※この作品はR-18です。

夢の隙間   作:伊駒辰葉

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三分割のラストです。
ぁゃιぃやつにさらわれたぽい多輝が……。

あ、エロシーンはありません。


開かない鍵となくなったもの 3

 二人はそれから研究所の方に回った。だが珍しく研究所も無人だった。つまり、ここには誰もいないのだ。両親はもちろん、他の研究員たちも全ていないらしい。優一郎はため息をついて仕方なく二階の自室の下に回った。絵美佳は文句を言いながらもそんな優一郎について歩いた。

 

 庭の芝は綺麗に揃えられている。優一郎は周囲を見回して昇れそうな場所を探した。ちょうど、庭の隅にある倉庫の中に脚立が入っていたのを絵美佳が発見する。それを使って優一郎は一階の屋根に昇った。続いて自分の部屋の窓に近づく。屋根を伝っている間、絵美佳は庭で心配そうな顔をしていた。優一郎はそんな絵美佳に軽く手を振り、大丈夫だと告げた。

 

 狙いを定めて窓に肘を叩き込む。音を立てて優一郎の部屋の窓は割れた。優一郎は窓の割れた部分から腕を入れ、内側から鍵を開けた。窓から部屋に入る。優一郎の部屋は綺麗に片付いている。そこを横切り、優一郎は部屋を出て玄関に向かった。内側から鍵を外す。開いたドアの前に絵美佳がいた。

 

「良かったあ。やっぱりあんたと一緒に帰って正解だったわね」

 

 気軽に言いながら絵美佳はさっさと入ってくる。優一郎は苦笑してドアを閉めた。そして鍵部分をチェックする。鍵を変えた気配はない。なのにどうしてさっきは開かなかったのだろうか。優一郎はドアを再び開け、鍵だけを操作した。試しにカードキーを入れてみる。すると今度はスムーズに開錠できた。

 

 どういうことだろう。優一郎はドアとキーを見比べて首を捻った。さっきまでは何度やっても開かなかったのに、今はこんなに簡単に開錠できてしまう。何か特別な機能でも加えられているのだろうか。その割に、鍵の外観には全く変化はないのだ。

 

 しばらくの間、優一郎は玄関で腕組みをして考え込んでいた。絵美佳は既に自分の部屋にでも行っているのだろう。一階にはいないようだ。優一郎はため息をついてドアを閉じた。いま考えても仕方がない。今度、両親のどちらかがいる時に訊くしかないだろう。

 

 そう思いながら優一郎は靴を脱いで家に入った。とりあえずは着替えを鞄に詰める必要がある。優一郎が階段を上がろうとしたその時、奇妙な気配がした。怪訝に思いながら顔を上げる。階段の上には絵美佳が立っていた。

 

 呆然とした眼差しをしている。優一郎はそんな絵美佳の態度を不思議に思いながら階段を上がった。だが絵美佳は突っ立ったままだ。優一郎は途中で足を止めた。

 

「どうしたの」

 

 そうでも訊かなければ絵美佳は一歩も動きそうになかった。絵美佳は恐る恐るといった感じで後ろを振り返った。震えながらどこかを指している。優一郎は困惑して絵美佳と指先の示す方を見比べた。示されているのは絵美佳の部屋だ。

 

「いいから、来て」

 

 そう言いながら絵美佳はゆらりと身を翻した。優一郎は訝りながら絵美佳の後ろに従った。何があったのだろう。もしかしたらマシンがクラッシュしたのかな。のんびりと考えながら優一郎は促されるままに絵美佳の部屋に入った。

 

 ベッドの上に多輝がいる。それを見た瞬間、優一郎はその場に凍りついた。頭の中が真っ白になる。ベッドに横たわっているのは、学生服を着た男の姿の多輝なのだ。どうしてこんなところに。優一郎は心の中でそう呟いた。辛うじて口に出さずに済んだ言葉を胸の内で繰り返す。確かにあそこに隠した筈なのに。

 

「呼吸はしているみたいなのよ。浅いけど」

 

 絵美佳は静かに多輝に近づいた。だが優一郎は一歩も動けなかった。あり得ない。あそこに入れるのは自分だけなのだ。専用のパスコードの打ち込みと、網膜パターンの照合をして初めてあのドアは開く。地下二階でも特別の空間なのだ。

 

 とにかく確かめなければ。

 

 優一郎はいつの間にか蒼白になっていた。絵美佳が優一郎の異変に気付いた様子はない。困惑したような目で多輝を見下ろしているだけだ。優一郎はそんな絵美佳に声もかけず、部屋を駆け出した。

 

 学校に戻り、地下施設に向かう。全力で走ったために優一郎の呼吸は乱れきっていた。ドアについた鍵にもたれるようにして開錠する。ほどなくドアは開いた。声をかけてくる部員に適当に声を返し、優一郎は真っ直ぐに地下二階に向かった。誰が声をかけてきたのかも気にする余裕などなかった。早く確かめなければ。そのことだけに囚われる。

 

 地下二階に下りた優一郎はまず多輝の肉体を保存していた部屋に入った。何重にもなったロックを外す時間も異様に長く感じられる。優一郎は苛々しながらドアを開けた。素早くドアを閉め、部屋を見回す。

 

 部屋の中央には一つのカプセルが横たえてある。ここは多輝の肉体を保存するためだけに作られた部屋なのだ。優一郎は血走った目でカプセルを覗き込んだ。やっぱりない。特殊溶液に浮かんでいた筈の多輝の身体が消えてしまっている。そして保存しておいた筈の多輝の学生服もなくなっている。

 

 優一郎は次に特別室に入った。だがそこに多輝の姿はない。試しに電話を鳴らしてみるが、通じない。優一郎は愕然として肩を落とした。手から携帯電話が滑り落ちる。一体、どうしてこんなことになっているのだろう。多輝はどこに行ってしまったのだろう。もしかしたらもう、多輝は元の身体に戻ってしまったのだろうか。嫌な考えが次から次に浮かんでくる。

 

 次第に苛立ちが怒りに変わる。優一郎は鋭い目で多輝の部屋を見回した。勝手に逃げ出すなんて、まだまだ調整が足りていなかったということか。そう呟く優一郎の唇には深い嗤いが刻まれていた。




私事ですが……
こないだマシンがぶっ飛びまして。
ATOKの辞書が愉快なことになりました……。

あやしいをいきなりこの変換するとかどうなのだw
おれじゃねーぞw
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