートに誘おうってんだー。兄貴のクセに」
ジリジリと近づいてくる彼女から顔を背けたまま、
「……うるっせえよ」
とだけ返す大樹。バカにされているとでも思ったのであろうか。
「違うって、めっちゃ嬉しいんだって。好きな人と二日間たっぷりデートなんだよお?」
彼女は彼の事を背後から力強く抱きしめた。
「やーっと本気になってくれた。ダメかもって思いかけてたんだけど……」
大樹の背後から聞こえてくるのはそんな彩香の震え声。彼は自身を抱き締める彼女の手を大切そうに掴み返した。
「でも何だってこんなの? 結構高いじゃん?」
しばらくして心理的に落ち着いたのか、チケットを見ながら彩香は言った。
「ま、せっかくだしな。こういうのもアリって思って」
「…………」
改めて彼女は抱きついたまま、そして彼の頭を撫で始めた。
「他の女にもやってたんでしょ? ここまでじゃなくても、似たような事。感心しませんなあー」
「全然やってなかった訳じゃ、無えけどよ」
そこで一瞬沈黙が走った後、
「マジで、危ねえ」
そう呟き、彩香は大樹に向かって言う。
「こういうの、もうやって良いのはアタシに対してだけだから。今までみたいには行かないよ?」
「……分かってるって」
相手がそう言ったのを聞き届けた彩香は、
「オッケー、ここは絶対仕事入れさせないし!」
と、チケットを掲げながら力強く言い、突如として話題を変えた。
「でさあ、新しい部屋探さない? 兄貴の部屋もアタシん家も二人暮らしには狭いっしょ?」
「んだよいきなり?」
今度は大樹が不審そうな表情をする番であった。彩香の方を振り返りながら、そう聞く。
「だって、兄貴的にもアリなんでしょ? だったら住もうよ、ね?」
もはや目を輝かせながらそう言う彩香。
「微妙にテンションたっけえな」
苦笑いしつつ前を向く大樹。
「あはっ、だってもう事実婚しかないじゃん。兄貴の嫁になるの夢だったしさあ」
再び彩香は大樹を力強く抱き締めた。
既に彩香の気持ちに抵抗するつもりなど大樹にも一切無くなってしまっていた。背後から抱き締められるのは物足りなかったのか、ゆっくりと彼女を自分の前方に持ってくる。しかし、それはそれで彩香にとっては不足があったようだ。彼女は蠱惑的な表情と共に、彼を引き倒し、自身の体を仰向けで床に寝転がした状態で下に置いた後、言った。
「子供は、そのうち……。でも今はともかく、一緒に、さ……」
もはやこの二人にとって、関係の是非を巡る茶番など不要であった。
熱い眼差しで大樹が言う。
「クッソ、何でよりによって妹が一番いい女なんだよ……」
それに対して、同じく熱い眼差しで彩香が答えた。
「その言葉そっくりそのまま返すね。何で一番いい男がアタシの兄なんだろ?」
やがて、室内には兄妹が愛し合う事を証明する甘い声が響き始めた。