ちょっとだけエロといえばエロですが、絡みははありません。
地下施設の最奥には一枚の金属の扉がある。優一郎は胸のポケットからカードを出した。ドア脇のスロットに入れて小型のスクリーンに指で文字を刻む。するとスロットの上部から小型カメラが現れた。
『網膜パターン確認。おはようございます、吉良優一郎様』
涼やかな女性の声がスピーカーを通して流れてくる。それと同時に静かな音を立ててドアが開いた。優一郎がドアをくぐると、ドアの中の暗かった通路に明かりが灯る。そして優一郎の背後で静かにドアが閉じた。
ロボット研究会の最奥のドアのさらに奥は地下二階に続く通路になっている。優一郎は狭い通路をゆっくりと歩いた。角を曲がると小さなエレベーターが現れる。優一郎はここでも網膜パターンの照合を行った。さきほどと同様、女性の声が響いてエレベーターの扉が開く。
優一郎を乗せたエレベーターは静かに降り始めた。やがて地下二階にたどり着く。エレベーターが開く。優一郎はゆっくりと歩き始めた。
今まで誰にも入らせたことのない、自分だけの空間。それが地下二階に広がる施設だ。地下二階に設えられているのは三つの部屋だ。一つは研究室。もう一つは優一郎の私室、そして最後の部屋は厳重なセキュリティに守られた部屋だ。地下二階は優一郎以外の誰にも入ることの出来ない施設なのだ。
研究室に入った優一郎は台に乗せられた機体を一つずつチェックした。最新型ボディの試作品が並んでいる。それぞれは外見だけは殆ど出来上がっている。優一郎は白衣のポケットから携帯端末を取り出した。機体の状態をチェックして端末に書き込んでいく。
研究室の奥には大きな透明のケースが並んでいる。機体のチェックを終えた優一郎は床に立てた状態で並んでいるケースに近づいた。ナンバーの振られたケースの中にはそれぞれ、一体ずつの機体が入っている。特殊な液体に浮かんだ状態の機体は、膝を抱えた格好で身体を丸めている。優一郎は若い番号順にそれぞれの機体の状態を確認した。機体を支えるコードに不具合がないかも確認する。いつだったか、いきなりコードが切断し、優一郎が知らない間に機体が破損したことがあるのだ。
全ての機体をチェックし、優一郎は研究室のさらに奥に進んだ。赤い瞳をした小さな人形が研究室の中をうろついている。優一郎は通りかかってお辞儀をした愛らしい人形に笑いかけた。完全に機械仕掛けのその人形は、優一郎の横を過ぎて歩いていく。優一郎はそんな人形を見送って再び歩き出した。
研究室の一番奥には一体の人形が横たわっている。美しい紺色の髪をした人形を優一郎はしばらく無言で眺めた。作った時、この人形の髪は間違いなく黒かった。そう作ったのだ。だが、人形は目覚めと同時にその髪の色を変えてしまった。そして瞳の色も、だ。
こんなことは初めてだった。優一郎は小さく笑って人形の横たわるベッドの傍に椅子を寄せた。静かに腰を下ろす。今朝、破損した女性器ユニットの修復は終了している。優一郎にとって、その程度の修復は大した作業にはならない。他の人形もその部分はよく壊してくれるからだ。……もっとも、優一郎が命じない限り、人形は壊れるまで快楽に耽ることはない。僅かでも異常が発生すると、伝達される快感が自動停止する仕組みになっている。つまり、身体に与える刺激が快感にならなくなるのだ。それゆえ、人形たちは優一郎の手を完全に離れて自慰に耽ることは出来ない。たとえ自分の意志で自慰をしているように見えても、実は優一郎の巧妙な操作を受けているに過ぎないのだ。
そして人形たちは必要に応じて優一郎に欲情するようにプログラムされている。優一郎は横たわる人形の胸に手を伸ばし、静かな微笑みを浮かべた。滑らかな肌は透けるように白い。元の容れ物に見劣りすることのないよう、細心の注意を払って作った逸品だ。優一郎は人形の出来栄えに改めてため息をついた。
情欲に溺れた時、この人形はどんな声で鳴くのだろう。優一郎は眠っている人形の肌に指を這わせた。抑えていた欲望が優一郎の中で頭をもたげる。今まで、見ているだけで欲情してしまったのは斎姫だけだった。優一郎はそのことを思い出しながら小さく笑った。この人形の身体は斎姫よりはるかに人に近く造ってある。なのに、その身体の中にはぎっしりと機械が詰まっている。優一郎は熱のこもった眼差しで人形の身体を眺め回した。
人形の胸の膨らみを軽く握る。人間の肉と相違ない感触が手の中にある。優一郎は興奮に潤んだ目をしながら人形の乳房を弄った。白い膨らみの頂点に薄紅色の乳首がある。指先で刺激すると人形が微かに動く。優一郎は小さく笑いながら人形の身体を弄り続けた。
人形たちの機能を完全に停止することはこれまでも可能だった。だがスリープ状態を維持することは出来なかった。これまでの人形たちは覚醒しているか、完全に沈黙しているかのどちらかの状態しか維持できなかったのだ。たとえば人間でいううたた寝の状態はあり得ない。逆に言えば、人形たちに睡眠は必要ないのだ。
自分の書いてるメカものては、人形は夢を見ない。
のですが……これは例外なので見てるぽいですw