これでラストです。
順が都子の奇跡の帰還に涙し、翠が天空へと戻り、多輝は水輝に優一郎の元へと叩き帰された。優一郎は巴に新しい機体を譲り、絵美佳の股間からは男根が跡形もなく消えた。
そして、日常が戻ってくる。
たとえばぼろぼろになって戻った立城の姿を多輝が見たらどう思ったのかとか、都子が元の自分を見てどう思うかとか、気になることは色々ある。水輝は煙草を咥えて空を見上げていた。
「転入手続きは終わったよ」
微笑みながら告げたのは立城だ。水輝はゆらりと振り返ってため息をついた。立城は相変わらず無敵の微笑を浮かべているし、優一郎は嬉々として奈月の機体を製作中だという。絵美佳は巴の無事を喜んでいるし、巴もまあ、絵美佳と共にいられるならば本望だろう。
とりあえずは終わったのかな。水輝は心の中で呟いて肩を竦めて立城に笑みを返した。
「くそがき、相当嫌がってたんじゃないか?」
「でも他に手はないしね。その内に納得できると思うから」
気の毒だったのは多輝だろうか。結局、女の機体を使うしかなくなった多輝は、事実上、退学したことになった。そして入れ替わるように転入したのが、名前と姿を変えた多輝だった。ちなみに新しい名前は
残った問題はそのうちに片付くだろう。水輝は苦笑して立城の肩を小突いた。
「そんで? お前、時間差で戻った理由とかは言わないわけ?」
都子が夢から解放された後、しばらく立城は戻ってこなかった。立城が夢の世界から抜け出してきたのはあれから三日後だ。その間、水輝はじりじりしながら待っていた。戻った立城は見た目にもぼろぼろになっていて、その姿だけでも負担の大きさを物語っていた。
その時から今まで、立城は遅く戻った理由を一切、喋らなかった。水輝は夏の暑い日ざしにあぶられながら立城の答えを待った。校舎の下からは生徒たちの賑やかな声が聞こえてくる。もしかしたら声には連中の声も混ざっているのかも知れない。
屋上に張り巡らされていたフェンスに寄りかかり、立城が微かに笑う。水輝は煙草を吐き捨てて新しいものを咥えた。火を点けている間に立城が水輝のシャツに手を伸ばす。器用に煙草を一本だけ抜き、立城も同じように咥える。水輝は苦笑して立城の煙草にも火を近づけた。
「君が優一郎くんと何をしていたのかを言わないのと同じじゃないかな」
「……真顔で言うな。怖いぞ」
即座に切り返すと立城がくすくすと笑い出す。水輝はため息をついてフェンスに寄りかかった。隣にいる立城を横目に睨む。すると立城は笑いをおさめてごめん、と小声で詫びた。
「大丈夫。心配されるほどのことは何もしていないよ」
「ふうん」
夢の世界は広い。人の夢と夢は微かな壁を隔てて隣り合わせになっている。その壁を超える時の苦痛は、誰よりも水輝がよく知っていた。だからそれ以上、水輝は何も訊かなかった。立城ももう、何も言おうとしない。
きっと夢の世界でならと望んだんだろうけどな。水輝は心の中でそう呟いて空を見上げた。真っ青な空には雲一つない。輝く太陽に目を細め、水輝は口許に微かな嗤いを浮かべた。
終わり
ここまでお付き合いくださったかたがた、ありがとうございました!!
最後、蛇足だと思いますが人物紹介とか色々くっつきます。
要らんという方はとばしてください~。