エロシーンというかオナシーンがあります。
「力の使用には代償が伴います。先輩は無理をしすぎたんです」
そう言いながら優一郎は多輝の長い髪に唇を寄せた。その瞬間、多輝の身体に冷たいものが走った。一気に総毛立つ。だが優一郎は変わらず微笑みを浮かべながら多輝の髪を指に絡めた。
力の使用。多輝は息を殺しながら優一郎の言葉を心の中で繰り返した。確かに自分には人とは違う力があった。いつも目に見えない力を自然と使っていた。だからといって、なぜ自分の身体が機械の身体になってしまったのか。多輝はその意味を懸命に考えた。だが答えは出ない。
「先輩、安心してください。だいじょうぶですから」
耳元で声がする。多輝は慌てて俯きかけていた顔を上げた。いつの間にか間近に優一郎が迫っている。多輝は思わず声を上げて優一郎から飛び離れた。
「何がだ!」
「先輩は僕が責任を持って制御します。だから安心してください」
「なに、わけ判んないこと言ってやがる!」
多輝はそう喚き返してじりじりと後ろに下がった。何かが足に当たる。多輝は焦って振り返った。ベッドが真後ろにある。多輝は床を蹴ってベッドの上に飛び乗った。出来るだけ優一郎から離れるために壁際まで下がる。だが優一郎は笑顔でそんな多輝を見上げ、その場に立ったままだ。
「おれは帰る!」
そう叫んで多輝は勢いをつけてベッドから飛び降りた。一目散にドアを目指す。優一郎の脇をすり抜けた多輝は一気にドアまで辿り着いた。ドアノブに手をかける。だが何故かドアが開かない。
「先輩。無理はやめてください。その身体の調整はまだ終わってないんです」
背後から柔らかな声が聞こえてくる。優一郎はゆっくりと多輝に歩み寄った。多輝は必死でドアノブを捻った。どこにも鍵らしきものはないのに何故かドアは頑として開いてくれない。呻きながらドアと格闘していた多輝の真後ろに優一郎が迫る。多輝は気配を感じてびくりと身体を震わせた。
「でも安心してください。今日からの三連休を使って、つきっきりで身体を調整します。来週からは、学校にも出席できますよ」
優一郎は静かに多輝の耳に告げた。多輝はドアノブを握ったまま硬直した。冗談じゃない。そう呟く。だが優一郎は両腕を広げて多輝の身体を包み込むようにしてドアに手をあてた。背中に優一郎の身体が圧し掛かる。
「離せ!」
「先輩。暴れないで下さい。本当に無理は利かないんです。壊れてもしりませんよ?」
だが多輝は優一郎の拘束を何とか解こうと身体を捻った。いつもなら簡単にこんな拘束は振り解けるのに、どうしても力が出ない。多輝は反射的に周囲に漂う目に見えない力をかき集めようとした。だがその瞬間、激しい痛みが身体を貫く。多輝は低く呻いてドアにしがみついた。
「力はまだ無理です。ああ……」
優一郎の声が遠い。多輝はがくん、とその場に沈んでしまった。身体が全く言うことをきかない。それどころか耳慣れない音が体内から聞こえている。多輝は肩で息をしながらドアノブから手を離した。優一郎が困ったような顔をしてしゃがみこむ。だがそれすら多輝は見ていなかった。目を閉じて体内に生まれた痛みを堪える。
「ESPコントローラーが暴走して、電源回路がショートしたみたいですね。先輩、失礼します」
そう言ったかと思うと、優一郎はおもむろに多輝の身体を抱き上げた。多輝は急に身体が浮いたことに仰天し、焦って目を開けた。何とか優一郎の腕から逃れようとする。だが多輝が思うようには身体は動かない。握ったこぶしが力なく優一郎の胸を叩いただけだ。
「は、なせ! てめ、いいかげんに、しろよ!」
声を絞り出して多輝はそう喚いた。だが優一郎は黙って歩いている。そして多輝は静かにベッドに下ろされた。
「先輩、痛みはありますか?」
多輝のネグリジェを整えながら優一郎が訊ねる。心配そうな面持ちを見て多輝は思わず素直に頷いた。それから慌ててそんなことはない、と否定する。だが優一郎は多輝を気遣うような眼差しをしていた。
「い、いや、その、大丈夫だと思うし」
何でおれがこんなこと言ってるんだ。いてえよ、ほんとは。そう内心で言いながら多輝は全く違う言葉を口に乗せていた。体内に生まれた痛みはまだ去っていない。どこが、というはっきりとした痛みではないが、何かが身体の中で暴れている気がするのだ。
