※2月15日投稿
麗らかな陽気だった。空気もからりとして晴れやか、かと言って肌身が湿気を失うほどに乾燥もしていない。
春先の涼やかさに陽光の暖気が実に優しげで、過ごし易い日和とはまさしくこのこと。
水仕事が捗るのは大変よいことだ。洗濯物を軒並み物干しに掛け、布団を叩きながらに思う。
縁側の清掃の前に、屋根の手入れをしてしまおうか。それとも境内で掃き掃除を先に済ませてしまおうか。
変わらない平穏。
変わらない景色。
変わらない天候。
変わらない家内。
変わらない博麗神社。
積もる埃やこびり付いた染みの量、木々から落ちる葉の数すら大きくは変化しない。一度、戯れに数えてみたが、二千枚を僅かに前後する程度だった。極まって暇を持て余したゆえの行為であった。もう実行するつもりはない。ないが、気が迷ったならいつかまた、やるやもしれぬ。
気が迷い、あるいは、違ったなら。
博麗神社とそれが建立するこの御山。それが閉じて早……どれほど経ったろう。何も忘れた訳ではない。同じ朝を迎える度に記録はつけている。
同じ一日、同じ24時間を繰り返し続ける、時間空間的に閉鎖された土地。
ただ、書き記した期間が、その数字が、果たして正しいものなのかを己は判断することができない。長く、永く過ごす内、己の気が違ってしまっていないとは、完全に否定する術はないのだから。
もしかしたら外の世界では数百年、数千年もの時が経っており、俺の脆弱な脳髄は既に時間感覚などという正常な機能を喪失しているのかもしれない。
何も知らず、白痴のように曖昧に、精神の連続性などとうに失くして。
今、この瞬間すら、俺はありもしない現実を現実であるかのように見て、聞いて、触れたと勘違いしている。
そうでないと、何故言えよう。何の証もなく、俺は俺の正常を信じられない。俺は、俺を認められない。
俺は本当に、生きているのか。
どうして生きているのか。
どうして、だったろうか。
「おはよ」
「!」
どん、と。背中にぶつかる。それは勢いに比して軽やかで、柔らかな質感をしていた。
左右から腹に腕が絡む。白魚の如くにしなやかな。
背中に押し付けているのだろう、吐息が熱く背の皮膚を焼く。そして強く、大きく、それを吸われる。
肺一杯に臭いを嗅がれ、妙な倒錯感が過った。初めての頃より幾分か、多少それも落ち着いた筈だが。
それでもやはり少女のスキンシップにはいつも動揺を覚える。羞恥が働く。暖かな、何かが湧く。
庇護欲、労しさ、胸を焼くほどに苦しいこの、愛慕……否。
「ふふ」
「……おはようございます」
身体を捻りながら、振り解くようにして向き直る。彼女は素直にその腕を解き、後ろ手を組んで己を見上げた。
黒曜のような深い光沢。濡れ羽にさらに炭を垂らしたような黒髪。それらとは裏腹に白雪なる肌。
紅白の、華やかな飾り縫い豊富な巫女服。今日も、いつ何時も、どれほどに時が流れても、ああ、このひとは美しい。
「博麗さん」
「うん」
陽光に煌めいた微笑が我が目を眩ませる。思わず笑みが浮かんでしまうほど。
「問題です。外の世界では今日はいったい何の日でしょう」
「は?」
微笑に悪戯気が宿る。その問いの、性質の悪さを理解しての言葉であるからだ。
幻想郷に訪れてより、内界はもとより、外界の暦を己が知り得る訳もない。
あの日、彼女は言った。彼女と俺と博麗神社を封じた日、ここは永遠の中に閉じられたのだと。
悪意は、なかった。あるいは、外界への己が未練を試されているのか。
そうか。彼女は知っている……俺にそんな正常なモノが無いことを。
あるのは一つ。己の望みは一つきり。博麗霊夢の、幻想郷への帰還だけだ。…………ただそれだけの筈だ。
「……
「ふっ、すごい。よく覚えてたね。でも残念。ちょっとおしいけど不正解」
微かに噴き出して、少女が破顔する。
彼女は確実に外の暦を把握している。格別、驚くべきことではない。彼女の御
空しい感慨に呆ける己の鼻面へ、小ぶりな平箱が差し出された。
「はっぴーばれんたいん、なんてね」
「!」
少女の頬に朱が差す。気恥ずかしげな顔をして、彼女は頬を掻いた。
両手で受け取る。まるで捧げ持つような心持だった。
「て、言っても、チョコレートなんてないからさ。
