ある意味事後? ですかね。
「え? どした? 何か変だったかな、おれ」
不安そうに告げる多輝の目はまだ潤んでいる。優一郎はそっと笑って首を横に振った。今の多輝は完全に理性をなくしている訳ではない。快楽に晒されてはいるが、しっかり意識は保っている。なのに多輝は嫌がるでもなく優一郎のペニスを咥え、しかも口を使って愛撫していたのだ。優一郎が見つめていることに気づいたのか、多輝は唾液で濡れた口許を手で拭い、顔を赤くしてそっぽを向いた。
「そんなことないですよ。性行為中の女性として、まったく普通の挙動だと思います」
微笑を浮かべて告げる。だが多輝はいつものようにむきになって否定してこない。唇を噛んで横を向いているだけだ。多輝はしばらく優一郎から顔を背けていたが、やがて恐る恐る視線を戻した。恐々と優一郎を見る。優一郎は微笑みだけを返した。
「あ、あのさ。お前、おれに舐められても気色悪くねえの?」
多輝は上目遣いで優一郎にそう訊ねた。その顔つきはいつもに増して艶っぽい。だが多輝は全くそのことを自覚していないらしい。優一郎は笑って多輝の髪を撫ぜた。多輝が首を竦めて怯えるような目になる。
「気持ち悪いなんて、そんなことありませんよ」
多輝はいつもこうして間近にいる時、怯えたような顔をしている。だがそれは恐らく無意識なのだろう。その表情が優一郎をそそることを知らないのだ。たまらなく支配してしまいたくなることに、多輝自身は気付いていない。もし、気付いていれば多輝は出来るだけそう見せないように努力するだろう。
自然と手を伸ばす。優一郎は多輝の頬に手をかけ、その手を顎へと滑らせた。多輝が目を細めて息をつく。身体を屈めて唇を奪うと、多輝は素直に口づけに応えた。ほどなく二人の口の中で唾液の音がし始める。舌を絡め合いながら、優一郎は多輝をそっとベッドに横たえた。
今の多輝の心の中に自分はしっかりと根付いているだろう。そう思いながら優一郎は静かに顔を上げた。多輝は恥ずかしそうにはしているが、優一郎を拒絶はしない。赤い顔をして優一郎を見つめている。優一郎はそんな多輝に微笑みを返して静かに身体を起こした。多輝が急に寂しそうな顔をする。
「調整は終了しました。明日に備えてそろそろ寝ましょう」
「え、でも」
戸惑う多輝を余所に、優一郎は剥き出しになっていたペニスを服の中に納めた。はだけていた服をきっちりと直す。白衣のボタンを留めて目を上げると、多輝が困惑した目になっていた。
多輝がこの機体に入ってからまだ数日しか経過していない。なのに機体の顔つきは初日とは違う。確かに今までも作り上げた機体が命を宿した後、顔つきが変わることはあった。ちなりやカレン、玲花、保美。どんなに生身だった頃の顔を優一郎が模しても、命の宿っていない機体はどこか空々しい顔をしているものだ。だが彼女たちが機体を持ってから、その顔つきははっきりと変わった。機体の顔が生身の頃と全く変わりなくなったのは、実際に起動してからだ。
だが多輝の変化は彼女たちに比べて早い。目覚しいとも言える。優一郎は乱れていた白衣を直してからベッドに腰掛け直した。不安そうな目をしている多輝の足をなでる。絶頂に一度も達していないために身体が疼いているのだろう。だが、それでも多輝は正気を保っている。最初の頃に比べればかなりいい傾向だ。この反応はそれだけ多輝が機体に馴染んでいるということでもある。
「でも、あの」
おれ、一度もいってない。多輝は消え入りそうな声でそう続けた。よほど恥ずかしいのだろう。俯いてしまっている。優一郎は微笑みながら多輝の頭を撫ぜた。
「他のヒューマノイドと違って、先輩には睡眠が不可欠なんです。他の機体なら一晩中セックスや自慰を行っても大丈夫なんですが……」
そう言って優一郎は多輝の耳に唇を寄せた。多輝の肩をつかみ寄せ、そっと耳に息を吹きかける。すると多輝は首を竦めて小さな悲鳴を上げた。優一郎はその隙に多輝のスカートに素早く手を伸ばした。多輝が驚いて目を見張る。優一郎は有無を言わせず多輝の臍を探りあてた。
「おやすみなさい。先輩」
耳元に囁きながら臍の中のスイッチを操作する。ほどなく多輝の身体ががくん、と崩れた。眠る間際に何事かを呟いていたが、はっきりと聞き取ることは出来ない。優一郎は多輝をベッドに静かに横たえ、特別室を後にした。
焦らし攻撃。
優一郎の得意技ですが、読んでる方は焦れったいやも知れませんね(汗)