「先輩、いきなりこんな事態になって混乱してるとは思いますけど、今の先輩は機械なんです」
そう言いながら優一郎は多輝の隣に静かに腰を下ろした。ベッドが小さく上下する。多輝は黙って優一郎を見つめた。気遣うような眼差しを見ながら内心で首を傾げる。確かに今の自分はそうかも知れない。だがどうしてそうなっているんだろう。そんな疑問を覚えながら多輝は優一郎を黙って見つめていた。
「もしかして、先輩、手術前のこと、覚えてらっしゃらないんですか?」
意外そうな顔になった優一郎を見つめ、多輝は手術、と口の中で呟いた。そんなものを受けた覚えは全くない。多輝は素直にそのことを優一郎に伝えた。
「先輩は、力を無理に使いすぎて、崩壊しそうになったんです」
優一郎はそっと多輝の頭に手をあてがい、そう告げた。優しい手つきで多輝の髪を撫ぜ始める。そんな優一郎を見つめたまま、多輝は訝りに眉を寄せた。
「そんなことしたか? おれ」
確かおれは熱を出して気絶して。そう多輝が続けると優一郎はため息をついて首を横に振った。
「いいえ。力を無意識化にふるっていたつけがまわったとでも言うべきかもしれません」
そう言われて多輝は沈黙した。確かに自分は無意識に力を使っていた。そのことを思い出してみる。だがそもそも、どうして自分にこんな力があるのかも判っていないのだ。力がどんな意味をなすのか、そしてそれが与える影響を多輝は一切、考えたことはなかった。
そもそも、何でおれはこうなんだ? 多輝は心の中で自問した。人ではないことは判る。だが、それなら自分は何なのだろう。そう考えている間に優一郎は多輝の顔に指を触れた。ゆっくりと肌を撫でている。
「ドラゴンという存在について、聞いていますか?」
ドラゴン。優一郎が口にした言葉を多輝は小さく繰り返した。そして首を振る。優一郎は静かに頷いて多輝の目を覗き込んだ。視線が出会う。多輝は少しの間だけ優一郎を見つめ、我に返った。慌てて顔を逸らす。
「ドラゴンとは、高レベルの精神エネルギーの塊、とでもいうべき存在です」
それを聞いた多輝は目を見開いた。どこかで似たようなことを聞いたような気がする。多輝は心の中に閃いたものを必死でたぐり寄せた。かつて、誰かが言っていなかったか? 多輝は目を閉じて思い出した。よく知る人物の声が蘇ってくる。
それが君を構成するものの正体。力の流れや吹き溜まり、そういった目に見えないもので僕たちは構成されている。
そう言ったのはあいつだ。多輝はゆっくりと瞼を上げた。何故か胸が痛い。
「もう、おわかりですね? 先輩はその『ドラゴン』なんです」
「違う!」
多輝は胸を押さえてそう叫び返した。胸が痛くて辛い。何でこんなに苦しいのだろう。多輝は顔をしかめて優一郎を睨んでいた。だが優一郎は真剣な眼差しをしている。嘘を言っている顔ではない。それは判っていたが多輝は再び否定の言葉を口にした。
「違う。おれは、違う。絶対、違うっ」
多輝は続けざまにそう言い、胸を押さえて身体を折り曲げた。苦しい。息が詰まるほど胸が痛い。そんな多輝を見下ろしながら優一郎は静かに告げた。
「否定されるのは自由です。ですけど、事実は覆りません。先輩は『ドラゴン』です」
その瞬間、多輝は呻きを上げて自分の身体をきつく抱きしめた。違う。心の中で懸命に優一郎の言葉を否定する。そんな筈はない。人でないことは理解しているが、そうであってはいけないのだ。多輝は意味も判らないままで優一郎の言葉を否定していた。胸が余計に痛くなる。心のどこかが悲鳴を上げる。
感覚を開け。目の前にかかる、分厚いカーテンを開けろ。全身でおれを感じてみな。激しい快楽の果てにある、絶望を知れ。
心の奥底に封じられていた声が蘇ってくる。その途端、多輝は叫びを上げて頭を抱えた。なくしていた記憶が少しずつ蘇る。激しい快感までもが蘇ってくる。多輝は声を殺して身体を震わせた。生暖かい何かが足の間に生まれる。
「思い出しましたか?」
優一郎の声が遠い。多輝は懸命に身体の中に生まれた何かに耐えていた。身体の中にあった痛みと胸の痛みが、別の何かにすりかわる。射精してしまいそうなほどの快感が腹の底に渦巻いているのだ。
人を呪わば(ry
でしょうかw
多輝は前の話で頑張って男の子しようとしていたのですが、化けの皮が剥がれたという感じでしょうか。
まだキャラブレブレです。すみません(汗)