エロシーンはないです。
だが水輝が飛んだ先には特殊な結界が敷かれていた。易々と通り抜けられる代わりに、侵入者の動きを制限する役目を持っていたのだ。
水輝は罠に嵌った。少女の囚われている場所に入ったと同時に身体が言うことをきかなくなってしまったのだ。それを嘲笑いながら少女を犯したのが……。
「あの日からオレは片目が見えなくなっているんだよ。まあ、さっきまでの水輝ちゃんも目が利かなかったみたいだけど? でもオレのはホントに潰れちゃってるんだよねえ」
そう言いながら順はくすくすと笑った。首輪から指を滑らせ、水輝の首筋をなぞる。だが水輝は順を睨みつけて身動き一つしなかった。
あの日、順は水輝の目の前で少女を汚した。水輝はそれを見ながら何も出来なかったのだ。最悪の屈辱を味わった水輝はその後に力を暴走させた。ただでさえ傷ついていたのだ。力のコントロールなど出来なかった。いや、それ以前に力を調整することなど考えなかった。ただ、目の前の敵を蹴散らすことだけを考えていた。それがどんな結果を導くかということは考えずに。
炸裂した強大な力は結界内にあった全てを翻弄した。水輝自身も無事では済まなかったのだ。
「都子があと数時間早く来たら、結果は違っていただろうけどねえ。生憎、都子の方はあいつに邪魔されていたから」
水輝が順と対峙している時、都子の相手をしていたのは立城だ。戦うことだけを目的に生かされている都子と対等に戦えたのは、やはり龍神の中でもトップに属する存在だけだ。
そして水輝はあの日の後、深い眠りについた。そうでなければ身体を保つことすら出来なかった。受けた傷が大きすぎたのだ。
「水輝ちゃんも大変だったろうけど、オレも無事では済まなかったんだよ? まあ、キミたちにしてみれば敵の心配なんてする方が可笑しいけどさあ」
順は一糸纏わぬ水輝の肌をゆっくりとなぞった。水輝は黙って順を睨む。そして左手を軽く持ち上げた。指を鳴らすと水輝の周囲の空気が甲高い音を立てる。瞬く間に水輝は服を纏っていた。不完全だった身体が安定する。水輝の身体から女性の要素が消えた。
「当り前だ。それを言うならお前たちもおれたちのことを気遣ったりはしないだろ。お前らのうちの誰が、死んだ奴らのことを悼む? 誰が傷ついた奴らの心配をする? お互い様だろうが」
低い声でそう吐き捨てた水輝は軽く頭を振った。長かった髪が一瞬で短くなる。
順の右目の部分には硝子玉のようなものが嵌っている。恐らく、ごく普通の人間が見たらそれが目に見えるのだろう。だが今の水輝にははっきりと順の目が潰れていることが見て取れた。順は水輝に触れていた手を下ろし、困ったように笑っている。
「確かにそうだねえ。あーあ。つまんないなあ。もう、おしまい?」
順の指先は赤くなっている。水輝は黙って順の手を見下ろした。順も自分の手をまじまじと見つめている。さっきまで水輝の体内に押し留められていた力が順の指先を灼いたのだ。しばらく黙っていた水輝はやがて軽く笑った。順の手を無造作につかむ。驚愕に目を見開いた順が、次の瞬間、呻き声を上げた。
「なるほどな。お前、おれの中にあいつを埋めただろう?」
順は顔をしかめて水輝の手を振り払った。水輝の握った手の形のままに順の手が赤くなっている。身体の内側から溢れそうなほどに力が高まっているのが自分でも判る。水輝は嗤いながら手を宙に差し伸べた。手首を軽く捻ると青白い炎が手の中に生まれる。
順を灼いた炎の正体は、恐らく体内に埋められた宝珠が発した力だ。少女の核とも言うべきそれが、今は自分の中にある。そのことを水輝ははっきりと感じ取っていた。手の中の炎が水輝の思いに応えるように揺らめく。
この二人は腐れ縁な感じです。
まあ他にもいるんですけどもー……。