「チョコレートを、それも女性から男性へ送るというのは、日本独特の習わしです。海外では親しい人へ感謝を込めて贈り物をする、祝日といった面が強く……」
己は何を滔々と、聞かれもしない蘊蓄を垂れ流しているのか。
どうやら思いの外に、我が身の動揺は激しかった。所謂、簡易な表現を用いるならば、テンパっていた。
「……ありがとうございます。とても、嬉しく思います」
「ふっ、ふふふっ」
神妙に頭を垂れる己を、少女は楽しげに笑った。
何と言うことはない催事、素朴なイベント事なのだ。こんなものは。
その何と言うことはない筈の、これが、彼女の思い遣りが──苦しい。それが暖かであるほどに、それがあまりにもいじらしいゆえに、この胸が、詰まる。
博麗霊夢という人の、慈愛を、一つ処へ閉じ込め、独占するこの事実。この冒涜。この罪業。
それらの重さ深さを幾度目とも知らず実感する。地面を睨みながらに、自己に対する憎悪が湧く。これはもはや如何ともし難い。
「……中で一緒に食べよ。お茶淹れるね」
「はい……申し訳ありません」
「…………」
ぐぷ、ぐぷ、にち、ぐちゅ、ぐぽ、じゅる、ぎゅむ、にゅる。
それは耳ではなく、皮膚を響く音だった。
「っ!?」
夜気の肌寒さを覚える。
蒼い月明りに目が眩む。しかし、愚鈍な脳髄とは裏腹に肉体の覚醒は即座、寝起きとは思えぬほど身体の感覚ははっきりしていた。
まず熱を知覚する。火傷を懸念するほどに、熱い。下腹部、そのさらに下、平素ならそう触れることもない部位。
熱は己の、陰茎を焼いていた。
苦痛とは真逆の、しかし強過ぎる触感で。
「な、ぁ」
肉体感覚の鋭敏さに比して、精神は劣弱だった。現状の理解に割くべき脳の処理能力を無為な驚愕と惑乱に使い、悪戯に落としている。
わからない。この光景を言い表す語彙が、製造できない。
ようやくに見取ったのは、少女の顔。博麗霊夢の美しい顔。その黒い夜空めいた大きな瞳が、己を見上げた。
そうして、うっとりと、笑む。
美しい。今宵とても、蒼い月光の中で巫女は斯くも麗しい。
その美しい顔貌、それを形作る一つの、唇が、桜色の柔い、少女らしい儚げな口が。
「ん、ちゅ、んぉ、ぐ、ぷ、ちゅ、ん、ふ、んん」
しゃぶっている。張り詰め、樹木の幹のように屹立したソレの先端。亀頭をまるごと頬張って、舐り、啜り、かぶりつき。
だらだらと少女の唾液がこぼれて落ちる。それこそ樹液のように滴り落ちていく。内腿を濡らし、布団に湿りを作るほど。
「博麗、さっ、ぐっ、あ……!」
「ぷふぁ、ん、ぶ、ぐぢゅ、んぢゅ、ぢゅるっ」
呼ばわった途端、吸引が強まった。聞く耳は持たぬ、そんな返答のように。
舌が亀頭の裏、筋と粘膜の境を、盛んに舐め上げる。そうすれば己が反応するのだと既にして理解している。
頬の裏側の柔い肉が、亀頭の両側を懸命に窄め圧し、擦り付けられる。
「ぐ、ぷ」
「お待ちくだっ、が、ぅ!?」
そうして遂に、彼女は陰茎全てを口中へ導き入れた。咥え込んだ。
彼女の顔は小さい。頭もまた相応のサイズをしている。
己の陰茎の長さは、どう見積もっても少女の口腔に納まるものではなかった。
亀頭が、
「んぶ、おえっ、おぁっ、ん゛ん゛、ぶ、ぢゅ」
「!」
苦しげなえずき、それを堪え、いや無視して、少女は全てを呑もうとしている。
今、己が、全力で堪えているものを。封じようとしている白濁。汚濁を。
このままでは全て。
「ぐ、あぁっ!」
「ん、あ!」
精神力のあらん限りを用いて、身体を退いた。
ぐぷり、喉を渡り口腔を伝い、陰茎が飛び出す。粘つく液体は確実に、少女の唾液ばかりではない。
布団を外れ、畳に指を抉り込む心地で立て、もう一歩分後退る。
不浄、不浄、不浄! なんたる不浄を、汚穢を、誰に、誰の口に放出しようとした。己は、俺は、
「はぁはぁはぁはぁはぁ……!」
「はぁ、はぁ……ん、ちゅ……」
二人分の息遣いが寝間に響く。
桜色の唇に紅色の舌が這う。粘液、涎と、この身が垂らした先走りを、味わうかのように。少女は熱の浮いた吐息をこぼした。
艶然としてなお、彼女の美しさは清らかだった。淫蕩なその行為とは裏腹に。
「な、にを。何故、このような……」
「ん、ふっ、ちゅ、んふふ、今朝言ったじゃない」
「は……?」
「はっぴーばれんたいん」
???
