前の話の続きですが、エロシーンはないかも?
「う……る、せえ」
必死で息を吸い込み、多輝は掠れた声でそれだけを告げた。優一郎は微笑みながら多輝の背中を優しく撫ぜた。だがその手の動きが次第に緩慢になっていく。ネグリジェの薄い布地越しに指先で背中をなぞられ、多輝は思わず小さな悲鳴を上げた。生暖かい何かが内腿を伝う。
「先輩は女性だったはずです。先輩は本当は、女性なんです」
「ちが、う!」
だが身体の中にある疼きは否定しても収まらない。多輝は身体を丸めて震えていた。剥き出しになった股間に生暖かいものがまとわりつく。
「『ドラゴン』にとって、肉体は現実世界に下ろされた錨でしかありません。ですけど、性別は厳然として存在します」
優一郎の指が静かに多輝の背中を滑る。ネグリジェの裾を通り過ぎ、剥き出しになった腿へと指が滑っていく。多輝は声を殺して唇をかんだ。優一郎の言っていることを何とか聞き取ろうとする。だが、襲ってくる快感と断片的に蘇る記憶が多輝の意識を遮った。
「偽り続ければ、やがて、限界が来ます。限界を越えても、さらに偽り続ければ、肉体は崩壊します」
違う。多輝はぼんやりとした目を開けて唇だけで刻んだ。だが身体は優一郎の愛撫に敏感に反応している。指の微かな動きも感じ取り、さらに股間が熱くなる。多輝は必死で声を殺していた。
多輝の身体つきを確かめるように、優一郎の指が滑っていく。左の腿を撫で、ふくらはぎを撫でてから、今度は右足に指が移動する。多輝は離せ、と小さな声で告げた。気持ちいいことを認めるのがどうしても嫌だったのだ。
だが優一郎は悠然と笑いながら多輝を焦らしていく。
「だから僕は作ったんです。先輩のために、この身体を」
多輝の右足の付け根に触れた指が静かに動く。多輝は思わず息を飲んで肩越しに振り向いた。優一郎は嗤いながらネグリジェの裾をめくり上げている。
「ばっ、ばか! やめろ!」
そう叫んだ多輝は焦りながら優一郎の手首を握った。だが多輝の身体が疼いていることを知っているのか、優一郎は小さく笑って手を動かした。力ない多輝の手を解いてネグリジェを腰までめくり上げる。
「先輩の女性器は制御装置になっています」
「だっ、だから、見るなってば!」
平然と告げた言葉を否定することも忘れ、多輝は真っ赤になってネグリジェを押さえつけた。じりじりと優一郎から離れる。優一郎は不思議そうな顔をして首を傾げた。多輝は濡れきった股間を懸命に隠す。だが濡れた内腿は隠すことが出来なかった。
「先輩、もしかして『恥ずかしい』とか思ってらっしゃいます?」
それを聞いた多輝は真っ赤な顔で喚いた。
「あっ、当り前だろうが! 何が哀しくて股間なんか剥き出しにしなきゃなんねんだよ!」
優一郎は困った顔であごに手をあてた。どうやら何かを考えているらしい。多輝はその間によじれていたネグリジェを直した。膝まで隠してから顔を上げる。すると優一郎が真っ直ぐに多輝を見つめていた。
「すいません。もうしわけないんですけど、先輩の制御のためには女性器ユニットを露出してもらわなければならないんです」
「ぜえったい、嫌だ!」
とろりとした液体が喚いた拍子に足に流れてくる。多輝は思わず身体を震わせて息を殺した。自然とネグリジェを握り締める。
「困ったな」
そう言いながら優一郎は微かな笑みを浮かべた。多輝は壁際まで下がり、優一郎を睨みつけた。だが多輝の顔は赤い。身体の疼きがどうしても収まらないのだ。なんでこんなことに。そう心の中で呟いてみる。
「おれは、男同士で見せる趣味は、ねんだよ!」
噛み付くように喚くと優一郎がくすくすと笑い出した。多輝は憤然と優一郎を睨んだ。優一郎はやがて笑い声を止め、多輝に向き直った。その顔には極上の微笑みが浮かんでいる。どこかで見たことのある顔つきだ。多輝がそう思った時、優一郎がにっこりと笑ったまま告げた。
「先輩は女性ですから、問題ありません」
「おれは男だ!」
即座に言い返す。だが言った瞬間、多輝は哀しくなった。自分の腕で抱きしめている身体は、嫌というほど女性らしい。豊かな胸も、濡れた股間もだ。だが多輝は頭を強く振ってもう一度、おれは男だからな、と喚いた。
「女性器の露出を恥ずかしいと感じるのは、年頃の女性として正常な感覚です。大丈夫です。先輩は立派な女性ですよ」
すらすらと優一郎が解説する。多輝はかっとなって勢いよくその場に立ち上がった。だがすぐに膝が砕けてしまう。ベッドにへたり込んだ多輝は何とか頭を上げて呻き混じりに告げた。
「違うっ。おれは、女じゃないっ」
身体がそうであっても、男の筈だ。そうに決まっている。多輝は心の中でそう理由をつけた。だが優一郎は変わらず微笑みを浮かべている。笑顔で多輝の身体を指差し、次いで口を開く。
「もし、先輩が真に男性なら、この身体に適合することはなかったでしょう」
「だっ、だから、それでも違うんだよ! おれは、男なんだってば!」
やけくそ気味に叫びながら、多輝は壁に寄りかかった。身体が熱い。どんなに喚いていても、身体の疼きは収まらないのだ。多輝は歯軋りしてシーツをつかんだ。
ふと、顔を上げる。優一郎はベッドに腰掛けたままで薄く笑っていた。
「そんなに欲情して愛液を漏らしながら主張されても、全然説得力ありませんよ」
言われた途端に多輝の股間にまた生暖かいものが流れた。まるで優一郎の言葉そのものに反応しているようだ。多輝は焦りながら優一郎に背を向けた。試しに股間に手をあてがう。ある筈のペニスがない。変わりにあったのは濡れた女性器だった。指先に生ぬるい愛液がまとわりつく。多輝は泣きたくなりながらネグリジェから手を出した。
指先が濡れている。多輝は赤い顔をしながら周囲を見回した。手近にあったティッシュを抜いて指を拭く。だが微かに触れてしまったことで、多輝の身体は先ほどよりさらに疼いてしまった。
「絶対、違うからな。おれは女じゃないっ」
勢いよく言いながら多輝は振り返った。すると至近距離に優一郎がいた。いつの間に近づいてきたのだろう。だがそう考える間もなく多輝は慌てて優一郎から離れようとした。だが背中はすぐに壁に当たる。これ以上、下がることは出来ない。多輝はうろたえながら何とか退路を探そうとした。
これを書いた時は、彼女の処女を奪われたので仕方ないかと思ってました(過去形