基本的にエロシーンぶつ切りです。
あ、でもここにはエロシーンはないです。
ベッドに横たわる順を見下ろしながら水輝は嗤った。徐々にではあるが、順の身体は変化している。劇的でないだけにその変化する様は艶かしく見えた。
月明かりに晒された身体が細くなる。逞しかった胸が縮み、変わりに左右に膨らみが生まれる。水輝はベッドに腰掛けて順の変化を楽しんでいた。順はまだ失神している。短かった髪がゆっくりと伸び、ガウンからはみ出ていた足が形を変える。そして順の身体は完全に女性のものへと変質した。
元来、龍神は存在する形を自由に変えられる。そんな中で複雑な人の形を保てるということは、それだけで力があるという証明にもなるのだ。そして人の形をした龍神たちはそれぞれが性をまとう。
龍神には性の指向性がある。どちらの性をまとうことも可能だが、向き不向きがあるということだ。そして向かない性を維持しているとそれなりの弊害が起こる。だから通常は向かない性をまとわない。最初から向かない性にはならないのが通常だ。
だが中には例外もいる。かつて奇跡と言われた火龍。男の性を持ちながら長き時を女として生きた龍神の一人だ。そしてもう一人の例外が水輝だった。水輝は元来、女の性を持つと龍神の殆どは信じていた。水輝自身もそう思っていた。
「でもな。変な話だけど、おれはこれで良かったんじゃないかと思うんだよ」
これまでに様々な出来事があった。それらを越える間に水輝の性は男から女へ、そしてまた女から男へと変化した。記憶をなくしたこともある。狂いかけたこともある。だがそうして時を越えてみると、そうやって生きていたからこそ得たものがあるのではないかと思うのだ。
水輝はぼんやりと窓の外を見上げた。いつの間にか雨はやみ、雲の狭間から月光が差し込んでいる。光に照らされた順を見つめ、水輝は小さく笑った。
もし、いま時が戻ったとしても、多分自分は同じ道を辿るだろう。水輝はそう心の中で呟いた。哀しいことも辛いこともあったけれど、やっぱりそれでも繰り返してしまうだろう。そんな確信がある。
誰かを失うとしても。水輝はそう呟いて力なく笑った。右手を膝の上で握り締める。守りたかった時に誰も守れなかった。けれど今からもそんな悔しさは味わうことになる。
「だよな。きっと」
水輝は再び窓の外を見つめた。月の光に目を細めて息を潜める。雲が切れ、風に流れていくのが見える。白い月が空に浮かんでいるのを水輝はしばらく静かに眺めていた。静かな寝息は順のものだ。水輝は順を見下ろして苦笑した。
不安定な存在であるハンターは龍神に成りきれなかった者だ。龍神ではない以上、形を変えることは出来ない。水輝は順に嵌め込んだ力が上手く働いているのを確かめて軽く笑った。するとそれまで静かに眠っていた順がぴくりと手を動かす。
「やっぱ、お姫様の目覚めには王子様のキスだと思うよな?」
そう囁いて水輝は順の頬に手をかけた。薄目を開けた順はまだぼんやりとしている。水輝は嗤って順に覆い被さった。正気に戻ったのだろう。順が身体の下で暴れようとする。だが水輝は身体全体で順を押さえ込んだ。
「ちょっと、水輝ちゃん!? 何してんの!?」
「え? 王子様のキス」
強引に唇を奪う。暴れる順を押さえつけたまま、水輝は唇を触れさせるだけのキスをした。柔らかな唇をついばむように触れる。順は何事かを喚いていたが、やがて大人しくなった。
「……これはないと思うなあ。オレ、いつの間に女にされたわけ?」
キスが終わると順が疲れたように笑いながらそう告げた。水輝は軽く笑って首を傾げた。水輝が身体を戻すと順も起き上がる。身体に対してかなり大きくなってしまったガウンを見下ろし、順は情けない顔で唸った。
「あのさあ、水輝ちゃん。キミの力はこんな遊びに使うようなモノじゃないでしょうに」
「おれの力は、おれが使いたい時に好きなように使う。これがおれのモットー」
軽い口調で告げると順が呆れた顔になる。水輝は嗤いながら順のガウンに手をかけた。焦った順が身体をひねる。順はそのまま勢いをつけてベッドを飛び降りてしまった。じりじりと水輝から離れていく。
「あ、あのね、水輝ちゃん。こういうの、オレはちょおっと嫌かもなあ、なんて思うんだけど」
「順。お前、バイだって言ってなかったか?」
「い、いやそういう意味じゃなくってね。うわ、ちょっと目が怖いよ、水輝ちゃん!」
そう叫んだ順は一気に駆け出した。素早い動きでドアにたどり着く。だが幾ら順がドアノブを回しても扉は沈黙している。水輝はゆっくりとベッドから降りてドアに取り付いている順に近づいた。
「無駄だって。そこ、外側から塞いでおいたし」
「うわっ、人の家になんてことするんだよお! あっ、これは酷い……外から結界で塗りつぶしたのかあ……」
感動しているのか困惑しているのか判別しにくい顔つきで順が呻く。その間に水輝は軽く床を蹴って一気に順の間近に寄った。慌てた順がドアにへばりつく。
順のガウンはずれ、片方の肩を露出させていた。水輝は嗤いながら剥き出しになっている肩をつかんだ。だがまだ順は逃げようとしている。水輝の手からすり抜けると素早く腕をかいくぐる。さすがに簡単にはつかまってくれないだろう。水輝はだがゆっくりと順の飛びついた窓へと歩み寄った。
「ま、まさかココも!?」
「当り前だろ。部屋全体を潰してやったぞ。なんか文句あるか?」
「文句って……水輝ちゃん。キミって横暴とかワガママとか自分勝手とか言われない? 幾らオレでもちょっと傷ついたりするよ?」
そう言いながら順は短く息を吐き出して手刀を放ってきた。水輝は眉一つ動かさずそれを指で止めた。続いて放たれた蹴りを反対の手で止める。突っ込んできた順の頭は身体を捻ってかわした。部屋から出るのが無理だと判ったのだろう。順はあらゆる攻撃を繰り出してきた。だがそれら全てを水輝はかわし、止めた。
説明書きながら設定が出来ていく件。