今度こそ、己の脳は思考を放棄した。意味がわからなかった。
阿呆の様を晒す己に、少女は呆れるでもなく、優しく、いっそ愛おしそうに、顔を綻ばせた。
「今日は贈り物をする日。でも、私にはあんたにあげられるものなんてない。私は、貰ってばっかり」
「そのようなことはありません」
「ううん……」
思考を経ない反射反応で発したこちらの断言に、けれど少女は首を左右する。
「私は取り上げたの。あんたから。自由も、現実も、未来も」
「それは……そんなものは」
価値などない。少なくとも俺のそれには一欠片の意義も有りはしない。
意義あるものは、それら諸々の可能性を取り上げられたのは、貴女だ。この少女だ。今の俺にとって価値とは、この人しかない。
「うん、ありがとう。嬉しい」
頬を朱に染めて乙女は恥じらい微笑んだ。心からの喜びを謳った。
それだけで、十分。十分に過ぎる。己はその一言、その尊顔を拝謁できただけで、幸せだ。
今この場で死んでもいい。それがいい。そうできたなら、どれほど。どれほどに。
「だから、あげる」
「それは、どういう意味ですか」
「あんたが価値があるって言ってくれたもの。“私”をあげる」
物分かりの悪いこの男に対して、少女はどこまでも優しかった。
蕩けるほどに優しく、容赦しなかった。
浴衣の帯はそもそも解かれ、布団の傍に散逸している。彼女は前合わせを開き、肩から落とした。
「っ」
青白む肌、華奢な身丈。少女。そう呼んでいた。それがどれほど不遜なことだったかを今、目の当たりにさせられている。
控えめながらもふっくらとした乳房、その頭頂に淡い色をした突起。開花間近の蕾めいて。
細くくびれたラインを引く脇腹、そこから腰付きは丸く膨れる。
少女は女性。その当然を、己は全くと言っていいほど理解していなかった。
下半身、太腿の内側はてらてらと光沢を放った。それは付け根、さらに登り、その中心から流れ、垂れ、落ちている。
ぴたりと閉じた縦の筋。その合間から僅かに赤い肉襞が覗く。少女の
そこから溢れて、こぼれている。彼女の愛欲、肉欲、その証明が。
「あぁ、もう、止まんない……」
目を逸らすべきだった。払うべき配慮。
しかしできなかった。眼球を支配されてしまったかのように、釘付けになる。
情欲を煽られ、いっそ掻き毟られる思いだった。あまりにも、淫らだった。蠱惑的だった。
血が滾る。陰茎は先程から痛みを覚えるほど膨張し、破裂してもおかしくはない。
心臓の鼓動が響き渡る。全身に。呼吸は乱れ、視界は狭窄していく。だが決して、少女から逸れることはない。
渇いていく口腔、潤いを求めて唾を飲んだ。足りない。足りない。渇く。この渇きは耐え難い。喉を潤すものが要る。滴るほどの何か。
ある目の前に、蜜が垂れている。あれは甘かろう。極上の甘露であろう。あれを貪れたなら、啜り、喰らえたなら、この渇きは消える。晴れて、満ちる。
「ッッ」
奥歯を噛み、潰す。擡げた情欲を意志力で焼き払う。
許さぬ。許さぬ。許さぬ。許さぬ。
恥を知れ。恥を知れ。
俺は俺の分際を今一度弁える。痛感する。思い出す。
少女の、博麗霊夢の価値を知るから、この人を尊いと想うから。
だから、断じて。
「意地っ張り」
「!」
にべもなく少女はぺたぺたと歩み寄ってくる。己の自儘な自縛など、彼女には拘わりのないことなのだ。
だから抗うのは、俺の務めだ。俺は、全霊を以て拒まねばならぬ。それが今唯一己に為せる善行。正理。
自身が羽織った寝間着の浴衣を手繰り寄せ、陰茎を隠す。
次は彼女を、彼女に何かを着せよう。そのように思惑して、立ち上がろうとした。
「ダメ。今夜は逃がさない」
