※この作品はR-18です。

夢の隙間   作:伊駒辰葉

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ここから七章です。
長いので三分割しました。

この章は多分……エロシーンはないです。


七章
夜中のふろふき大根 1


 多輝の持ち帰ったデータをパソコンで整理してみる。優一郎は眉間に皺を寄せてキーボードを叩く手を止めた。多輝は果穂から手に入れた資料に基づき、明峰女学園に潜入している怪しい人物にあたった。学生会会長、湯島加奈。そこまでは判る。優一郎は椅子に深く腰掛けて目を細めて画面を眺めた。

 

 加奈からは機械特有の波動は感じなかった。それが多輝の報告だった。そして加奈を手の内にすることに成功したとも聞いた。だがそれならばどうして果穂の寄越した資料に加奈の名が連ねてあったのだろう。確かに加奈は木村の実験体だった。リストに並べられていた他の女子生徒たちも加奈と同じだという。

 

 そのリストをどうして果穂はこちらに渡したのか。果穂は本当にリストに並ぶ女子生徒たちが機械だと思っていたのだろうか。それともどこか他の生徒たちと違うという理由だけで、多輝にリストを寄越したのか。

 

 考えればきりがない。優一郎が直接に果穂と連絡を取れば早いのだろうが、生憎と果穂に連絡を取る術はない。果穂は家にも殆ど戻っていないのだ。果穂が生活場に学校の生物室を選んだのは、わずらわしい日常から完全に切り離されるからだ。果穂の両親……つまり、保美の両親はその我がままを認めているのだそうだ。これは保美に確かめたから間違いない。

 

 果穂は両親を切り捨てた娘ですから。保美は優一郎の質問に笑顔でそう応えた。何のためらいもない表情だった。そして保美も果穂ほどはっきりと態度に出さないが、やはり両親とは縁が薄い。

 

 あんの親は変わってるからねえ。カレンは保美の親をそう評する。娘の一人は機械仕掛けの身体を持ち、もう片方の娘は既に人とまともに接することをやめてしまっている。当然のように二人の両親もやはり少し変わっているのだ。優一郎はため息をついて再びキーボードに向かった。

 

 多輝の機体から回収したログを画面に走らせる。多輝が口頭で報告したことに間違いがないかを調べつつ、優一郎はログの必要な部分を保存した。ハードディスクがアクセスするたびに独特の音を立てる。静まり返った部屋にその音はよく響いた。

 

 そういえば近頃、家に戻ってないな。優一郎は何気なくそう呟いた。声にならないほどのささやかな声のつもりだったのに、優一郎の声は意外と大きく響いた。苦笑して部屋を見回す。いつも見慣れている部屋の様子がここにある。優一郎はそっと息をついて立ち上がった。フローリング材を敷いた床の上を足音を殺して歩く。

 

 地下二階の施設には生活できるだけの設備を整えてある。風呂や食事の支度もこのフロアだけで賄えるようになっているのだ。優一郎は部屋の中央に立ってぼんやりと視線をめぐらせた。壁に並べて嵌っているモニタの全てが今は暗い。多輝も既に眠っている時間だ。地下一階に先ほどまでいた保美も帰った後だ。優一郎は黒いモニタを順繰りに見た。このモニタは地下施設の様子をここにいながらにして見ることが出来るように設計されている。この設備はビルで使う監視カメラに近い役割を果たしているが、カメラレンズは誰にも発見されないように仕掛けてある。所謂、隠しカメラで撮ったものがモニタに映し出される仕組みになっている。部員の誰もこのことは知らない。だから時折、人の目を盗むように自慰をしている部員の姿も見かけることがある。大抵の場合は優一郎も黙ってそれを眺めているだけだ。そして部員の自慰行為が済んでから、おもむろに呼びつける。それは優一郎の密かな楽しみだ。

 

 だが今は画面も暗い。優一郎は肩を竦めて私室を出た。ドアから出ると真っ暗だった廊下に自動的に仄かな明かりが灯る。足元だけを照らす明かりの中を歩いていると、まるで違うどこかを彷徨っている気分になる。施設創設時からある夜間のみ起動する設備だが、優一郎は初めてまじまじとそのライトを眺めた。足元に淡い光が当たっている。そして廊下の天井を見上げると、壁から伸びた自分の影と薄く残っている元々の闇が混ざり、その様子は酷く現実離れして見えた。

 

 闇の中を歩いて自分はどこを目指すのだろう。人形を作りながら一生を終えるのだろうか。それとも全く別の生き方を選ぶのだろうか。優一郎は珍しく感傷に浸りながら廊下を進んだ。それもこれも、プラン通りに事が運んでいないからだ。優一郎はそう自嘲して簡易キッチンに入った。冷蔵庫を開けて食べられるものを探す。だが冷蔵庫の中にはろくなものが入っていない。優一郎は眉を寄せて小さく呻いた。

 

「何やってんだか。ほら、どけよ」

 

 不意に背後から声がする。優一郎は驚愕のあまりに身体を震わせて息を飲んだ。ゆっくりと振り返る。優一郎の真後ろにはいつの間にか寝ぼけ眼をした多輝が仏頂面で立っていた。

 

「大体なあ。もっとましなものを入れとけよ、最初っから。ああ、ろくなものがねえなあ」

 

 ネグリジェ姿のままで多輝が冷蔵庫を覗き込んでいる。優一郎は呆然としたままで多輝に場所を譲った。どうしてこんな時間に多輝は目覚めたのだろう。だがすぐに優一郎は思い直した。そう。多輝は他の人形とは違い、本当の眠りにつく。だから睡眠の途中で不意に目覚めても全く不思議ではない。多輝は冷蔵庫の中を睨みつけて先ほどの優一郎と同じように呻き声をあげた。




だから機械が書けてな(ry
ホントすみません……。
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