が、ここにはそれぽいシーンはちょっとしかないです。
「あー、そいえば最近、吉良瀬が変わったのを飼ってるって噂があったなあ。もしかしてソレかな」
水輝はぴくりと眉を動かして頭を上げた。唇から流れていた血を腕で拭う。白いシャツが赤く染まる。
「さあ。知らないな」
「強情なコも嫌いじゃないけどさあ。でも、どっちかというと、従順なのが好みよ? オレ」
さらりと告げて順は一気に水輝との間を詰めた。驚愕に息を飲む水輝の襟首を乱暴につかむ。水輝は咳き込みながら順の腕を解こうとした。だが、頑として順の手は動かない。
順は小さく笑いながら水輝を引き起こした。壁に押さえつけたまま、喉元に刀をあてがう。水輝は無言で順を睨んだ。
「確か、ハンターとフェイクを消そうとしていたのはそっちだったよねえ? それが何でまたこんなことになってるのかな? その理由だけでも教えてくれたら離してあげてもいいよ」
そう言いながら順は水輝の喉に軽く刀を押し付けた。肌の裂ける音がして水輝の喉に傷が生まれる。首筋を流れる血を感じながら、水輝は鼻を鳴らして嗤った。
「何でおれがわざわざてめえに教えなきゃなんねえんだ。寝言は大概にしやがれ」
「水輝ちゃん。立場、判ってる? キミ、オレにとっ捕まってんだよ? 寝言なのはどっちかな?」
順はくすくす笑いながら刀を微かに引いた。凄まじい切れ味を誇る深紅の刀が水輝の首筋に深い切れ目を作る。水輝は歯軋りしながら右手を上げた。刀で赤い刀を遮る。青い刀と深紅のそれが触れ合った瞬間、間に小さな火花が生まれた。
「へえ。そのコもなかなか頑張るねえ。必死な顔してまあ」
感心したように言いながら順はあっさりと刀を退けた。水輝は息を止めて右手を素早く突き出した。だが届く一歩手前で順が刀を持ち上げる。順の首を目掛けて繰り出した水輝の刀は、あっけなく止められた。
「でも水輝ちゃんには見えないんだ? なるほどお。これは相当に傷ついてるねえ」
「大きなお世話だ」
そう言った瞬間、水輝は激しく咳き込んだ。口から血が落ちる。それを見ていた順は困ったように笑った。あーあ、と言いながら水輝の刀を無造作に払う。目を見張った水輝の手から、刀が床に転がり落ちた。
「これで丸腰? オレの勝ちかな」
水輝は深く息を吸って壁に片足をかけた。一気に肘を壁に叩き付け、身体全体で突進する。急な動きに反応できなかったのか、順は水輝から手を離して床に転がった。順に肩を叩き込んだ水輝は、咳き込みながら崩れていた体勢を整えた。肘を手で押さえる。どうやら左の肘は砕けてしまったらしい。水輝は痛みに顔をしかめて床に落ちていた刀を拾い上げた。
「誰が負けるか。ばーか」
口に溜まった血をじゅうたんに吐き捨てる。水輝がそう告げた後、静かな笑い声が部屋に響いた。床に転がっていた順が身軽に起き上がる。ふらつきながら立っていた水輝に真っ直ぐに近づき、順はにっこりと笑ってみせた。
「思ったより弱くなってるねえ。それじゃ、青龍神の名が泣いちゃうよ?」
「……てめえ」
笑いながら告げた順に水輝は再び右手を繰り出した。だが今度は掠りもしない。水輝の刀は宙を切り、順のいた空間を薙いだ。
「そうそう。キミたち、フェイクと一緒に面白いものを飼ってるんだってねえ」
明るく笑いながら順は無造作に水輝の左肩をつかんだ。片手で水輝を引きずり起こす。水輝は痛みに声にならない声を上げた。肘と同じように肩の骨が順の手の中で砕ける。順は笑いながら水輝を壁に押さえつけた。
「バレないと思ってたんだったら、それってオレのことをかなり侮ってると思うよ? 吉良瀬の情報経路も押さえてるんだよ、オレは。ま、一部分だけどね」
そう言いながら順は刀を持っていた手を軽く振った。刀の輪郭が滲み、あっという間に宝珠に形を変える。順は深く息を吸ってその宝珠を自分の胸に押し当てた。吐息をつきながら宝珠を身体に取り込んでいる。水輝は呆然とそんな順を見上げた。
そして順が両手で水輝の肩をつかむ。右の肩も砕かれ、水輝は思わず呻き声を上げた。
「水輝ちゃんの思考も筒抜けになってるんだけどさ。ああ、痛くてそんなことも気にしてらんないっか」
楽しそうに笑いながら順は水輝から手を離した。支えをなくし、水輝は壁を伝い落ちた。床にへたり込んでしまう。順は水輝が辛うじて握っていた刀にそっと手を伸ばした。焦って戻そうとした水輝の手から刀を奪い取ってしまう。
順の手の中で刀が甲高く空気を鳴らす。
「やめろ! そいつから手を離せ!」
「って言われるとやりたくなるのがオレの性分ってね」
かつて彼女は敵に捕らえられ、その身を汚された。過去に目の当たりにした光景が鮮やかに水輝の脳裏に蘇った。無残に壊された彼女を助けることが出来なかった辛い思いが一緒に蘇ってくる。