「お体を冷やします。早く、掛けるもの──っ!?」
少女のしなやかな二本の指が印を結んだ。それが軽く払われる。羽虫を手で追い払うよりも、それはひどく細やかな所作で。
次の瞬間、己の身体は停止した。
「!? なっ、これ、は……!?」
「封ずるのは得意なの。知ってるでしょ?」
身を仰け反った体勢のまま、背後の畳に倒れるでもなく身体は完全に止まった。肉体の動作能力を奪われたのではない。空中に固定されている。
指先一つ動かせない。ただ一ヵ所、口と舌だけは自在であった。
「博麗、さん……このような、ことは……!!」
「ごめんね」
「っ、謝罪などは、御無用に……ただ、これを、解いて、いただきたい……!」
「ごめんね」
「────」
同じ文言であるにもかかわらず、それら二つが内包する意味はまるで真逆。
やはりどうして、彼女は容赦などしなかった。
浴衣を左右に払われる。勃起した一物は、間抜けなほど真っ直ぐに、天井を向いていた。
「あぁ……すごい……」
「くっ」
己の脚の間で屈み、鼻面に付いてしまうほどに近く、まじまじと少女に見られる。観察される。
吐息が熱く、粘膜を刺激した。
「ふふ……ごめん。恥ずかしかった?」
「何分にも、露出症を患った、経験はない、もので」
「ぷっ、なにそれ。そんな病気あるんだ。ふふ、変なこと知ってるわね」
「恐れ入り、ます……」
「……じゃあ、私のも」
「!!?!?」
言うや、彼女は己の身体に跨り、両手で、それを──そこを開いた。
くちゅり、粘性な、瑞に富んだ音を立てて恥丘が分かれ、肉襞が引っ張られ、露わとなる。赤い淫口。彼女のもっとも秘する場所。
薄紅の、痛々しいほど鮮やかな肉色。小指の先よりも小さな陰核が淡い色の包皮を僅かに押し上げている。
その下、皺すらろくろくない膣口、そこからは愛液が滴っていた。小水のように、それは己の胸に落ち、腹を垂れ流れる。
「舐めてる時からこうなの……止まらないの……下品でごめんね」
「……」
言葉はなかった。ただ、この喉から生唾を飲む音ばかりが静謐な室内に響く。己こそ、品性下劣であった。
その反応に、彼女は笑った。羞恥と安堵、そして淫湿な悦びの笑み。
笑むまま、膝立ちになり、彼女は腰を下ろす。その意図は、愚鈍な己にすら知れた。
そして断じて許してはならなかった。
「駄目だ! それをっ、それだけはッッ!! 俺如きが、それを、奪うなど……!!」
「奪うんじゃない。あげるの。私があんたに」
同じだ。損失される価値の大きさは、何一つ変わらない。
性交渉の経験の有無どうこうの話ではない。この美しい人に、己の汚物が挿し入れられるという事実が耐え難いのだ。芸術品に小便を垂れる行為とこれとにどんな違いがある。
「だって今日は、大切な人に贈り物をする日……なんでしょ。だからあげるの。私をあげるの」
慈母のような微笑で、彼女は言った。左手をこちらの肩に乗せ、右手で陰茎を導く。彼女の中心へ。
ない。ないのだ。これを賜る価値は己にない。己になどないのに。
「ぐ、ぉ、おおおおおぉお゛おおぉぉお゛おおッッッ!!!」
全身の血液を熱して、神経を焼き切る思いで肉体を行使する。
筋肉は熱を発し、あらゆる皮膚下で血管が浮き彫りになる。
動かない。微動だに。無駄な行為。この抵抗の無意味を不動たるこの身自らが嘲笑うようだった。
それでも。だとしても。抗い続けねばならぬ。断じて、決して。
何故? 俺は彼女が。俺にとって彼女は、博麗さんは────
不意に、影が差す。月明りが遮られ、視界を覆う、その
瞳の漆黒が揺らぐ、滲む。寂しげな、悲しげな顔で、少女は己を見下ろしている。
「私じゃ……そんなに、イヤ……?」
「そ」
