※この作品はR-18です。

夢の隙間   作:伊駒辰葉

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TS警報!
エロはありません。


やっと再会だと思ったら 2

「先輩、もう大丈夫です。安心してください」

 

 小さな声で話しかけながら優一郎は多輝に近づこうとした。だが多輝は首を振って優一郎を激しく拒絶する。

 

「いやあ! 来ないで!」

 

 全身で拒絶されて優一郎は愕然となった。それほどまでに多輝は酷い目に合わされたのだろうか。そう思うと同時に怒りが込み上げてくる。

 

「先輩。僕です!」

「嫌!」

 

 腕をつかんだ優一郎の手を多輝が懸命に解こうとする。優一郎は唇を噛んで多輝の腕を強く引いた。悲鳴を上げた多輝がベッドに倒れる。激しくもがく多輝の身体を押さえつけ、優一郎は懸命に呼びかけた。だが多輝は嫌がるばかりで優一郎のことをまともに見ようとすらしない。

 

「先輩、僕です。優一郎です」

 

 肩をつかみ、優一郎は強く多輝を揺さぶった。多輝は泣きながら必死の面持ちで優一郎を拒絶している。

 

「お願い、離して!」

 

 優一郎は仕方なく多輝の肩を離した。多輝は弾かれたように勢いよくベッドから飛び降りる。だがこの研究室のドアは元々、優一郎のパスコードがなければ外からも内からも開けることは出来ない。案の定、ドアに取りすがった多輝は絶望的な顔をして振り返った。

 

「先輩。落ち着いてください。僕がわからないんですか?」

 

 出来るだけ優しく話し掛ける。だがそんな優一郎にも多輝は嫌がって首を振った。とても話が出来る状態ではない。優一郎はため息をついてベッドに腰を下ろした。多輝はじりじりと優一郎から離れていく。壁伝いに進んでいく多輝を見やり、優一郎は深いため息をついた。

 

 よほどのショックを受けたのだろうか。それとも別の要因で多輝はこうなってしまったのか。どのみち、調べなければはっきりしたことは判らない。だが多輝がこの状態ではどうすることも出来ない。強制的に眠らせればいいのかも知れないが、触れられない以上、それも出来ない。

 

「先輩。僕は危害を加えるようなまねはしません。落ち着くまで、離れて待ちましょう」

 

 諦めの息をついて優一郎はそう吐き出した。本当ならすぐさま多輝の機体のチェックをしたいところだ。苛立ちと怒りが心の奥底から込み上げてくる。多輝はそんな優一郎の言葉に少しは安心したのか、壁を伝ってその場にへたり込んだ。膝を抱えて頭を伏せる。

 

 しばらくそのまま時が過ぎた。優一郎は何をするでもなくぼんやりと多輝を眺めていた。多輝は壁際に座り込んだまま、動こうとしない。膝を抱えて身体を丸めている多輝の姿は、今までになくとても哀れに見えた。

 

 不意に微かな声が優一郎の耳に届く。多輝が何かを囁いているのだ。優一郎は目を細めて耳を澄ませた。出来るだけ多輝を刺激しないように耳を傾ける。

 

 助けて、立城。その呟きを耳にした瞬間、優一郎は音もなくその場に立ち上がった。気配に気付いた多輝が慌てたように頭を上げる。涙に濡れたその顔を見つめ、優一郎は薄く笑った。

 

「先輩、立城さんが戻るまで、眠りますか?」

「嫌!」

 

 そう叫んで多輝はゆらりと身体を起こした。破れた服もそのままに再び逃げの体勢に入る。だが優一郎は構わず多輝に歩み寄った。警戒しきっている多輝に無造作に手を伸ばす。疲れているのか、多輝は優一郎の手を避け損ねて腕を捕まれた。必死でもがく多輝を見下ろしている優一郎の顔からは表情が消え去っていた。

 

「先輩、おやすみなさい」

「いやあ! やめて! もう、あたしに触らないで!」

 

 腕の中で暴れる多輝を押さえつけ、優一郎はするりと手を伸ばした。臍を探り当てて指を入れる。だが多輝は動きを止めない。優一郎は目を見開いた。

 

「違う!?」

「止めて!」

 

 優一郎は突き飛ばされてその場でよろけた。その隙に腕に抱いていた多輝が逃げる。いや、正確には多輝ではない。多輝によく似た存在だ。優一郎はしばし呆然と彼女を見つめ、次いで声を上げて笑った。

 

「あははははははは。僕としたことが」

 

 ベッドまで逃げた彼女に優一郎は向き直った。息を整えて薄い笑みを浮かべる。

 

「水輝さん、なんの冗談なんですか? 機体の容姿を写したりして」

 

 相手が多輝でなければ遠慮することもない。優一郎は小さく笑いながら水輝に近づいた。ベッドは部屋の隅に置いてある。斜めに近づいた優一郎から逃げられないまま、水輝は焦ったように周囲を見回した。

 

「こっ、来ないでよ!」

「まさか、本気で僕に怯えてるんですか?」

 

 水輝になら人ならぬ力がある筈だ。こんなところで怯えていなくても空間を渡って逃げればいい。優一郎は水輝が悪い冗談で怯えている振りをしているのだと思った。だが水輝は懸命に優一郎の手を避けようとしている。伸ばした手を振り払われ、優一郎は訝りに眉を寄せた。水輝はベッドに這い上がって必死で壁まで逃げて行く。

 

「なるほど……」

 

 優一郎は薄く笑って携帯電話を取り出した。メモリに登録してあるナンバーをコールする。ほどなく保美と通信が繋がった。来るように頼むとすぐに保美は研究室に現れた。その間、ずっと水輝はベッドの上で丸くなってがたがたと震えていた。

 

「何の御用でしょう」

 

 入室してきた保美が穏やかに告げる。その視線は少しも揺るがない。あくまでも主人として優一郎を見つめているだけだ。優一郎は微かに笑って水輝を指差した。




この辺り、まだブレブレなのです……(汗)
メカ子好きな方ごめんなさい。
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