※この作品はR-18です。

夢の隙間   作:伊駒辰葉

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前の続きです。
エロシーンはありません。


智美VS要(生徒会?) 2

「木崎さん。あなたは本当に諜報員なんですか?」

 

 周藤は報告書に目を通して顔を上げた。その目ははっきりと智美を嘲笑っている。智美は苛立ちながら頷いた。自分は木村に雇われた諜報員だ。その契約に従ってここにいる。その思いを込めて智美はだからなに、と目で問い掛けた。

 

 ため息をついて周藤は苦笑した。そこで智美の怒りはピークに達した。

 

「だから何だって言うんですかっ。わたしは生徒会長さんに言われたから部員のことを調べたんですよ!?」

「これは報告書とは言いません。絵日記というんです」

 

 きっぱりと周藤はそう告げた。その瞬間、智美は硬直した。だって今までご主人様は何も仰らなかった。心の中で呟く。周藤は笑いを堪えるように口許に手を当てている。要は疲れたように笑い、智美に背を向けてしまった。智美だけが取り残されたように打ちひしがれる。

 

 そんなことはない。今まで送った報告書がおかしいと言われたことはないのだ。智美は思い直して俯きかけていた顔を勢いよく上げた。いきなり報告書が飛んでくる。報告書の束は智美の顔に当たり、力なく床に落ちた。思わず閉じた目を開ける。周藤が笑っているのが見える。智美は唇をかんで床に落ちた報告書を拾い上げた。

 

「もういいですわ。木崎さん、ご苦労様でした。お帰りになってけっこうですわ」

 

 そう言いながら要はくるりと智美の方を向いた。冷ややかな微笑みが浮かんでいる。冷たい顔つきをしている要にも、その隣で嘲笑っている周藤にも何も言えない。智美は悔しさを胸に報告書を握り締めた。挨拶もせずに身を翻す。ドアの脇に立っていた野木が静かに扉を開ける。要するに出て行け、という意味だ。智美は歯軋りしながら生徒会室を走り出た。背後で盛大な音を立ててドアが閉じる。

 

「何よ!」

 

 振り返りざま、智美はそう叫んで生徒会室のドアを蹴飛ばした。役に立たないと言われるのは仕方ない。生徒会の望む情報を流さなかったからだ。絵美佳の弱みになるようなことをするつもりがなかったのだから、それはいい。だがばかにされるのは我慢ならない。智美は締め切られた扉に舌を突き出し、ついでにもう一発蹴りを入れた。

 

 握り締めた報告書は皺だらけになっていた。智美は情けない気分でそれを見下ろした。確かに大きなイラストがついているところといい、丸文字で並べている文章といい、指摘されたように絵日記を連想させるかも知れない。だが、決して自分は絵日記を記しているつもりなどなかった。そう思うと余計に腹立たしくなる。

 

 智美は怒りと悔しさと悲しみを同時に抱えつつ、廊下を歩いた。教室に戻ってとにかくお弁当を食べよう。そうすれば少しは落ち着くだろう。幸い、昼休憩の時間はまだたっぷり残っている。やはり休憩になってすぐに生徒会室に赴いたことだけは正解だった。それに。

 

 ふと立ち止まり智美はそれに、と口に出した。これでもう、生徒会との縁は切れたということではないだろうか。もういい、と言ったのは要自身だ。つまりそれは、もう要のために何かを探る必要性はないということではないのか。智美はそう考えて微かな笑みを浮かべた。

 

 これでもう、絵美佳の邪魔になる真似はしなくて済む。そう思うと心が軽くなった。報告書を丸めて握り直す。とりあえずこれはしまっておこう。もう、必要ないものなのだから。そう思いながら歩く智美の足取りはいつの間にか軽やかになっていた。




なんで気付かないのか、が問題ですね。
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