そんな筈がない。そんな筈がないのだ。
ただ、ただただ俺にとってこの人は、貴女は────大切な存在だから。
「だから、だから、俺は……!」
「うんっ。私も、同じ気持ちだよ……!」
感極まり声を霞ませ、少女は告げた。慈しみと愛に満ちたその、
彼女が望んだもの。孤高であるが為に得られなかったもの。俺にとっての無価値、彼女にとっての希望。
にちり、愛液の滴りに塗れ、先走りにぬめるモノの先端、鈴口を、濡れそぼった淫口が吸った。下劣な口吸い。
にぢり、ゆっくり、ゆっくりと、一物が肉の宮に侵入する。襞の一枚、また一枚を割り退けて、今。
抵抗感。何か、何かが、無法な侵入者の進行を阻む。粘膜のまさしく蕾。内へと閉じた襞のすぼまりに、亀頭の先がつっかえる。
それを、彼女は意にも介さず、突き入れた。
「っ、あっ、ぁ」
「っっ!!? ぐ、あ……!?」
陰茎の半ばほどまでが彼女の中に消えた。火傷を再び錯覚する。いや先程以上の、熱。熱。熱。圧迫。熱。そして蠢き。締め付け。圧する。圧する。狭く、硬い。この肉はまだ、異物の挿入を知らないからだ。
白い柔肌、薄紅の膣口、そして己が雄茎の合間から、血が流れた。破瓜の、純な血潮が。
「博麗、さんっ……!」
「はぁ、あ、あぁっ、んぅっ……ふふ、口に、入れたときより……んぁ、ふっ、ふ……おっきく感じる……あんたを感じる……あぁ、かんじるよ」
痛みに顔を歪めて、それでも少女は笑みを浮かべる。極上の、喜悦に満ちた笑み。
不意に目から涙がこぼれた。
「嬉しい……ひっ、いん!」
そうしてまた、一層に深く。陰茎をその奥底へと迎え入れる。
ぐにゃり、ぎちり、一物は強過ぎるほどに締め付けられた。未だ嘗て知らぬ感触だった。苦痛と真逆、程遠い甘美で。
彼女の苦痛を代償にして、俺は至上の快楽に身を捩った。無論、動けなどしないが。
「ぜんぶ、はぁっ、入った、ね……んあ、ん」
「動かないでっ、ください……」
情けなく苦悶する己の様を、彼女は息も荒く、上気して愛おしげに見下ろした。
「気持ちい……?」
「ぐ、痛みましょう。すぐに、抜いてください。湯をっ、ぉ、沸かします。体を清めて……」
「あっ、ん……中で大きくなってる……」
「後生です……博麗さん……早く、っ、せねば、でなければ」
「は、あぁ、ん、ん、はぁ、はっ、こっち見て」
「はくれ」
反射的に言葉に従い、彼女に顔を向けた。
それを両手で受け取って、彼女は己に口付けた。
舌が己の舌を捉え、巻き上げ、舐り、引き出してしゃぶる。唾液を啜られ、溢れた分は己が飲んだ。
熱い。上も下も、溶けてとろけて一つになってしまったようだ。
今、思考力は本来の一割にも満つるまい。ただでさえ鈍愚を自称するこの身がそれでは、もはや脳無しの烙印とて甘受も已む無し。
唇が解放される。
月明りに涎の橋が輝く。卑しい糸が、己と彼女の不可分を宣していた。
「動いてる、お腹の中で……は、ぁ、あぁっ、膨らんでる……出したいんだね……」
「だめ、だ……」
「出して、全部、全部……私に……!」
途端、彼女は動いた。足を開き、がぱりと股開きになる。そうして脚を使って腰を上下に打ち付けた。何度も何度も。己の腹と腿、彼女の腿と尻にねばねばと糸が奔った。
皮膚と皮膚が打ち付け合って、肉の弾力に濡れた水音が重なる。
淫猥な、下卑な音色。それが響く。寝間を満たす。耳を犯されている。
噎せ返る甘み、苦み、淫臭。鼻を犯されている。
白い肌に珠の汗を垂らし、色を失くした目で己を見下ろす誰か。熱に浮かされた笑み、喜びと愛欲の迸る貌。涎を垂らしてそれに浸る誰か。
この大切で大切で大切な人は、何という名前だったろう。
