エロはないです。
TS注意!
あらゆるデータを探っても多輝の情報は拾えなかった。疲れ果てたため息をつき、優一郎は椅子に深く寄りかかった。手伝ってくれていた果穂は机に伏せて眠ってしまっている。優一郎は息をついて通信機のスイッチを入れた。ほどなく保美が現れる。果穂を休ませてくれと頼み、優一郎は再び画面に向き合った。保美が静かに果穂を抱き上げる。なめくじと共に部屋を出た保美を横目に優一郎は一度は見たデータを洗い直す作業に入った。
どうして見つからないんだろう。優一郎は苛々しながらキーボードを叩いた。やはりどこにも多輝の影はない。だが一つだけ優一郎にも有益な情報があった。木村の機械人形についてだ。木村は一台のみの実験機を手がけているだけで、他の人形はまだ開発途中らしい。その情報を発見できたことだけが優一郎の慰めになった。
今日は斎姫は先に帰らせてある。もし、多輝がいきなり発見されたり転移してきたら鉢合わせになるかも知れない。それだけは避けたい。その思いで優一郎は斎姫だけに帰宅命令を出したのだ。哀しそうな斎姫の眼差しが心に引っかかっている。
だが今はとにかく集中しなければ。優一郎は頭を振って斎姫の幻影を追い出した。画面を睨みつける。今度はどんな方法で潜り込むべきか。木村のデータバンクを管理している者もまるっきりのばかではない。きっとこうしているうちに優一郎の尻尾をつかむだろう。その前に手は打たなければならないのだ。
「裏からが駄目なら、正面からあたるのも、手か」
木村財閥の研究所に直接乗り込む。そこまで考えて優一郎は苦笑した。一体、どうやってだ。自分の考えに呆れてしまう。多輝ならともかく、自分には得体の知れない場所に侵入する方法などない。かといって多輝を諦めるつもりもない。優一郎は深いため息をついて頭をかいた。どうも頭に血が昇っているらしい。そのことは自覚していたが、どうしても落ち着かないのだ。
不意に物音が聞こえる。優一郎は慌てて立ち上がった。金属音だったような気もする。何かを倒すような派手な音だった気もする。優一郎は椅子を蹴って私室から駆け出した。遅れて警報が鳴り響く。どうやら施設内に張ってあった警戒網に引っかかったらしい。優一郎は廊下を走って手当たり次第に研究室のドアを開けた。そして五番目のドアを開いて眼を見張る。
廊下から差し込んだ明かりに照らされていたのは無残に倒れたロッカーだった。そして部屋にあったパソコンもなぎ倒されている。天井からぶらさがっているのは壊れた蛍光灯だ。そしてその部屋の真ん中に誰かが倒れている。優一郎はロッカーを飛び越えてその誰かに駆け寄った。
「先輩!」
震える声をかけながら抱き起こす。優一郎はぐったりとしている身体を懸命に揺さぶった。だが反応がない。呼吸はある。けれど優一郎の声に全く応えようとしない。ぐったりと身体を優一郎の腕に預けてしまっている。
「部長!? どうしたんすか?」
背後から声がかかる。優一郎は振り返ってカレンを見上げた。そしてふと我に返る。どうやらカレンは警報に驚いて駆けつけたらしい。優一郎はため息をついてカレンに警報を止めるように指示した。すぐにカレンが身を翻す。入れ替わりで近づいてきた保美に優一郎は苦笑した。
「雨宮さん、戻られたんですね?」
保美は優しい微笑みを浮かべ、静かに頷いた。優一郎は安堵の息をつきながら保美に頷き返した。多輝を抱きかかえて立ち上がる。とにかく機体の様子をみなければ。そう思いながら優一郎は多輝を抱えて廊下に出た。
そして我に返る。多輝の服はあちこちが裂けてぼろぼろになっていた。そのことに訝りながらも優一郎は多輝を研究室に運んだ。とにかく見てみないことには話にならない。
保美の用意したベッドに多輝を横たえる。優一郎はおもむろに多輝のスカートをめくり上げた。その瞬間、硬直する。多輝の足の間には白い液体がこびりついていた。固まってしまった優一郎を気遣ったのか、保美が声をかける。だが優一郎の耳にはその声は届いていなかった。
「吉良部長? 大丈夫ですか?」
穏やかな保美の声が聞こえたのはしばらく経ってからだった。優一郎はああ、と声を発して振り返った。保美は黙って優一郎を見つめている。優一郎はふと多輝を見やった。震える手を伸ばして多輝の足を開かせる。すると閉じていた陰唇の間から白い液体がシーツに零れて落ちた。
「ちょっと、席を外してもらえるかい?」
「承知致しました」
保美は深々と一礼して研究室を出て行った。優一郎はそれを目で見送り、改めて多輝に向き直った。眠るように目を閉じている多輝の顔にそっと触れる。ぬくもりのある肌を撫で、優一郎はその手を握り締めた。
「……ダメージを、調べないと」
優一郎は固く閉じていた目を開き、多輝の足元に回った。とにかく冷静にならなければ。そう自分に言い聞かせる。でなければ怒りで我を失いそうだった。
再び多輝の足に手をかける。その瞬間、多輝がいきなり目を開けた。悲鳴を上げて優一郎の手を振り払う。優一郎は驚愕に息を飲んだ。怯えきった目をして多輝がベッドの端っこに後ずさりする。
性別なんてないようなものなのです(棒