※この作品はR-18です。

夢の隙間   作:伊駒辰葉

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エロへの序章的ななにかです。
ガチエロシーンはありません。


しまった。このキャラ忘れてた…… 2

 それでいて果穂の精神状態は酷く穏やかなのだ。それもまた多輝が驚く理由になっている。外見は幼い少女、発言は老人、それで精神状態はとても柔らかな印象があるのだ。その三つの要素の同居はちぐはぐなパッチワークを思わせる。多輝はそっと息をついて再びカップを取り上げた。

 

 多輝は果穂にとりあえずの礼を告げ、生物室を後にした。帰る生徒たちの賑やかな声が時折聞こえる。多輝はそんな廊下を黙って歩いた。誰も知っている者はいない。教師とも何度かすれ違ったが多輝を見咎める者はなかった。

 

 そして多輝は一つの教室の前で足を止めた。学生会室と教室のプレートには書かれている。リストの中の生徒の一人は、学生会の会長を務めているのだ。多輝はもう一度、ポケットから生徒たちの名前を連ねた紙を取り出した。2B、湯島加奈。それが現会長の名前だ。

 

 まずはこいつから当たるか。どこから手をつけるかを迷った多輝が出した答えがそれだった。多輝は息を潜めて学生会室の中の様子を伺った。意識を研ぎ澄ませてドア越しに室内を調べる。幸い、一人しか生徒はいないようだ。多輝は静かにドアをノックした。

 

「はい、どうぞ」

 

 落ち着いた声が返ってくる。多輝は静かに学生会室のドアを開けた。

 

「あの、ちょっといいですか」

 

 そう言いながら多輝は学生会室に滑り込んだ。後ろ手に鍵をかける。室内にいた女子生徒は不思議そうな顔でそんな多輝を見やった。落ち着いた声の通りに佇まいも落ち着いている。多輝とは対照的な容姿だ。華やかさのある多輝の顔立ちと比べれば、その生徒はとても大人びて見える。多輝は顔を見てその生徒が湯島加奈本人であることを理解した。

 

「学生会になにか御用?」

 

 そう言いながら加奈はにっこりと微笑んだ。学生会室の一番奥の机についている。仕事中だったのだろう。手はキーボードに乗ったままだ。多輝は黙って頷いてからゆっくりと加奈に近づいた。

 

 学生会室には穏やかな空気が漂っている。綺麗に掃除された部屋の隅には観葉植物が置かれ、書類の詰まった棚の中もすっきりと整っている。だが硬質な感じはない。どちらかと言えばほっと息をつける空間が作ってある。置かれているソファセットはシンプルなデザインだ。だがその背もたれにさりげなくかけてあるカバーがこの部屋を使っている生徒たちの心遣いを思わせる。多輝は部屋の中を見回して学生会に所属する生徒たちの性格を読み取ろうとした。

 

「ごめんなさい。今日はここには私しかいないの。私だけでも力になれることかしら?」

 

 あくまでも優しい笑みを浮かべて加奈はそう告げた。多輝は加奈の傍まで近づき、彼女をじっと見下ろした。ストレートの長い髪は手入れが行き届いている。多輝は加奈の艶のある髪を見つめ、それからその身体つきを眺めた。スタイルもとてもいい。このままモデルにスカウトされそうなタイプだ。

 

「ああ。あんたでないと話にならないんだ」

 

 多輝は猫をかぶるのをやめ、地のままでそう告げた。すると加奈が怪訝そうな顔になる。

 

「あら……あなた、もしかしてここの生徒ではないの?」

 

 何から判断したのか、加奈はいきなり静かに告げた。多輝は驚きに目を見張り、次いで小さく笑った。

 

「他校の方が私に何の御用かしら」

 

 だが加奈はすぐにその表情を元の笑顔に戻し、穏やかな口調でそう訊ねた。多輝はくすくすと笑いながら加奈の机に腰を乗せた。加奈は黙って多輝を見上げている。まるで怯んでいない。

 

「大した用じゃない。あんたがおれの思うような奴かどうかを確認したいだけだ」

 

 すると加奈は少し考える素振りをした。そして微笑みながら多輝を見上げる。動きの間が微妙に長いのは、恐らく癖だろう。多輝は黙って加奈の言葉を待った。

 

「その前にせめてお名前を教えてくださる? 私が呼ぶ時に困らないように」

 

 そう告げた加奈に多輝は軽く肩を竦めた。別に名乗ることを規制されてはいない。多輝は素直に名前を告げた。加奈が多輝の名を口の中で繰り返す。その隙に多輝は加奈の手首をやんわりとつかんだ。

 

 有無を言わせず口づける。加奈は驚愕に目を見張り、慌てて多輝の身体を押しのけた。口許を押さえて真っ赤になっている。

 

「なっ、何をするの!」

 

 さっきまでの落ち着きがなくなっている。多輝は薄く笑って加奈の髪を手に取った。加奈は多輝を避けるように身体をひねる。だが多輝は軽く手を握って加奈の髪をしっかりとつかんだ。

 

「味見だよ、味見。逃げなくてもいいだろ?」

 

 久しぶりに味わう感覚だ。多輝は薄く笑いながら楽しく加奈をいたぶっていた。加奈の反応を見ていると、忘れかけていた感覚が蘇ってくる。随分と久しくこんな風に女と接していない。多輝は怯える加奈の肩をつかみ、再び唇を寄せた。悲鳴を上げかけた加奈の声が途切れる。

 

「へえ……はずれだと思ったけど、大はずれじゃなかったか……。あんた、木村の何だ?」

 

 加奈からは機械の身体特有の波動は流れていない。だがもっと別の、心の奥底に封じられている暗い何かが見えるのだ。多輝は薄笑いを浮かべて加奈から手を離した。途端に加奈は弾かれたように椅子から立ち上がり、ドアを目指して駆け出した。ドアノブが回る寸前、多輝は軽く指を鳴らした。目に映らない力で完全に学生会室が閉ざされてしまう。




いーやー……このキャラクタ忘れてたんですよね。
どっかで使わないとですなあ(どこかに向かって
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