「あぁ、ひ、い、いぃ、すごい、また大きく、まだ、こんなに」
「は……」
この人は、この淫らで、美しい人は。
いとおしいひと。
「霊夢、さん」
「────へ」
彼女の顔が己を見る。遠く天上に飛び去っていた精神が常世へ帰還し、今、ひどく幼気な顔で己を見て。
予期せぬこと、予想だにしていなかったことを目の当たりしたように。茫然と、行為すら忘れたように。
彼女の足が畳を滑る。油断、弛緩、その自失が身体の誤動作を偶発させた。
自然、陰茎は彼女の奥へ、一際奥へ、最奥の、その入り口を突き上げた。
「んぉっ!?」
「っ!」
陰茎全てを女肉が咥え込み、包み、圧しながら蠢く。その性能、全てを用いて陰茎にあらゆる快感を齎す。精巣からとわたりを伝い、尿道を奔る。
背を仰け反り、彼女は震え上がった。それは確実に痛みを蕩かせるほどの波濤だった。
その、打ち震える奥の宮へ。
俺は達した。
「お゛っ、あ゛、あぁぁあっ、出て、いっぱ、ん、ひぃん! いぃ、でてる、あついの、で……ひっ、イッ、く……!!」
射精を促し、なお搾り上げるように肉襞は責め立てた──違う。
彼女も達した。今、絶頂を迎えたのだ。破瓜を散らしたその夜もろくろく更けぬその内に。
痺れる。電流が陰部から全身へ伝う。
少女は己の頭を抱え、同じ電流に耐えた。膣の蠢きは止まらない。肩口を滴るのは彼女の唾液であろうか。
「お、ぉ、ん、ひっ、う、ぁ、あぁ、ん……」
獣の呻きに似たものを口から垂れ流し、脱力していく。
ふと気付けば、四肢に自由が戻っていた。能力の行使すら儘ならなくなったということ。
「ふ、ふ……はぁ、ぁ、は……ふ、んぅ……」
独特の疲労感、脱力感。肉体労働では感じ得ない、甘い痺れ。
「……」
すぐに、動くべきだ。肉体の自由を得た今、己が実行すべきことは彼女から離れること。
先程の宣言の通り、湯を沸かし、彼女の身体を清めること。
平身低頭に謝罪をせねばならない。全身全霊で己は己の手で罪業を糾弾せねばならない。
何故なら俺は大切なものを傷付けた。大切な人をこの身で穢した。
大切な、大切な、この。
何故なら彼女は俺の、大切な──────愛しい人、だから。
だから。
「……」
「……ぁ」
彼女の肩に手を添え、身を離す。
夜気に消え入るほど弱弱しく、微かな声が桜色の唇からこぼれて落ちた。寂しげ、途方もなく、悲しげな。
彼女の瞳を見る。彼女はすぐに目を逸らした。
己はどんな顔をしていたろう。またぞろ薄暗い、陰鬱な顔をしていたのだろうか。それが彼女の不安を煽り、身を縮めさせたのだろうか。
「……ねぇ、さっき────」
彼女が言い終わるを待たず、待てず、俺はその体を抱き締めた。
「──は、え」
「霊夢さん」
「ッッ! あ、ま、まって」
「霊夢さん……霊夢、さん」
名を呼ぶ。呼ばずにはいられない。ただ、ただその言の葉を舌に乗せ、音に響かせ形作りたかった。
愛しい愛しいその人を呼ばずにはおれなかった。
「いま、だめなの、いま、あっ、ん、ひ、いま名前、呼んだら、あんっ」
「霊夢さん」
固く抱き締める。折れてしまいそうに華奢な体を、けれど離せない。離しはしない。
俺はもう、この人から離れられない。
腕の中、震える。少女が、がくがくと、痙攣する。
それは彼女の膣内も同じだった。それは絶頂の続きであった。
「だめ、だめ、あ、だめ、い、い、ひっ、ぃ、まだ、イって、いって」
「霊夢さん」
「いッッッ、────」
堕ちたのはどちらなのだろう。快楽、愛欲、淫蕩に、落ち、溺れたのは。
震える肉襞の奥、芯を得て再び怒張する己が熱棒。
それを咥えながらだらだらと新たな液を滴らせる淫口。
堕ちたのはどちらか。
きっと、それは初めから────