分割するまで存在を忘れてたキャラクタがいました……。
こういうのはちょいちょいあるんですが、ここまで完全に忘れてたのは久しぶりです。
エロシーンはここにはありません。
長いので五分割しました。
「なんだ、これは」
今朝、目覚めた後に多輝はそう呟いた。違和感があったのは下着の中だった。だがベッドの脇に控えていた優一郎はにっこり笑って欲しかったでしょ、とだけ告げた。それに返せなかったのは自分だし、もう既に明峰女学園に来ている。今更、言ったところでどうにもならないのも事実だ。
けどなあ。多輝は校舎の影に隠れたまま、そっとスカートを押さえた。今日着ているセーラー服は新たに支給された新品だ。下ろしたてのスカートのプリーツは、風が吹くたびにそよいで揺れる。多輝はため息をついてそれを押さえていた。ずっとむず痒い気がして仕方ないのだ。
だがそれは気のせいだということも判る。優一郎の言によれば、間に合わせで感覚は繋がっていないということだからだ。多輝の使っている機体の開発者である優一郎の言葉に間違いなどないだろう。多輝は眉間に皺を寄せてスカートから手を離した。
ああ、確かに欲しいって言ったよ、おれは。だけどこういう形で欲しかったんじゃない。そう言い返すことも出来ないまま、多輝の身体には新たな器官がつけられていた。眠っている間に改造されたらしい。多輝は情けない顔でため息をついた。
今は授業中で外に生徒はいない。優一郎ももちろん授業中だ。今すぐに連絡を取ることも出来ない。定時連絡は放課後と定められているのだ。多輝は校舎に寄りかかって息をついた。風が吹くたびにスカートの中が気になる。だが多輝が思うほどに制服姿の外見上に変化はない。それでもスカートをひとたびめくれば違和感は隠せない。
多輝は苛々しながら授業の終わりを待った。授業の間に挟まれている休憩の度に、名簿に書かれている生徒の確認をしているのだ。
1A、石野莉佐。加納みちる。1C、響乃夕菜。1D、小山内繁子。2A、木村涼紀。2B、湯島加奈。3A、大嶋紗江里。3C、駒津 琉未。一年生から三年生までの教室を何度も往復し、ようやく全員の顔を見たと思った時には既に放課後になっていた。多輝は生徒たちの名前の綴られている手帳を見下ろし、目を細めた。さすがに全員という訳にはいかなかったが、中の数人については身辺調査を試みている。多輝はページを指で弾いて手帳を閉じた。
今日は暇な時は生物室の果穂と話をしていた。果穂は先日の約束通り、多輝を匿ってくれたのだ。だが果穂自身は授業を受けている気配はない。どうやら果穂は無条件に授業に出席とつけられてはいるが、その実、教室で授業を受けることはないらしい。大人数の生徒たちを預かる教師たちにとって、問題児である果穂が授業に来ないほうがいいと思っているのかも知れない。試験もここで受けたのよ、と果穂は笑っていた。何とも風変わりな学校だ。話を聞いている間、多輝はずっとそう思っていた。
だが学校が違えば方針が違うのは当然だ。多輝はそう思いながら顔を上げた。今日は果穂に代わって多輝が茶を淹れた。果穂は不思議そうな面持ちでカップの中身を見つめている。どうやら生物室でまともにカップで茶を飲んだことがなかったらしい。多輝はそのことを察して小さく笑った。
「なんだかへんなかんじ。それにちっともあまくないし」
果穂はカップに口をつけてから顔をしかめてそう告げた。肩を竦めながら自分のカップを取る。味を確かめるが別におかしいところはない。多輝は困惑した目で自分のカップに満たされている紅茶と果穂を見比べた。
「そ、かな。おれは美味いと思うんだけど」
「たきのみかくがおかしいのかもしれないじゃない」
いや、お前にだけは言われたくない。先日飲まされた珍妙な茶の味を思い出しながら、多輝は心の中でそう告げた。不服そうな顔で果穂は茶を啜っている。多輝はため息をついて実験台の上にシュガーポットを滑らせた。果穂が途端に目を輝かせる。ポットから砂糖を掬い、カップに落とす。それを二回ほど繰り返し、果穂はスプーンで紅茶を混ぜた。元々、多輝は紅茶に砂糖を入れる習性はない。見ているだけで口の中が甘くなる気がして、多輝は思わず果穂のカップから目を逸らした。
「ところで、れいのせいとたちのちょうさはすんだの?」
十分に砂糖の溶けたカップを持ち直した果穂がふと目を上げる。多輝は軽く頷いて一応な、と答えた。すると果穂が怪訝そうな顔になる。多輝はため息をついてカップを置いた。
「あのな。そう簡単にかぎ回れるわけ、ないだろが。おれはここではあくまでも部外者なんだぞ」
「あら。どうせだれもきにしないわ。かんのいいやついがいはね」
けろりとした顔でそう言ってのけ、果穂は小さく笑った。呆れた顔になった多輝を見やり、さらに笑う。多輝はそんな果穂の態度にあからさまに顔をしかめた。外見は幼く見えるのに、果穂の発言は狡猾な老人を思わせる。そのギャップに時折、混乱してしまう。だが果穂は多輝のそんな動揺も全く気にしていないようだ。今日はさすがに巨大なあのなめくじを仕掛けることはないが、そのギャップでたびたび多輝を驚かせている。
まさに自分用のエピタイw