カメラで映しまくられるのは仕様です。
多輝が自分の女性器ユニットを部品として目にしたのは初めてだ。優一郎には見慣れたものでも多輝には違う。自分の機体の一部だというより、珍しい機械でも見るような気分なのだろう。優一郎は苦笑しながら手際よく新しい部品を用意した。多輝がカメラに映った小さな部品を見止め、身体を起こしかける。だが優一郎は手を上げて多輝を制した。
「先輩が、もし興味があるなら、後で他の部員の娘のメンテに参加させてあげますから、今は動かないでください」
「べっ、別に興味なんて」
恐らく小さな部品はモニタでははっきりと見えなかったのだ。優一郎は赤くなって再び身体を横たえた多輝ににっこりと笑いかけた。すると途端に多輝の顔色がさらに赤くなる。目を逸らした多輝に笑いかけ、優一郎は部品の交換を行った。
順調に作業が進み、多輝の女性器ユニットは元通りになった。優一郎は実験台に多輝を残し、特別室のドアをくぐった。なめくじの体液で床が少し汚れている。シャワールームの汚れは拭けば落ちるが、じゅうたんはちょっと厄介だ。優一郎は眉を寄せて考えた。そして軽く手を打つ。確か粘膜を除去する特殊薬剤がある筈だ。優一郎は研究室に戻り、薬品棚に並ぶ試薬瓶から目当ての薬剤を選び出した。
「おい。何してるんだよ。おれ、いつまでこのまんまでいればいいんだ?」
研究室の隅にいた優一郎の耳に声が届く。優一郎は笑って多輝に少し待つように告げた。タオルと薬剤の瓶を手にして特別室に戻る。粉末の薬剤をじゅうたんの汚れた部分に振りまきしばらく待つ。すると汚れが泡になって浮いてきた。
この薬剤は通常、人形の女性器ユニットをオーバーホールする際に用いるものだ。部品の交換などの際に愛液や粘膜があると作業が困難になる。だからあらかじめ古い粘膜は完全に除去してしまうのだ。優一郎は汚れが浮いてきたのを確認してから、泡をタオルでふき取った。じゅうたんにこびりついていたなめくじの体液が綺麗に落ちる。じゅうたんの方も色落ちなどはない。優一郎はじゅうたんを見回してにっこりと笑って頷いた。
優一郎が研究室に戻ると多輝が実験台の上で拗ねていた。優一郎は抱えていた服を多輝に手渡した。多輝は黙ってそれを受け取る。もうためらいはないらしい。素直に女物の下着に足を通している。それを見て優一郎は小さく笑った。怪訝そうな顔をした多輝に近づき、穿きかけていたパンティを脱がせる。多輝は唐突な優一郎の動きに対応できなかったのか、腕を振り回して喚いた。
「なっ、何すんだよっ!」
「他の部員の娘に聞いたんです。本当はガーターベルトを先に装着するんだそうですよ」
そう言ってから優一郎はガーターベルトを服の上から取り上げた。まだ訝しげな顔をしている多輝の腰に手を回す。すると多輝が焦った声を上げて優一郎の手からガーターベルトを奪い去った。
「いっ、いいってば! 自分で出来るから!」
叫んだかと思うと、多輝はくるりと優一郎に背を向けた。いそいそと下着を身に着けている。優一郎はそれを見ながらくすくすと笑った。時折、多輝が膨れ面をして振り返る。だが優一郎と目が合うと慌てて頭を戻す。そうしながら多輝はぎこちない動きで服を身につけていった。
優一郎は実験台の傍に椅子を引いて携帯端末を取り出した。多輝の得た情報を入力するためだ。多輝は優一郎に質問されると驚くほど素直に答えを口にする。どうやら恥ずかしいと感じるのは自分に関してのことを喋る時だけらしい。明峰女学園の教師や生徒に術をかけるために手を出したことについては、全くためらいなく報告している。それを聞きながら優一郎は楽しそうに笑った。
「あー? 何で笑うんだよ」
「最後まで楽しんでもよかったのに」
端末から顔を上げて告げると多輝が眉間に皺を寄せた。すっかり着替え終わって実験台の上であぐらをかいている。行儀悪く膝に肘をつきながら、多輝はため息をついて手に頭を乗せた。
「面倒だろ? それに記憶を混乱させるだけなら、最後までする必要もないし。そもそも、おれの好みじゃねえし」
胸に結んだリボンをいじりながらぼやく多輝を見つめ、優一郎は首を傾げた。それから顎に手を当てる。黙った優一郎をどう見たのか、多輝はなんだよ、と不機嫌そうな声を上げた。
「じゃあ、どんな娘が好みなの?」
思ったままを訊ねる。優一郎は真っ直ぐに多輝を見つめて微笑んでいた。多輝が慌てて目を逸らす。だが優一郎は立ち上がってわざと多輝の顔を覗き込んだ。
「べ、別にいいだろ!? そんなことっ」
何でおれがそんなこと言わなきゃなんないんだよ。多輝はそう続けた。だがその顔は言葉とは裏腹に真っ赤に染まっている。優一郎はふうん、と呟いて屈めていた腰を伸ばした。へえ、と口の中で呟くと多輝がうろたえる。優一郎は天井を見上げながら腕組みをした。見なくても多輝の反応は判る。どう答えていいのか迷いつつ、恥ずかしさを覚えているのだ。前の多輝にはあり得なかった反応ではないだろうか。優一郎は内心で嗤いながら存分に多輝の反応を楽しむことにした。
「やっぱり、女性よりも男性のほうが好みなんですね」
「いや、あの、そのな? ええと、そういう意味じゃなくて」
あからさまに多輝の声には動揺がこもっている。優一郎は悠然と構えて多輝を見下ろした。視線が合った瞬間に多輝が顔を伏せる。顔を俯けたままでおれは男だからと呟いている。優一郎は多輝の呟きを聞かなかったことにした。微笑みを浮かべて腰を屈める。下から覗き込むと多輝が慌てて横を向いた。
今の優一郎は多輝に刷り込まれたあの香りを使っていない。なのに多輝の反応は香りに当てられた時とよく似ている。意地悪な質問をすればするほど困ってはいるが、その実、身体は如実に反応しているのだ。優一郎は片手に持っていた携帯端末の画面にさりげなく目を落とした。画面を切り替える。すると多輝の機体の反応が数値で表示された。欲情レベルがじわじわと上昇しつつある。
ニョタ化だけならともかく、メンタルもヤバいです。