水輝は弾かれたように床を蹴った。順に勢いよく身体をぶつける。順は僅かに揺らいだが、水輝を笑いながら見下ろした。びくともしていない。逆に衝撃を受けて床に倒れたのは水輝の方だった。全身を貫く痛みが襲ってくる。
「お嬢ちゃん、気持ち良くさせてあげようねえ。ほら、凄くいいでしょ? おお、感度抜群じゃないの」
順の手の中で刀が一際、輝く。水輝が止める間もなく、刀は宝珠へと姿を変えた。順はにやにやと笑いながら手の中を見つめている。彼女の姿が見えているのだろう。興味深そうな視線が宝珠にまとわりついている。
「……殺す」
「そんな状態で言われてもねえ。あんま、怖くないし」
低く告げた水輝を笑い、順は静かに立ち上がった。片手で水輝の首をつかんで引きずり起こす。水輝は何とか自由になる足を振り上げたが、あっさりと空振りした。
絶対、殺す。水輝は身体の中で仄かに息づいている力をかき集めた。壁に乱暴に押さえつけられ、顔を上げる。水輝は唇を歪めて体内で膨れ上がった力を一気に爆発させようとした。後のことなど何一つ考えなかった。ただ、目の前の順を消せればそれでいい。そう思った。
だが力が破裂する寸前、順がゆらりと動いた。手にしていた宝珠を水輝の胸に押し付ける。順は青い宝珠をゆっくりと水輝の胸の中へと進めた。その瞬間、水輝の中に溜まっていた力が霧散する。水輝は声もなく仰け反った。
「お嬢ちゃん、いっちゃったねえ。あーあ、そんなよがらなくても」
淡々とした順の声に水輝は閉じかけていた目を開けた。圧倒的な何かが身体の中に侵入してくる。強烈な痛みに晒されながら、水輝はもう一度力を集めようとした。だがその間も順は宝珠を水輝に埋め込んでいく。
「そんなに水輝ちゃんがいいかねえ? いや、別に人の好みはそれぞれだけどさあ」
そう告げた順は水輝の胸に青宝珠を完全に埋め込んだ。何かが身体の中で暴れている。水輝は声を殺して歯軋りした。口の端から血が床に落ちていく。
「っと。そこで気絶されるとオレがつまんないっしょ? まだまだお楽しみはこれからなんだってば」
倒れかけた水輝の身体を順は腕で支えた。水輝は朦朧としかけた意識を必死で戻す。順は何かの歌を歌いながら水輝のシャツのボタンを外し始めた。
「……てめ、え……なに、考えてやがる……っ!」
「えー。楽しいこと」
銀の指輪を嵌めた順の指が剥き出しになった水輝の胸を撫でる。その途端に水輝の全身は粟立った。何とか順の手から逃れようと身体をひねる。だが実際の水輝は力なく抵抗しただけだった。殆ど力が入らなくなっているのだ。
「オレ、バイだから心配無用よ? あ、そいえば水輝ちゃんって受けだっけ? オレが攻めだからちょうどいいじゃん」
呑気に笑いながら順は水輝の乳首を指で撫ぜた。水輝は焦って自由になる足をばたつかせる。だが、それもすぐに順の足に押さえ込まれてしまった。
「お、れは、ノーマル、だっ!」
「だからさあ。そんなこと、どーでもいいじゃん。それに、ほら。水輝ちゃん、オトコノコと楽しいことやってたじゃん? オレが見てないとでも思った?」
そして順は再び歌い始めた。懐かしい唱歌だ。水輝は思わずその歌に耳を傾けた。いつだったか、順を消そうとしたことがある。その時にも確か、順は同じ歌を歌っていた。
一瞬、気を抜いた水輝の胸に順の指が潜り込む。途端に水輝は息を殺して身体を震わせた。
「痛みを快感に、だっけ? 水輝ちゃんも悪趣味だよねえ。ほら、あのコにどんなことしたのか自分で味わってみるといいよ」
順の指が胸の中に入ってくる。通常なら、他人に体内を触れられたら激しい痛みが襲ってくるのだ。だが、水輝は息をついただけだった。朦朧としかけていた意識が快楽に叩き起こされる。
「て、め……後で覚えてろよ」
「喋れるんだ、まだ。ふうーん」
順はそう告げて一気に水輝の胸の中に手を突っ込んだ。激しい快楽に襲われ、水輝は懸命に声を殺した。順の手が胸の中で何かを握る。それはさっきの青宝珠だった。それを感じ取った水輝は必死で順の腕を握ろうとした。だが、砕けた肩と肘は言うことを聞いてくれない。
「水輝ちゃん、囮だったんだねえ。そっか。あのコにオレと話をつけるように言われたんだ? で、正面突破? 素直だとは思うけど、今のキミにはちょっと無理だったんじゃないの?」
くすくすと笑いながら順は水輝の股間に手を伸ばした。触れられた瞬間、水輝はびくりと身体を震わせた。順の指は宝珠の中に侵入している。そして順の左手は水輝の股間をゆっくりと撫で回した。
さすがに順のセリフだけはちょっと弄りました。